様々なストレスにさらされながら疲労困憊し、悩みとストレスを多く抱えている管理職。
最近はそう漏らす管理職の方々が増えています。ただ、管理職は誰でもなれるものではなく、その経験は貴重なものなのです。
今回は、人材育成コンサルタントの増田和芳氏に『管理職を辞めようと思う前に考えておきたい7つのこと』についてお話しをお伺いました。
引用:平成30年版 厚生労働省 労働経済の分析
平成30年版の厚生労働省の労働経済に関するデータによれば、会社員全体の6割以上が管理職になりたくないと答えています。たしかに組織内の管理職の役割は、なりたくないと思われるくらいに厳しいものといえます。
管理職のなかでも、特に中間管理職である課長層の多くが辞めたいと考えているようです。管理職は、自身のチームの目標を達成する責任や部下を育成する責任を担っています。
こうした責任を果たせないと、上司からの圧力が大きくなります。その圧力に耐えられずにうつ病などを発症して休職する管理職が増えています。
管理職は、部下からの不平や不満を一身に受ける立場です。特に課長は部下と最も近い位置にあるため、様々な不平や不満を受けやすいです。その不平や不満を強引に抑え込もうとすると、最近は「パワハラだ」と訴えられるリスクもあります。
このように、上司と部下の間で板挟みになって苦しんでいるというのが、管理職の現実です。
こうした管理職の現実をみると、管理職を辞めたいと思うのは容易に想像できるでしょう。では改めて、管理職を辞めたいという理由はどのような点にあるのでしょうか?
まず、管理職自体が合わないという点です。自身の仕事だけではなく、管理職として部下の仕事をチェックする必要があります。
同じチームメンバーの育成について考えながら仕事をすることになるため、嫌になって辞めたいと思うことが考えられます。
管理職の仕事が嫌ではないのですが、悩んだときに相談できる相手がいないというのも、管理職を辞めたいと思う理由の一つです。
部下に相談するわけにもいかず、管理職としてのプライドが許さないということもあり、周囲に相談できず辞めたいと思ってしまうのです。
そして、立場(視点)が変わったことで、管理職になる前と比べて仕事がやりにくくなり嫌になったという点です。
求められる視点がより高いものとなり、仮に個人としての立場を主張しても、それがチームの立場ではふさわしくないとみなされるものもあるでしょう。
管理職としてより高い視点で考えることを上司から指導されると、余計にストレスを感じて辞めたいと思ってしまうのです。
以上のように、管理職になると、自分のことだけを考えて仕事をするわけにはいかず、それがストレスとなって辞めたいという気持ちが強くなってしまうといえます。
では、管理職を辞めたいと思ったときには、どう行動すればいいのでしょうか?役職を外れるかそれとも会社を辞めるのかをおそらく考えることになるでしょう。
管理職を辞めると会社に申し出たうえでそのまま残るのは一つの選択肢です。ただ、一度管理職になったにもかかわらず辞めるとなると、周囲の見方は厳しくなるでしょう。
また、会社からの期待に反して管理職を辞めたとなれば、会社からの評価はさらに厳しいものとなるでしょう。
他の会社に移って再び管理職になるという方法もあります。ただ、管理職を経験したからといって、必ずしも他の会社で再び管理職になれるとは限りません。
会社によって管理職に求めるものは異なるため、同じような条件で管理職になれるとはいえず、また辞めたいと思ってしまうかもしれません。
では、そもそも管理職自体が合わないのでしょうか?合うか合わないかよりも、管理職に必要な知識やスキルが不足していると考える必要があるでしょう。
自己啓発などによって不足している部分を補えば、管理職が合わないと考える必要はありません。
自分から管理職を外れる、あるいは退職するとしても、様々なリスクがあることを理解したうえで決断する必要があるでしょう。
管理職は誰でもなれるのでしょうか?残念ながら誰でもなれるものではありませんし、管理職に向いていない人もいます。
たとえば、会社全体のことを考えて意思決定ができない人は、管理職には向いていないでしょう。
また、部下の育成や部署の目標達成に責任を持てない人も、管理職には向いていないといえます。責任を持てずにすぐに辞めたいと思う人が管理職になるのは避ける必要があります。
管理職が退職をするときには注意しなければいけないことがあります。管理職は、会社にとっても取引先にとっても重要な役割を担うため、注意を払う必要があります。
管理職が退職するときは、早めに後任者を決めておく必要があります。取引先に迷惑をかけることとなり、今後の取引にも影響がでる場合があるからです。
これは社内に対しても同じです。自分にしかわからない属人的な仕事があるとトラブルになりかねません。
管理職が転職するときには、転職先に十分注意を払う必要があります。特に同業者や取引先への転職となるとトラブルが生じる可能性があります。
転職によってかえって転職先に迷惑をかけてしまい、周囲の社員とうまくいかずに再び会社を辞めたいと思ってしまうかもしれません。
管理職は、会社のなかで担う役割を考えたときに「自分が辞めればそれでいい」というわけにはいかないということを、自覚するべきです。
管理職の現状をみると、辞めたいと思う割合が多いのも無理はありません。しかし、管理職になれる社員は限られており、管理職になって得た経験は貴重なものであるということも理解する必要があります。
管理職の仕事は大変なので、辞めたいと思うこともあるでしょう。
ただ、管理職でなければできないような厳しい経験や修羅場をくぐるような経験によって、管理職にふさわしい高い能力やスキルを身につけられるといえます。
具体的には特に下記の2点のスキルが得られます。
管理職の仕事は、大変な状況に直面しているときにはどうしてもネガティブに考え、辞めたい気持ちになります。
ただ、管理職として積み重ねた経験やスキルは誰でもえられるものではなく、独自の強みとなります。
管理職経験者が転職をする場合、その経験は転職市場で高く評価されるケースが多いです。
求人内容によっては、管理職として積み重ねた具体的な経験やスキルを高く評価され、選考時に有利になることもあります。
管理職としての経験やスキルを具体的に整理し、アピールできるポイントをまとめておきましょう。
管理職は会社の中で重要な役割を担うため、その重責から辞めたい気持ちになることもあるでしょう。
しかし、管理職の経験やそれによって得たスキルは、転職時には自信をもってアピールできるものとなりえます。
管理職としての経験をうまく活かすことを考えて次の行動を決断するようにしましょう。