42歳男性。
大学卒業後に新卒入社した住宅販売会社で15年営業職として勤務後、転職して不動産会社の営業所長を5年経験。
今回は2回目の転職で営業課長職への応募。
中高年ゆえに職歴は豊富なはずですので、今まで長年積んできたキャリアの中で、応募企業の求人情報とマッチしている内容を聞きたいと思っています。
たとえば、応募者が「法人営業」と「営業マネジメント」と2つの業務に携わってきたとして、求人情報では営業所の所長職で、部下の育成指導の役割を求められているのに、自身の「法人営業」時代の実績などを長々と話しても興ざめなだけです。
ここは
「はい、私は営業畑を約20年歩み、特に前職では営業課長として約7年間、自分の営業ノルマを抱えながらも、部下8名の人材管理も行っておりました。その中で私は人材育成に注力していました。・・・」
といったように、求人情報にマッチしている点をピックアップして伝えるようにします。
また面接官は、中高年の「職務経歴書」を若手のそれよりも重視していますので、記載内容と話す内容との乖離がないか、を厳しくチェックしています。
この年代だけに虚偽はもちろんのこと、大きく見せようとするような表現はかえってマイナスです。
書類との整合性を意識して正確に回答するようにしてください。
また、中高年ゆえに今までの何十年もの職歴を時系列に沿って話すと、非常に冗長になります。
ここは短い時間で自分の経歴を要約して伝える「プレゼン力」も重要です。
応募職種で即貢献できる経歴に焦点を置いて、これに関係のない経歴は思い切ってバッサリ省略するくらいで語るようにしてください。
事例の前提となる人についての情報 42歳男性。 |
NGな受け答え例
「まず私は立教大学法学部で手形・小切手法を専攻していまして、運輸会社の山田物流に新卒入社しました。~」
「~住宅営業ではまず展示場に来場していただくことがまず鍵になります。そのためにはDMや新聞広告、イベント開催などが非常に重要で~」
寸評:新卒面接ではないので、大学時代の話から延々と語られても面接官は退屈するだけでしょう。
また今回の応募職とは直接関係しない営業手法などの説明に多くの時間を占めるのは有効ではありません。
OKな受け答え例
「はい、私は大学卒業から現在まで、約20年間、営業一筋で働いてきました。前々職では約15年間住宅営業に従事して、10年目から退職までは、3か所の展示場の店長を務めました。
その後、不動産会社の営業所長ポジションに転職し、店舗売上管理はもとより部下10名の人材管理や物件管理などに従事しました。
特に前職は不動産未経験の中途社員を多く受け入れていたため、私は徹底的に所内でロールプレイングを繰り返し、同行営業で私がやって見せて、契約が取れる商談を引き継いで自信を付けさせるなどし、不動産営業の現場第一線で鍛え上げてきました。
試行錯誤の日々でしたが、今振り返ると、一人前の営業社員を多数育て上げられたと自負しております。」
寸評:ついつい冗長気味になりがちな経歴説明を端的にまとめて話しています。
また応募企業が求める点に比重を置いて伝えることで、訴求力を高めることに成功しています。
どの応募者であっても、採用選考に通りたいために、自分をよく見せようとしがちです。
特に豊富なキャリアがある中高年となると、過去の成功体験のいい部分だけを切り取って、
「私は上場企業の部長まで昇進して、部下を100人も抱えておりました。」
「店長時代時は店舗売上が5億円ありました。」
といった話に終始する傾向があります。
このようなポジションや売上等の数字を交えたエピソードは客観性があり、非常に訴求力を持ちますが、中高年の場合はこれだけではダメです。
中高年は即戦力として入社後の活躍を期待されているわけですから、このエピソードに裏付けられた「自己PR」が、応募企業に入社できたら、どう役立つか、どう貢献できるか、まで踏み込んで話を展開しないと、単に「俺って凄いんだぞ」的な話しか伝わってこなくなってしまいます。
これをくどくどと一方的に聞かされるのは、応募者の話を聞くのが仕事である採用面接官といえども辛いもの、これではこの質問だけでなく面接全体の印象も悪くなります。
また、中高年の犯しがちなミスとして、話が冗長気味になってしまう、ということがあります。
経験やスキルが充分あるからこそ、あれもこれもPRしたい気持ちはよくわかりますが、ここはきちんと的を絞って話すことが大切です。
事例の前提となる人についての情報 40歳男性、大卒。 |
NGな受け答え例
「私のPRとしましては、高いコミュニケーション力があり、粘り強さもあって、親分肌なところもあって周りからの信頼も厚く、リーダーシップも発揮でき~」
「お恥ずかしい話、私はこれといってPRすべき点がないのですが、しいていうならば~」
寸評:多くのPRポイントを羅列しても冗長になるだけです、しっかりと的を絞って話しましょう。
また謙遜やPRがない前置きは、話が無駄に長くなるだけで一切不要です。
OKな受け答え例
「はい、私の一番のPRは、チーム力を最大化することに長けていることです。
前職では、営業課長として、部下8人の営業管理を行っておりました。
赴任当時は、部下達は皆、目の前の数字に追われており、課内が殺伐としていました。
意識が高いのはいいのですが、ともすると他の営業社員にかかってきた電話をおざなりにするなど、お互いの足の引っ張るような行為が散見されました。
そこで私は一つの施策として、週1回の勉強会を設け、各人の最近の成功事例、失敗事例を発表させて、情報共有を図るようにしました。
また発表に積極でない社員に対しては、この主旨をきちんと説明し、それでも応じない場合は人事考課にリンクさせる旨を明言しました。
最初は皆、様子見でやっていましたが、慣れていくうちにそれぞれ抱えている課題に対して参加者が改善方法や解決アプローチを提案するなど、社員間同士で活発な議論が交わされるようになり、個々が保有してきた営業ノウハウを共有できるようになりました。
この取組の結果として、昨年度の支社内のチーム営業成績は15チーム中1番の成績を残すことができました。御社では営業に慣れていない若手社員が多いと聞いておりますので、この力を発揮して営業成績を伸ばしていきたいと思っております。」
寸評:今回のポジションは営業課長職ですから、ここは営業社員のマネジメントスキルに的を絞ってPRするのは効果的です。
そして前職での経験の中から、具体的なエピソードを交えて語ることで、このPRポイントがきちんと備わっていることを実感でき、入社後も当社の管理職として活躍してくれる期待感を持つことができます。
人それぞれに長所は複数あると思いますが、中高年の場合は、単に頭に浮かんだ内容をそのまま伝えればいいのではなく、年相応の回答をすることが求められます。
まず面接官は、応募者が挙げた長所が、当社の応募業務できちんと活かせるか、という観点で見ています。
それなので、応募企業の応募職種に合った長所をピックアップする必要があります。
たとえば、何百人もの部下を率いる管理職求人に対しては、「フットワークの軽さ」、「寛容さ」よりも「責任感の強さ」、「統率力」の方が、求人にマッチするといえます。
前者を選択しても誤りではありませんが、応募業務に適合させていくには非常に高い表現力が必要ですので、後者を選択する方が無難と言えます。
また、たとえば「慎重さ」を長所として選択した際に、逆の方向で捉えられて「腰が重い」、「柔軟性がない」といった、中高年を採用する際に懸念されるマイナス点につながらないよう、しっかりと説明して取り除いておかなければなりません。
たとえば、「腰が重い」ということを不安視されないように、
「~その一方で、ここぞという際には、自らが先頭に立って、現場に出向き行動する長所もあります。前職では~」
といった表現でフォローします。
そして業務経験豊かな中高年だからこそ、この選択した長所を裏付ける具体的なエピソードを添えてフォローすることが非常に大切になります。
事例の前提となる人についての情報 42歳男性、大卒。 |
NGな受け答え例
「私は真面目な性格なので、仕事で大きなミスらしいミスをしたことがない点が最大の長所です。」
「私の長所は、明朗活発なところです。」
寸評:「真面目さ」が「変化を嫌う、柔軟性のない」中高年のマイナス点につながらないように、この後フォローしておきましょう。
また、若手でも言いそうな、年相応でないと見られるような長所は、言い切ってしまうのではなく、応募企業・応募職種にどう役立つか、を伝えるようにしてください。
OKな受け答え例
「私の長所は、少々のことでは動じない「胆力」があることです。
一例を挙げますと、今まで長年システム開発に従事してきましたが、前職では私がリーダーを務めた、ある大型プロジェクトでは、システムが全く機能しないレベルの重要なバグがリリース前に見つかり、クライアントから多額の損害賠償や違約金の話が持ち上がりました。
当時は何十億という金額の大きさからプロジェクトマネージャーや事業部長は慌てふためいておりましたが、私は冷静に粛々と現状の把握と現実的な復旧策を考え、動員をかければ一か月でリリースにこぎ着けると判断し、納期を一か月だけ延長してもらうようクライアントと調整・交渉しするなどして無事リリースに成功しました。
今までシビアなプロジェクトを任され、幾度となくこのような修羅場を潜り抜けてきたため、この力を体得できたと思っています。
これは御社のコンサル職でも必ず役立つものと自負しています。」
寸評:年相応の長所をセレクトし、それを具体的に前職のエピソードを交えてフォローすることで、応募者にこの長所が備わっていると納得できます。
また応募企業のコンサル業務でもクライアントの課題解決のためのプロジェクトを任されますから、この力が役立つと充分期待できます。
この回答は、マイナス評価につながりかねないネガティブ情報を自ら発信するのですから、非常に答えにくい質問の一つと言えます。
特に中高年にとっては、年齢ゆえに応募できる企業自体が非常に少ない状況ですので、せっかく辿り着いた面接のチャンスを無駄にしたくないという強い想いから、余計に答えにくいでしょう。
しかし、短所のない完璧な人はいませんし、面接官もこれを重々理解しています。
だからここはできるだけ本音で短所を語るようにしましょう。
もちろん、仕事に影響が出そうなもの(例.すぐに感情的になる等)はここでは論外です。また
「考え過ぎてしまうことが私の短所ですが、これは何事についても思慮深いという、私の長所でもあります。」
と回答を捻り過ぎてしまうと、かえって面接官の鼻につきマイナス印象を持たれかねません。
中高年ゆえに回りくどい表現をする傾向がありますが、面接官はうんざりするだけです。
それよりも本音で語った短所について、その短所をどう捉えているのか、克服のためにどう努力をしているのか、を詳細に語ってもらいたいのです。
中高年ゆえに、短所は今さら変えれない、といった硬直したような発言があったら、新しい当社の職場環境にも自分を曲げずに順応できないのではないか?と懸念されてしまいます。
だから短所は言いっ放しにせずに、必ず改善努力や心がけを盛り込むなどしてフォローするようにしてください。
事例の前提となる人についての情報 46歳男性、大卒。 |
NGな受け答え例
「私は何事にも少々熱くなり過ぎるところがあります。」
「私の短所としては少し優柔不断なところがありますが、これは私の長所の優しさの裏返しと考えていますので、そのまま受け入れています。」
寸評:言いっ放しではなく、その熱くなり過ぎる短所をどう抑えようとしているのか、きちんとフォローしてください。
また短所か長所かよくわからない回答は、止めておきましょう。
OKな受け答え例
「私の短所は、一つのことにとらわれるとそれ一辺倒になってしまうことがある、という点です。
たとえば、経理という仕事は正確さが強く求められます。
ですので私は、経理課長職に就いてからはことさら、自身に対しても部下に対しても、職務の遂行に一切の妥協を許しませんでした。
しかしある時、退職する社員から
「課長自身ができたからといって、部下に同じような完璧さを一方的に求められても困る。私だけでなく、皆も追いつめられている」
とはっきり言われまして。
「厳格さと寛容さのバランス」という、管理職には最も大切であろう視野の広さが、自身には欠けていたことを思い知らされた次第です。
もちろん今では、そのような短絡的な考えは一切持たず、常に相反する要素を両立させることを意識しながら業務に臨んでおります。」
寸評:自分が自覚している短所を単刀直入に伝え、その経緯や部下とのエピソード、反省から導き出された取り組みなどが端的に述べられており、面接官にとって受け入れやすい内容になっています。
キャリアが豊富な中高年だからこそ、たくさんの実績や評価があることでしょう。
ここはその実績や評価が、当社でちゃんと機能するのか、を面接官は一番知りたいのです。
たとえば、同じ営業職種の実績であっても、「入社して5年目に支社長賞を受賞しました。」といった話では古過ぎますし、直近で素晴らしい実績があっても、「昨年度、私は売上実績を約150%伸長しました。」といっても応募職種でプレーヤーよりもマネージャー的役割を重視している場合は、的外れになってしまいます。
ここは評価も同じ考え方です。
要は応募企業で活かせるものを、できるだけ直近から探して正確に語ればいいのです。
転職に苦戦する中高年ゆえに、受かりたい一心から誇張する方がいらっしゃいますが、ここは無理に事実以上に大きく見せる必要はありません。かえって不審に思われて心証が悪くなります。
これに加えて面接官は、その実績や評価の裏側にある、中高年の長年の努力や取り組みを知りたいのです。
たとえば
「この実績を出せた勝因としましては、私は当業界の情報収集に努め、新聞、テレビ、業界誌はもとより有料メルマガ、講演会、セミナーの積極参加を15年間継続しており、その豊富な知識量が・・・」
といった、地味でもいいので成果達成までの地道なプロセスを感じることで、当社での活躍をイメージしたいのです。
事例の前提となる人についての情報 40歳男性、大卒。 |
NGな受け答え例
「私は新卒入社した会社で、入社7年目にして社長賞をいただいたことがあります。」
「私は前職で課長代理でしたが、役員レベルの仕事がこなせる人だ、と上司の課長を含め周りから評価いただいたことがあります。」
寸評:20年も前の話では古すぎると思われます。
また仮に事実だとしても、それではなぜもっと上のポストに就いていないのか、と実態とかけ離れた評価は信ぴょう性が疑われます。
OKな受け答え例
「はい、私は前職の約10年間において、年間販売目標5棟に対して平均6.3棟の販売実績を残しました。
決して派手な成績ではありませんが、在任中にノルマ未達成年度は一度もなかったのが一番の誇りです。
また、入居者アンケートの総合評価において、退社前の3期は連続トップ表彰を受けました。
これは不況が続く中、なかなか新規受注が伸びないために、アフターサービスに比重を置いて取り組んだことが勝因です。
自ら編集した「地域お役立ち情報」をメールマガジン形式で月1回発行したり、住まいで何かお困りのことがあれば、いつでも相談できるように、と私の携帯番号をご案内して、お客様とのいい距離感を保つことに努めました。
これにより入居者からのご紹介者も前年度比150%のペースで増え、また今後の収益の柱の一つである太陽光発電システムやオール電化システムの成約件数も大幅に伸ばすことができました。」
寸評:同じ住宅営業の応募企業に役立つであろう実績が、数字を用いてわかりやすく述べられており、また応募者独自の取り組みにも触れることで、説得力がアップしています。
第3回「中高年の面接対策3~前職との違い・キャリアプラン・夢~」 へ続く
転職コンサルタント(中谷充宏)講師プロフィール
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