前回は、学歴はどこまで遡って書いたらいいのか?など、履歴書を書く際に誰もが迷ってしまうことや、手書きかパソコンどちらで作成したらよいのかなどを解説しました。
今回は履歴書の具体的な書き方について、項目ごとに解説していきます。
この世代であれば、個人情報欄(一般的に履歴書の見開き左側に当たるページ)は記載に創意工夫の必要のない項目ばかりですので、枠を埋めていけばきちんと書けるはずです。
ただし、逆を言うと100%完璧に書けないと、マイナス評価につながりますので、油断は禁物。この年代が犯しやすいミスについて、項目ごとに解説していきます。
まず一番上の年月日。
ここは実際に書いた年月日を書く、提出する年月日を書く、と2つの説がありますが、採用人事に着くタイミングが数日程度でそう大きくずれてなければ、記入日でも提出日でもどちらでも構いません。
それよりも一番問題なのは、後で書く学歴欄、職歴欄、免許・資格欄との表記の違い。
この年月日は和暦で書いたのに、学歴欄などは西暦で書いてある、という表記上の不一致を採用人事は見逃しません。実際、かなりの確率でこの不一致が発生しています。
つまらないところでマイナス印象を与えないように、必ず全てどちらかに統一するようにしてください。
日系企業は和暦がよく、外資系企業は西暦と一般的に言われていますが、ここは日本ですので、迷ったら和暦で統一するようにしてください。
次に氏名欄。
自分の名前を書き損じる人はいないと思いますが、ここでは「ふりがな」に注意してください。
前述のとおり、「ふりがな」とあるとひらがなで、「フリガナ」とあるとカタカナで、読み仮名を振ります。
生年月日欄は、和暦・西暦の統一だけ意識してください。性別欄は片方を○で囲むだけです。
現住所欄は、住民票に掲載されている正式な住所表記を書くようにしてください。
たとえば住所に「大字」が付く場合は省かずに住民票どおりそのまま書くことです。
またよくあるのが、町・番地・号等の略式表記。2-13-4と略して書くのではなく、2丁目13番地4号といったように正式な表記を書くようにします。
マンション名やアパート名も略さずに、必ず住民票どおりに記載します。
また現住所の「ふりがな」も忘れずに振ること。結構記載漏れが目立つところです。
電話欄ですが、携帯電話番号欄がない形式のものは基本的には上段に固定電話、下段に携帯電話を書くのが一般的。
今は固定電話を持たない人も多いのですが、そこに生活実態があることを証明できますので、固定電話がある場合はきちんと表記してください。
<ポイント解説>
現住所欄の真下にある連絡先欄ですが、ここは(現住所以外に連絡を希望する場合のみ記入)という注釈どおり、たとえば応募時点では都内に住所を構えているが、地方にある実家に帰省して転職活動を行う場合に、実家などを記入します。
そうでない場合は、ここはメールアドレスを書くのが常套手段。今や企業との連絡手段はメールが主流なので、必ず履歴書のどこかにに記載する必要があります。
特にメールアドレス欄がない形式のものは、このスペースを使って、メールアドレスを記載してください。
なお、メールアドレスは、携帯電話のものは避けてください。
現職の勤務先のメールアドレスももちろんご法度。信頼性・信用性が高いこともあって、個人で使用しているプロバイダーメールが一番記載に適していると言えますが、一時期は信頼性・信用性の問題から記載を避けた方がよかったGmailやYahoo!メールなどのフリーメールも、認知度のアップと品質向上があり、今は記載してもOKです。
なお、ここで一番注意しなければならないことはメールアカウント名。
Acchan-love@xx.xxx.ne.jp、wakuwaku-dokidoki@xx.xxx.ne.jpといった、この年代にはふさわしくないようなメールアカウント名を書くと、明らかにマイナス印象。
また、wowqdsiewygfhvdwqkfhgew@xx.xxx.ne.jpといった、プロバイダーの初期設定のままの、暗号のようなメールアカウント名を書くと、今どきメールすら使いこなせない、とマイナス評価につながります。
また(今回の履歴書フォームは通信欄があるのでこれを利用しますが)、たとえば、現在在職中ですので、連絡はPCメールにお願いします、といった連絡方法をこちらから指定する場合、この欄を使う方法も一般的です。
最後に学歴欄。
最終学歴だけ書くタイプのものは、必ず詳細まで掲載するようにしてください。
大学卒だったら、「立志関大学」だけではなく、「立志関大学 法学部 法律学科」もしくは「立志関大学 法学部 法律学科 労働法専攻」といったところまで、詳細に書きます。
また学歴については、地方新聞社のように、大学閥よりも高校閥がある業界もあります。
このようにローカル企業への応募で、地元の小学校・中学校・高等学校を卒業したことが「売り」につながる場合は、この「最終学歴しか書かない履歴書用紙」とは違う用紙の活用もぜひ検討してください。
<ポイント解説>
ここは採用人事が最も知りたいことの一つになります。
どの履歴書フォームであっても、この職歴欄のスペースは多くを確保してありますので、うまく表現して自身のPRにつなげる必要があります。
当然、この年代になると個々によって職歴が大きく違うために、十把一絡げではなく、ケースごとに分けて考え作成する必要がありますが、共通して言える大事なことは、「適度なボリュームで自身の職歴の大要を伝えること」です。
たとえば、1社しか勤務経験がない場合に、入社と退社の2行だけの記載では、余白が目立ち過ぎますし、あまりにも提供する情報が乏し過ぎると言えます。これでは転職する意欲を感じ取ることができません。
これとは逆に、中高年が犯しがちなのが、書き過ぎてしまうということ。
業務内容の詳細をここで長々と複数行に渡って展開してしまうのが、その典型例です。
実は同じことがそっくりそのまま職務経歴書にも書いてあって、採用人事に2度同じことを読ませるという非常に非効率なケースに陥っています。
これでは、この世代に備わっているべき書類作成能力やプレゼン力が不足していると見限られてしまいます。
それではどうすればよいか?という点ですが、採用人事は職歴欄で応募者の職歴のあらましを時系列で見たい、という点をまずおさえてください。
だから、単に入社した、退社しただけではなく、その配属先や業務概要、役職名などの大まかなポイントを書くようにします。
ただし、これが度を超えると、職務経歴書で書いた方がよいレベルの職務詳細の記載になりますので、注意が必要です。
要は履歴書全体のバランスを見ながら、職務経歴書との整合性や連動性を意識して書くことが求められます。
なお、先ほど余白が目立ち過ぎる点について警鐘を鳴らしましたが、転職回数がない、もしくは少ない場合、適度なボリュームで書いても、埋まらない余白は必ず発生します。
こういった場合は、変に神経質にならないで大丈夫です、余白を怖がる必要はありません。
必要事項しか書かない場合
年 | 月 | 職歴 |
平成4 | 4 | 半田産業株式会社 入社 |
平成24 | 3 | 半田産業株式会社 退社 |
以上 |
これでは、20年も勤務していたのにもかかわらず、あまりにも情報が少な過ぎて、一体どのような業務を、どこで、どのような立場で携わってきたのか、わかりません。
書き過ぎている場合
年 | 月 | 職歴 |
平成4 | 4 | 半田産業株式会社 入社 |
事業内容:通信機器の製造・販売 資本金:1億円 | ||
従業員数:約2,000人 | ||
入社しての半年間は、新人支店研修として、新宿、池袋、 | ||
品川支店で営業補助業務に従事 | ||
平成4 | 10 | 関東支社 通信機器営業部 第一営業課に配属 |
新宿、渋谷区、目黒区を営業エリアに持つ第一営業課にて、 | ||
当時主力製品であったモデムの営業に従事 | ||
営業スタイル:新規開拓9割:既存顧客への深耕販売1割 | ||
平成7 | 4 | 関東支社 通信機器営業部 第三営業課に異動 |
埼玉県下を営業エリアに持つ第三営業課にて、主に業務用 | ||
パソコンやLAN関連製品の営業に従事 | ||
営業スタイル:新規開拓5割:既存顧客への深耕販売5割 | ||
平成9 | 4 | 支社長表彰授与 |
(前年度の目標達成率157%が評価されたため) | ||
平成10 | 4 | 営業主任に昇格 |
平成11 | 9 | 東海支社 ネットワーク本部 カスタマーセンターに異動 |
当社で販売した製品の故障受付やクレーム対応を行う部署にて | ||
1日約50本の電話対応を行う | ||
~ |
これでは職務経歴書で表現したとしても、多過ぎるレベルです。訴求ポイントも見えづらく、読み手に負担がかかる典型例です。
この世代の転職で必ず厳しくチェックされるのが、退職理由の妥当性です。
たとえば、十数年前に自らのわがままで当時の勤務先を自己都合退職したとしても、「若気の至り」で済まされることでしょう。
しかし、この直近の数年間に同じようなわがままな辞め方をしていたり、転職回数が多いのは、やはりいい印象は持たれません。
だから、ただ単に「○○株式会社 退社」と書くのではなく、先回りしてその理由に触れておくことが大切。
たとえば、「同社倒産による会社都合退職」と書いておけば、本人の力では到底及ばない不可抗力のせいで退職した、ということが明確に伝わりますので、これは明瞭に堂々と書いた方がいいことになります。
これとは逆に、人間関係が嫌になって自ら退職した場合は、「一身上の都合による退職」とサラリと触れておくレベルでとどめておきましょう。
まとめますと、人間関係の悪さや給与の安さ、休みのなさなどが退職要因となったような、本音や事実をありのまま伝えてしまうと、自分にとってマイナス評価につながる、誤解を招くといった、不利な事由はサラリと書いておきます。
その一方で、勤務していた事業所や工場の廃止・撤退で代替え勤務地が示されないような、100%会社都合によるものや、部署ごと海外に全面移転することが決定し、海外赴任ができずに自ら退社した、といった、誰もがやむを得ないと認めてもらえる事由であれば、できるだけ具体的に書いておくのが最善の方法です。
なお、この世代からよく質問されるのが、リストラ対象となって退職を余儀なくされた場合の表現方法です。
「この事実自体、マイナス評価につながるのでは?」と懸念する人が多いのですが、今や大手電機メーカーのような一部上場企業であっても何千人、何万人という単位で大量リストラしている時代です。
リストラの憂き目に遭ったという話はもはや日常茶飯事で、採用人事も応募者固有の特殊事情とは見ません。
それなので、「経営不振による人員削減策に応じたゆえの会社都合退職」というように、粛々と書いておけば大丈夫です。
情報が足りずに退職理由がわかりにくい場合
年 | 月 | 職歴 |
平成4 | 4 | 富士山商事株式会社 入社 |
~ | ||
平成11 | 4 | 富士山商事株式会社 退社 |
このように「退社」だけでは、なぜ辞めたのか、という採用人事の一番知りたいところが見えない。
誰が見てもやむを得ない場合
年 | 月 | 職歴 |
平成4 | 4 | 富士山商事株式会社 入社 |
~ | ||
平成11 | 3 | 同社倒産による会社都合退職 |
勤務先の倒産や清算だと応募者本人ではどうしようもないレベルの話なので、きちんと書いておけば、余計な疑念を持たれず、やむを得ないと認めてもらえる。
応募者自身にとって本音や事実をそのまま伝えると不利な場合
年 | 月 | 職歴 |
平成4 | 4 | 富士山商事株式会社 入社 |
~ | ||
平成11 | 3 | 一身上の都合による退職 |
自己都合退職の場合、具体的に書くとかえって墓穴を掘るケースがある。
また、それをフォローしようとして、「自らの更なるキャリアアップのため退職」といった無理やり前向きな理由にしても、見透かされること間違いなし。
このようにサラッと流すように書いておく表現方法をお勧め。
この世代がこの欄を書く際に注意する点は2つです。
一つ目は取得した免許・資格が応募先の応募職種にマッチしているかどうかです。
資格ホルダーの方がやりがちなミスですが、今まで取得したものをなりふり構わずに全て書いて、自己啓発力をPRしているつもりなのですが、これがかえってマイナス印象につながるケースがあります。
たとえば、電子部品メーカーの経理職に応募するのに、何となく若い時に自己啓発で勉強した宅建合格を書くと、「今まで不動産業界で働いたこともないようだし、この応募者はメーカーではなく不動産業界志望なのか?」と斜めに見られる可能性があります。
また同じ経理職応募の場合、税理士試験の科目合格を高らかに謳う人がいらっしゃいますが、税理士のような独立系資格の場合は、税理士になることがゴールであって、当社の経理職への就職は腰掛けであるとみなされる場合があり、記載に注意が必要になります。
(ちなみにこのような場合、著者は「税理士試験は経理業務のスキルアップのための一環であって、税理士になることがゴールはなく、私の最終ゴールは、貴社のCFO(最高財務責任者)に就き、財務体質を健全化することです。」とフォローするように勧めています。)
このように応募職種にマッチしている資格を保有していたとしても、表現を工夫しなければならないケースがあります。
次に気を付けなければならない点は、取得していないのにその取り組みを表記するケース。
ここは年代柄、「今年9月の○○資格試験の合格目指して学習中」と書いてしまうと、次の9月の試験には必ず合格するというコミットメント(成果必達)が求められることになります。
応募職種に役立つ資格・免許を保有しておらず、この欄が寂しくなるからという理由で、このように書くケースが見受けられますが、その資格取得が本当に実現可能なのか、よく見極めて書かないと非常に危険です。
仮に応募先に採用されたとしても、もしそれが取得できなかった場合、「いい歳をしているのに、節操もなくブラフをかけて、自分を大きく見せる人だった」と、その会社での人事評価に悪影響を与えること必至です。
学習中の資格はとりあえず書いておけ、と指南する転職マニュアルもあまたありますが、この年代は、達成できないことは書かないこと、大風呂敷を広げた責任はずっとついてくることを自覚しておいてください。
だから、ここは他の項目と同じく、空白を怖がってはいけません。この年代ですから、ないものはない、下手に虚勢を張って後でそこを突かれるよりはマシである、と考えを改めるようにしてください。
中高年が犯しやすいミスの事例(経理職に応募する場合)
年 | 月 | 免許・資格・専門教育 |
昭和62 | 4 | 弓道弐段 取得 ① |
平成4 | 3 | 日商簿記検定4級 取得 ② |
平成5 | 3 | 日商簿記検定3級 取得 ② |
平成12 | 4 | 財務管理アドバイザー資格 取得 ③ |
平成13 | 5 | TOEIC公開テスト スコア650点取得 ④ |
~ | ||
その他特記すべき事項 6月に実施される日商簿記検定1級合格を目指して、現在勉強中 ⑤ |
<ポイント解説>
第4回「履歴書の書き方~効果的な退職理由と志望動機~」 へ続く
転職コンサルタント(中谷充宏)講師プロフィール
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