前回、「転職力」は、下記の公式で成り立っている旨をお伝えしました。
「転職力」 = 「応募書類作成力」 × 「面接力」
そして前回は「応募書類作成力」を向上させる方法、つまり、中高年が転職活動時に課される応募書類の作成方法、中でも中高年にとって最も重要な書類である「職務経歴書」の作成方法について、説明しました。
今回は、「転職力」を構成する、後者の「面接力」について説明します。
私は高校3年生から就活大学生といった若年層から上は40代・50代・60代くらいまでの面接練習を業としてやっていますが、実は現役バリバリのキャリア人材よりも若年層の方が面接力は格段に上です。この要因は、そもそも中高年対象の面接練習を実施しているサポート機関は少なく、中高年も本番に向けてほとんど練習しないことになります。
そして、この年代は就活生と違って面接に関する有益な情報もなかなか入手できない状況ですから、面接で落とされる敗因もよくわからないまま、何も改善しないで淡々と数だけこなしている転職希望者をよく目にします。
この世代が面接で犯す過ちとして一番多いのが、「いたずらに話が長くて、何が言いたいのか要点がつかみにくい」という点です。
業務経験、社会経験が豊富なために、いろいろなエピソードを交えたりするので話の一つ一つが冗長気味になってしまっています。また、日常のビジネスシーンでの商談や会議では「起承転結」的に順を追って流れで進めますが、この流れが染み付いているからどうしても話が長くなる構成になってしまいます。
実は、面接には面接独特のコミュニケーション術が必要になるのです。
以前私が面接指導し、意中の会社から内定を獲得した30代の方から次のメールをいただきました。
「・・・何をどこまで話したら良いか全くわからず不安だらけだった私ですが、先生にお会いし、面接にも「型」があるというのがよくわかり、余裕のある気持ちで本番に臨めました。「商談」と「面接」では求められることが違い、話の組み立ても異なってくるというのは大変勉強になりました。・・・」
この年代は情報不足もあって、こういった違いを理解していない方が大半なのです。ここで私がお勧めしたいのが、面接テクニックとしてのPREP法とYES~BUT法の2つです。
既にご存知の方も多いかと思いますが、これはプレゼンテーション手法の一つで、P(POINT=結論)→R(REASON=理由)→E(EXAMPLE=例)→P(POINT=まとめ)というように、まず結論から話すのがポイントです。
長年営業職に従事し営業トークが長けている方は、天気や時事問題などのいわゆる「つかみ」と言われる本題に入る前の話がうまいのですが、逆に面接ではこれは一切不要でかえって足かせになります。
全ての質疑応答に対して「まず結論ありき」という認識で臨んでください。
質問に対し結論から話すと、非常にクレバーで反応がいい人だという印象を与えることができますし、また自分自身も先に大事なことを伝えることができるので後々の話の展開が楽になります。繰り返しになりますが、面接では商談と違い、結論が最後の「起承転結」的な話し方は、NGだと考えておいてください。
<PREP法の図解>
この年代になると年相応のキャリア上の失敗が何かしらあるはずです。これには触れられたくないのが心情でしょうが、面接では避けて通れません。
具体的には、転職回数が多い、ブランクが長い、リストラ・解雇された、などといったキャリア上のマイナス点は、絶対に事前にリストアップして回答案を考えておくことが非常に大切です。
この年代にとっては、このネガティブ質問をうまく打ち返すことができるかが、内定の成否を分けると言っても過言ではありません。この有効な打ち返しの方法として、営業話法でよく使用されるYES~BUT法をお勧めしたいと思います。
これは、①Yes(はい、確かに~)でまず相手の指摘をきちんと受け止め、②But(しかし、ただ~)で自分の意見をきちんと主張する、という話法です。
先日38歳の生産管理業務に携わる私のクライアントから、面接本番でこのYES~BUT法を活用することで、ずっと懸案であったネガティブ質問を攻略できた、との報告がありました。
今までは
「あなたはA製品しか経験がありませんが、うちはB製品がメインです。経験・スキルがないので、当社では難しいと思いますが?」
との質問を
「そうですね。」
と答えた後沈黙してしまったそうです。このせいで不採用の連続だったとこと。しかし私の指導後は、
「確かにご指摘のとおりで私はA製品しか経験がありません。しかし、ABとも製品の生産過程や進捗管理、品質管理、納期管理、在庫管理などは共通のものと考えます。B製品特有の部分については、入社後に知識を貪欲に吸収してキャッチアップしたいと思います。」
と自信を持って答え採用人事を納得させることができ無事内定を獲得できたそうです。
このようにネガティブ質問で差し込まれた場合は、沈黙せずに必ずYES~BUT法で打ち返すようにしてください。
<YES~BUT法の具体的な活用事例>
<面接官>転職回数が多いですね。当社に入社されてもまたすぐにお辞めになるのでは?
YES
確かに若い頃は自分勝手な都合で辞めたことがありますが、
BUT
しかし今は年齢も年齢ですし分別も常識も踏まえて、御社できちんと腰を据えて働きたいと思っております。
<面接官>1年以上定職に就いていないようですが、ブランク期間が長過ぎませんか?
YES
確かに転職活動を続けておりますが、なかなかご縁がなく1年以上も無職状態が続いてしまいました。
BUT
しかしこの期間も自分の知識・スキルを磨くことに余念がなく、通信講座の受講や各種セミナー参加などを行って参りました。
<面接官>前職はリストラ対象となってお辞めになられたとのことですが、なぜ会社から必要とされなかったのでしょうか?
YES
確かに前職ではリストラ対象となってしまい、会社から戦力外を宣言されました。
BUT
しかし前職を取り巻く経営環境は大変厳しく、残っていたとしても先は見えず不安なだけでした。これを新天地で働く好機ととらえ心機一転がんばっていく所存です。
<面接官>当社の業務領域は全く経験がないですよね?
YES
確かに未経験です。
BUT
しかし私が培ってきた経験・スキルは、御社の業務領域で必ず役立つと自負しております。たとえば、・・・
このPREP法とYES~BUT法の面接テクニックは必ずマスターするようにしてください。
最後に今からでもすぐできる面接対策をお教えします。
①質問を想定、②回答を作成、③模擬面接の実施、④フィードバック、⑤時間が許す限りこれらを繰り返す、というやり方です。このようにいわゆる品質管理で用いられる「PDCAサイクル」を回して面接力のクオリティを向上させていくのです。
面接本番まで時間がない方でも面倒がらずに最低1回は絶対に実行してください。準備をして本番に臨むのと準備を全くしないで本番に臨むのとでは、雲泥の差が出ます。
次回は転職サイトを活用した、求人情報の探し方を説明します。
転職コンサルタント(中谷充宏)講師プロフィール
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