前回お伝えしたとおり、日本人の1%は海外で生活をしており、その数は年々増えています。そして、日本企業の海外進出は、加速的に増えています。
日本企業の海外拠点数は2006年に32,495拠点だったものが、2016年には71,820拠点(※1)に。10年で2倍以上に増えているのです。
このように次々と海外進出しているのですが、多くの中高年社員は海外で働くスキルを持っていません。そこで、 「外国で働ける人材」は引く手あまたの状態になっています。
実際、私が数年前に、大手コンサルファームの人事部の方と話をしたときに、
「うちの会社は、海外案件に対応できる人材以外は、一切採用をしていません」
と言っていました。
日本人のパスポート保有率は23.4%(※2)
そもそも、日本人の3/4以上は海外に行ったことがありません。
さらに「英語難しそう」「海外なんか危なそう」なんて人を除いていくと、あっという間に候補者は数%に絞られます。
日本の若手ビジネスパーソンへのアンケート結果でも
海外で働きたいと思わない 60.4%
国・地域によっては働きたい 27.9%
どんな国でも働きたい 11.8%
となっており、「海外で働きたいと思わない」率は、2001年の29.2%から倍以上に上昇しています。日本人は、年々海外で働きたくなくなっているのです。
これを見てどう思うかが、ポイントです。
「みんなが行きたくないと思っているなら、私も」と思うか、
「みんなが行きたくないと思っているなら、チャンス!」と思うかです。
前述の大手コンサルティングファームの平均年収は1000万円くらいです。
もちろん、仕事の内容は高度ですが、同様の仕事を日本のIT企業でするよりはるかに好待遇です。
外国仕事ができることは、好待遇の仕事を得るチャンスなのです。
さらに、日本のベテラン社員は総じて英語が苦手です。さらに、外国人と一緒に仕事をしたことがありませんし、日本食以外の食事で生きていくこともできないと思っています。
つまり、外国仕事は上にベテランが少ないために、若手社員がチャンスを掴むチャンスなのです。
こうやって「できる人が少ない」「市場から求められている」仕事は、大きなチャンスであり、令和元年の今、「海外で仕事ができる」というスキルは、このような仕事を得るために大変有効なものです。
ただ、外国に行くことだけがチャンスなわけでもありません。
住む場所が日本国内でも、「外国人と働く」チャンスはあります。
ひとつは、日本国内で「外国人を喜ばせる」仕事。
今、インバウンド観光で、多くの外国人旅行者が日本にやってきています。
彼らを喜ばせることができれば、(相対的に日本人より豊かな)彼らは、多くのお金を落としてくれます。
中国人の爆買いはおなじみですが、欧米人からしてみても日本の物価はものすごく安く、一昔前に日本人が東南アジアに行くような感覚で旅行を楽しんでいます。
築地では3000円の寿司がバカバカ売れ、新宿歌舞伎町の日本人は絶対行かないような「ロボットレストラン」は、入場料8000円でも、連日外国人観光客で満員です。
また、寿司を中心に、裕福層が日本の高級レストランで競って食事をしており、5-10万円くらいの寿司屋が1年先まで予約が取れない状態になっています。
我々とは違う感性を持った外国人観光客。彼らが喜ぶモノ・コトをみつけ、それを提供できる「外国人を喜ばせることができる人材」は非常に多くの需要があります。
日本は、外国人労働者を受け入れる方向に舵をきりました。
既に、コンビニや飲食店はそうなっていますが、これからより多くの企業が外国人のスタッフを雇うことになります。
彼らをマネジメントし、一緒に働ける人材の重要性は日に日に増していきます。
そんな、「外国人と働ける人材」も、日本国内で働くのにも重要なスキルになっています。
仕事の面でも、日本の仕事の仕方は諸外国でスタンダードになっているものとは大きく違います。
ITエンジニアリングでいうと、日本人は仕様書という設計図みたいなものをいい加減に書き、詳細は以心伝心で伝えるという業務が成り立っています。(成り立っていないから、某銀行の様にシステムトラブルが頻発する気もしますが)
これのやり方を、インド人やアメリカ人エンジニアに押しつけると、プロジェクトは破綻します。
そこで、日本人と外国人の間に立ち、日本人に対し詳細な設計書の作り方を教えたり、外国人に補足する説明を伝えたりする「ブリッジ(橋)エンジニア」という仕事がひとつの仕事となっています。
それ以外にも、生活面で、ベジタリアンフードやハラルフードが少ない日本では、食事もままならない人がたくさんいます。
外国人を多く登用する会社では、このような外国人スタッフの生活をサポートし、彼らが活躍しやすい仕事の環境を作る役割の人材を雇っています。
このように「海外で働ける」人材はもちろん、「外国人を喜ばせることができる人材」「外国人と一緒に働ける人材」は今、非常に需要があり、おそらく今後も伸びていくでしょう。
このような人材になるために必要なことは「語学」だけではありません。
では、一体なにが必要なのか?
次回、ご紹介いたします。
※1 外務省「海外進出企業実体調査」
※2 外務省「旅券統計」
※3 産業能率大学 第7回新入社員のグローバル意識調査
https://www.sanno.ac.jp/admin/research/global2017.html