ここでは懲戒解雇、指名解雇といった本人に非があるケースは除外して経営悪化による人員整理等の一般的な会社都合退職に絞って説明します。
この年代は年齢的にリストラターゲットになることもあり、耳が痛い人もいらっしゃるでしょう。
しかし、ここは必要人材と不要人材の線引きをしたいわけではなく、感情的にならずに客観的に会社都合退職について振り返る必要があります。
ただし、現実的な話として、会社に辞めさせられている事実があるのですから、「いや、違います」と必要人材であったことを証明するのは非常に困難ですし、かえって言い訳がましくなります。
ここは「確かにそうかもしれません」とやんわりと肯定した上で、自身の振り返り、反省や今後どうしていきたいのか、という想いを冷静沈着に語る方が得策だと言えます。
たとえば
「おっしゃるとおり、その側面はあったと思います。私の同年代でも一部は本社に残りましたし。
今失業してみて初めて、働く場所があることのありがたさを痛感しています。
今回は非常に残念ですが、これを新天地で活躍するチャンスととらえたいと思います。
もし御社で働くチャンスをいただけるのでしたら、粉骨砕身の覚悟で働きます」
というように、会社都合退職に至った反省や入社後の決意をしっかりと伝えるようにしてください。
事例の前提となる人についての情報
41歳男性、大卒。
新卒入社した1社(テレビ部品メーカー)にて勤務経験あり。 2か月前に会社都合退職。今回は初めての転職で、類似業種(ディジタル機器部品メーカー)・同職種(生産技術職)への応募。 |
NGな受け答え例
「いや、私だけではなく、私の所属部署の約3分の1は、辞めさせられましたので、そのご指摘は当たらないと思います。」
「確かにそのとおりだと思います。自分の能力不足を恥じるしかありません。」
寸評:逆を言うと2/3は残ったわけですから、ここは感情的になって否定するのは得策ではありません。
またここはそのまま受け入れてしまって終わるのではなく、きちんと反証してください。
OKな受け答え例
「確かにそう見られても仕方がないと思います。
今盛んに報道されているように、今やテレビメーカーはどこも大赤字です。
このあおりを受けて、我々部品メーカーも経営不振に陥り、人員整理を行わなくてはならなくなりました。
それで今回、40歳以上が肩たたきの対象となり、この条件を満たしている私は、退職を余儀なくされました。
正直、ずっと前職一筋でやってきましたので、退職を打診された時は本当に悔しかったです。このようなリストラの憂き目に遭い、またなかなか転職活動の思うように進んでいませんので、精神的に辛い日々がまだ続いております。
御社に入社できましたら、働ける喜びを噛みしめながら、私を見捨てた会社が後悔するくらい、頑張って御社の発展に貢献したいと思います。」
寸評:まずきちんと指摘を受け入れた上で、退職に至る背景、退職時の赤裸々な心情、入社後の頑張りといった、ここの回答に必要な要素をきちんと盛り込めば、面接官も納得の内容となります。
先に説明した「退職理由」が面接官にとって頷ける内容でなかった際に、この質問が出されます。
そして、面接官は敢えて「わがまま」という言葉を用いて感情を逆撫でするような聞き方をすることで、「感情的にならずに理路整然と反論できるのか」という点を確認するとともに、あらためて納得のいく退職理由を聞かせて欲しいと思っています。
だから、ここは先に回答した「退職理由」について、さらに踏み込んで、丁寧に詳細に説明するのが一番のポイント。
ここで鋭い詰問に焦ってしまい、「いえ、わがままとは思いません。会社の理不尽な人事異動があり、それが退職理由であることは先ほど述べたとおりです」ではNG、前述を繰り返しただけで何の進展がありません。
たとえば
しかし、先述のとおり、私が全く意図しない、技術職から営業職への人事異動となり、この歳で全く未経験職種に挑まなければならないため、私のキャリアの考えと相いれず退職に至った次第です。
更に言いますと、営業ノルマを達成できなかった先輩方は、敷地内の清掃業務といった雑務担当に就かせるなどして、退職に追い込んでおりました。
功労者を大事にしないような会社では、続けていけないと決断しました」
というように、退職理由の追加情報などで退職するにはちゃんと理由があったことを再度強調する必要があります。
事例の前提となる人についての情報
44歳男性、大卒。
今まで2社に勤務経験あり。 今回は3社目の転職で同業種・同職種への応募。 |
NGな受け答え例
「自己都合退職者にとっては、それぞれに退職理由がありますし、私もきちんとした理由があって辞めましたので、わがままには当たらないと思います。」
「確かにわがままな側面はあろうかと思います。前職のあの職場の人間関係が合わなくて辞めましたので。」
寸評:退職理由について、もっと丁寧に詳細に説明しないといけません。
また、そのまま指摘を受け入れた後に、ネガティブな理由をそのまま吐き出しては、「わがまま」を排除できません。
OKな受け答え例
「確かにわがままという側面を指摘されても仕方がないと思います。
私自身、我慢強ければ、もっと長く続けていけたかもしれませんが、会社に不信感を抱きつつ自分を騙しながら働き続けるのは、私には到底できませんでした。
先ほども退職の経緯を申しましたが、私は法人営業職一筋で約22年のキャリアがあります。
長年お付き合いいただいている顧客との関係も良好で、毎年数字もちゃんと残しておりましたので、この先もこの道を究めていきたいと思っておりました。
しかし、昨年秋に突然、子会社での総務職への異動を命ぜられましたが、自身に与えられた残りの貴重な時間を、法人営業で結果を出すことに賭けたいと思い、この異動には応じられないと決断し退職に至りました。
これは先ほど伝えておりませんでしたが、会社は高騰する人件費を抑制するために、給与が高い社員に対しては40歳から揺さぶりをかけるとの話を、退職後に前職の同期社員から聞きました。
確かに、実績を残していたので成果給として周りよりも高い給与をいただいていたのは事実ですが、人件費抑制のためとはいえ、一律にそのルールに乗せるのはどうかと思います。
ただもう既に辞めていますし、愚痴を言っても仕方ありません。
今はしっかりと気持ちを切り替えて、次を探すことです。
幸いなことに、御社も含めて私のこのキャリアを評価してくださり、面接までお呼びいただく企業が複数ありますので、新天地でまた法人営業職で頑張ろうと気持ちでいっぱいです。」
寸評:ここで動揺せずに、退職理由を丁寧に詳細に語るのが正攻法。
これだけにとどまらず、退縮理由の納得性を高める新情報の追加や最後に前向きな心境を語るとよいでしょう。
応募者の現在の勤務先よりも規模が劣る企業に応募する際、このような意地悪な突っ込みが入る場合があります。
ここは感情的にならずに「やっていける」という回答をするのは大前提で、その上で次の3点を考慮して面接官にやれることを納得してもらわなければなりません。
まず「今の会社と応募企業の差」です。
ちゃんとその差を認識していることを伝えてください。
次に「応募企業への入社意欲」です。
なぜ敢えて規模が小さい当社で働きたいのか、何をやりたいか、を明確に伝えましょう。
最後に「入社後の働く覚悟」です。
「こんな雑用まで私がやるの?」、「前の会社ではこうではなかった」といったことがないように、確固たる気持ちを宣言してください。
たとえば
しかし、私は首都圏エリアしか見えない限られた領域での売上管理ではなく、会社全体の数字を把握し自らが販売戦略を練り経営層に提言していくような、今回の御社のポジションにやりがいを感じるのです。
規模の違いがあり職場も変わりますから、仕事の進め方や社風、待遇などに違いがあるのはきちんと覚悟しております」
というように、上記3つのポイントを盛り込むように話すことが肝要です。
事例の前提となる人についての情報
43歳男性、大卒。
今まで新卒入社した1社にて在職中。 今回は2社目の転職で現職と比べて規模が小さい同業の同職種(営業課長候補職)への応募。 |
NGな受け答え例
「御社も立派な会社ですし、今の勤務先とそんなに大きな差はないと思っています。」
「大は小を兼ねると言いますし、やり方次第できちんとやっていけるようになる、と思っています。」
寸評:今の会社と応募企業の差を正確に認識していないような、お世辞で終わってしまう発言は差し控えましょう。
また「やっていける」と回答するのであれば、抽象的な根拠よりも具体的に説明する必要があります。
OKな受け答え例
「確かにご指摘のとおり、私は現職は約20年間、御社よりも規模の大きい企業で営業部門で営業職一筋で働いて参りました。
ちょうど5年前に営業支店長に昇格してから現在まで、私は支店のマネジメント業務全般を任され、支店の部下9名の営業管理と支店独自で行う広告やイベント開催といった販促業務がメイン業務になりました。
組織が大きいために分業制が確立していること、並びにマネジメント業務と販促業務で手一杯で、私が営業現場にいくことはほとんどなくなりました。
やはり私はお客様に直接向き合って、商品を提案営業していくのが、一番向いていますし、何よりもやりがいを感じます。
そして、その方が今までの20年のキャリアと自分の能力が活きると思っています。
現職のままでは、今後ますますマネジメント業務にシフトしていき、営業現場は遠のくばかりになります。
そのため、私は今回の応募職種のような、プレイングマネージャーとして営業も管理も両方やる仕事が最適と思い、応募させていただいた次第です。
この想いが実現できるのであれば、待遇面が大幅に下がろうと全然構いませんし、その覚悟はできています。」
寸評:「今の会社と応募企業の差」、「応募企業への入社意欲」、「入社後の働く覚悟」の3つのポイントがちゃんと盛り込めていることが最も重要です。
この年代で当社よりも規模の大きい企業を辞めるのですから、面接官も斜めに構えていることを忘れないでください。
明確に数字で表せる大偉業を達成したのであれば、それをそのまま伝えるだけですが、ここはそうではないからこそ詰問されています。
ここは「そうですね、誇るべき実績は残していません」で終わってしまってはダメなのは言うまでもありません。
ここも他の圧迫系質問と同じように、一旦指摘を受けてから、反証しなければなりません。
一番頭を悩ませる反証の材料ですが、たとえば、地味でも継続できていることがあれば
「ノルマをずっと100%達成してきたわけではありませんが、全営業社員の中で平均より上の数字を安定継続して残してきました」
「几帳面な性格で業務遂行上の確実性には定評があり、ここ3年間で大きなミスは一つも犯していません」
といった実績PRができます。
また単発であっても、
といった実績PRができます。
人それぞれに役割があり、みんながオリンピック級の社員でないことは、面接官も理解しています。
このように自分の身の丈にあった実績を探して打ち返してください。
一点だけ、ネガティブな要素を未来に向けてプラス方向に改善していく、というのは、面接での受け答えの定石ですが、ここは若手と違い、「今はないですが、この先頑張って実績を残します」というのはかなり苦しいと心得てください。
事例の前提となる人についての情報
40歳男性、大卒。
今まで2社に勤務経験あり。 今回は3社目の転職で同業種・同職種への応募。 |
NGな受け答え例
「私は営業ではないので、実績らしい実績と言われても。」
「確かに今はありませんが、これから御社で頑張って実績を作り上げていきたいと思います。」
寸評:営業なくでも、長年働いているわけですから、何かしら語れる実績があるはずです。
また、この回答は、中高年では通用しません。
OKな受け答え例
「はい、確かに誇るべき実績は残せておりません。
しかし、小さなレベルの実績でしたら複数あります。
具体的には、前職では私が担当していた事務備品購入について、いわゆる長年の取引先との随意契約ではなく一部入札制度を取り入れて、この分野の支出を年間10万ほど削減しました。
また、最近では総務部の節電推進担当として、巡回してこまめに節電を促し部内の定着化を図りました。
ここは数値化できていませんが、今は部員みんなが節電意識を持って行動できていると感じます。
私は大きなことを成し得るタイプではないかもしれませんが、このように地道に着実に自身の業務にまい進したいと思っています。」
寸評:たとえ些細な実績であっても、ないよりはまし。
ここは何らかでもちゃんと実績を返しておかないと、中高年を採用する意味がない、と見限られてしまうこと必至です。
この質問は、若手も中高年も回答ポイントは同じで、前職と応募企業の待遇ギャップが大きく、退職理由や転職理由等を答えた後に問われます。
回答構成としては、応募者の実績や処遇の振り返り、その後にそれらを捨ててでも退職しなければならなかった理由をきちんと説明します。
ここで一番やってはいけないのは、現職に対する不満や誹謗中傷といったネガティブな退職理由を吐露すること。
「いや、いくら実績を上げても、反映されるのはごく一部で、その反映方法も不透明でしたので」、「確かに給与はいいのですが、職場の人間関係が本当に悪くて」
といったのは本音であってもそのまま伝えてはいけません。
たとえば
上場企業でしたから、他よりも待遇も恵まれていたと思います。」
と応募者の実績や処遇の振り返りをした後、
だから退職を決意したことに全く後悔はありません。」
と前向きで先を見据えた自身の計画に基づく退職であることを説明するようにしてください。
事例の前提となる人についての情報
39歳男性、大卒。
今まで新卒入社した1社にて勤務経験あり。 現在は本社の経営企画部に配属。今回は2社目の転職で同業種の営業マネージャー職への応募。 |
NGな受け答え例
「いや、そんなに実績らしい実績とは思っていませんし、待遇も皆さんが思うほどよくありません。」
「40歳になると、子会社に転籍出向になる可能性が高く、そうなるとこの待遇も続かないため、そろそろ行く末を見極めないといけない時期かと思いまして。」
寸評:謙遜含みでしょうが、これでは実績や処遇の振り返りが甘いとみなされます。
また、現実的な話であってもネガティブな退職理由は、ここに限らず採用面接ではご法度です。
OKな受け答え例
「確かに部署が変わる前の約3年間は営業成績がすこぶる良かったですし、当社は東証一部上場企業ですので、他と比べると待遇面もいいと思います。
特に今、転職活動をする中で、これを痛感させられます。
周りからも一部上場企業を今更辞めるなんてもったいない、辞めない方がいいのでは?と言われますが、私はやはり○○の営業の現場に出てナンボの人間、常にお客様との接点を持って、お客様の反応を直に感じたいのです。
それなので、今の本社での経営企画業務は正直、かなり違和感を抱いております。
今回、御社で自ら営業数字を背負い、課の数字も管理する営業マネージャー職のお話をいただきましたが、ここであれば今までの約16年間の営業経験がそのまま活かせると考え、応募した次第です。
○○の営業の現場に戻り、営業に復帰するのが私の最大の目的ですので、給与が下がろうと休みが減ろうと一向に構いません。
覚悟しています。それよりも一刻も早く現場に復帰して、力を存分に発揮したい、その思いでいっぱいです。」
寸評:応募者の実績や処遇の振り返りは面接官とズレていないこと、そして退職理由はきちんと納得感があること、の2つが盛り込まれていることがこの回答のポイントです。
第21回「中高年の面接対策21~転職活動について~」 へ続く
転職コンサルタント(中谷充宏)講師プロフィール
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