この質問に限らず圧迫系の質問は、絶対に感情的にならずに、そのまま受け取らないで、理路整然と打ち返すことが必須になります。
さてここは、若い社員とうまくやっていけることをきちんと証明しなければなりません。
確かにジェネレーションギャップがあれば、やりにくい部分もあるでしょうが、
たとえば
といった、今までの若手社員と一緒に仕事をした経験やエピソードなどを交えて、問題ないことをPRしてください。
またこの年代ですから、若手社員と一緒になって楽しくやる、というよりも、若手社員の模範となり、若手社員を育成指導していく役割が求められますので、その点にも触れていくとよいでしょう。
たとえば
といった感じです。
なお、ここは若手社員が限定列挙のかたちで出ていますが、たとえば異性が多い職場というのも想定されます。
質問の狙いは同じで、どんな人に囲まれていても、柔軟にやっていけるという環境適応力があることを証明してほしいのです。
事例の前提となる人についての情報
40歳男性、大卒。
今まで新卒入社した1社に勤務経験あり。 今回は2社目の転職で同業種・同職種への応募。 |
NGな受け答え例
「正直、若い子は何を考えているか、わからないところがあり苦手ですが、何とか頑張っていきたいと思います。」
「若い子達とワイワイ楽しくやるのは好きなので、大丈夫です。」
寸評:苦手なのはわかりますが、これをどう克服するか、に触れておかないといけません。
また一緒にじゃれるだけではいけません。
OKな受け答え例
「確かにやりづらい面はあろうかと思います。
10も20も年が離れていると、やはり考え方や価値観も違って当然ですから。
しかし、ここは仕事上の話ですから、どのような環境に置かれてもきちんと自分の仕事を遂行するのがプロであり、若い子であろうと女性だろうと、ちょっと合わないからやりにくい、では前に進まないことを熟知しています。
前職でも我々と違ってマイペースな若手社員達と一緒に仕事をした経験がありますが、接していくうちに彼らは彼らなりの仕事への向き合い方があることを知りました。
だから価値観を一方的に押し付けることなく、良好なコミュニケーションをとり、彼らの意向も踏まえながら、彼らを一流の職業人に育て上げていくというのも、私のようなキャリア人の使命と思っています。
ぜひ御社でもその役割を積極的に担っていきたいと思います。」
寸評:面接官の指摘を一旦受け止めた後に、きちんと持論を展開して反駁していくことは、圧迫系の質問では大事なことです。
ここは「やれる、大丈夫」の一辺倒ではなく、育成という付加価値をPRすることで、より入社後の期待度が高まります。
ここは「やっていける」と回答しなければならないのは、言うまでもありません。
そして多くの人がここは「はい、やっていけます!」と軽く答えますが、それだけでは回答として不満足です。
その後に、具体的なエピソードや事例を用いて、面接官を納得させる証明をしなければなりません。
既に同じような経験があればそれを後ろ盾にして、やっていけることを証明すればよいでしょう。
たとえば
といった感じです。
その一方で、未体験の場合。
経験という強い証拠を使えないのですが、ここは前職の他の社員の事例や他企業の事例、社会全般の話などに触れて、自身のやっていくという強い決意、覚悟を語るのがよいことになります。
たとえば
だから、上司の年齢で、自分の業務パフォーマンスが変わることはあってはならないし、そうしないとここで確約いたします」
といった感じです。
いずれにせよ、面接官に不審がられるような回答はよくありません。
堂々と自信を持って語るようにしてください。
事例の前提となる人についての情報
43歳男性、大卒。
現在まで新卒入社した1社にて勤務経験あり。 今回は2社目の転職で同業種・同職種への応募。 |
NGな受け答え例
「その方との相性もあるでしょうが、できるかぎりうまくやっていくように努めたいと思っています。」
「こちらもキャリアを重ねてきたプライドもありますので、年下の上司に負けないくらい頑張っていきたいと思っています。」
寸評:不安感が残る回答はよろしくありません。
また、対抗心を燃やすような発言は、ここの回答の主旨に合っていません。
OKな受け答え例
「はい、そのような状況下でもちゃんとやっていきます。
たまたま私はまだ年下の上司に仕えたことはありませんが、前職でも早い人は35歳くらいで部長に昇進していましたし、私の同期社員も10歳若い課長の下で働いていました。
今や年齢の差はもちろんのこと、性別や国籍が違っても、能力があれば上司にいておかしくない、というか、これが普通のことなのだと思います。
もはやビジネスの世界では私より歳が若い云々というのは、旧態依然の考え方でしょう。
上司が誰であろうと、きちんとコミュニケーションを図って指揮命令を受け、自分の仕事にまい進すること、それに尽きると思います。」
寸評:未経験の場合は、いかに事例を盛り込めるかがポイントです。
前職の同期社員の話や性別や国籍の話などを引き合いに出して、最後は仕事への取り組み姿勢でまとめる、といった構成であれば、模範的な回答に仕上がります。
この年代ゆえに自分は特に意識していなくても転職回数が増えてしまった、という人も多いでしょう。
たまに短期間の就業を経歴から消し去るといった人もいらっしゃいますが、
これは経歴詐称となりますので、絶対にやめておいてください。
転職回数が多い事実は変えようがありません、誤魔化そうとすればするほど、面接官の不信感が募るだけです。
だからここは、転職回数の多さの要因とそれに対する反省の弁、そして次は絶対に辞めないという強い覚悟の3つを盛り込むことが必須です。
たとえば
というように、転職回数の多さの要因を分析して語ります。
そして
と真摯な反省の弁を述べます。
最後に
と強い覚悟を語ります。
ここでの最大の注意点として、転職回数の多さについて、中高年が言い訳がましく長々と弁明するのは一番みっともないことですので、ぜひ差し控えてください。
事例の前提となる人についての情報
39歳男性、大卒。
今まで6社に勤務経験あり。 今回は7社目の転職で同業種・同職種への応募。 |
NGな受け答え例
「いや、転職回数が多くなったのには、実はちゃんと理由がありまして。
まず1回目の転職ですが、これは当時の上司から執拗な~」
「ずっと続く大不況のせいで転職市場も冷え切ったままですから、今はすぐに辞めることはないと思います。」
寸評:くどくどと転職回数の多さについて弁明するのは、聞き苦しいだけです。
また、すぐでなくても辞める危険性を感じさせるような回答は、やめておいてください。
くどくどと転職回数の多さについて弁明するのは、聞き苦しいだけです。
また、すぐでなくても辞める危険性を感じさせるような回答は、やめておいてください。
OKな受け答え例
「確かに心配されるとおりだと思います。
過去の転職の多さに関しては自らもちゃんと認識しています。今まで全てが自己都合退職での転職でして、周りからわがままだと批判されるのももっともであり、真摯に反省するしかありません。
40代を目前に控えた今、子供も大きくなり、もう家族を不安に陥れるようなことはしたくありません。
転職回数の多さと年齢の高さから、再就職活用は苦戦続きで失業期間が長くなってきました。
今、甘えや泣き言をこぼしている余裕すらありませんし、退路を断って歯を食いしばって働くしかないと腹を括っています。
もし御社に拾っていただけるのであれば、働くことができるありがたさを噛みしめて、死ぬ物狂いで働く覚悟です。」
寸評:転職回数の多さの要因をサラッと触れて、それに対する反省を語り、そして今の偽らざる心境から入社が叶ったら全身全霊で仕事にまい進するという覚悟を語るのは、この回答構成の3つの要素をきちんと満たしており、理想的な回答事例となります。
これは圧迫系質問の最たるもの、かなり意地悪な質問です。
特に応募企業への志望度が高ければ高いほど、精神的に動揺してしまうことでしょう。
しかしここはあくまで仮の話。
転職に大苦戦していたとしても、落ち着いて冷静沈着に対処することが中高年には求められます。
ここは不採用後の具体的な取り組み、「残念ですが、そうなったら他を探します」といった回答を求めているのではありません。
ここはまさしく面接官の本音を知らないといけない質問で、額面どおりに受け取っては火傷します。
面接官は、この最悪な状況を乗り越えて、今までとは違った角度から、当社への熱い想いをぜひ伝えてもらいたいと思っています。
たとえば
御社の経理課長職として、制度会計はもちろんこと、経営分析や各種レポート作成などの管理会計に携わりたい一心で、御社に応募させていただきました。
今は何が何でも御社で働きたいという強い気持ちがあるために、この面接に臨む前も企業研究を念入りに行うなど、徹底的に準備をしてきました。
だから正直、もしそのような最悪の事態を想像したくはありません」
というように、志望動機やそれを補完する追加エピソードなどを交えて、これがラストチャンスだといわんばかりの、応募企業への熱い想いを語ってほしいのです。
ここは応募企業への想いや志望動機を語ることができる再チャンスの場、ととらえてください。
事例の前提となる人についての情報
38歳男性、大卒。
今まで新卒入社した1社で勤務経験あり、現在も在職中(スーパーバイザー職)。 今回は2社目の転職で、異業種・同職種への応募。 |
NGな受け答え例
「非常に残念ですが、そうなったら気持ちを切り替えて他社の選考に力を入れると思います。」
「その現実を受け入れて、なぜ不採用になったかを分析し、次の転職活動に活かしていきたいと思います。」
寸評:いずれも間違ってはいない回答ですが、額面どおり受け取ってしまったままになっています。
ここは応募企業への想いを語るようにしてください。
OKな受け答え例
「実は、私は御社しか受験しておりません。
御社のスーパーバイザー職に就きたいという想いのみで、今回応募させていただいた次第です。
これからますます拡大していく御社フランチャイズチェーンで、私が培ってきたSVのノウハウを活かし、そのスピード感やダイナミズムを現場で感じ取りたいと熱望しております。
もし願いが叶わぬ場合、現実的には現職でSV職を続けることになりますが、今はそのような最悪な事態は想定したくないし、この大切な面接中に想定すべきでない、と考えています。
最後に、御社で働きたい気持ちは誰にも負けない決意でこの面接に臨んでいる、ということを再度PRさせてください。」
寸評:ここは動揺せずに落ち着いて回答することが必須。
その上で、今まで語れなかったエピソードなどを交えるなどして、応募企業への熱い想いをぶつけるように切り替えてください。
指摘を丸飲みして、「そうですね、確かに御社の求める経験年数には足りていません」だけで終わってしまってはいけません。
また、「実務経験5年以上も3年以上もあまり変わらないと思います」というように経験不足を誤魔化そうとすると、いい大人の年代ですから、かえってマイナス印象になること必至です。
そもそも応募企業で求める経験が大幅に不足していれば、さっさと書類選考の段階で不採用にしているはずです。
だからまず指摘を素直に受け止めた後に、この経験不足をどう補っていく予定なのか、社会人経験豊かな中高年の視点から、現在の取り組みや入社後の具体的なプランを聞かせてほしいと思っています。
たとえば
と素直に指摘を受け入れた上で、
というように、応募職種に貢献できるであろう、今励んでいる自己啓発や入社後の継続努力に触れることで、多少の経験不足でも当社で間違いなくやってくれる、という確実性や安心感を与えることができます。
事例の前提となる人についての情報
36歳男性、大卒。
今まで2社で勤務経験あり。 今回は3社目の転職で、異業種・同職種(財務エキスパート職)への応募。 |
NGな受け答え例
「御社に入社して、不足している業務経験をしっかり積ませていただきたいと思っております。」
「関連する○○の業務経験もありますので、これを足せば合計年数ですから、この経験年数をクリアすると思います。」
寸評:応募企業で積んでいくというのは、本末転倒な回答です。
また経験不足を誤魔化そうとするのは見苦しいだけです。
OKな受け答え例
「確かにご指摘のとおりです。
私自身も少し経験が不足していると認識しています。
御社の求人情報に掲載されていた、求める人物像のところに、「米国会計基準の経理財務の実務経験5年以上」という条件が付されていたことは理解しています。
この経験不足を補うために、以前からチャレンジしておりました米国公認会計士資格の勉強を再スタートし、今年受験する予定です。
これに合わせて、英語力のブラッシュアップにも力を入れています。
現時点での経験不足は否めませんが、このような自主的な取り組みにより、いち早く御社の一員として認められるよう、オフの時間もフル活用して最短で周りに追いつけるように頑張る覚悟です。」
寸評:まず足りていないことを素直に認めること。
そしてその後に現在や今後の自己啓発や努力などを披露して、少々の経験不足でも難なくやれる、ということを面接官に認めてもらうことが必要になります。
転職コンサルタント(中谷充宏)講師プロフィール
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