45歳男性、大卒。
今まで新卒入社した1社に勤務中。
今回は初めての転職で同職種への応募(建設関係の営業次長職)。
ここは仕事に直結していないとNGということはありませんので、家族サービスに費やす、趣味のゴルフなど、原則的にそのまま回答して問題ありません。
ワーカホリックなモーレツ社員のようなPRをする人をたまに見受けますが、これではかえって訝しがられます。
なぜなら、安定継続して働いていくには、オン・オフの切り替えは非常に大切であることを、面接官は十二分に理解しているからです。
だから、オフの時間も仕事に追われていて仕事のことが頭から離れないような状態では、心身ともに病んでしまうリスクもありますし、これでは決していい仕事はできないと思っています。
ただし、本音ベースで話すとしても、面接官が懸念する点が一つあります。
オフタイムの過ごし方が、当社で働く上で問題がないか、ということです。
たとえば、今、中高年に多い、両親の介護を背負っている場合です。
介護サービスの活用や配偶者の支援が中心で、仕事に影響が出ない範囲での介護でしたら、何ら問題がないのですが、土・日は夜通し介添えをして、月曜の朝フラフラになって出勤しているケースがあります。
本人にとっては、遊びほうけているわけではないので、家族との絆から真面目さをPRしたいのかもしれませんが、ここはビジネスの世界です。
日常業務に影響が出るものはマイナス評価につながることを念頭に置いておいてください。
事例の前提となる人についての情報 45歳男性、大卒。 |
NGな受け答え例
「今は業務量が多いために、土・日も家に持ち帰って仕事をしていることが多いです。」
「オフの時間は、ほとんど全て大学院のスクーリングに充てています。これでも研究が遅れ気味です。」
寸評:持ち帰り残業をここで持ち出すのは得策とは言えません。
また自己啓発をPRしたつもりでも、日常業務に影響が出そうな話題は逆にマイナス印象を持たれかねません。
OKな受け答え例
「はい、オフタイムはもっぱら家族サービスに充てています。
平日は夜の接待も多く、帰宅しても午前様という状況がずっと続いておりますので、一人娘の寝顔しか見ることができません。
その代り、休みは土・日といった決まったタイミングできちんと取得できていますので、今は娘と過ごす時間を一番大事にしています。
私の先輩や上司に聞くと、娘がお父さんと一緒に行動してくれるのは、中学に入る前までだ、とよく聞きますので、小学三年生の今、もう少ししか時間がありません。
娘と遊ぶといいリフレッシュになりますし、この子のためにもっと頑張らないと、と仕事への意欲も湧いてきます。」
寸評:一般的な家族サービスを選択するも、娘に対する父親としての想いが伝わってきます。
また、リフレッシュや仕事への意欲につながっている点も補足しているために、面接官も納得の回答でしょう。
AKB48の話題といった稚拙と感じさせるものやスポーツ紙を賑わしているような低俗なものは当然NGですが、キャリアを積んだ大人としてふさわしいものであれば、基本的に何を答えても構いません。
中高年ゆえに、経済、国際、産業、社会といった分野がしっくりくるでしょう(政治は思想・信条に関わることもあり、あまりお勧めできません)。
そしてその選定をした背景やその知識を的確にわかりやすく伝えるようにしてください。
また、面接官の関心を引くために、応募企業や応募職種に無理やり関連づけて回答する方がいらっしゃいます。
回答方法としては常套手段ですが、その分野において乏しい知識しかなければ、逆効果になりえます。
特に一定以上のレベルが求められる中高年ですから、回答の甘さ・浅さは致命的になることを注意してください。
また一方で、造詣が深くとも、応募企業の業務には関係しないような、専門性が深くてマニアック過ぎるテーマも考えものです。
たとえば、金融アナリストの募集に対して、
「科学雑誌ニュートンの最新号で取り上げられた、鉄触媒を用いた第2級アルコール類の合成の最近の研究成果について、興味があります。実は私は大学院時代にこの研究に・・・」
と語っても、知識のない面接官には何のことかさっぱり伝わりません。
だからここは共有できる話題を選択するセンスも必要になります。
事例の前提となる人についての情報 40歳男性、大卒。 |
NGな受け答え例
「民主党の外交政策です。私個人的には中国寄りの外交姿勢は、是正すべきと考えています。」
「日本でのラグビーワールドカップの開催です。大学時代、体育会ラグビー部に所属していたため、~」
寸評:政治ネタは、企業や業界によって支持政党が異なったりしますので、触れない方が無難です。
また、本人にとっては大事でも、ここでニッチと感じられるものはお勧めできません。
OKな受け答え例
「はい、私が今最も関心を持っているのは、日本の雇用実態の深刻さです。
その中でも特に私と同じ世代の「中高年フリーター」が増加していることに大変驚いております。
先般総務省から発表された調査内容によると、2011年に35歳から44歳までのフリーターは約50万人となり、過去最高になったとのことです。
前職の求人営業でも、会社側の採用したい人材像と応募者側のスキルとのミスマッチが増加している点について、5年前くらいから社内で問題視していました。
自殺者が出るような新卒就活の悲惨な現状も含め、自己責任では片づけられない、社会構造上の問題があると私は考えます。
私は微力ながらもこういった悲惨な実情から脱出できるよう、一人でも多くの人材を育てたいという想いから、今回、支社長職を捨てて、新たに研修講師になりたいと思い、転職に至った次第です。」
寸評:応募職種にマッチした関心事を選定する場合、必ず面接官と情報を共有できますが、浅くならないように、データを活用したり、前職の経験などを持ち出したりすると、非常に効果的です。
最後に自身の志望動機などに絡ませると納得性が増します。
中高年ゆえに公私ともに背負っているものがたくさんありますし、メンタルヘルスは今はどの企業も神経をとがらせている問題です。
だからここで面接官は応募者のストレス耐性を見極めたいと思っています。
「ストレス耐性があります」、「私はストレスには強い方です」と回答するのが理想ですが、自己申告ではいかようにも言えますので、この後に重圧に耐えてきた仕事上でのエピソードを交えて、これを証明しないといけません。
証明が中途半端ですと、「何の根拠もなく大きく見せる、自己顕示欲の強い人だ」と見限られてしまい、面接全体に影響が出てしまうので、要注意です。
長年第一線で働いてきた中高年ですから、「厳しいプレッシャーがかかる場面では、胃薬は欠かせない」、「心労により体調を崩したことがある」といった経験があってもおかしくありませんが、そのまま伝えてしまうと、マイナス評価につながるのはおわかりでしょう。
うつ病で長期休職して業務進行の大きな支障になったといったことでなければ、ここは「ストレスへの向き合い方」にシフトして回答してください。
たとえば、ストレス耐性が強いわけではないが、自分なりのストレス解消法をマスターできているので、20年間、精神的に参ることなくここまでやってこれた、といった具合です。
事例の前提となる人についての情報 44歳男性、大卒。 |
NGな受け答え例
「私は、ストレス耐性は強い方だと思います。」
「前職では、パワハラを受けて精神疾患にかかったことがありますが、今は主治医から就労OKの診断をいただいております。」
寸評:言い切りで終わるのではなく、この後にそれを証明してください。
また、事実だとしてもここでカミングアウトするのは、マイナス評価につながります。
OKな受け答え例
「私はストレス耐性については強いとは言えないと思います。
そのため、強いストレスを感じてしまうような事態を回避すべく、常に先読みしてミスをしないようにしてきました。
懸念される材料は、早めに潰しておくのが私の仕事のやり方ですので、絶体絶命の窮地に追い込まれることなく、何とかここまでやってきました。
それでも想定外のプレッシャーがかかるシーンも幾度かありましたが、それには、自分なりのストレス解消法で乗り越えてきました。
たとえば、仕事中ですとなかなか外出できないために、1分間だけ緑を見るようにしています。
これは短時間でも自然を目にするといいと聞いたことがあり、職場の鑑賞樹や窓から見える森などの緑を見ています。実際、結構心の平安が取り戻せます。
また、週末はきちんと休むことにも気をつけています。
私の場合は趣味やレクリエーションなどに活動的に行動するとかえって、ストレスがたまるようなので、ほどほどにしています。このようにうまくストレスとつき合って、22年間、無事にここまで継続して働くことができています。」
寸評:ストレス耐性について強いと言い切れない場合は、ストレスコントロール術を詳細に伝えたうえで、そのおかげで今まで何ら働く上で問題がなかったことを語ると、非常に納得感のある回答になります。
人間、40年も生きていれば、大病を患った経験や持病の一つや二つがあったとしても、何ら不思議はありません。
よって、面接官が気にしているのは「当社の業務遂行において悪影響はないか」という点です。
大病については、完治状態で今働く上で特に問題がなければ、そのまま伝えればよいでしょう。
問題は現在罹っている持病です。
就労にドクターストップがかかっているようでしたら、まずは治療に専念することです。
逆に持病が要医療レベルであったとしても、医師から就労OKの診断をもらっているのでしたら、医師の診断を前面に出して働く上で問題がないことをPRすればよいでしょう。
これに加えて、今取り組んでいる改善努力(例.バランスのよい食事摂取や適度な運動など)を述べると、より訴求力が増します。
ただし、医師からOKをもらっていたとしても、条件付き、たとえば毎週水曜日の定時に上がって通院しなければならない、といった特別扱いは、会社によっては認めてくれない可能性があることを認識しておいてください。
なお、持病が採用選考に不利に働くと察知して、この質問に「ない」と言い張ったり、上記条件を隠す人がいますが、ここでの虚偽申告は絶対にNGです。
法律でも入社前健康診断が義務付けられていますから、必ず発覚することを忘れないでください。
事例の前提となる人についての情報 46歳男性、大卒。 |
NGな受け答え例
(椅子に座るのにも息が上がるような肥満体型なのに)
「いや、健康上の問題は何もありません。」
(直近の健康診断で要治療継続と判定されたにもかかわらず)
「特にありません。」
寸評:明らかに肥満と見られているわけですから、仮に何の問題もない場合、この後に説明しないといけません。
また虚偽は後から大問題になります。就労に問題がなければ、事実とその状態の詳細を語るようにしてください。
OKな受け答え例
「はい、今持病というほどではないのですが、昨年の健康診断で血圧についてだけ要指導レベルと判定されました。
実は高血圧は30代からずっと指摘されており、30代後半は症状が悪化して定期的な治療を受けることもありました。
私は東北出身ということもあり、塩辛いものが好きでしたが、医師からの指導もあり、妻に協力してもらい、この食生活を改めるように努めてきました。
また40歳になってからは、妻と一緒にウォーキングも始め、今もちゃんと続けています。
その甲斐があって、平常値にあと少しのところまで改善できました。
それなので、今はすこぶる健康ですし、ここ3,4年は体調不良になったことすらありません。」
寸評:中高年で一番懸念されるのが、食生活や運動、飲酒等が関係する生活習慣病です。
特に年齢が高いと、いまさら生活習慣はそう簡単に変わらないのでは?と穿った見方をされますから、今もこの先も大丈夫であることを、きちんとPRしなければなりません。
この例のように、悪材料を出し尽くした後に、改善への取り組みを語ってフォローするのが、非常に効果的です。
年齢的に後輩や部下達に「仕事の厳しさ」を指導する立場なのですから、熟練したビジネスマンとして、「仕事は楽しい、最高!」的な夢物語や妄想レベルの甘さが感じられる回答は論外です。
面接官は、この質問で応募者が真のプロフェッショナルなのか、単なるやらされ感たっぷりのサラリーマンなのか、を見極めて、当社入社後の働き姿をイメージしたいと思っています。
たとえば、「仕事は生活の手段でしかない」旨の回答ですと、現実的ではありますが、後者のイメージを強く持ち、当社での活躍を期待しないでしょう。
だからここは年齢に見合った、応募企業での活躍を期待させるような、自身の仕事観をしっかり伝えてください。
もちろん、自分の豊富な職業人生から滲み出たエピソードなどを絡めて話さないと、たとえば「仕事は私にとって、かけがえのないものです。」と言い切ってしまっては、なぜそう言えるのか、が伝わりません。
あいまい抽象的な話で終わることなく、その後に自身の経験を裏付けて面接官を頷かせるような内容を語るようにしてください。
要は深刻になり過ぎない程度の現実と夢を見すぎていない理想や将来像をバランスよく織り交ぜて、応募企業にマッチした内容を語ることができればベストな回答と言えます。
事例の前提となる人についての情報 37歳男性、大卒。 |
NGな受け答え例
「失業期間が長引いている今、仕事は家族4人を食わせていく大切な糧だと改めて実感しました。」
「仕事はサラリーマンにとって生活のほとんどを占めるわけですし、私の人生の全てと言っても過言ではないと思います。」
寸評:いずれも回答としては間違いではありません。
しかし、前者はあまりにシリアス過ぎると面接官は興ざめしてしまいます。
また後者は仕事=人生となると、オーバーな表現と感じる危険性があります。
OKな受け答え例
「はい、私にとって仕事は、人生を豊かにしてくれるものだと思っています。
もちろん、仕事で生活費を稼ぐという大前提がありますが、お金以上にやりがいや充実感、達成感など仕事で得るものは大きいと思っています。
率直な話、若い頃は遊びを優先していて仕事に身が入りませんでした。
しかし、後輩、部下も増え、役職も重くなり、社員を率いていく立場となってからは、自らが手本となって、先頭になって組織を導いていかなければならない強い自覚が生まれました。
特に入社7年目に任された新規プロジェクトでは、周りを巻き込みながら、何とか無事目標を達成でき、「仕事をやっていてよかった」と心底から思えるような、大きな達成感を味わうことができました。
「神様はその人に乗り越えられない試練を課さない」と言いますが、自分では到底難しいと思っていた仕事上の壁を一つ一つ乗り越えて、それを達成した時のやりがいは何物にも代えがたいものがあります。
このような職業体験を通じて、人間的にも一回りも二回りも成長できたと自負しております。
御社は平均年齢が20代後半と若い組織と聞いておりますが、入社しましたら、若い子達に少しでも仕事の大変さとやりがいを伝えていければよいな、と考えております。」
寸評:仕事観については、多少抽象的な表現であっても、その後のフォローで充分にわかりやすくなります。
現実と理想のバランスをとりながら、応募企業入社後のやってみたいことにつなげるのも、応募企業での活躍をイメージしやすいので、非常に効果的です。
第6回「中高年の面接対策6~成功・失敗体験・モットー~」 へ続く
転職コンサルタント(中谷充宏)講師プロフィール
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