ワーママが「今の仕事を辞めて、転職したい」と考える理由には、大きく2つの傾向があるようです。
今回は、働きやすさと働きがいをともに手に入れて、あなたらしい「両立ライフ」を過ごすために、ワーママの転職が失敗する共通点と成功する秘訣について、解説します。
ワーママなら一度は、いまの職場で働き続けることにつらさや限界を感じ、「転職したほうがいいかも」と思った経験があるのではないでしょうか。
ワーママの毎日は、時間との戦いです。ワークライフバランスへの悩みは、子どもが幾つになっても尽きることがないですよね。
限られた時間を有効に使おうと奔走し、ワークライフバランスの実現のため、心身をすり減らして転職を検討するワーママはとても多いです。
また、ワーママを取り巻く環境は、モチベーションが下がる要素が多いことも事実です。
仕事へのモチベーションが上がらないまま、大切なプライベートを犠牲にしてまで続けている。
この罪悪感やジレンマが積み重なって、また長期的にみてキャリアアップを図れる職場環境を求めて、転職の決意を固めるワーママさんはとても多いように思います。
家庭や職場にサポーターがいない、ロールモデルがいない、ワーママ仲間がいないなど、誰からも理解・応援されていないという孤独感から、転職への期待が高まるケースもありますが、これはちょっぴり要注意です。
つらい心の内を誰にも話せないままでは、現状の不満や憤りを払拭することだけに目が向いた、近視眼的な転職に陥りがちです。
そうすると、早く転職したいと焦ってしまって、結果として転職に失敗してしまうリスクも高いのです。
できれば信頼できる友人や家族、キャリアコンサルタントなど、様々な関わりの人に悩みを打ち明けて、まずはいまのご自身の状況を客観視してみることをおすすめします。
ワーママ転職で失敗してしまう人の共通点は、「転職への焦り」です。「もうこんな職場は嫌だ」とか、「◯◯までに転職先を決めなければ」など、転職を焦ってしまう理由は様々ですが、焦りは百害あって一利なし。
転職先を評価するための情報が不足し、「今の職場よりも働きやすければいい」「他にもワーママが働いている職場なら大丈夫だろう」と、転職先の候補選択や見極めが甘くなってしまいます。
せっかく転職するのだから、ご自身の強みを生かして組織や社会に貢献でき、年単位で長く勤められる会社に入社していただきたいです。
転職を検討する際は、決して焦らず、ご自身にとっての働きがいと働きやすさを実現できる職場を見つけられるよう努力しましょう。
転職を焦ってしまう背景には、無意識のバイアス(アンコンシャスバイアス)が潜んでいるケースもあります。
例えば、子どもが3歳までは母親が育てるべきという3歳児神話にプレッシャーを感じて、「子どもより仕事を優先させるなんてダメだな」などとご自身を責めてしまう場合などです。
また、職場の上司や家族が無意識のバイアスを強く持っている場合、「私の頑張りが足りない」と自己肯定感が低下してしまうこともあるようです。
「女性だから~すべき」「母親だから~しなければ」という性別役割分担意識を手放すことで、職場環境を急いで変えなくても、ワークライフバランスへの悩みが解消されたり、中長期的にキャリアを捉える冷静さを取り戻すきっかけになるでしょう。
ワーママ転職を成功させるための第一歩は、周囲から求められる役割や自分自身の思い込みから少し離れて、「自分はどうなりたいのか」正直な気持ちを大切にすることではないでしょうか。
ワーママが転職成功するための秘訣は、「働きがいと働きやすさ」両方の実現を目指すことです。
働きがいとは、ご自身の強みを生かして仕事をする「やりがい」を感じられ、納得できる報酬を得られること。働きやすさとは、ワークとライフのバランスをご自身が心地よい状態に保てることです。
働きがいと働きやすさの両方を望むことは、決して贅沢なことではありません。
逆に、どちらかに不満がある“片手落ち”の状態では、転職できたとしても生き生きと働いたり、困難に負けず成果を出し続けることは難しいでしょう。
ワーママの転職活動では、圧倒的に自分自身を理解して、他者に分かりやすく説明できるよう言語化することが重要です。今回は7つ、そのチェックポイントを紹介します。
ワーママの転職で必ず問われるのが、「時短かフルタイムか」の選択です。いずれかに絞る前に、「ありたい姿を実現するために、どのように時間を使いたいか」を考えてみましょう。
職業人として、母親として、妻としてなど、さまざまな役割を担っている、その集合体があなたなのです。どの役割に、何時間ずつ必要かを、具体的に考えてみましょう。
そのうえで、時短を選ぶなら働く時間を何時間以内に抑えたいか、家族の協力を何時間得られればフルタイムで働けるかなど、様々なパターンをイメージしてみるのです。
家事代行サービスや子どもの送迎などをお願いできるシッターサービスに頼るのも一手ですね。
ちなみに、柔軟な働き方ができる会社を選び、フルタイムでワークライフバランスを実現する方法もあります。
例えば7時~16時の時差出勤でフルタイム勤務する(朝は義母や夫が育児担当)など、働き方を工夫しているワーママさんも実際にいらっしゃいます。
「ワーママ=時短」という固定概念も、変わりつつあるのかもしれませんね。
「自身の年収が実力より低い」と感じるワーママさんは多いようですが、dodaが発表した「女性の平均年収ランキング 最新版」(調査対象は男女正社員)では、女性の平均年収と全体の平均年収の差は、年齢が上がるにつれて大きくなることが明らかになりました。
同調査によると両者の差は、30代で67万円、40代で106万円、50代で194万円で、「女性は出産や育児によってキャリアが分断され、管理職になる人が少なく昇給の機会に恵まれない」ことを指摘しています。
また、「賃金構造基本統計調査」(厚生労働省)によると、業種や企業規模によって年収相場は異なりますが、いずれのセグメントでも女性の方が男性より年収が低い傾向があります。
また、働きやすさを優先して、非正規(契約社員やパート・アルバイト)として働く女性も少なくありませんが、一般的に非正規は正規と比べて年収は低くなりがちです。
こうした格差の是非については、別の議論が必要ですが、転職で希望年収を検討する際は、夫や同僚と比べるなど、年収で自分の市場価値を評価するのをやめて、「いくら必要か」という自分軸で考えることが重要です。
また、年収を時給換算して目標額を設定する方法は、具体的かつ他者との比較に陥りにくいのでおすすめです。
働きがいと働きやすさの実現を目指すにあたり、原点となるのは「働く理由」です。
転職を検討する際は、求人案件を見ながらでも構いませんので、なりたい姿、実現したい夢など、「何のために働きたいのか」を明確にしましょう。
キャリアとは「轍(わだち)」という意味で、歩んできた道そのものを指します。
そもそも、他人と比べて優劣を比べるものではありませんし、アップ・ダウンするものでもありません。キャリア=収入でも地位でもないのです。
「働き続けることを通じて、あなた自身がなりたい姿」を、改めて見つめてみましょう。
子どもを授かり役割が増えたことで、見失ったり変わったりしているかもしれないので、「働く理由」がすぐには見つからないというワーママさんもいらっしゃるでしょう。
もちろん「働く理由はお金」でもOKですよ。
ただ、「誰の何に役立つことで、あなたが幸せな気持ちで働けるのか」という、あなたという木の幹になる部分は、ぜひ大切にしてほしいなと思います。
転職先での就労条件を交渉・契約する前に、あなたが働く上で譲れない条件をMUST / WANTで整理し、その理由を明確にしましょう。
例えば、年収350万円以上はMUSTだけど、副業OKで残業なしなら300万円も許容範囲だとか、本当はできるだけ在宅勤務を希望したいが、他の条件が満たされれば最低週1回でもOKだ、などですね。
ちなみに、私は過去に子連れ転職した際、「週4日勤務OKなら、前職と同じ年収でもOK」と雇用契約を結ぶ前(最終面接時)に交渉して、年収を下げることなく転職前よりも働きやすくなって副業も可能になったという経験があります。
転職の理由が、「副業時間の確保」だったので、正直に話し合いました。
転職で実現したいことと、それがあなたのキャリアにどうプラスか、ひいてはあなたを雇用する会社にとってどのようなメリットがあるかを明確に説明できれば、交渉もしやすくなるでしょう。
ワーママの転職では、働く時間に制約がある場合がほとんどです。
強みや提供できる価値は、しっかりとPRする必要があります。強みといわれると、「そんなにすごいスキルはない」と尻込みしてしまうかもしれませんが、(業界でも著名な)すごい人と比べて自分を卑下する必要はないのです。
あなたの「好き」と「得意」が交差することを探してみてください。あなたらしい提供価値が、きっと見つかるはずです。
また、母となり、生産性が格段に上がったというワーママさんも多いはず。
「1つの大きな問題を各タスクに細分化して優先順位をつけて取り組める」「常に組織運営の最適化を考えて、改善策の提案や行動ができる」など、どんな組織や職種でも役立つポータブルスキル(持ち運びできるスキル)も言語化しておきましょう。
また、専門スキルについては、どれくらいの成果を何時間でアウトプットできるか、生産性をご自身で把握しておくことで、就業時間の交渉もしやすくなるでしょう。
転職で「焦り」は禁物ですが、冷静さを保つためには、情報収集チャネルを複数持つことをおすすめします。
学生時代からの気のおけない友人や先輩、保育園や学校のママ友、前職の同僚や上司などの知り合いはもちろん、コミュニティやオンラインサロンに所属したり、複数の人材紹介エージェントから話を聞くなど、さまざまなチャネルから多様な情報を収集することで、働く上で譲れないMUST条件と、ある程度は譲歩できるWANT条件の、折り合い点を探る助けになり、焦らないで転職活動に臨めるはずです。
そして最後に、「どうなりたいのか」「どんな私になりたいのか」ご自身の正直な気持ちを大切にしていただきたいです。
私も子育て中のワーママなのですが、ライター兼キャリアコンサルタントとしていろんな方とお話するなかで、「大人はいつも仕事で疲れているから、大人になって働くことに希望が持てない、と話す子どもは多いです」と聞いたときにはとてもショックでした。
子どもたちには、豊かなキャリアを歩んでもらいたいですよね。
そのためには、たくさん勉強も頑張ってもらいたいし、いろんな人と出会っていっぱい成長してほしいけれど、押し付けや誘導ではなく、子ども自身が自らのキャリアを前向きに捉えるためには、身近な大人が見本を見せることが不可欠だと思います。
子どもたちにとって一番身近な大人であるワーママだからこそ、「自分はどうなりたいのか」正直な気持ちを大切にして、働くことや自己成長を楽しみ、キャリアをポジティブに捉える姿を子どもたちに見せてあげられるよう、ぜひ前向きな転職を検討していきましょう。
ワーママが転職しやすい職種についても、少しだけご説明させてください。もちろん、これまで培った経験やスキルを生かせる転職をすることが大前提ですので、ここでは3職種のみ例示したいと思います。
目標が明確で成果が分かりやすい仕事は、自分の裁量で柔軟に働きやすい面があります。目標達成できないと強いプレッシャーを感じがちですが、働く場所にとらわれない場合が多く、働きがいと働きやすさを実現しやすい職種といえるでしょう。
働く場所の制約は受けやすいものの、特に法人向けのシステムトラブル対応など、チームで情報を共有しながら稼働している場合は、子どもの体調不良など不測の事態にもフォローし合いやすいというメリットがあります。
整体師、スポーツトレーナー、ヨガインストラクター、アロマセラピストなど美容・健康関連は、未経験から学んで就職する人や、個人で独立して活動する人も多い職業です。
自分自身や家族の健康管理に役立つ点も人気のようです。
このほか、外資系やスタートアップは、職種に関わらず多様な働き方を認め成果主義を導入している企業も多いので、ワーママが働きやすさと働きがいの実現を目指しやすいといえるでしょう。
働き方についての企業文化は、トップ(社長)の考え方が大きく影響するので、採用面接では「自分を選んでもらう」だけではなく「企業を見極めて評価する」スタンスも忘れないようにしましょう。
最後に、私たちワーママが、肝に命じておくべきことを1つだけお伝えします。
それは、仕事と育児の「両立ライフ」は、足掛け20年に渡るマラソンだということ。子どもが1歳成長すれば、両立における悩みも変わってきますし、働く上で譲れない条件も変化していくでしょう。
ご自身のキャリア実現のために、多少は無理をしてでも残業や学びを頑張るべき時期もあるなかで、子どもや家族の変化を敏感に察知し、そして柔軟に対応しながら、このマラソンを走りぬくためには、全力疾走しすぎないことも大事なのです。
そのためには、ロールモデルを探したり、誰かと自分を比べる必要はありません。
子育ても、家族のあり方も、ワーママ転職のあり方も、十人十色なのです。子どもが巣立って行ったとき、たくさんの輝かしい思い出が残っているように、あなたが歩んできたキャリアの延長線上に、転職というライフイベントがあるように、あなたらしい「両立ライフ」を切り拓いていきましょう。