前回まで年代別の職務経歴書の書き方について、解説しました。
今回からはケース別の職務経歴書の書き方について解説していきます。
まずは歳相応のキャリアがない人の職務経歴書の書き方について。
諸事情により歳相応のキャリアを積めていない人がいます。
たとえば、司法試験や公認会計士試験など難易度の高い資格試験に何年も浪人してチャレンジしたけれども結果が出なかった、親の介護や持病による就労不能状態が続いた、といったのがその典型例です。
夢を追った場合も、不可抗力でやむを得なかった場合も、事情はどうであれ採用人事は甘くみてくれません。
要は当社に役立つ人材かどうかをシビアに見るので、個別事情をいちいち勘案している余裕などありません。
さてこの場合、どのようにしてリカバリーするかですが、求めるキャリアが不足しているわけですから、少ない業務経験を伝えつつ、これに加えてポテンシャルをしっかりとPRするしかありません。
ただし、業務経験をあまり詳細に書いても、採用人事から見ると大した経験もないのに、PRが度を超えている、とマイナス評価につながる危険性があります。ここは過多にならないように等身大で記述しておきます。
次ページの実例で言うと、同じ経理業務への応募なので、ついつい書き過ぎてしまいがちですが、業務経験は2年なのでサラッと書く程度にとどめておきます。
そしてこのケースは、「自己PR」欄と「特記事項」欄の活用がポイントになります。
前者は乏しい職歴をカバーするために、自身のパーソナリティを売りとして、前面に出すことが重要になります。
応募職種を満たす「テクニカルスキル」は乏しいのですから、「ビジネススキル」や「ヒューマンスキル」に比重を置いてPRします。
また後者は、その事情の説明や今後の取り組みや熱意などのフォローを入れておきます。
本来備えているはずのキャリアが抜け落ちているわけですから、そこは丁寧に書いておかないと秒殺されるリスクがあります。
次の実例のように、その理由説明と現在の心境などを綴っておきます。
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基本的にアルバイトやパートでの勤務内容は、この世代にとっては「売り」にはなりません。
しかし、この期間が長い場合には省いてしまうと、中身がスカスカになってしまう危険性もあります。
要はこのアルバイト・パートの経験が応募先企業にきちんとマッチしていて、それが「売り」につながるかどうかで、書く内容量やレベルが違ってくると言うことになります。
たとえば、アパレルを扱う店舗にてアルバイト店員として勤務していた場合、その接客ノウハウやコミュニケーション力といった対人折衝能力は、どの業種、どの職種でも通用する「ビジネススキル」と言えます。
更に同じ店舗販売職に応募するのであれば、その商品知識やマーチャンダイジングスキルといった「テクニカルスキル」は、もっと強くPRすることができるでしょう。
次ページの実例はこのルールに沿って、直近の2社の正社員経験よりも、今回の求人に合っているアルバイト経験を前面にPRしています。
逆に応募先企業へのPRにつながらないような場合は、サラッと軽めに触れておき、これより短期間であったとしても、応募先企業にマッチした正社員経験などを前面に打ち出すようにします。
さて具体的な書き方ですが、職務経歴書を構成する4つの項目について、個別にこの基本方針に当てはまるかどうかをチェックして、記述内容を考えていきます。
まず「職務要約」については、「売り」になる場合はきちんとそれに触れておきます。
「職務詳細」については、「売り」になる場合は詳細レベルにまで落とし込んで書いておきます。ここの強弱が最も大事なポイントの一つです。
「貴社で活かせるスキル・経験」については、「売り」になる場合であっても、オーバーに書いてしまうと、自己顕示欲が強いと見限られる危険性がありますので、アクセルを踏み過ぎないようにしてください。
たとえば、1日5時間、週3日のアルバイト勤務で補助的な業務にしか携わっていないのに、主業務をマスターしている旨のPRは、明らかに行き過ぎ表現となります。
最後に一番重要な「自己PR」について。
アルバイト・パートの経験が応募先企業に直結する場合は、その業務の専門性や造詣を表す「テキニカルスキル」を中心に書き、そうでない場合は、ビジネス上必要不可欠な「ビジネススキル」や自身のパーソナリティに由来する「ヒューマンスキル」にシフトして書きます。
アルバイト・パートの期間が長いのは、他のライバル達と比べてキャリア上、どうしても見劣りしてしまいます。
しかし「自己PR」は自由に表現できますので、この欄は多少ボリュームが増えても構いませんから、しっかりと自分のセールスポイントを伝えるようにしてください。
<アルバイト・パート期間が長い人 応募者プロフィール例>
33歳男性。スーパーマーケットで約7年フリーターとして勤務。2社で営業を経験。
今回は中食惣菜を販売する店舗販売職への応募。 |
ここがポイント!
ここは「時系列記述法」で書いて問題ありません。
フリーター時代のことであっても、「売り」はしっかりとPRしておきます。
経験社数がアルバイトを含め3社なので、「編年式」で書きます。
アルバイト経験が今回の応募先企業に合うので、一番上に持ってくるために、「年代順形式」で書いておきます。
フリーターとして働いていた理由が明確にあるのでしたら、このように「退職理由」欄で触れておくのもよいでしょう。
PRが強くなり過ぎないように、納得感が得られるものを意識して書きます。
今回はアルバイト経験が応募先企業に直結した売りになりますので、3つのうち2つを占めておいても何ら問題ありません。
今回の応募先企業に合わせて、店舗販売の実務経験から導き出した2つのテクニカルスキル上のセールスポイントを詳細に語るのは、非常に効果的です。
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契約社員も非正規雇用ですが、前述のアルバイトやパート社員とはいささか趣が違います。
雇用の数年前までは非正規社員での勤務経験はほとんど売りにはならなったのですが、最近は企業自体がこの世代であっても、契約社員であれば意欲的に採用する姿勢があり、この世代が契約社員として働くことは珍しくなくなりました。
処遇面や業務内容、責務等は正社員と同等であるケースは今や当たり前ですし、高度な任務に当たるため、プロジェクトごとに契約して100万円を超える高額な月給をもらっている人もいらっしゃいます。
このように、その契約社員としての勤務経験が充分売りになるケースがあります。
その一方で、正社員になれないから契約社員で働いている、正社員登用制度があるから契約社員で働き始めたが、なかなか登用試験に受からない、といった色合いが透けて見えてしまうと、間違いなくネガティブ評価につながってしまいますので、表現には細心の注意が必要になります。
要はこのケースについては、応募先企業の求めるものに自身の契約社員での経験がマッチしているかどうかをしっかり判断して、書く内容を精査していく必要があります。
具体的な書き方ですが、正社員、契約社員との雇用形態の違いを意識せずに、基本どおりに粛々と書いていくことが基本になります。
ただし、契約社員での雇用であったことを履歴書にも職務経歴書にも明記しないと、発覚した際に採用人事に不審がられること間違いなしです。
それゆえに、「職務詳細」欄において、【職位】や【雇用形態】といった項目を設けて、契約社員で働いていたことをはっきり伝えておきましょう。
他の項目である「職務要約」、「貴社で活かせるスキル・経験」、「自己PR」は、この差を特別意識して書かなくても問題はありません。
最後に「特記事項」欄ですが、次ページの実例のように、契約社員で働いてきた実情説明やその働きぶり、そしてなぜ正社員で働かなかったのか(働けなかったのか)というフォローを入れておくと、より説明力が増すのでお勧めです。
<契約社員の勤務期間が長い人の応募者プロフィール例>
35歳男性。2社いずれも契約社員で営業職に従事。
今回は富裕層にレジデンスを販売する営業職(正社員)への応募。 |
ここがポイント!
ここは経験社数が2社なので雇用形態に関わらずに「時系列記述法」で書いて構いません。
営業職の「売り」はここできちんとPRしておきます。
経験社数が2社なので、オーソドックスに「編年式・逆年代順形式」で書きます。
雇用形態については、後のトラブルを回避するために、ここで堂々と書いておきましょう。
業務内容や実績については、正社員と何ら遜色がないのであれば、臆することなく、積極的にPRしてください。
ここも営業経験は充分ですので、応募先企業に活かせるようなものをそのまま書いておきます。
「社会的地位の高い顧客に対して、面会効率を上げるための電話でのセールストーク」などはジャストフィットする好例でしょう。
ここも臆することなく自身の営業に関するスキルや強み、姿勢などを深堀して書けばいいです。
くどくならない程度に契約社員での職歴をフォローしておくのは非常に効果的です。
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どの年代であっても、派遣社員での勤務経験を採用人事はあまり評価しません。
企業側から見ると、派遣社員を活用するのはあくまで一時的なもので、派遣社員には高度で責任ある業務は任せられない、と斜めに見るのが大勢を占めます。
それなので、派遣で長く働いてきたことを説明するのは、言い訳がましくなりかえってマイナス印象を持たれてしまいます。
だからここはシンプルに自身の経験やスキルを語ることに徹した方が得策です。
具体的な書き方ですが、一番のポイントは短い派遣先勤務をそのまま記述しないことです。
たとえば数カ月しか勤務しなかった派遣先ごとに勤務先情報を表を用いて詳細に書いていると、間違いなく2枚では収まらないボリュームになってしまいます。
だから、ここは複数の派遣先をまとめるような、「キャリア式」もしくは「フリースタイル式」(下記の見本参照)を推奨します。
この実例を元に個別に見ていきますと、「職務要約」は「一気通貫記述法」でコンパクトにまとめておきます。
「職務詳細」では、先に「所属歴と業務概略」で大まかな経歴を見せておいて、複数の派遣先経験で培ったスキル・経験を束ねてまとめ上げて、ここを際立たせることが最大のポイントになります。
「貴社で活かせるスキル・経験」は、定石どおり応募先に合ったものを選択しますが、派遣社員という職位上、PRが強過ぎると、アルバイト・パート社員と同じように自己顕示欲が強いと見限られるリスクが発生しますので、細心の注意が必要です。
この「柔軟性・適応能力」、「幅広い業界経験」は、複数の派遣先勤務を経験してきた、この年代ならではの非常にいいあんばいのPR表現と言えます。
最後の「自己PR」については、このように複数の勤務先で獲得してきた信頼感を前面に出すことで、経理実務能力プラスアルファの魅力を伝えることに成功しています。
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第10回「職務経歴書の書き方10~ブランクが長い人編~」 へ続く
転職コンサルタント(中谷充宏)講師プロフィール
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