それでは、具体的な事例を用いて、職務経歴書の書き方を説明していきたいと思います。まずは職種別で、営業職から説明していきましょう。
一言で営業職と言っても、裾野は非常に広く、顧客対象が法人か個人か、営業スタイルが固定客深耕型か新規開拓型か、その商品の違いなど、それぞれに特性が違いますが、全てに共通するのは「売ってナンボ」、「数字至上主義」ということ。
いくら地頭がよくて知識が豊富でも、売らないと営業社員としての価値はありません。
それなので、採用人事にこの職務経歴書を読んでもらって、応募先企業に入社したら「確実に営業数字を叩き出せる」ことをきちんと感じてもらわなければなりません。
そのためには、「営業エリア」、「扱った商品」、「顧客層」、「営業スタイル」、「ノルマ数字」、「達成実績」、「表彰歴」などを適宜バランスよく盛り込んで、今までの営業活動の経歴を記述するのは必須です。
そして凡庸的にならないよう、応募先に合わせて表現を工夫するのが最大のポイントです。
次ページの実例をみてください。
このように同業種・同職種への応募の場合、職務内容をいちいち詳細に説明しなくても、業界用語や専門用語などは応募先にきちんと通じるためシンプルに書いておき、その分、誇るべき実績を定量的な表現で盛り込むようにします。
もう一つ、現在まで3社の勤務経験ですから転職回数もそう多くなく、また直近の営業課長の経験が所長候補へのPRにつながることから、「逆年代順形式」を採用して書く のは、この世代ならではの有効な書き方と言えます。
一方で同じ営業職応募でも扱う商品が違う場合は、その商品の特性やその営業方法を細かく説明するよりも、たとえばこの人が自動車営業職に応募するのであれば、「高額商品」という共通点や「個人向け営業」という共通点を、「貴社で活かせるスキル・経験」や「自己PR」で訴求して焦点がボケないようにします。
なお、繰り返しになりますが、実績数字を表すことは最重要です。
しかし、ここでそれがチームで獲得したものなのか、自分一人で上げたものなのか、混同しないように書かないといけません。
通常は職務経歴書に書かれている実績数字は個人のものとして見ていますが、この世代でありがちなのが、チーム成績をさも自分一人の実績のように書いてしまうケース。
ちゃんとチーム単位でのものであることをわかるようにしておかないと、誤解されてしまい、大きなマイナス評価になる場合がありますので、注意してください。
<営業職 応募者プロフィール例>
45歳男性。大学卒業から約22年間、3社にて主に新築住宅営業に従事してきた。
今回は、同じく新築住宅営業職(所長候補)への応募。 |
ここがポイント!
22年と職歴が長いために、「一気通貫記述法」を用いて、コンパクトにまとめます。
配属先が転々としている場合は、「埼玉支社 熊谷営業所→所沢営業所→浦和営業所」とまとめて表記する方法も一手です。
各勤務先の転職希望理由や退職理由を入れて、先回りして説明しておくと、採用人事の懸念を事前に払しょくできます。
「個性を引き出し、モチベーションを向上させる、部下の人財育成ノウハウ」とマネジメントスキルをきちんと盛り込んでおくことで、所長候補職へのベクトルを合わせておくことができます。
新築住宅営業に役立つ「目標必達に対する強い執着心」、「傾聴技法を軸にしたコミュニケーション力」、「信頼関係構築力」と3つタイトル出しして、その詳細説明を入れることで、そのPRが確かであり、当社に入社しても、安定して確実に成果を上げてくれることを確信させてくれます。
このように職務詳細が2ページを少し超えてしまった場合は、自己PR等でボリュームを確保するなど全体のバランスを調整します。
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営業職の次は店舗販売職です。
これも営業職と同じく、自身が売ってきた販売数字を表す ことで、「販売力」を明確にPRすることができます。
ただし、勤務していた店舗の立地や規模、商品ラインナップ等、本人の努力だけではどうしようもない部分があるのも事実。
誇るべき数字があれば、それをどんどん盛り込めばいいですし、このような販売実績が乏しいのであれば、店舗を切り盛りした経験や人材育成の経験など、この世代ならばPRできることは必ずあります。
特にこの世代であれば、店長やマネージャー的立場から、売り場のレイアウトの創意工夫や売れ筋をつかむスキル、余剰在庫を出さない適量の仕入管理、セールの実施など、日常業務の中で店舗販売職に必要なノウハウは体得しているはずで、これらをちゃんと記述すべきです。
また、アルバイトや後輩社員のシフト管理や育成指導は、管理ポジションに就いていなくとも、誰もが経験するところです。
年齢的に見ると、1プレイヤーとしての販売員としてよりも、こういった「店舗マネジメント力」や「労務管理・育成経験」こそが、この世代は重視されていることを絶対に忘れないでください。
次ページの職務経歴書のように、職歴欄については、「自身が扱った商品・ブランド」、「店舗名」、「ポジション」、「業務内容」「販売実績」などを端的に書いて、採用人事に応募先企業での店舗で働くイメージを抱かせることが最も重要になります。
それを踏まえた上で、この世代に求められる「販売ノウハウ」や「店舗マネジメントスキル」、「人材育成力」については、培った経験が個々に違うために、いろいろなやり方があっていいわけですから、その自分自身の独自性やその取り組み姿勢などを、自由に表現できる「自己PR」欄を用いて語ると訴求力が高まります。
<販売職 応募者プロフィール例>
36歳男性。大学卒業後、約13年の間にファストファッションの製造・販売を手掛ける企業1社にて店舗販売業務に従事してきた。
今回は外資系老舗ブランドの製造・販売を行う企業の店舗販売職(店長候補)への応募。 |
ここがポイント!
新卒入社以来、1社に継続勤務中なので、「年代順形式」を採用して書きます。応募者が契約社員からスタートして現在のマネージャーポジションに昇進していく様子も、時系列で追うことでわかりやすくなります。
職場が変わっても、その在籍期間(ここは外資系への応募なので西暦で)とともに、「店舗名」、「ポジション」、「業務内容」「販売実績」を書くと、非常に見やすく、わかりやすくなります。
このように部下の人員数を明記しておくことで、その人材マネジメント力を推測することができますので、マネジメント経験がある場合は、必ずこれを記述するようにしてください。
今回、ファストファッション企業から老舗ブランド企業への転職ということですので、同じファッション業界でもブランドの立ち位置が正反対と言えます。そのため応募先企業では何が求められるのかを勘案して、優先順位の高いものから並べていく必要があります。
それぞれに積み重ねてきた店舗販売職のスキルや経験が異なりますから(もちろん、応募先企業でも役立つであろう範疇内のものであることは最低条件ですが)、独自性を出していい領域になります。今回は店長候補ということで、自身が積み重ねてきた「人材育成ノウハウ」を分厚めにPRするのも一手です。
なぜ今いいポジションにいるのに、今回転職する決断に至ったのか、採用人事が気に掛ける点を先回りして述べておきます。
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営業職、店舗販売職の次はコンサルタント職。
これはその専門分野によって求められるものが全然違いますが、当然のことながら、そのコンサルティングする領域の業務経験や知識が豊富にあることが必須です。
この年代の年齢を鑑みると、一般的にはその専門分野のコンサル経験があることが最優先されますが、コンサル経験がなくても、その専門分野の業務経験があれば応募できる求人もあります。
その応募分野のコンサル経験が豊富にあれば、基本的な作成方法で書くだけで充分相手にその実力を知らしめることができるでしょう。問題は未経験の場合です。
たとえば、ある人事コンサルタント職の求人によると、「事業会社で人事経験(10年以上)」を応募資格の一つに挙げていて、人事コンサル経験がなくても応募できます。
そして業務内容を見ると、「制度構築に伴うプロジェクトマネジメント」とありますので、未経験の場合は、自身の企業勤務経験の中から、就業規則や賃金規程といった各種制度設計の企画・立案や導入、運用などの経験や実績を前面に打ち出していく必要があります。
これに加えて、コンサルタント職で必須となるスキルや経験、たとえば、チームリーダーやプロジェクトマネジャーの経験があれば、そこから導き出される「マネジメントスキル」もPRできますし、「コミュニケーション力」や「論理的思考力」といった力も備えているようであれば、これもPRしておきましょう。
次のページは、直近でM&A仲介業務に従事し、今回M&Aコンサルタント職に応募するの実例です。
コンサルテーションの業務経験はありませんが、中小企業との向き合い方、新規開拓営業の経験といった、本職で役立つ具体的な経験事例をPRすることで、コンサル業務が未経験でも活躍がイメージできます。
作成のコツですが、コンサル業務経験の有無にかかわらず、求人業務に沿ったかたちでピンポイントで訴求していくことになります。
そのためには求人業務に関係のない業務や経験、実績は思い切って触れないくらいの、絞り込みが大事です。
コンサル経験が豊富で経験社数や担当プロジェクト数が多い場合には、「キャリア式」を用いるのが非常に有効ですが、コンサル未経験の場合は次ページのように、オーソドックスに「編年式」で書いても構いません。
またコンサル未経験の場合は、職務詳細等ではコンサルタントとしてやっていけるかどうかのイメージしにくくなる場合がありますので、自己PR欄をうまく活用して資質が備わっていることをPRしていきます。
<コンサルティング職 応募者プロフィール例>
38歳男性。大学卒業後の約16年の間、銀行と商工ローン会社の2社を経験。
今回はM&Aコンサルタント職への応募。 |
ここがポイント!
経験社数が少ないため、「時系列記述法」を用いて書きます。M&Aの成約実績を最後に述べておき、マッチング度を高めるやり方は効果的です
経験社数が2社で人事異動も少ないことから、無難に「編年式」を用いるのがよいでしょう。
応募者は中小企業や富裕層への融資業務がキャリアの柱ですが、これはM&A業務とリンクしますので、業務詳細を書くのはよいと言えます。
M&A業務で必須なのは、プライス以上に双方の信頼関係、これが崩れるとせっかくいいいところまで進んでいても一発で全てがご破算になってしまいます。これをきちんとわかった上で、最上位に持ってくるのは、非常にいい表現方法です。
M&A仲介事業の立ち上げから参画して2年と短期なので、実績の詳細説明に踏み込むよりも、中小企業との向き合い方、特に売り手側の心理を汲み取った取り組み姿勢は、当業務をよく理解していると見てくれる可能性が高くなります。
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転職コンサルタント(中谷充宏)講師プロフィール
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