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自己分析というと、どの仕事に向いているか、つまり「業界」や「職種」を探す人が多いのですが、わたしは、転職後の幸せを考え、違う視点での自己分析をおすすめしています。
まず、“得意なやり方”でできて、かつ、あなたの“心が喜ぶ”仕事は何でしょうか。下のマトリクスでは、右上ゾーンの仕事です。
右上の『心が喜ぶ』×『得意』のゾーンは、自分らしく“得意なやり方”なので無理がなく、結果が出やすいです。大きな喜びが得られるので、多少大変なことがあっても、乗り越えることができます。また、得意な上に楽しいので、成長も早く、まわりの人から感謝されることが増え、ますます仕事がおもしろくなります。
さらに、『心が喜ぶ』×『得意』ゾーンのことをしていると、不思議と応援してくれる人が集まってきますし、経済的にも安定するのです。あなたにも、ぜひ目指していただきたいゾーンです。
面接で聞かれる定番質問の「志望動機」は、「心が喜ぶ」こととリンクし、「自己PR」は、「得意なやり方」を伝えると効果的です。
わたしが、個人向けのコンサルティングや、企業からの依頼で面接をするときは、質問を繰り返しながら、話を引き出し、その人の「心が喜ぶ」ことや「ストレス」、その人の「得意なやり方」「苦手なやり方」「どうありたいか」を深く知っていきます。
本サイトでは、わたしが面接やコンサルティングでしている質問の中から、自己分析しやすいものをいくつかご紹介します。面接でも使う手法・切り口なので、面接対策につながる自己分析ができます。
転職活動には、「職務経歴書」が必須です。その準備も兼ねて、まず、これまでにしてきた仕事を書き出してみましょう。
それぞれの仕事について、細かく作業工程をあげていきます。
ここからが自己分析。その作業工程それぞれを、色分けします。
『心が喜ぶ』をピンク、『嫌い・ストレス』は青といった具合です。「どちらでもない」は、そのまま色をつけなくて結構です。
同じように『得意』に◎と『苦手』に△をつけてください。
それらを見ていると、あなたの「傾向(どういうタイプか)」や「現状」がわかります。転職したいと思う原因や、今後の方向性、何をアピールするかが見えてきます。
職歴の中から、喜びを感じる、得意な仕事が見つけられない人は、子どものころから学生時代を振り返ってみましょう。好きなこと、夢中になって取り組んでしまうこと、心穏やかにできることは、何ですか?
その「理由」を考えてみてください。
例えば『サッカーが好き』という人たちに、好きな理由やサッカーの魅力を聞いてみると、さまざまな答えが返ってきます。たとえば、『一瞬、一瞬の自分の判断が試合をつくること』『メンバーの実力や個性にあわせて、練習メニューや作戦を立てること』『新しい技術を繰り返し練習して覚えること』『チームメイトと真剣に話しあって、チームがひとつになること』など。
“好きなことの理由”こそが、喜びの源泉。それを満たすことが、天職の条件です。
つまり、サッカーとは関係ない仕事でも、『自分で判断できる仕事』『メンバーの実力や個性にあわせてマネジメントする仕事』など、サッカーを好む理由と同じ満足感を得られる仕事なら、サッカーと同じように心が喜び、夢中になれるのです。
「強みがわかれば十分なのでは?」と思われるかもしれませんが、それは大きな間違い。自分の苦手なことを知らないと、面接に通りにくいです。万が一、内定して入社しても、早期退職、好きな仕事についたのに辛くなる、といった可能性が高まります。
こんな苦労をしないために、7つの要素について、何が苦手・ストレスかを自己分析しましょう。
あなたのストレスになっているものは?
わたしは、企業で採用をしはじめたころ、「能力は申し分ない、やりたいことがぴったり、人柄もGOOD」という人が面接に来たら、迷わずに採用していました。本人も他社の内定をけって入社した相思相愛の関係。ところが、絶対に幸せに活躍すると信じていた彼らの中から、「体を壊してしまう人」や「期待したほど活躍しない人」「退職する人」が出てしまったのです。
このようなミスマッチは本人もつらいですし、会社にとっても痛手です。わたしも想いをこめて採用した人が不幸になる姿を見たくはありませんでした。そのため、ミスマッチの理由を分析しはじめたのです。
見えてきたのが、上に挙げた7要素。
どんなに大好きで得意な仕事でも、苦手で耐えられないことが含まれていると、うまくいきづらいのです。面接でこの7要素を確認するようになってから、よりマッチした採用ができるようになりました。
あなたも自分の苦手やストレスを知っていれば、自らミスマッチに気づくことができます。入社前に、会社の100%を知ることはできないかもしれません。しかし、自分にとって大切なことがわかっていれば、事前に調べる方法がたくさんあります。
※ひとつひとつについて、より詳しく自己分析をしたい方は、『あなたの天職がわかる最強の自己分析』(梅田幸子著、中経出版)の4章を参考にしてください。
自己分析で、“心が喜ぶ・得意なやり方”を見つけたら、それを日々、活かして磨いていきましょう。
ツライ、苦しいと感じるときは、我慢が大きいときです。あなたの良さを押し殺しているとか、キャパオーバーしているなど。そのような状態で、無理やり、楽しみを見つける必要はありません。ただ、苦手な仕事・嫌いなことを“心が喜ぶ・得意なやり方”でしてみていただきたいのです。
どういうことか、参考になるかもしれませんので、わたしの会社員時代の話を聞いてください。
営業職に向いている人は、どんなイメージですか? 社交的でアピールが上手、押しが強いといったタイプを想像する人が多いのではないでしょうか。
しかしわたしは、逆のタイプでした。アピールが下手なうえに、押しが弱いのがコンプレックスでした。こんな状態でしたので、自ら営業への異動を希望したにも関わらず、研修テキストをマスターし、上司やエースの先輩のまねをして営業してもうまくいかなかったのです。
しかし、“心が喜ぶ・得意なやり方”を活かそうと決めてから、成績がグンと伸びました。
わたしは、話を聞くのが得意です。特に、話し手がぼんやり考えているイメージを具体化することや、相手がもやもやした気持ちの正体に気づくようなやりとりが得意です。
部活の後輩指導や家庭教師のアルバイト、人事時代の新入社員研修で、その人にあった夢や目標を実現するためのオーダーメイドプランを考え、応援するのも大好きでした。その方の性格や生活スタイルや価値観を共有しながら、夢や目標がイメージできたとたん、実現へのシナリオが浮かんでくるのです。
この特性を活かして、とにかくお客様の話を聞くことにしました。押しが弱いので、「ご購入お願いします」「今すぐご契約を!」などという言葉は言えません。しかし、話が尽きるころ、お客様のほうから「どうやったら契約できますか?」と質問されるのです。契約手続きの方法を説明し「本日、ご契約なさいますか?」で契約終了。
このように、“心が喜ぶ・得意なやり方”を活かすことで、高い契約率を出すことができました。
“心が喜ぶ・得意なやり方”を最大限に活かせる仕事・職場を探しながら、今の生活の中でも活かすようにしてみてください。“心が喜ぶ・得意なやり方”を強みに高めていくトレーニングの場となり、面接でアピールできる「実績」にもなります。
実際に意識して行動に組み込むと、本当は強み・喜びではなさそうだと気付くこともあります。もちろん、「やっぱり、自己分析があっていた」と確信でき、自信が高まることもあるでしょう。新たな得意や、どこに喜びを感じるかを発見できたりもします。行動することで、このように自己分析の精度が高まり、深まっていくのです。