今回から3回にわたって、何らかのハンデやネガティブ要因がある場合の、履歴書の書き方のコツを説明していきます。
まずは勤続年数が短い場合です。勤続年数が短い職歴については、採用人事からするとやはり斜めに構えて見ます。
だからといって、完全にその職歴をなかったことにして消し去る人がいますが、後に発覚すると大問題になりますので、絶対にやめておいてください。
さてこれをどのように表現すればいいか、ですが、一番のポイントは職歴欄に書き過ぎないことです。
たとえば、直近の勤務先を短期で自己都合退職した場合。
年 | 月 | 職歴 |
~ | ||
平成24 | 4 | 株式会社高橋製作所 入社(正社員) |
事業内容:車両部品の製造 資本金:3億円 従業員数:約500人 | ||
変速ギア関係の部品を生産する座間工場にて、1日約5,000ロットを生産 | ||
するための、生産ライン管理業務に従事 | ||
平成24 | 9 | 一身上の都合により同社退社 |
以上 |
たった5ヶ月しか在職していなかったのに、職務概要について3行も使うと、明らかに書き過ぎです。短期間では大した実績も残せないですし、職歴自体は売りになりません。
だから、
年 | 月 | 職歴 |
~ | ||
平成24 | 4 | 株式会社高橋製作所 入社(正社員) |
平成24 | 9 | 一身上の都合により同社退社 |
以上 |
と職歴欄には、必要最低限のことしか盛り込まないようにします。
そして採用人事は、なぜ短期でやめたのか、それを一番知りたいのですから、退職理由欄を活用して、できるだけ具体的にその理由を書きます。
退職理由 今まで私が培ってきた生産管理のノウハウを活かすべく、前職に転職いたしましたが、企業規模や生産する製品の違いから生産管理体制やその考え方が全く異なり、私自身の経験やスキルがうまく機能せず、不本意ながら短期間で前職を退職を決意いたしました。 |
この場合採用人事に納得感を持ってもらうことが大事ですので、多少ネガティブな表現になっても問題ありません。
また短期で辞めた事実は変えようがありませんから、次の事例を見ていただくとおわかりのように、いくら前向きな表現で書いたとしても、核心が見えずかえって不審がられるだけです。
退職理由 今まで私が培ってきた生産管理のノウハウをもっと活かせる場所を探したいという強い想いが芽生え、退職する道を選びました。今は心機一転し、得意分野である電子装置の部品の生産管理に的を絞って転職活動を進めています。 |
なお、直近の短期退職でなければ、この退職理由欄を使えませんので、それ以前の短期退職であれば通信欄を使ってフォローするか、10年以上も前の話であれば、敢えて触れなくても大丈夫です。
一方、倒産、清算、工場閉鎖、事業部の海外移転といったやむを得ない事情の会社都合退職の場合は、そのまま退社行にそれを盛り込んでおけば、採用人事も納得してくれますので、その退職をせざるをえなかった要因について必ず触れるようにしてください。
年 | 月 | 職歴 |
~ | ||
平成24 | 4 | 株式会社高橋製作所 入社(正社員) |
平成24 | 9 | 同社倒産のため会社都合により退社 |
以上 |
まとめますと、自己都合により短期間で辞めてしまった場合は、職歴を詳しく書かずに、その退職理由欄を使ってフォローするようにします。
その短期退職が随分前の話であれば、フォローしなくてよいということになります。他方でやむを得ない会社都合退職の場合は、退社行にその理由を盛り込んでおきます。
次に、非正規雇用が長かった場合です。
非正規社員の期間が長い場合、「実力がある人ならば、正社員になっているはず」とマイナスイメージを持たれる危険性があるかもしれません。
しかし今や、どんな企業であっても経営状態の厳しさから、優秀な人材であってもなかなか正社員にしない・できないという状況にあり、そのことは採用人事も理解しているはず。
よって、非正規社員であろうと、ちゃんと仕事をこなしてきたことを怯むことなく堂々と書くべきです。
年 | 月 | 職歴 |
~ | ||
平成8 | 4 | 株式会社システムソリューション 入社(契約社員) |
事業内容:システム開発 資本金:5千万円 従業員数:約30人 | ||
第一開発部に配属され、主にコーディング業務に従事 | ||
平成13 | 10 | 第二開発部に異動し、主力製品である人事給与システムの基本設計業務に |
従事 | ||
平成18 | 3 | カスタマーサービス担当も兼務し、導入支援から使用方法説明、バージョ |
ンアップなどの製品サポート業務に従事 | ||
平成24 | 3 | 契約期間満了により同社退社 |
以上 |
しかし、これだけでは説明力不足というケースもありますので、アピールポイント欄や通信欄などのフリーに使える欄を使って非正規社員での勤務が長くなってしまった点をきちんとフォローしておきます。
志望の動機、アピールポイント 前職は契約社員でしたが、16年の間、人事給与システムの開発からサポートまで、全ての工程を経験し、このシステム分野では誰にも負けないくらいのスキルを保持していると自負しています。また昨年は本システムのクラウド化にも携わり、最新技術についても体得する機会を得ました。これらの豊富な経験を貴社のシステム開発に活かしていきたいと思います。 |
通信欄 私自身、非常にやりがいを感じていた業務を担当していましたので、前職では正社員という立場に拘らず契約社員で働いて参りましたが、やはり不安定な立場で働くのは本意ではなく、契約更新を気にしてはいい仕事はできないため、正社員で働くことを希望しています。 |
一点注意してもらいたいのが、ついついアピールし過ぎてしまい、それが強過ぎてしまうということです。
PRについては、ほどほどにしておかないと、「それほどの人物がなぜ正社員にすらなれなかったのだ?」、「どうも自分の立場を理解できておらず、自身を誇張する人だ」と訝しがられるケースもあります。
先ほど述べた「堂々と自信を持って書く」というのと、真逆に聞こえるかもしれませんが、そこで培ったスキルや経験にちゃんと自信があるならば、へりくだらないで書きますが、それが身の丈知らずのような表現になってしまうと、行き過ぎでかえってマイナスだということです。
志望の動機、アピールポイント 前職では非正規社員として働いておりましたが、正社員と比較しても遜色のない実績をあげてきたと自負しております。私の主導でまとめ、成果を出したプロジェクトも複数あります。特に昨年、従業員250名規模の製造業企業での基幹系システム導入においては、私の主導無しでは期限内に立ち上がらなかったと自負しております。また、このことを始めとした実績から、当時の上司および周りの社員の方々からも高い評価を頂戴しておりました。 |
このように書くと、「優秀な人のようなのに、なぜ非正規社員で働いていたのか?どうも腑に落ちない、何か根本的な原因でもあるのか?」と採用人事に訝しく思われること必至なので、PRについてはバランスを意識して書くようにしてください。
なお、非正規社員と一括りにいっても、契約社員、派遣社員、アルバイト社員、パート社員と、多種多様です。ここでは業務内容は正社員とほぼ同じだけれども、雇用形態だけが違う、というケースを取り扱っています。
だからたとえば、週3,4日程度勤務の補助的な業務をするアルバイト社員だったとなると、このケースとは違ってきて、詳しく書き過ぎると、かえってマイナスになりますので、その記述量やバランスには注意してください。
今回の記事の最後は、前職を辞めてからブランクが長くなってしまった場合です。
ブランク期間の長さの定義は、その個々の状況によって前後しますが、一般的に前職退職後に半年以上のブランクが空いてしまったならば、採用人事がその理由をきちんと把握しておきたいと考えるのは間違いありません。だから、ここを先回りしてフォローする必要があります。
フォロー内容についてですが、親の介護などのやむを得ない事由は、そのまま包み隠さずに書けばいいのですが、問題は転職活動に真面目に勤しんでいたのに、結果が出ずにブランク期間が長引いてしまった場合。
この場合、転職活動はもちろんのこと、自分の業務遂行力や実戦感覚を落とさないよう、自己啓発にも積極的に取り組んでいた、というのがベストです。ただし、職歴欄でそれを詳細に書いてしまうと、やぶへびになります。
年 | 月 | 職歴 |
~ | ||
平成23 | 3 | 一身上の都合により同社退職 |
※退職後から約2か月間、営業職としてのプレゼンテーション力を高める | ||
ため、パワーポイント講座に通学していました。 | ||
先月からは話し方教室にも通っております。 | 以上 |
職歴欄はあくまで「職歴」を書くところですから、このような言い訳にも似た表現で長々と書いてしまうと、「職歴」について正確な情報を把握しにくい、と訝しく思われる危険性があるからです。
もちろん、ブランク期間の転職活動についての概要や敗因分析などの説明が一番大事。ここは志望の動機欄や通信欄を使ってフォローするのがよいでしょう。
志望の動機、アピールポイント 前職を退職して約1年が経過しましたが、未曾有の不況下の今、私が18年積み上げてきたディーリング業務の経験、スキルを活かせる応募先が、そもそも非常に少なく、厳しい転職活動を強いられております。今回、貴社の募集におきましては、私のアルゴリズムトレーディングのストラテジー開発経験が如何なく発揮できると判断し、応募させていただいた次第です。 |
このように苦戦している転職活動の事由を振り返った後に、応募先に焦点を合わせた志望動機にシフトさせて書き、ブランク期間をフォローするのは、効果的な書き方です。
通信欄 今、自身の年齢もあり、転職活動に大変苦戦しております。 働く場所があるということがどれだけ恵まれているかを改めて認識しました。貴社に入社が叶いましたら、粉骨砕身で業務にまい進したいと思います。 |
このように応募先で一生懸命働くといった覚悟を語るような、心理面に触れておくのも一手です。
なお、転職活動をサボってきたようなフォローは論外。
通信欄 長年勤めた前職を退職してから、この1年間は命の洗濯と称して、海外旅行や趣味に没頭するなどして、英気を養っておりました。 |
今や若年者だって就活に失敗してうつ病になったり、最悪の場合自殺するといった雇用有事なのに、ましてや年齢的に不利な立場の中高年が現状を甘く見ているようなフォローなら、書かない方がましです。
その一方で転職活動の内容や敗因について、具体的に書き過ぎると、「どの企業にも相手にされないのは、実は何か問題を抱えている人ではないか?」と採用人事が怪しむ危険性が高くなりますので、ほどほどにしておいてください。
通信欄 現在まで約100社に応募しましたが、内定をいただけずに今に至ります。 失業期間が1年を超えた今、働ける場所探しに必死です。貴社で働かせていただけるチャンスをいただければ、死に物狂いで頑張ることを誓います。 |
このように100社に応募して結果が出てない人に対して、採用人事はプラス印象を抱くことはないでしょう。明らかに不利になるような事項は、たとえ事実であっても、積極的には書かないことです。
第7回「履歴書の書き方~転職回数が多い・少ない場合~」 へ続く
転職コンサルタント(中谷充宏)講師プロフィール
関連記事(中谷充宏が教える~中高年の転職必勝法!~全5回)