この質問は、異なる職種へ応募した際にぶつけられるものですが、若手だろうが中高年だろうが回答ポイントは基本的に同じです。
気をつけなければならないのは、社内異動が叶わななかったから御社を志望しています、といった流れは最悪だということ。
逆を言えば、ここは「社内異動ではなく、御社でその職種に就くことが最終ゴールである」という強い志望動機を語れるかどうかにかかっています。
それよりも、応募企業の職種に着目して
御社の高い品質力を武器にした海外展開、特にBRICSの一つであって、日本人移民も多い南米ブラジルで御社製品の販売からメンテナンスまでを担いたいと思っています。
御社でも新興国市場の開拓は経営課題と聞いております。
だから私も本職の立場から、御社の成長の一翼を担いたいのです」
といったように、他ではなく応募企業に焦点を置き、応募職種への志望動機につながる話を展開してください。
事例の前提となる人についての情報
39歳男性、大卒。
今まで新卒入社した1社にて勤務経験あり。 今回は2社目の転職で、同業種・異職種への応募。 |
NGな受け答え例
「会社にジョブチャレンジ制度があることはあるのですが、35歳までと年齢制限がありまして、挑戦しようにも~」
「できるだけ早くアカウント・マネジャー職に就きたいのですが、社内異動では最短でも3,4年はかかってしまいそうなので〜」
寸評:社内異動ができないので応募企業に転職する、という流れはNGです。
また、希望職種に就ければどこでもいいように聞こえる発言もいただけません。
OKな受け答え例
「今の会社にはポストチャレンジ制度というのがありますので、年齢に関係なく、社員ならば誰でも志望する職種に異動するチャンスがあります。
しかし、仮にマーケティング部へ異動できたとしても、今の我社の営業は代理店任せで、販促物の制作や広告媒体の選定など広告宣伝業務が主になり、エンドユーザーは向こうに握られてしまっています。
私が本当に取り組みたい、顧客データを有効活用したマーケティングの企画・立案業務には携わることができないのです。
だから、この制度への応募は考えませんでした。
私は、マーケティング職に就ければどこでもいい、というわけではありません。
販売チャネルを直販一本に絞りこんだ上でのマーケティング戦略で数々のヒット商品を生み出している御社の、マーケティング職に就きたいのです。
私は今の会社で、御社製品とは競合となる同種製品を扱っておりましたから、製品の特性や材質については一定の知識がありますし、約16年の代理店営業において、直接ではないにしろユーザーの嗜好性やニーズをつかんでいるつもりです。
これらの経験を活かして、是非御社で頑張りたいと思っております。」
寸評:社内異動では足りない想いを丁寧に説明した後に、「応募企業の応募職種」への志望動機につなげられています。
また経験が乏しくても、そこで役立つ知識やスキルをPRするのは効果的です。
この年代でちゃんと転職活動をしていない、というのは論外として、真剣に転職活動に取り組んでいるにもかかわらず、このような陰湿な詰問は、精神的ダメージも大きいことでしょう。
しかし、ここも凹まないで毅然とした態度で、今までの転職活動の具体的な取り組み内容と、なぜ決まらないのか、という自分なりの敗因分析の2つをきちんと伝える必要があります。
たとえば、
今は年齢的に厳しい面があり、受けられるところは全て応募する気概で臨んでおりまして、この半年で約40社応募し、そのうち役員面接まで2社進んだこともあります。
だから、ちゃんとやっていない訳ではありません」
と、置かれている状況や具体的な数字、選考突破の事実などで、サボっていないことをきちんとPRしてください。
またなぜ決まらないかという敗因分析にも重点を置いてください。
たとえば、
「私が希望している○○職は、そもそも求人が20代までの若手の募集がほとんどを占めており、40歳の私には応募のチャンスすらなかなかつかめない状況です。
また、地方ではそもそも○○職の求人件数が極端に少なく、応募すらままならないというのが実情です」
といった客観性のある敗因説明であれば、面接官も納得してくれることでしょう。
事例の前提となる人についての情報
40歳男性、大卒。
今まで新卒入社した1社にて勤務経験あり。 今回は2社目の転職で同業種・同職種への応募。 |
NGな受け答え例
「そう言われると、まだまだ転職活動に対して真剣さが足りないのかもしれません。」
「確かに今は不採用が続いておりますが、転職活動はちゃんとやっております。
これからももっと積極的に応募していき、一生懸命頑張りたいと思います。」
寸評:面接官に押し込まれて凹んでそのままではダメです。その後きちんとフォローしてください。
また、やる気に終始するのではなく、具体的な取り組み内容と自分なりの敗因分析の2つを説明してください。
OKな受け答え例
「確かに結果がついてきていませんから、そう見られても仕方ありません。
スタート時は前職の経験が活きる△△職や希望給与額に固執していたのですが、今はこだわりを捨てて、関連職種まで広げて応募しています。
特にこの歳になると、必ずといっていいほど、管理職経験を求められますが、残念ながら私にはその経験がありませんので、これも苦戦の原因です。
ただ3社ほどは非常にいいところまで進み、そのうち1社はこちらが提示した条件さえ合えば、来てください、と打診されたところもありました。
残念ながらその提示条件まで妥協できずに流れてしまいましたが。
もうこれ以上ブランク期間が空いてしまうと、更に状況が悪化するのは間違いありません、背水の陣です。
だから、せっかくの御社のこの面接のチャンスも、大事にしていきたいと思います。」
寸評:転職活動の具体的な取り組み内容と自分なりの敗因分析を語った後に、前向きな話やこれからの決意、覚悟でまとめるのは非常に効果的な方法です。
面接官は、管理職になれなかったことを追及したいわけではありません。
だからこの事実を曲げたり、「私の前職での課長代理職は、管理職ではなかったのですが、ほぼ課長と同じ役割を担っておりまして」と誤魔化したりするのは当然のごとくNGです。
また、管理職経験の有無は年代的に一番敏感な点でしょうから、他の圧迫系質問と同じく、動揺しないで「なれなかった」理由を理路整然と語る必要があります。
「元々、私は管理職志向ではないので」、「管理職にあまり魅力を感じていない」といった話は、イソップ童話の酸っぱいブドウの話と同じで、自分の都合のいい解釈を述べているだけ、言い訳がましくてマイナス評価につながります。
また、「管理職は責任が重くて自分の器ではない」と降格を願い出た公務員のケースがありましたが、これをここで語っても、事業会社なら秒殺されるのはおわかりでしょう。
「前職ではポストが空かないとなれず、また年功序列が厳しく、課長に就けるのは最短でも45歳からというルールでした」といった納得感のある理由ならともかく、自分の能力不足で出世が遅れたとしたならば、素直に反省の弁を述べた方が潔いでしょう。
そしてその後に、管理職への想いやそのポジションでやってみたいことなど、将来に向かっての前向きな話に切り替えた方が、得策と言えます。
事例の前提となる人についての情報
41歳男性、大卒。
今まで新卒入社した1社に勤務経験あり。 今回は2社目の転職で同業種・同職種(法人営業職)への応募。 |
NGな受け答え例
「組織上の管理層ではありませんが、前職ではアソシエイト職というポジションで基幹業務に従事しており、管理職と同じくらい重責を担っておりました。」
「管理職に昇進することに執着してきませんでしたし、自分の仕事に全力を尽くすだけで精いっぱいでしたので。」
寸評:実態は管理職ではないのですから、これでは誤魔化しにしか聞こえず見苦しいです。またこれでは自分の都合のいい解釈を述べているように聞こえてしまいます。
OKな受け答え例
「はい、なれかなったのは、ひとえに私の努力不足だと分析しています。
やはりサラリーマンとして企業に入社した以上、少しでも上を目指したいというのが本音だと思いますし、私も同じ想いです。
もう41歳ということもあり、他社ですが役員や部長にまで上り詰めている同級生もいますし、環境や条件が違うとはいえ、差がついたな、と痛感させられます。
ただし、私は出世を諦めて惰性で仕事をするつもりは毛頭ありません。
この転職活動もそうですが、少しでも高い地位に就き、そこから自分の裁量を発揮し、チーム全体や部下の面倒をみていきたい、という強い想いがあります。
腐らずに目の前の業務に励み、もしそういったチャンスが巡ってきたならば、通常の管理業務のみならず、これは私だからこそできることですが、課長にすらなれない中高年社員の気持ちを汲み、これらの人材を腐らさずにモチベーションを上げる手法に取り組みたいと思っています。」
寸評:事実であってもあまりなれなかった理由の説明に時間と手間がかかるのならば、潔く力不足であることを認め、将来に向けての話に切り替えた方が、面接官の心証はよくなるでしょう。
ここは若手だろうが中高年だろうが、回答ポイントは同じです。
ここで「そうですね、○○社に行きます」と回答する人はいないでしょう。
面接官は敢えて対抗会社を引き合いに出して、当社への志望が揺るぎないものなのか、を確認したいと思っています。
だから、ここは誘導尋問に引っかからずに、○○社ではなく応募企業を志望している、という強い志望理由を語らなければなりません。
応募者の目線から、○○社と応募企業との差異を分析して、応募企業の優位性や自分の志向とマッチしていることなどを語るのが、ここでの最も効果的なアピール方法になります。
たとえば
○○社はこの業界でも1,2を争う規模の安定した会社であるにもかかわらず、選考では細かいお気遣いをいただき、提示いただいた入社条件も非常に満足のいくものでした。
その一方で新規参入企業である御社は、非常に勢いがある反面、社内整備や安定感がまだまだ十分でないとのこと。
だからこそ、私が働く存在価値があると考え、若い社員達の面倒を見つつ、それこそ一からみんなと一緒に組織を作り上げていくことに私は一番惹かれています」
というように、対抗会社のことを悪く言ったり否定しないことは当然で、その上で応募企業の魅力や入社後の自分の役割などを交えて話すようにしてください。
事例の前提となる人についての情報
42歳男性、大卒。
今まで2社での勤務経験あり。 今回は3社目の転職で異業種・同職種への応募。 |
NGな受け答え例
「○○社は非常にいい会社なのですが、ちょっと労働条件面で折り合わない感じでして、こちらから要望を出しているのですが、向こうがこれを飲むかどうか、~」
「確かに○○社の方が、規模が大きいですし安定企業ですから、御社の内定をいただきましたならば、両者を徹底比較して進路を決めたいと思っています。」
寸評:○○社の方に気持ちがあり、向こうの条件次第である旨の発言はNGです。
また、後日に両者を天秤にかけるのではなく、ここで応募企業の方が優位に考えていることを語らないといけません。
OKな受け答え例
「貴重な助言ありがとうございます。
確かに○○社の方が私にマッチしている点もあろうかと思います。
しかし、私は○○社ではなく御社で働きたいからこそ、その内定をそのまま受け取らずに、今も転職活動を続けていて、この面接の場に臨んでいます。
○○社もいろいろな意味で非常にいい会社だと思っております。
しかし企業規模が社員数約5,000人、支店数約50か所と非常に大き過ぎる組織であるがゆえに、会社全体を把握するのは困難で、私が中小企業2社の勤務経験で培った仕事の進め方や経営者・社員との距離感がうまく機能しないと思っています。
その一方で、御社のような総勢約50人の社員数であれば、今までのやり方が即座にフィットすると感じました。
また御社は若い社員が多く、お目付け役がほしいとのことでしたが、私は面倒見がよくて、前職でも新人の育成係を任されておりましたので、この若手の育成手腕を発揮できると考えたことから、○○社ではなく御社を第一志望としています。」
寸評:対抗企業との差異を客観的データに基づくなどして比較分析した上で、最後は応募企業を第一志望としていることにまとめあげることが大切です。
年代を問わず、唐突にネガティブな言葉をぶつけることで、「瞬時に、冷静かつ論理的に切り返せるかどうか」を見たいというのが、この質問の意図です。
動揺したり、開き直ったり、あるいは言い訳がましく反論するのは、中高年だと他の年代よりも一層見苦しく、若手や後輩にも示しがつかない行為なので絶対にNGだと思ってください。
なお、「暗い表情だ」という指摘を肯定するのか、否定するのかについては、どちらでもかまいません。
たとえば肯定する場合ですが、
私は仕事に対してはいつも全力投球、妥協を許さない主義なので、それが表情に反映されているのかもしれません。
ただ、表情の明暗が業務のパフォーマンスに影響を及ぼすことはありませんし、年代的にヘラヘラするのもどうかと」
というように、業務に絡めるなどして持論を展開します。
逆に否定する場合は、
普段は職場の皆に気を遣い、飲み会やカラオケ大会では先頭に立って場を盛り上げる方ですが、こういった場で普段どおりの砕けた雰囲気を出すのはあまりよくないと思いまして。
だから、今日はかなり気を引締めて臨んでいるために、表情がこわばっているのでしょう」
というように、職場での普段の振る舞いなどを交えてその理由を明確に伝えてください。
事例の前提となる人についての情報
39歳男性、大卒。
今まで2社での勤務経験あり。 今回は3社目の転職で、同業種・同職種への応募。 |
NGな受け答え例
「最近は転職活動がうまくいっていないせいもあり、その影響が表情に出ているかもしれません。」
「面接本番ということで今、極度に緊張しておりまして、これが表情に出てしまっているのだと思います。」
寸評:肯定しても構いませんが、これではただ押し込まれているだけになります。
また、この年代ですから、採用面接くらいの場面で緊張をコントロールできないのは、当社社員として働くのは厳しいとみなされる可能性があります。
OKな受け答え例
「私は転職活動をするのは約10年ぶりで、こういった面接は、今回でまだ2回目ということもあり、慣れておりません。
そのため、硬さがとれずに暗く見えるのかもしれません。
また先ほどお答え申したとおり、私は真面目で慎重な性格ですので、より一層深刻な表情に写るのかもしれません。
しかし、暗い、暗くないの判別はちょっと置かせていただいて、私は職場内での人付き合いもいい方で、争いごとを嫌い、敵を作らないタイプですので、職場では誰とでも強調してやれるのが強みだと思っています。
だから、私のこの表情でとっつきにくいと言われたことは、今まで一度もありません。
暗い表情は、相手に与える印象がよくないことは間違いありません。
ですので、今後はこういった非日常シーンでも自分らしさを出せるよう努めていきたいと思います。」
寸評:精神的に動揺しないことはもちろん、暗さの要因を即座に展開できれば、プレッシャーに負けない「自己主張力」をアピールすることができます。
少し話題をそらして自分の性格上の強みを改めて出すのも有効な手段。
最後に今後の改善努力で締めると、より訴求力が高まります。
第22回「中高年の面接対策22~資格オタク・実績なし~」 へ続く
転職コンサルタント(中谷充宏)講師プロフィール
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