食のプロフェッショナルの国家資格の栄養士は、都道府県知事の免許を受けて栄養の指導ができる栄養士を名乗ることができます。
そんな栄養士になりたい!と考えている方に向けて気になる就職先や資格取得の方法、さらにキャリアアップの方法などを、栄養士でありナチュラルフードスタイリストとして活動している筆者がご紹介致します。
この記事の監修者:栄養士・松下和代さん
- 平成6年3月:保育士資格取得
- 平成8年10月:調理師資格取得
- 平成9年:栄養士資格取得
- 他にも食品アドバイザー、WEBクリエイターの資格を保有
プロフィール
保育士、栄養士、調理師の資格を活かして、ハーブ料理レストラン、保育所、児童養護施設、ミルク会社などで働き、過去にはAllAbout「子どものアレルギーガイド」として活動。
現在は「 ナチュラルフードスタイリスト」 として、地球環境や体に優しい植物性食品を中心としたレシピの考案や、食のライフスタイルを提案。
ヴィーガンやマクロビオティック方向けのサイト「VEGEWELL」、栄養ポータルサイト「ライフミール」、NHK出版の「趣味どきっ!10~11月号」学研出版の「かんたん10分弁当」など多数のメディアに掲載。
栄養士プラスαの資格が武器になる
栄養士の資格と合わせて取得できる他の資格もあると就職がしやすくなります。
調理師、食品アドバイザー、薬膳、野菜ソムリエなどの食に関するものからパソコン関連の資格などもあると便利です。
在学中に、余力があれば他の気になる資格を取得すると他の人と差がつけられるので自分の武器となること間違いなしです。
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栄養士の就職先
栄養士の資格を取得すると食や栄養に関するプロとしての就職が有利になります。そのため、就職先には様々なジャンルがあります。
給食委託会社
栄養士の求人で多いのが、給食を提供する施設です。近年では、各自治体がそれぞれ給食施設を設けていることが少なくなり、給食委託会社に任せているケースが増えてきました。
給食施設には、特定給食施設と呼ばれる施設があり、健康増進法で「継続的に1回100食以上または1日250食以上の食事を提供する施設」と定められていて管理栄養士や栄養士の人数を届ける必要があります。そのため給食委託会社は、栄養士のニーズも多く、働いた後のキャリアアップにも向いた就職先の一つと言えます。
レストラン・飲食店
食を提供するのに最もお客様を身近に感じられるのがレストランや飲食店ではないでしょうか。
大手のチェーン店では、現場での仕事の他にも商品開発に関わることもできるので、自分の好きなレストランや飲食店で働き、やりがいを見つけるのも大切です。
他にも、働きながら経験を積んで独立して自分のお店を開く道もあります。飲食店の開設には、栄養士以外の資格も必要となってきます。合わせて調理師免許などがあると就職にも有利になります。
社会福祉施設・老人介護施設
老人ホーム、特別養護老人ホームなどの老人福祉施設。身体障害者や知的障害者施設などの社会福祉施設では、継続的に給食を提供する必要があるため栄養士の求人が多くなっています。
施設内では、時期ごとの行事の食事やお年寄りや障害のある方に向けて流動食など作ることもあります。
このような社会福祉士施設では、福祉の仕事の一つであるため福祉職として人を助ける介護やケアに興味のある方は向いています。
児童福祉施設
栄養士の就職先として一番多いのが保育園、こども園、母子寮、乳児院、児童養護施設、などの児童福祉施設です。児童福祉施設では、食事の提供とともに子どもや保護者への食事や栄養についてのお便り制作や食育活動も豊富です。児童福祉施設は子どもの福祉に興味のある方におすすめです。
児童福祉施設は、働きやすい職場なので一度務めると継続して働く方も多く、施設によって募集人数にはムラがあります。
社会福祉施設や児童福祉施設の中には、都道府県、市区町村などの自治体が運営していることもあります。そのような場合は、自治体で行っている公務員試験に合格する必要があるので事前に調べておきましょう。
学校給食
学校給食の栄養士は、献立作成・発注業務・調理・栄養指導のほか、各家庭に配布される給食だよりの作成などの事務作業もあります。
学校で行う栄養士の中には「学校栄養職員」と「栄養教諭」の2職種があります。栄養士の資格のみでなれるのは「学校栄養職員」です。もし「栄養教諭」として働きたい場合は、免許が必要となります。「栄養教諭」は、教員の立場で生徒に食育や栄養の指導をすることができます。
病院
病院での仕事は、栄養士の場合入院患者さんへの食事の管理、調理、提供などを行います。
病院では食事が治療の一つであるため、病気の症状に合わせた栄養指導は、専門的な知識をもった管理栄養士の仕事になります。
病院での患者さんへの栄養指導を行いたい場合は、管理栄養士の資格が必要となるため、キャリアップを目指している方は実務経験をつけて国家試験への勉強対策をしっかり行っていきましょう。
公務員・行政機関・自治体
栄養士は、厚生労働省や保健センターでの求人もあります。国や都道府県、市区町村などで募集があれば、公務員試験に合格したのち採用となります。
公務員試験は、栄養に関する知識の他に学力試験や性格診断テストなどに合格する必要があります。また募集も毎年行っているわけでは無く、狭き門となっています。
食品メーカー
食を扱う各種企業で商品の開発や企画、販売促進、営業などが行われています。メーカーでの就職は、大手企業の場合は、栄養士としての募集はあまり多くありません。
人気メーカーは、4年生大学や大学院卒業者の募集を行っている所が多いので、行きたい会社がある場合は、事前にその会社が必要としている採用内容を確認しておきましょう。
またメーカーは、経験者の再就職者を募集していることがあります。働きながら栄養士プラスαの資格を取得し企業にとって有利な人材になることも大切です。
美容関連
最近では、美容部員やエステティックサロンなどで顧客への栄養相談や栄養指導を行う場所も増えてきました。
そのため、美容関連の会社では、栄養士のニーズが多くなってきています。健康的に痩せる、美肌を保つなど、自身の美容にも興味がある方は、栄養士として働きながら自分を磨いていくのも良いでしょう。
スポーツ関連
スポーツ関連では、トレーニングジムやスポーツ選手を抱える団体での栄養指導や献立作成、給食制作、特定のスポーツマンへの専属契約などの募集があります。
スポーツ関連の企業では、商品の開発や企画、販売促進、営業など様々なジャンルでの仕事があります。
スポーツ栄養学は、スポーツの内容や種類によって筋肉の使い方やつけ方なども変わってくるため、専門性の高い知識が必要になってきます。スポーツ専門の栄養士として働きたい時には、栄養や食事指導方法など気になるスポーツ選手の情報をチェックしてみてください。
薬局・ドラッグストア
栄養士の仕事では、サプリメントや薬に関わる場面も多くなります。そのため薬局や、ドラッグストアでの募集もあります。薬に携わりながら食と栄養の関連に興味のある方は就職しやすく働きがいのある現場になると思います。
漢方に関わる知識は、日本で国家資格としてありません。栄養士とともに漢方の専門家として薬膳アドバイザーなどに興味のある方は、通信教育などでも取得できます。
フリーランス
商品開発、料理のレシピ制作、フードコーディネーター、食のフリーライター、料理教室主催など、食に関するフリーランスの仕事は様々です。
ただし、フリーランスの場合は、営業、企画、運営までと一人で行うためそれなりの覚悟が必要となってきます。仕事は少ない上に、やりたい人が多い職種なので「自分にしかできないこと」をアピールできるようにキャリアを積んでいく必要があると思います。
フリーランスの場合は、確定申告を自身で行わないといけないので事前に調べておきましょう。
栄養士養成施設の卒業生の就職率と就職先
参照:全国栄養士養成施設協会『令和3年度:栄養士養成施設の卒業生の就職実態』
気になる収入は活躍次第でUP
栄養士として仕事を始めると初任給は、就職先にもよりますが、年間200万前後です。
そんな収入も働き続けて管理栄養士や管理職になれば収入は増え10年後では400万前後に。
またフリーで活躍の場合は、働き方にもよりますがTVやマスコミに登場し書籍を出版、タレントとしての活躍もある場合はさらに多くなると考えられます。
栄養士資格を取得する方法は?
栄養士の免許は、栄養士法により「厚生労働大臣の指定した栄養士の養成施設で2年以上栄養士として必要な知識及び技能を取得した者」に与えられるとされています。
この栄養士の養成施設は、各専門学校や短大・大学でそれぞれ2年・3年・4年と修行年限があります。どの学校も昼間部しかなく、夜間や通信教育では取得できません。
また栄養士の免許取得後から、修行年限と実務経験と加算された後に、管理栄養士の国家資格が受けられる権利ができます。
そのため管理栄養士を目指している方は、予め修行年限が4年の「管理栄養士養成施設」に入るか、栄養士の資格取得後に、必要な分の実務経験を行う必要があるので、各専門・短大・大学を選ぶ際、その後の就職先も考慮して学校を決めるのが良いでしょう。
より専門性の高い管理栄養士になるには・・・
栄養士でも食の仕事につくことはできますが、将来病院で患者さんへの栄養指導や大規模施設での栄養献立の作成、特別な福祉施設での給食管理などをしたいと考えている方は、働きながら実務経験と勉強を行うより、管理栄養士養成施設の入学を目指すと、より近道となります。
栄養士の実務経験とは?
管理栄養士を取得する場合には、栄養士の実務経験となる施設で働いた証明書が必要となります。実務経験となる施設は、以下の様に定められています。
- ア 寄宿舎、学校、病院等の施設であって、特定多数人に対して継続的に食事を供給するもの
- イ 食品の製造、加工、調理又は販売を業とする営業の施設
- ウ 学校教育法で規定された学校、専修学校、就学前の子どもに関する教育、幼保連携型認定こども園などの施設
- エ 栄養に関する研究施設及び保健所その他の栄養に関する事務を所掌する行政機関
- オ アからエまでに掲げる施設のほか、栄養に関する知識の普及向上その他の栄養の指導の業務が行われる施設
*参照:厚生労働省『第37回管理栄養士国家試験の実施について』
このことをふまえて、栄養士の資格を取った後の就職先を探していく事が大切になってきます。
食のエキスパート栄養士の資格取得で幅広い仕事の場
情報化社会の中で、個人の食事の方法やライフスタイルも変化し多様性を持ってきました。
それに伴って一人一人の食生活の見直しが必要な時代に入ってきたと言えます。
そのため、食のエキスパートである栄養士の就職先も色々な場面でニーズが増えていくと考えられます。
栄養士に必要な素質・適性
食を科学的に考え追求していく力
栄養士は、食に関わる仕事のため食べ物や食事に興味があることが大切です。そして栄養士は、単に「食べることが好き」だけでなく、「食が人や環境にとってどんな影響を与えるのか」を、科学的な根拠をもとに伝えていく必要があります。
そのため、単純に「美味しい」だけでなく「なぜ美味しいのか?」や「食べると体に良さそう」から「なぜ体に良いのか?」を、常に追求して調べていくクセをつけていく事が大切です。
筆者体験談:日本アレルギー学会に入って学ぶ
食のライターを始めてからは、さまざまな場面で執筆していく事が多くなりました。その際に必要なのがサーチ力です。調べる時には、WEBやTV、本で調べた情報だけでなく、食に関わる学会や研究会などに参加するのも一つの方法です。
栄養に関して気になる専門的なジャンルに興味がある場合には、それらの活動を行っている団体を調べて入会して情報交換もできます。
私の場合は、Allaboutで「子どものアレルギー」に関する記事を担当していた頃に「日本アレルギー学会」に所属してアレルギーの最新情報を入手していました。
食を通じて人に幸せを与える喜びを感じる力
栄養士の就職先の多くが、福祉施設での給食の提供になります。そのため、人と関りを持って、相手の健康のために必要な食のニーズを知る必要があります。体の事を考えて料理を作る栄養士は、人によっては提供する食事の塩分や脂を制限しなくてはいけない場面があります。
その時に、相手の気持ちに寄りそって満足できる食事を考えていく事が大切になります。栄養士は、人のために食事を考え、それを提供して喜んでもらえることを第一に考えられる力が重要です。
筆者体験談:児童養護施設での子どもとの関り
以前児童養護施設のグループホームで、住み込みで働いていた時、一人の男の子が毎日「目玉焼きを作ってくれ」とお願いしてきました。
最初は彼の満足の卵の固さがわからず「もう少し固くして」や「塩味とコショウの味付けをもう少し濃くして」など、卵の固さや塩加減を毎日一緒に話しながら調整して作っていきました。(通常施設では集団調理で同じ食事を提供しますが、ここの施設では一般家庭と同じ様に朝食は子どもの好きな食事を作る形態にしていました。)
そんなやり取りが行われて彼は、朝起きてくると毎日私に「目玉」と言ってきます。私も「はいよ」とお好みの目玉焼きを作れるようになりました。そんな日が過ぎたある日、他のスタッフが彼に「目玉焼きね。今作るから」と言いました。
すると彼は、私を指して「いやいい。あいつのが、丁度いいんだよ」と言いました。私は「待っててね。すぐ目玉焼き作るから」と伝え、心の中で『やっと彼のお母さんの味になれた』と嬉しく感じました。
施設では、いろいろな環境で育った子ども達がいました。食事は、そんな子ども達と心のつながりができます。栄養士は、人の笑顔がみえる仕事であることを嬉しく感じたエピソードです。
食に関する社会情勢を知り学ぶ力
近年、食も多様化され菜食主義の方や宗教上の理由で、また疾病などで食事に制限がある方も多くなってきました。さらに、戦争や経済格差のある世界情勢より食料不足の問題や飢饉など食に関わる問題が起きています。
また、フードロスの問題や孤食など様々な問題が取り上げられています。栄養士の仕事についた時には、こうした社会で起きている問題を他人事と思わずに、常に情報収集し「何が地球や人にとって大切か」を考えていく必要があります。
筆者体験談:アラート機能活用して色々な情報を入手
食に関わる情報がいち早く手に入る様にGoogleアラートの機能を利用しています。興味のあるコンテンツのキーワードを登録しておくと、その情報をお知らせしてくれるので便利です。
また情報は、一か所だけでなく複数の情報をとり入れ必要なことをピックアップしていくのが大切かと思います。
「この食品は、体にいい」と伝える時は、その食品メリットと合わせてデメリットも考えます。逆に「これは体に悪い」とされる加工食品なども、違った側面からみると働く方のためにメリットのある食品だったりします。
食の情報は一方向だけで見ないようにあらゆる考えを知ったうえで伝えていく必要があると感じます。
【まとめ】栄養士の仕事を続けた先に・・・
資格が複数あったので職種の変化はあるものの「食」という内容からは離れずに仕事をしてきました。
そのため、いろいろな児童福祉施設、企業、病院、フリーでの料理教室、ライターなど、保育士、栄養士、調理師の近くを使って働いてきました。その中で、30年ほど経ち、ようやく私らしいスタイルの働き方が見えてきました。
栄養士の仕事は、始めは言われるがまま同じ作業の単調な繰り返しになる仕事です。仕事となると、自分のやりたいことを貫いていくのが難しい時も、結婚や引っ越し子育てなどの環境の変化で同じ仕事を続けていけないこともあると思います。
そんな中で「食」というジャンルからぶれず、仕事を続けていった先に今の仕事があり実績できます。仕事は、継続していく事が大切ですが栄養士と言う資格がある限り「食」に関係する仕事に携わっていけると思います。
栄養士を目指している方、そして現在栄養士として働きながら転職を考えている方、やりたい仕事の形は毎日のルーチンの中で、振り返ると出来上がっていることがたくさんあります。
食の仕事に夢があるのであれば、あきらめずに今を一生懸命頑張ってください。