ここは若手だろうが中高年だろうが、回答ポイントは同じです。
会社都合退職と自己都合退職の2つに分類して考える必要があります。
まずは会社都合退職の場合、何らやましい気持ちを持たないで、その事実を包み隠さず伝えれば問題ありません。
たとえば、
という内容であれば面接官も納得します。
(ここでは会社のお金を横領して懲戒解雇された、といった本人の非行が原因の会社都合退職ケースは除きます。)
次に自己都合退職の場合ですが、たとえば、残業が多い、休みが取れない、職場の雰囲気が悪い云々、という短絡的でわがままな退職理由は、中高年ゆえに少ないかと思います。
多いのは、会社からやんわりと退職勧奨を受けた、意図しない人事異動を受けた、理不尽に給与を下げられた、といったネガティブなものに起因するもの。
しかしそれだけを伝えると、面接官にマイナス印象を与えてしまうことになります。
後述のOK例のように、できるだけネガティブな要素を克服するための努力や今後の意欲などでフォローして、面接官に納得してもらうことが大切です。
事例の前提となる人についての情報
41歳男性、大卒。都内在住。
今まで2社の勤務経験あり。 今回3社目の転職で同業種・同職種への応募。 |
NGな受け答え例
「はい、私自身、きちんと成績を上げていたにもかかわらず、一方通行の子会社への出向になりましたので、私の存在価値はない、と見限り辞めることにしました。」
(事業部廃止によって事業部員が全員解雇された場合)
「非常に恥ずかしい話なのですが、私の能力不足のせいもあり、会社から辞めるように言われてしまったのです。」
寸評:ネガティブなものに起因するものは、それだけではなく、フォローを入れるようにしてください。
また、ここは事実をきちんと伝えないといけません。
謙遜したつもりでしょうが、これでは能力不足で解雇されたように誤解されてしまいます。
OKな受け答え例
「はい、私の前職の退職理由についてですが、3か月前に九州熊本への転勤を命ぜられ、それにどうしても応じることができずに、退職することになりました。
というのも、今子供の教育と義父介護といった家庭の問題があり、妻とよく話し合った結果、家族揃っての転居はもちろんのこと、単身赴任も難しいという結論に至りました。
もちろん、会社には事情を伝えて善処してもらえないか、お願いしましたが、君だけ例外扱いできない、逆に熊本では君の力が必要なんだ、と、言われまして。
前職の業務も非常にやりがいを感じており、一定の評価をいただいたので、何とか続けていきたいと気持ちもありました。
しかし、退職を決断した以上、次に向かって進むしかありません。
私にとっては、家庭問題は働く上で一番大事なことの一つですので、一都三県の都市部だけに支店展開している御社であれば、安心して働けると思い、応募いたしました。」
寸評:ネガティブな退職要因であっても、隠さずに話す方が得策です。
その上で、やむを得なかったという納得性を提供できるかがポイント。
最後にプラス方向の内容を語ると、よりよくなります。
ここも若手だろうが中高年だろうが、回答ポイントは同じです。
ここは前述の質問に対する回答に、面接官がまだ納得できていないから、更に突っ込んで聞いています。
退職理由に曖昧さや抽象的な表現があるからこそ、この質問で更に一歩踏み込むことで、退職の本当の理由を知りその正当性を確かめたいと思っています。
だからここは
という内容を、前述以上に、より具体的にわかりやすく説明する必要があります。
たとえば
前職の経営悪化の状況をここで語るのはふさわしくないと思い、曖昧な表現になってしまいました。失礼いたしました。
実は前職では債務超過に陥っているようで、取引先の支払いが滞って~」
というように、前述の回答内容をフォローしながら、更に踏み込んだ具体的な内容を話す必要があります。
この質問を仕向けられたことにより、退職理由をより詳細に丁寧に語ることができますから、面接官の違和感、不信感を払拭できる大チャンスです。
「やっぱり、何度聞いても退職理由は腑に落ちん」と同じことの繰り返しにならないよう、説明の丁寧さ、わかりやすさも求められます。
事例の前提となる人についての情報
(前項と同じ方)
41歳男性、大卒。都内在住。 今まで2社の勤務経験あり。 今回3社目の転職で同業種・同職種への応募。 |
NGな受け答え例
「ご指摘のとおり、確かに辞めなくてもよかったかもしれません。」
「繰り返しになって申し訳ございませんが、再度退職理由を申し上げたいと思います。先ほど申したとおり~」
寸評:指摘を受け入れるだけではダメで、この後きちんと退職理由を丁寧に説明をしてフォローしましょう。
また、同じことを何度も繰り返すのは、得策ではありません。
OKな受け答え例
「確かにご指摘のとおり、客観的に見ると辞める必要はなかったのでは、と思われるのは、当然のことと思います。
先ほど家庭の問題と申しましたが、再度ここで詳細を説明させてください。
まず子供の教育の問題についてですが、私も妻も転校を繰り返した経験がありますが、お互いにいい思い出がありませんでした。
それで思春期の長女と長男に今のタイミングで転校させたくない、という考えで一致したのです。
次に義父の介護の問題ですが、介護サービスを受けている時間帯以外は、介添えが必要でして、義母は既に他界しているために一人娘である妻しか身寄りがおらず、妻が子育てと介護と家事の重責を担っております。
私も帰宅後や休日にこれらを手伝っており、家族総出でこの難局を乗り切ろうとしている最中でして。
熊本では課長ポストをご用意いただきましたので、私にとっても光栄なお話でしたが、家族あっての私、仕事と考えておりますので、不本意ながら退職させていただきました。」
寸評:いったん面接官の指摘をきちんと受け止めることは基本中の基本。
その後に前項で回答できなかった細部にまで踏み込んでいくことで、退職の正当性を証明していきます。
ここの回答パターンは、事実を粛々と伝えていい場合と表現を工夫しなければならない場合の2つです。
前者は、誰が見てもやむを得ない、と言われるような退職要因があった場合。
たとえば海外転勤を命ぜられて、家庭の事情でどうしても受け入れられなかった場合、その事実をきちんと伝えれば問題ありません。
会社ともよく話し合いましたが、退職という決断に至りました」
という具合です。
問題は後者。
「会社のやり方が気に食わずに辞めた」といった単に自分のわがままに起因しているような場合このまま伝えるとNGなのはいわずもがなです。
会社のやり方が自分にどう合わなかったのか、大人の説明が必要になります。
たとえば
実際、新規需要は前年度比8%ダウンしている一方、既存客の需要は約12%増と~」
といった具合です。
もし説明力に自信がなく、言い訳がましいようであれば、
もういい年ですし御社では同じ過ちを繰り返さないよう頑張ります」
と潔く素直に反省の弁を述べた上で、将来への決意を語った方が、好印象でしょう。
事例の前提となる人についての情報
39歳男性、大学院卒。
新卒入社した会社1社に勤務経験あり。 今回は初めての転職で同業種・同職種(新素材開発の研究開発職)への応募。 |
NGな受け答え例
実は昨年末に体を壊してしまいまして。仕事のストレスによる過食などの不摂生が原因でした。今は復調しましたので、~」
「自己都合と言っても、実は会社の意向が強く働いたものでして。私は辞めたくないと言いたのですが、今のままでは君の仕事はない、と言われ~」
寸評:本音であっても不健康さは当社では就業困難とみなされる危険性がありますので、仕事の大変さに焦点を当てた方がよいでしょう。
また、事実であっても退職に関してややこしいことがあったような回答は、言い訳がましくなります。
OKな受け答え例
「はい、本音を包み隠さずに申しますと、前職で不本意な人事異動を命ぜられたので、退職することにしました。
その異動命令というのは、実は技術営業をやるように言われたのです。
私は大学と大学院でこの素材開発の研究に没頭し、入社後もその研究開発に約15年間従事してきたのですが、今回の営業は全くの未経験ですし、正直驚きを隠せませんでした。
確かに技術営業ですから、対象顧客は高度な専門家になりますので、専門的な知識がなければ、太刀打ちできません。
その点から見ると、私は技術知識には自信がありますし、専門家を納得させる説明もきちんとできると思います。
しかし、私はこの研究をもっと深めたいという気持ちが強く、人事異動を蹴って退職するに至りました。」
寸評:誰が見てもやむを得ない場合と自分のわがままに起因している場合との判別は難しいケースがありますが、いずれの場合も退職に至る経緯を丁寧かつ詳細に説明することは必須。
このように自身の研究開発職への想いを強く出すと、応募職種への勤労意欲につながるのでお勧めです。
会社都合退職と一言でいっても、2つのパターンがありますが、まず一つ目のパターンである懲戒解雇、諭旨解雇といった本人の非行や経験不足が要因のものは、ここでは対象外とします。
もう一つの経営不振による整理解雇などのパターンについて。
会社都合退職となると、いわゆる「クビ」になった、ということで、これをおくびにでも出すと、マイナス評価につながるのでは?と怯んでしまう方も多いようです。
しかし、今や経営悪化によるリストラで、応募者の力量に関係がなく退職を余儀なくされた、という事例は今や日常茶飯事。
面接官もその実情をよく理解していますので、堂々とその内容を伝えて大丈夫です。
ただし、一点だけ留意点が。
有能な社員は会社に残したいのが企業人事の心情です。
会社が倒産して社員全員が辞めざるを得なくなった場合は別として、リストラ対象が特定された場合は、能力不足だからリストラ対象になったのではないか?という懐疑心を持って見ています。
だからOK例のように、これをきちんと払しょくしないといけません。
また後ろめたさを回避すべく、「私は悪くない。悪いのは会社だ」といった、自己防衛、自己防御のオンパレードになってしまうことがあります。
確かに、自分のせいではないということは証明すべきですが、これが過度になると、面接官にとっては、正直聞き苦しいだけなので、注意してください。
事例の前提となる人についての情報
39歳男性、大卒。
新卒入社した家電メーカー1社にて主に管理部門での勤務経験あり。 今回は初めての転職で同業種・同職種への応募。 |
NGな受け答え例
「経営不振から、生産管理部門の現業社員の半分をリストラすることが決まりまして。私はその対象となったために退職させられることになりました。」
「倒産という最悪な結果になったのは、ワンマン社長が周りの言うことを聞かなかったからです。
儲かっていないのに、社長が乗る社有車も超高級車で、平日はゴルフ三昧では~」
寸評:半分は会社に残るわけですから、ここは能力不足ゆえのリストラ対象社員でないことを証明しないといけません。
また前職の悪口が過ぎるのはよくありません。
OKな受け答え例
はい、業界再編成の波を受けて、昨年秋に前職も業界シェア一位の松山電器に吸収合併されることになり、松山電器の社員としてそのまま働ける社員と退職を余儀なくされる社員の2つに分かれました。
白物家電の開発技術者などは前職と変わらぬ条件受け入れてもらったそうですが、我々のような管理部門は、先方でも既に人がダブついている状況で、受け入れ条件が非常に厳しく受け入れ定員も少数に限られていて、仮に受け入れられたとしても、大幅な待遇ダウンは必至でした。
吸収合併の場合、吸収された側の社員が冷遇されてしまうのは、ある程度は致し方ないと思います。
ですがやはり、自分の頑張りが正当に評価されないのであれば、今のうちに退職し、新天地を探そうという結論に至りました。」
寸評:事実を隠すことなく堂々と述べるのは、この質問の最大の回答術です。
これに加えて、自身の行動心理や自分の信念を語ることで、能力不足だから辞めさせられたという懸念を払しょくさせるのも大切です。
まず円満退職であったならば、「はい、前職では壮大な送別会まで開いていただきました」というように、そのまま事実を伝えればいいだけです。
問題は、そうでなかった場合です。
退職時には多少のいざこざはつきものと面接官もわかっていますので、大目にみてくれるでしょう。
だからここは正直に真実を語って、虚偽やごまかしとみなされないように努めるべきです。
一方で多少どころではない場合、
たとえば、もう辞めるのだからと、ここぞとばかりに、会社に不平・不満をぶちまけて、ロクな引き継ぎもしないで退職した場合は、いくら会社側に非があったとしても、この年代がとるべき対応ではありません。
当然、その真実をありのまま伝えてしまっては、面接官も怖くて採用できませんので、オブラートに包んだ内容にした後に、反省の弁や関係修復策、今後の取り組みなどに話の比重をシフトすべきでしょう。
ここで最もやってはいけないことは、円満退社でなかった理由を、会社が悪い、職場環境が悪い、と感情的になって他に責任転嫁し、それに終始してしまうことです。
面接官も「それは大変でしたね」と共感を示すこともありますから、ついつい調子に乗って多くを語りがちです。
しかし、この年代だからこそ、幼稚な対応はNG、面接官は心の底でドン引きしていることを忘れないでください。
事例の前提となる人についての情報
44歳男性、大卒。
新卒入社した会社1社に勤務経験あり。 パワハラ的な行為を繰り返す上司と対立して退職。 今回は初めての転職で同業種・同職種への応募。 |
NGな受け答え例
「去る者は追わず的な社風の会社でしたので、私も御多分に漏れず淡々と退職しました。」
「残念ながら円満退職ではなかったです。ここだけのお話ですが、トップが細かいところまで口出しをして引っ掻き回すので、私だけでなく周りのみんなも嫌気をさしておりまして~」
寸評:回答としては間違っていませんが、これでは円満退職かどうか判断できません。
もう少し丁寧に状況を説明すべきです。
また他に責任転嫁したり、誹謗中傷に終始してしまうと聞き苦しいだけです。
OKな受け答え例
「残念ながら円満退社ではなかったです。
この歳になって敢えて退職の道を選ぶのは、リスキーなのは重々承知していましたが、それを決断しなければならないくらい、前職の職場環境は悪化しておりました。
リーマン・ショック前まではいい感じだったのですが、これを契機に急変しまして、年々酷くなる一方でした。
ここで酷さの詳細を申し上げるのは、生産的な話ではありませんし、前職の企業秘密保持の観点から差し控えさせていただきますが、私自身は潔く辞めて正解だと思っております。
退職間際にはいろいろありましたが、ここは気持ちをスパッと切り替えて、御社での業務を頑張りたいと思っています。」
寸評:円満退職でなかった場合、その要因に踏み込み過ぎると、かえって変な憶測を生む可能性があります。
ここは大人の対応として、オブラートに包んだような表現に改良した後に、自身の次では決死の覚悟で頑張る、といった宣言をする方が、事実を詳細にダイレクトに伝えるよりも得策と言えます。
第14回「中高年の面接対策14~転職・入社について~」 へ続く
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