この年代で転職経験がない場合は、原則的に転職市場ではプラスに働きます。
それなので、基本どおりに作成していくことがポイントで、特段の事情がない限り、スタイルはオーソドックスに「編年式」で書くことを推奨します。
ただし、その勤務経験のあるたった1社の中でも、人事異動・配置転換の経験の有無によって、作成方法の工夫が必要になります。
それなので2つにパターン分けして考えます。
人事異動・配置転換の経験がない、もしくはほとんどない場合は、当社に入社したら職場にフィットできるという「環境適応能力」や「柔軟性」が備わっているか、を採用人事は確認したいと思っています。
これをフォローする方法ですが、職歴上、職場環境が変わった経験がないのですから、それがさもあるように語ると浮ついた表現になります。
それなので、「自己PR」欄を使って、プロである以上、環境が変わっても周りと協調して、きちんと実力を発揮するのは当然のことである、といった自身のプロ意識、職業倫理を語るのが有効です。
逆に総合職採用で入社して、営業職から総務職へと職種が大きく変わるような配置転換があった場合、応募職種に見合った経験をちゃんと満たしているか、採用人事は確認したいと思っています。
これをフォローする方法ですが、「職務詳細」欄や「貴社で活かせるスキル・経験」欄で、その内容を詳細を書いておきます。
たとえば、次ページの実例のように、他の職種から海外営業職への配置転換があり、海外営業職に応募しますから、海外営業職での経験やそこで養ったスキルに焦点を当てて「職務詳細」欄に記述しています。
これにリンクしない他の職種での経験は軽く触れておく程度でいいのです。
そして「貴社で活かせるスキル・経験」欄では、まさしく海外営業職に必要なものを選択しておきます。
最後に、なぜ長期勤務した会社を辞める(辞めた)のか、この明確な理由も先回りして伝えてくことも大事です。
また次ページの実例を見てください。
このように、最初の「職務要約」で軽く触れて伏線を敷き、その後「職務詳細」の中の「退職理由」欄を設けてまたこれに触れ、最後に「特記事項」欄でその詳細を説明しておくというやり方で、採用人事の懸念を先回りして消しています。
<転職回数が1回もない人 応募者プロフィール例>
45歳男性。1社にて通訳、輸出管理、新規事業企画、海外営業、総務と幅い業務に従事。
今回は自動車部品メーカーの海外職(正社員)への応募。 |
ここがポイント!
コンパクトに職歴をまとめた後で、ここで転職に至った理由を軽く述べておきます。
経験社数が1社なので、オーソドックスに「編年式」で書きます。
「退職理由」欄を設けて、長期間勤続を捨てる訳を端的に述べておきます。
複数経験した職種の中でも、海外営業の経験に焦点を当てて書きます。
「異国の商慣習や国民性の違いの認識、その吸収力・対応力」と、柔軟性や対応力の高さをPRするのも有効です。
海外営業に就任してから成果を出すための経緯を中心に語りつつも、応募者のゆるぎない自信が伝わってきます。
自身の経験が応募先企業にぴったり合っていて、入社後の貢献を確約することで、採用人事は好感を抱くことでしょう。
ここで今回なぜ転職するのか、といった採用人事が懸念している点を詳細に説明しておきます。
※画像をクリックすると、フォーマットのダウンロードが出来ます。
転職回数が多くなり過ぎた人は、オーソドックスで「編年式」で書いてしまうと、間違いなく2ページは収まりません。
それなので、「キャリア式」か「フリースタイル式」のいずれかを用いてコンパクトにまとめるのがベストと言えます。
どちらのスタイルも「職歴年表」欄を設けて、職歴が時系列に書くとわかりやすいのですが、この年表での行数を多くをとってしまう場合は、この欄を省く方法もあります。
次ページの実例のように、7社の勤務経験までだとスペース的に許容できますので、7社超の場合、これを省く一つの目安として考えてください。
職務経歴書を構成する項目別に説明していきますと、「職務要約」欄については、「一気通貫記述法」を用いないと「時系列記述法」では適量に収まりませんので、「一気通貫記述法」で今までの職歴をまとめて書きます。
「職務詳細」欄については他の一般的な書き方と同じです。
各勤務先で経験したものを業務単位を束ねて、応募先企業で求められるスキル・経験を優先順位付けして、その優先順位の高いものから記述していきます。
「貴社で活かせるスキル・経験」欄については、転職回数の多さをプラスにつなげるような「複数企業での勤務経験で培った環境適応能力」、「多種多様な業界を経験したことで体得した営業応用力」といったスキルを盛り込む、もしくは転職回数には触れずに業務内容とトータルの経験年数を「中古不動産営業の豊富な経験(約15年)」と表現する、といった表現の工夫が必要になります。
「自己PR」欄については、職場環境が異なっても着実に残してきた成果や実績、それを生み出すその源泉となるスキルなどをPRします。
そして「特記事項」欄で、転職が多くなった理由を説明しておくのが、このケースの最大のポイントです。
「どうせ当社に入社したとしても、またすぐ辞めるのだろう」という採用人事の懸念を先回りして払しょくしておかないと、内定には辿り着きません。
たとえば、経営悪化による会社都合退職や契約期間満了による退職など、不可抗力で辞めるしか選択肢がなかったのがほとんどで、自己都合で退職したのはたった1度だけ、ということなどをここでしっかりと説明しておきます。
<転職回数が多い人 応募者プロフィール例>
41歳男性。現在まで7社経験しており、経理、総務、人事と管理部門での経験を約18年。
今回は管理部門を統括する経営企画室のマネージャー職への応募。 |
ここがポイント!
ここは「一気通貫記述法」を用いて書かないと一つ一つの勤務先の情報を書いているとまとまりません。
このように転職回数が多くても、「職歴年表」を設けた方が見やすくなりますが、スペースの都合上省力すべきケースも出てきます。
「キャリア式」でまとめると、すっきりして転職回数が多いことを感じさせなくなります。
業務経験の豊かさや転職回数が多いゆえに身につけた力などを適宜盛り込んでおきます。
ここも転職回数が多いゆえに身につけた経験・スキルについて、このように深堀して詳細を語ると、非常に効果的です。
ここでのフォローがキモになります。転職回数が多くなったことを振り返っておきます。
なお、自己都合退職が多い場合は、その反省を真摯に述べ、未来に向かって約束しておくのがよいでしょう。
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第12回「職務経歴書の書き方12~廃業・リストラ退社編~」 へ続く
転職コンサルタント(中谷充宏)講師プロフィール
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