前回は、中高年の転職の応募書類では「職務経歴書」が重要だということをお話ししました。
今回からは履歴書の書き方について解説していきます。
ビジネス経験豊かな中高年であっても、履歴書の書き方を熟知しているという人は稀でしょう。
履歴書は枠がきちんと定義されていますので、要はその項目に沿ってきちんと埋めていくだけなのですが、履歴書の書き方については、書籍やネット上の情報が氾濫していて、いろいろなやり方・考え方があるために、いったいどのように書けばいいのか?と混乱されている方も多いでしょう。
しかし、この年代は奇をてらわずに、まずもって当たり前のことをきちんと正しく書くことが基本だと認識しておいてください。
たとえば、㈱中谷商事と略字を使って書くのが果たして正しいと言えるのかどうか、また同じことを繰り返す場合に、「〃」を使用するのが的確と言えるのか等、常識を備えたこの世代なら容易に判断がつくはずです。
あとよくある質問としては、西暦か和暦どちらで書くのがいいのか、学歴欄はいつまで遡って書けばいいのか、職歴欄は入社・退社以外の情報をどこまで書けばいいのかというのがあります。
ここで履歴書の記入項目を整理すると2つに分類できます。
一つは正解が明確に存在するケース。たとえば、前述の略字を使わないというのが該当します。
もう一つは、基本的なルールが存在するも、個々によって記入方法が違うケース。
たとえば、前述の学歴欄はいつまで遡って書けばいいのかというのが該当します。
実際、学歴なので小学校卒業から全て書くのが正しい、市販の履歴書のサンプルは大抵が中学校卒業から書いてあるから中学校からだ、職務経験豊かな人は高校卒業からでいいと聞いた、最終学歴欄しかない履歴書があるくらいなので、中高年は大学卒業からでいい、と諸説さまざまあります。
この場合結論から言うと、学歴の記述はどこからでもいいというのが答えになります。
詳細は後述しますが、記載内容としては誤りではないけれども、PRとして効果的かどうか、という点に焦点が当てられることになります。
基本を押さえつつ、個々で適切に判断して自分に合った書き方をしていくことが求められるのです。
<正解が明確に存在するケースの例>
よくある質問 | 回答 |
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㈱や〃などの略字を使ってよいか? |
言わずもがなNG ビジネス常識に当てはめて考えること |
西暦と和暦 どちらで書くのがよいか? |
基本的に日系企業への応募の場合、和暦で統一 応募先の求人情報で、どちらを使っているかをチェックして、それに合わす方法もあり西暦と和暦の混在が一番やってはいけないこと。 |
<基本的なルールが存在するも、個々によって記入方法が違うケースの例>
よくある質問 | 回答 |
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学歴欄はいつまで遡って 書けばいいのか? |
この年代では最終学歴しか記載できない履歴書を活用するケースも増えており、基本的にはどこから書いても可。 ただし、転職回数や配置転換が少なく、学歴・職歴欄に空白が目立つ場合は、できるだけ遡って書いた方が見栄えが良い。 |
職歴欄は入社・退社だけ 書けばいいのか? |
入社・退社だけの記載でも誤りではないが、スペースに余裕があれば、配属先や業務概要を盛り込む方がわかりやすくなる。 ただし、履歴書にこれらを詳細に書くことで多くのスペースを確保するのは、読み辛かったり、転職回数が多いと誤解されるなど、かえってマイナス印象になることも。 |
このケースこそ、個々によって違いが出ます。まさしく書類作成能力が問われるので、本サイトの記事を読んでぜひPR度の高い履歴書を作成するようにしてください。
中高年に限らず、転職希望者にとっては、「履歴書は必ず手書きで作成しなければならないのか?」というのが、一番頭を悩ます点です。
転職関連の書籍やインターネット上の情報でも、意見が二分化しているため、決め切れない人も多いようです。
結論から言うと、直筆で作成した履歴書でなければ応募先が受け付けないという場合を除いて、今はどちらでも構いません。
ただし、「字は人を表す」と言われるように、手書きの方が応募者の人柄が見えるため、たとえ字がうまくなくても丁寧に心を込めて書いた履歴書であればプラス印象を持つという採用担当者が多いのも事実です。
どちらでもいいと書きましたが、この点だけは念頭に置いておいてください。
それでは手書きの場合の履歴書について説明していきます。
今や市販の履歴書も書店やネットショップを覗くと、いろいろな形式が販売されていますが、まず中高年が履歴書選びで絶対にやってはいけないことが、新卒用・若手向けの履歴書用紙を使ってしまうことです。
これには「得意な科目・分野」、「好きな学科」、「スポーツ・クラブ活動」といった若手向けの記入項目が入っていますので、簡単に見分けられます。
数年前に40歳を過ぎた応募者がこのフォームで「好きな学科:日本史」と書いているのを採用現場で見たことがありますが、採用担当者に秒殺されてしまいました。
いくら履歴書への評価比重が軽くなってきたとはいえ、これを選んで書いているようではダメです。
さて、それでは中高年はどれを選べばいいのか?という質問ですが、採用担当者が知りたい情報がきちんと盛り込まれているフォームのものがよいというのが回答になります。
どうしても自身の書きやすさで選んでしまいがちですが、これだけではNGなのです。
著者がこの年代に対して第一に推奨しているのが、最終学歴しか書かない履歴書用紙です。
実務経験が豊富なこの世代を採用する場合に、最終学歴以前の学歴を評価対象にすることが稀ですし、学歴を最終学歴に圧縮する分だけ自身のプロフィール欄が充実しており、「志望の動機」や「セールスポイント」といった基本的な項目に加えて、「希望勤務地」、「希望給与額」、「出社可能日」といった詳細な就業条件を記入する欄があり、採用人事が本来知りたいであろう情報がふんだんに盛り込まれているからです。
また中高年の転職の場合、必ず前職(現職)の退職理由が求められますが、このフォームには「退職理由」欄があって、先回りしてこれをフォローできる点もお勧めする理由の一つです。
もちろん、これでなければ絶対に受からないということではありません。
たとえば、学歴欄については、最終学歴だけではなくて過去を遡った方が売りになる場合がありますし、前職で高額な給与をもらっていた場合、「退職時の給与額」という欄に、そのまま書いたら、当社にとってはオーバースペック、待遇面でミスマッチとみなされる危険性もあります。
市販の履歴書は、パソコンで作るそれと違い、フォームは変えられませんので、用紙選択によって情報量や見た目の印象が大きく変わります。
応募先の採用人事が何を欲しているのかを念頭に置きながら、自身のPRを最大化できるものを選択しましょう。
なお、時間に余裕があるのであれば、数種類の履歴書を実際に書いて試してみると、その違いがよくわかります。
空欄が目立つ、もしくはぎっしりと詰まり過ぎて見辛いのは、用紙選びが自身にマッチしていないと言えます。
<市販の履歴書のサンプル例>
※左右の画像をそれぞれクリックすると、フォーマットのダウンロードが出来ます。
既述のとおり、応募先から指定がなければ、履歴書の形式はパソコンで作成したものであっても構いません。
ここでパソコン作成版の履歴書のタイプを整理すると、2つのタイプに分類されます。
一つ目は、市販の履歴書フォームがそのままパソコン版になったもので定型フォーム版の履歴書です。
各入力項目に必要事項を入力すると、自然に出来上がるタイプのもので、今はネット検索すると、無料でこの履歴書フォームを提供してくれるウェブサイトがたくさん見つかります。
著者はこの方法で作成するのを勧めています。自分に合ったものを探しダウンロードして使用するといいでしょう。
ただし、パソコンで操作できるものは、自分で簡単にいろいろと改変できてしまうくらい自由度が高いため、過度に編集し過ぎるとかえってマイナスになることがありますから、注意が必要です。
たとえば、カスタマイズし過ぎて、せっかくのフォームが崩れてしまい、罫線がずれていたり、改行の間隔が一定でなくなってしまう、書きにくい欄自体を削除していたら、採用人事が知りたい肝心な情報が抜け落ちてしまった、フォントを小さくしてたくさんの情報を盛り込もうとして、かえって見辛くなる、といった残念な事例がたくさんあります。
もう一つは、職務経歴書のように、応募者独自の履歴書フォームを作成するという、自作フォーム版の履歴書です。
著者は中高年がこれを使うのはリスクが高いと考えており、推奨はしていません。というのは、決まり事に厳格で保守的な採用人事が、通常は顔写真も貼らないといった、既存の履歴書とは全くタイプが異なるこの履歴書フォームを、素直に受け入れてくれるとは限らないからです。前述のとおり中高年の書類選考時は履歴書よりも職務経歴書に比重がありますから、あえて履歴書フォームでリスクを冒す必要はありません。
<パソコン版履歴書のサンプル例>
※画像をクリックすると、フォーマットのダウンロードが出来ます。
転職コンサルタント(中谷充宏)講師プロフィール
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