どんな仕事に就いている人でも、一度は「辞めたい」と思ったことがあるはずです。
けれど、時には大きなやりがいを感じ、続けていてよかったと思うこともあるでしょう。
「これがあるからこの仕事は辞められない!」
そんな瞬間をまとめました。
今回は、歯科衛生士編です。
お話をうかがったのは、SNS総フォロワー数10万人以上(※)を誇る歯科衛生士の緒方真理子さんです。※2024年4月時点
歯科衛生士の緒方真理子です。よろしくお願いします。
それでは早速、緒方さんの実体験をうかがっていきます。歯科衛生士としてのやりがいを感じたのはどんな瞬間でしたか?
歯科衛生士にはやりがいを感じる瞬間が沢山ありますが、中でも印象に残っているエピソードをお伝えします^^
(イラスト:橋田ひなこさん)
別の医院で痛みのある治療を受けた経験から、歯科恐怖症になってしまった患者さんが来院されました。
患者さんの恐怖心はかなり高く、体が固まり、口を開けるだけでも時間がかかってしまうほど。
そこで私は、まずは信頼関係を築き、患者さんにリラックスしてもらうことを目標にしました。
患者さんの悩みや不安を聞くだけでなく、歯科には関係ない話もたくさんしました。
また、治療中は患者さんが安心できるよう、こまめに声をかけることをを心がけました。
すると、数回の通院後に患者さんから「あなたのおかげで通えるようになりました」と言ってくださいました。
その言葉をいただいたとき、患者さんとの心の壁を乗り越えることができた達成感とやりがいを強く感じました。
信頼関係の構築が結果的に口腔改善に繋がっていると思うと、やりがいと責任感を感じます。
(イラスト:橋田ひなこさん)
長い間歯周病に悩まされており、別の歯科医院ではあまり改善が見られらなかった患者さんが来院されました。
私は、歯周病治療に特化した医院で指導を受け、歯周病に対する技術や知識を習得していました。
実際に学んだ技術や知識を用いて歯周病治療を続けたところ、数ヶ月後には歯周ポケットが明らかに改善されました。
患者さん自身も「こんなに口腔内が健康になったのは初めて」と大変喜ばれました。
私にとってこの経験は歯科衛生士としての自信にも繋がり、さらなる知識と技術の向上を目指すきっかけになりました。
10年近く前のことですが、患者さんの名前もいまだに覚えています。
(イラスト:橋田ひなこさん)
歯周病の治療は自宅でのケアも意識的に行ってもらわないといけないので、患者さんにとってはかなりハードルの高い治療です。
患者さんの生活背景を無視して正しいことを伝えるだけでは、なかなか改善まで辿りつけません。
そのため、患者さんに寄り添いながら、歯磨き指導や生活習慣指導などを行い、二人三脚での歯周治療を心掛けました。
その結果、数カ月後には歯周ポケットの深さが減少し、歯肉の状態も改善しました。
患者さんと一緒になって口腔内の改善を喜んだ時、誰かの人生をより良いものにできたことを実感できました。
(イラスト:橋田ひなこさん)
「あなたがアシストをしてくれると、こちらの行動や考えを先読みして動いてくれるから、治療がとてもスムーズに進み、非常にやりやすい」
これは、ある日ドクターから言われた言葉です。
ドクターから直接感謝の言葉をもらえたことで、日々の努力や気配りが無駄じゃなかったのだと思えました。
そして、ドクターとの信頼関係が築けていることを実感できました。
自分の役割がチーム内でしっかり果たされていることに、仕事に対する満足感を感じた忘れられない瞬間です。
今後の仕事へのモチベーションにもなりました。
ここからは、歯科衛生士の主な仕事内容について紹介していきます。
歯科衛生士のおもな仕事内容は、以下の3つに分けられます。
おもな仕事内容3つ
それぞれ具体的に見ていきましょう。
歯科衛生士のおもな仕事のひとつとして、歯や口の中の疾患を予防する処置を行うことがあります。
患者さんの虫歯や歯周病を予防して、歯や口の中を健康に保ちます。
高齢になってもしっかり自分で食事ができることは、健康寿命という観点からも大切なことです。
※参考:歯科衛生士法2条1項1号,2号
歯科医師を中心とした歯科診療において、歯科医師の指示のもと歯科診療の補助を行うことも歯科衛生士の大切な仕事です。
歯や歯茎の治療・手術をする場合には歯科医師だけでは手が足りません。
歯科医師が治療などを円滑に行えるようサポートすることが歯科衛生士の仕事です。
※参考:歯科衛生士法2条1項1号,2号
日々の歯のケアなどについての歯科保健指導も、歯科衛生士のおもな仕事のひとつ。
定期的に行う予防処置だけでは、虫歯や歯周病対策に限界があります。
このような正しい歯のケアや生活習慣を、患者さん自身が継続できるよう指導することも大切な業務です。
※参考:歯科衛生士法2条3項
素敵なエピソードありがとうございました。
歯科衛生士の仕事の中で、「一般的に知られていないけど、こんなこともやっています」というものはありますか?
口腔がんのチェックですかね。
歯科医師は治療がメインなので、局所的な部分に注目します。
歯科衛生士は検診などで定期的に口腔内を見る機会が多いので、早期発見に繋がるよう常にチェックを心がけています。
なるほど。
患者さんの変化に気付きやすい歯科衛生士さんならではの役割なのですね。
はい。
前回と比較して違和感を感じた際には、すぐにドクターに報告するようにしています。
歯科医師にとっても患者さんにとっても、歯科衛生士さんのサポートに支えられているんですね。
そうだと嬉しいです。
口腔がんの予防には正しい歯磨きや生活習慣が大切ですので、いつでもご相談ください。
歯科衛生士のお仕事について、基本情報を確認しましょう。
以下でそれぞれについて説明します。
厚生労働省の統計調査によると、歯科衛生士の平均年収は約382.5万円※です。
※企業規模10人以上
同年の女性の平均給与が313.7万円であることからすると、382.5万円という額は高収入といえるでしょう。
※年収の計算方法:月給282,700円×12ヶ月分+賞与など432,300円=3,824,700円
参照:厚生労働省『令和4年賃金構造基本統計調査【e-Start 「職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)」】』
歯科衛生士の就職先を一覧で見てみましょう。
就職先 | 割合(%) |
---|---|
診療所 | 90.1 |
病院 | 5.1 |
歯科衛生士学校または養成所 | 1.2 |
介護保険施設等 | 0.9 |
保健所 | 0.5 |
歯科衛生士学校または養成所 | 1.2 |
都道府県 | 0.1 |
市区町村 | 1.4 |
事業所 | 0.2 |
その他 | 0.5 |
※「介護保険施設等」とは、「介護老人保健施設」「介護医療院」「指定介護老人福祉施設」「居宅介護支援事業所」等をいう。
参照:厚生労働省『令和4年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況』
一覧表からは、歯科衛生士の90%以上は「診療所」、つまり個別の歯科医院に勤めていることがわかりますね。
診療所がある地域に住んでいる方が患者になることが多いため、長いお付き合いになることもしばしば。
コミュニケーションを取りながら、かかりつけ医院として歯科疾患の予防をサポートします。
歯科衛生士になるには、まず歯科衛生士養成学校で専門カリキュラムを履修します。
※文部科学大臣指定の歯科衛生士学校、都道府県知事指定の歯科衛生士養成所(専門学校・短期大学・大学)など
その後受験資格を得て、毎年3月初旬に実施される国家試験に合格する必要があります。
合格後は指定機関に歯科衛生士名簿への登録申請を行い、免許証が交付されたら実際に働くことができる流れです。
今回は、仕事のやりがいシリーズVol.2「歯科衛生士編」をお届けしました。
働いていると楽しいことばかりではなく、辛い瞬間は誰しもきっとあるはず。
でも、こういったやりがいを日々のお仕事の中で感じたとき
「やっぱり自分はこの仕事が好きなんだな」
「辞めたかったけど、もう少し頑張ってみようかな」
そう思えるのではないでしょうか。
次回もお楽しみに!
Vol.1:私が「理学療法士」をやめられない理由
Vol.2:私が「歯科衛生士」をやめられない理由