前職退職後からのブランクが長い人は、その長くなった理由説明をどのようにするかが最大のポイントです。
一般的に前職を退職してから半年以上空いてしまうと、長いとみなされます。
ではこの半年間以上の間、どうやって過ごしてきたか、を採用人事は一番知りたいと思っていますから、それを先回りして説明する必要があります。
この説明は「特記事項」欄を使って行います。
この表現方法は、次ページ実例の最下部に掲載していますが、たとえば、「前職退職後、転職活動に全力で打ち込んできましたが、年齢的な問題や特殊業務でキャリアを積んできたせいもあり非常に厳しい現実を目の当たりにしています。」と転職活動の実情を赤裸々に語った後で、「今まで安穏と職業人として生活していましたが、今回初めて失業を経験し、改めて毎日働く場所がある大切さを痛感しました。」といった働くことへの想いを伝えるとよいでしょう。
そしてこの後に「貴社で働くチャンスを頂戴できれば、粉骨砕身の覚悟で働き、貴社発展に貢献することを誓います。」と入社意欲を語るのも有効です。
「なお、錆びつきつつあった英語力を磨き上げるために、転職活動の合間を利用して、英会話スクールに通学し、TOIECのスコアを3カ月で約100点向上させることに成功しました。」といった自己啓発への取り組みを述べるなどして、ブランク期間の有効活用を述べておくのも、説得力があります。
逆に「自身のキャリアアップを図るためのせっかくのチャンスですから、焦らずにじっくりと転職活動に取り組んでいます。」といった、半年以上も経って、自身の立ち位置や現状の雇用環境の厳しさを全く理解していないような記述や、「前職の退職手続きや自身の引っ越しなどで多忙だったため、転職活動を始めたのが先月からでした。」といった暢気な記述は、かえってマイナス印象につながるので止めておきましょう。
他のポイントとしては、このブランクを感じさせにくくするために、直近の経歴を後に見せる「編年式・年代順形式」を敢えて用いる、「キャリア式」を用いて時系列を意識させない、といった工夫も有効です。
なお、他の「特記事項」欄以外の項目については、このブランクの悪影響が及ばないために、基本的な記述方法で書いて構いません。
<前職退職後からのブランクが長い人 応募者プロフィール例>
44歳男性。営業とマーケティングに約22年経験。前職を退職してから約9か月経過。
今回は通信企業のマーケティングマネージャー候補職への応募。 |
ここがポイント!
ここは44歳という年齢上、オーソドックスに「一気通貫記述法」を用いて書きます。
一番の強みを最後にPRしておきます。
経験社数が3社なので、「編年式」を用いても構いません。
「年代順形式」で直近の職歴を最後に見せて、今のブランクを感じにくくする方法も効果的です。
このように部下マネジメント術と営業力に特化して書くと、訴求ポイントが明確になってわかりやすいです。
今回の応募ポジションに合わせて、「プロジェクト・マネジメント力」に的を絞って、これを詳細に語るのは有効です。
今ブランクが長くなっている要因について、自分なりの分析を述べた後に、未来志向でフォローするのは、最善の方法です。
前職を退職することになった原因も、今は解決済みであることをカバーしておくのもいい表現です。
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親の介護は今、この世代が直面している(もしくは近い将来、直面するであろう)切実な問題と言えます。
福利厚生が手厚い大手企業の社員であっても、介護休業法制度にプラスアルファされた社内制度では支援が追い付かずに、退職を余儀なくされるケースが多数あります。
退職理由やブランクが介護であるというのは、何ら後ろめたい話ではありませんから、堂々と記述して大丈夫ですが、介護が大変だったからといって、採用人事は大目にみてはくれない点は認識しておいてください。
そして応募する限りは、当社で安定して勤務できるのか、という懸念材料を払しょくしておかないといけません。
定時退社しないと介護施設に迎えに行けない、といった就労条件をあれこれ付けるのは構いませんが、採用人事からすると特定の人物だけを特別扱いはできませんので、マイナス評価になることは予め覚悟しておいてください。
具体的な書き方ですが、「職務詳細」の中に「退職理由」欄を盛り込む場合、介護による退職の旨をきちんと明記します。
そして「特記事項」欄で、この介護に関する件を記述します。ここは次の見本を参照してください。
たとえば、各種制度や家族・民間のサポートなどを活用しても会社を辞めなければならなった介護の状況。
介護によるビジネスブランク時期の過ごし方、たとえば介添え中であっても、合間を見ては関連図書を読みこなしてきた、といった自己啓発の取り組み。
今、応募できるようになった現況、たとえば、自宅近くの介護施設に空きが出た、妻も弟夫妻も時間が取れるようになった、といった自身が勤務できるようになった事由。
たとえば土日は私が介護を担当することになっているので、休日出勤は難しい、といった就労条件があればそれも附しておきます。
特にこれからは安定的に継続して勤労できる状況の説明は最も重要です。
「職務要約」、「貴社で活かせるスキル・経験」、「自己PR」といった、その他の項目については、介護だからといって何ら特別なことはありませんから、基本どおり書いておきましょう。
<親の介護でブランクが長くなった人 応募者プロフィール例>
44歳男性。営業を経験した後、約20年間、輸出と購買業務に従事。
今回は国際物流会社の提案営業職(正社員)への応募。 |
ここがポイント!
年齢上、「一気通貫記述法」で書くのが無難です。
応募職種に役立つ、自身の経験に基づいた「売り」をここで端的にPRしておくのは、非常に効果的です。
経験社数が3社なので、オーソドックスに「編年式・逆年代順形式」で書きます。
退職理由欄に介護である旨は、明記しておきます。
2年と短いですが、営業経験があることをPRするため、省かずにきちんと書きます。
営業力を謳うには、少々経験不足ですので、「折衝力・交渉力」や「各種説明資料、プレゼンテーション用資料の作成スキル」という点をPRして、応募職種である提案営業にリンクさせます。
提案力とメンタルタフネスの2つは、応募先企業でも役立つことでしょう。
このフォローが最大のポイントです。
少々長くなっても構いませんから、これからは応募先企業で勤務することについて、何ら問題がないことを証明しておくことが大事です。
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この年代ですから、血圧が高いなどの健康上何らかの不具合があってもおかしくありません。
しかし、この健康上の問題で就業できずにブランクが空いてしまった、となると話は別。
採用人事が一番気になるのは、当社に入社後にその症状がぶり返して、当社の業務遂行に問題が出ないかどうか、ということなので、就業できなかった期間があるのは明らかにマイナス材料です。
だからこそ、今は働く上で何ら問題がないことをしっかりと証明しなければなりません。
さて作成のコツですが、この健康問題についてはきちんと触れておきながら、現在は全快で応募先企業で働く上では何ら支障がないことを声高に語る必要があります。
そしてこれは「特記事項」欄で書くのが最適です。
ここで一番難しいのは、健康問題についてどこまで詳細に語るか、という点です。
ここは本書では敢えて踏み込んで書きます。
現代のような超ストレス社会では、精神疾患を患っているこの世代は珍しくありません。
しかし精神疾患は他の傷病とは明らかに違う目で採用人事は見ます。
たとえば、この「特記事項」欄で、
と詳細の経緯とこの先を未来志向で語ったとします。
しかし採用人事は「当社で同じストレスがかかるとまた再発するのでは?」と100%危惧するので、ありのまま書いたのではまず書類選考突破は難しいでしょう。
筆者は基本的に本音で書くことを原則としていますが、このケースは(もちろん虚偽はNGですが、)多少オブラートに包んで書くといった方便も必要と考えています。
たとえば同じ内容を書くにしても、
といったような表現で留めておくのが筆者は最適と考えます。
雇用有事が直撃するこの世代にとっては、詳細な事情説明は面接でしっかりと伝えるという方法も、現実的な選択肢と考えます。
<健康問題でブランクが長くなった人 応募者プロフィール例>
41歳男性。レンタカー店長を2年経験した後、約17年間、食品加工会社で購買・資材業務に従事。
今回は外食チェーン本部での食材購買職への応募。 |
ここがポイント!
経験社数が2社なので、「時系列記述法」、「一気通貫記述法」のいずれでも構いませんが、経歴をサラッとまとめておいて、PRを強めにしておくのも有効です。
経験社数が2社なので、オーソドックスに「編年式・逆年代順形式」」で書きます。
退職理由欄に健康上の問題である旨は、柔らかに表現しておきます。
は、健康上の問題があったとしても、何ら関係がありませんから、粛々と応募先企業に合った内容を綴っていきます。
ここがこのケースの最大のキモです。
敢えて詳細に踏み込まずに、体調を崩してしまった要因、医師の指導、会社との話し合い、今は全快であること、反省を活かす宣言、と流れるような構成にしています。
これでは単なる過労なのか、メンタルヘルスに支障をきたしたのか、わかりません。
双方コミュニケーションができない書類では、不利な内容はオブラートに包んで、双方コミュニケーションができる面接で詳細を語るようにするのも一手です。
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司法試験や公認会計士、税理士といった難易度の高い資格試験のために、前職を退職して勉強に専念していた、MBA取得のためにアメリカに留学した等、自らの都合でブランクを空けてしまったケースがあります。
それぞれに想いや志があったのでしょうが、資格試験に合格できなかった、経営修士号を修了できなかった、と全く結果が出なかったならば、非常に厳しい現実が待っています。
採用現場において採用人事は、これらの体験を一切プラスには評価しませんし、働き盛りの時期に数年の長いブランクがある分だけマイナスと見ます。
ブランクの過ごし方が応募先企業の求人と何らかでリンクすればいいのですが、現実的は非常に難しい。
たとえば、公認会計士試験を断念した人が、「貴社で活かせるスキル・経験」欄において、「公認会計士試験で学んだ会計の豊富な知識」とPRしたとしても、そもそも試験に受かってないのですから、これでは明らかに盛り過ぎです。
またMBA取得を目指して渡米したのに、「米国留学で培った英語でのコミュニケーション力」とPRしても、本来の目的を達していないのですから、これでは採用人事に不信感を抱かせるだけになってしまいます。
そこでこのケースの具体的な書き方ですが、つべこべ長い説明や言い訳をしても仕方がないので、事情にはサラッと触れておく程度にして、気持ちの切り替えを前面に出すのが最善と言えます。
たとえば
といったような感じです。
これは次の見本のように、「特記事項」欄を設けて書きます。
※画像をクリックすると、フォーマットのダウンロードが出来ます。
第11回「職務経歴書の書き方11~転職回数が多い人編編~」 へ続く
転職コンサルタント(中谷充宏)講師プロフィール
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