今は給与減少時代ですし、転職で給与が下がっても、珍しくない年代です。
自身が許容できる最低金額を下回る場合は別として、このケースはきちんと提案を受け入れた上で、
というように、現状に甘んじずに上を目指して当社で働くという強い決意、覚悟を伝えないといけません。
確かに給与が下がることを快く受け入れることは難しいでしょう。
しかし、たとえば
「現職では超がつくくらいのハードワークでしたので、その分給与が高かっただけだと分析しています。だから今回、下がるのは当然のことととらえています」
というように、受け入れ可能な理由を明確に説明してもらいたいと思っています。
これに加えて、求人内容に「経験・資格・能力等により決定」とある場合、この応募に対して確定的な金額を持っていないので、交渉の余地があります。
それなので少しでもアップするようにPRするのも一手です。
たとえば、豊富な経験・保有資格・培ったスキルの再アピールや応募ポジションの重い役割を果たすこと、入社後の頑張りなどをアピールするなどです。
事例の前提となる人についての情報
43歳男性、大卒。
現在まで新卒入社した1社(東証一部上場企業)にて勤務経験あり。 今回は2社目の転職で、現職よりも企業規模が小さい同業種企業の同職種への応募。 |
NGな受け答え例
「はい、大丈夫です。今、年齢がネックで全然転職が決まらず、条件を下げざるを得ないと自覚していますので。」
「いくらくらい下がるのでしょうか?」
寸評:渋々下げざるを得ないというような回答は、明らかにマイナス印象につながります。
また、受け入れられないととられかねない回答もやめておきましょう。
OKな受け答え例
「今回の転職で下がるのは覚悟していますし、給与額よりも御社で働くことが、今の転職の最優先事項ですので、大丈夫です。
確かに給与だけについて言えば、少ないより高い方がいいです。
前職は業界大手で年功序列でしたので、21年も勤務していれば、パフォーマンスに関係なく、給与がそれなりに高額になるシステムでしたし、実際まだ御社で働いておらず、貢献できていませんから、今はとやかく言える立場ではないと考えています。
ただし、入社させていただく以上は、必ず求められる以上の結果を出していきたいと思います。
そうすることによって会社に評価いただければ、給与も自ずとついてくるものと思っています。」
寸評:まず減額提示を受け入れるのが大前提ですが、これに加えてその理由を述べて、最後に入社後の決意や頑張りでまとめるのは、回答構成として最適だと言えます。
この年代にとって、両親の介護問題は切実な問題で、今直面していなくても、ゆくゆくは誰もが通る道です。
このような状況に陥った際、本人は気力・体力・スキル・経験と充分に働ける状況であっても、家庭環境がそれを許さないという事例は枚挙に暇がありませんので、これを面接官は懸念しているのです。
具体的には、これをどう克服していくか、その心構えや計画性を確認したいと思っています。
もちろん、妻に全部やらせるつもりでいます、といった全て他人任せの話や、その時になったら考えます的な回答はNGです。
ここは働く上で問題がないことを証明する、現実的な絵図が描けるか、がポイントになります。
たとえば
といった事前準備の話や、加入している保険の適用範囲の確認、将来的な施設への入居の検討、家族のサポート可能範囲の確認など、自分が把握できている情報をできるだけ多く伝えて、応募企業で働く上で問題がないことを説明する必要があります。
なお、応募企業に入社後の各種制度を活用して克服する旨は、会社依存度が高いと感じられますので、差し控えておいてください。
事例の前提となる人についての情報
42歳男性、大卒。
現在まで新卒入社した1社にて勤務経験あり。 今回は2社目の転職で同業種・同職種への応募。 |
NGな受け答え例
「今は両親とも非常に元気ですので、その心配はまだ不要かと思います。もう少し時間が経ったら真剣に考えていきたいと思います。」
「法定の介護保険制度や会社の休職制度をフル活用していくことで、何とかその状況を乗り切りたいと思います。」
寸評:もっとらしい回答ですが、無計画でその場しのぎの感は否めません。また有期の制度に依存する回答は、長くは続かずに、根本的な解決にならないとみなされる危険性があります。
OKな受け答え例
「はい、そう遠くない話だと私も自覚しており、今から準備を始めております。
両親もその可能があることは十二分に自覚していて、家族には迷惑をかけたくないという想いから、前々から認知症がひどくなったら、我々のお金を使って施設に入れて構わないから、と言ってくれています。
ことあるごとに両親も交えて家族会議を開いて、そうなったらどうすればよいか、をみんなで真剣に話し合っております。
そして私を含めた家族の支援がどこまで対応できるのか、民間保険と介護保険法がどこまでカバーできるのか、そのサービス内容は?近隣の介護施設の立地やサービス内容などを想定・確認しながら、これらを総合的に勘案して、何とか私の仕事に影響のない範囲でとどまるように、抑えていきたいと思っております。
介護保険を活用するにしても、私がちゃんと働いていないとダメですし、私の収入がなければ、家族が崩壊しています。
この優先順位をうちの妻にも重々理解してもらい、仕事に影響が出ないよう、みんなが知恵と力を出し合って、何とか乗り切っていきたいと思います。」
寸評:必ず通る道とはいえ、まだ至っていない事態に対して回答するのは至難の技。
しかし、予測できる話なのですから、これに対して全くノーマークではNGです。
対策を進めていることがあれば、積極的に話すようにしてください。
前問の残業の多さの対応可否を問うものとは異なり、「急」と言われても、応募者にとってもプライベートや日常生活がありますから、簡単に「できます」とは答えにくいはず。
「はい、御社のためなら、急な出勤でも喜んでやります!」といった24時間365日体制で対応ができる発言は、かえって訝しく思われてしまいます。
だからここはどのような条件ならば可能なのか、の仮説を立てて論理的に展開するのがベストです。
たとえば
後回しにできない緊急時で私しか対応できない場合は、やらなければならないという覚悟はあります。」
といった具合に、条件や過去の経験談、自身の覚悟などを交えて、単なる思いつきではないことを面接官に納得させる必要があります。
一方で、できないのであれば、その明確な理由説明が必要になります。
娯楽・遊興をこの理由に挙げる人はいないと思いますが、
といった感じです。
ただし社長や役員といった上席になれば、四六時中、会社を代表しています。
年齢的にこのような自覚が求められる時期ですので、「できない」の一点張りでは、マイナス印象につながる危険性があります。
事例の前提となる人についての情報
42歳男性、大卒。
現在まで2社にて勤務経験あり。 今回は3社目の転職で同業種・同職種への応募。 |
NGな受け答え例
「はい、御社で働かせていただけるのであれば、急な要請でもきちんと対応いたします。」
「正直難しいです。今、オフタイムにはキャリアアップのためのビジネススクールに通っておりまして、講義の欠席が許されないのです。」
寸評:対応できる理由が、御社に入社できたら、という条件ですと、明確な説明になっていないことになります。
またここで仕事よりもビジネススクールを優先させる旨の発言は差し控えておきましょう。
OKな受け答え例
「緊急度のレベルによりますが、おそらくそのような業務命令が下るということは、業務上で高い緊急性がある場合だと推測できます。
よって、他の所用よりも優先すべきと考えますので、可能な限り対応したいと思います。
ただし、その緊急事態を予測できるのか、そうでないのか、を事前にしっかりと見通しておかないといけません。
今は何事も想定外では済まされませんし、見通しが甘くて計画性がない業務進行では、いい仕事はできませんので。
今回採用となりましたら、管理職ポジションに就くことになります。
より一層緊急対応が求められると思いますので、それを普段から自覚するとともに、私自身も業務遂行で突発的なことが起きないように、綿密に計画を立てて着実に仕事を進めていきたいと思っています。」
寸評:仮説を立てて論理を組み立てていくのは、定番の回答方法ですが、これだけではなく、管理職という応募ポジションに合わせたかたちで、このような突発的なことへの心構えやそれを最小化する見通し、計画立案といった事前の予防策を述べると、より納得感が高まることでしょう。
ここは誰もが納得するような、NG理由が明確にある場合は別として、年代上、「対応できる」という回答が無難だと言えます。
会社勤めにおいてはごくありふれた話、中高年ならこのような出向を既に経験している人もいらっしゃるだろうし、同じ年代の知人、友人もそのような状況に置かれている人も少なくないことでしょう。
そして「対応できる」と回答するだけではなく、その後になぜ対応可能なのか、その後出向先でどうしたいか、などについて、きちんと納得のいくような話を展開してください。
また仮に受け入れたとしても、本体から外れたからといて腐ってしまう人もいて、これを人事は一番懸念しています。
これを先回りして取り除くような話を盛り込んでおいてください。
たとえば
出向先でも自分のポジションをしっかりと築いて、きちんと業務実績を残していきたいと思います」
といった具合です。
なお、失業期間が長くなってしまったので、今すぐ仕事がしたい、仕事ができればどこでもいい、という心情はわかりますが、これだけが対応できる理由として前面に出してしまうと、面接官は他にもっと伝えることがあるはず、と違和感を覚えることでしょう。
事例の前提となる人についての情報
40歳男性、大卒。
今まで3社に勤務。 今回は4社目の転職で同業種・同職種への応募。 |
NGな受け答え例
「はい、私は大丈夫です。仕事がある限り、どこに行っても頑張ります。」
「本音を言えば、できれば本社にいたいと思いますが、そのような状況に置かれましたら、その時によく考えて判断したいと思います。」
寸評:大丈夫、頑張るだけでは足りません。
この後にできる理由説明をしてください。
またNG理由が不明確で、回答を保留するのは、マイナス評価につながります。
OKな受け答え例
「はい、大丈夫です。私はまだ今のところ出向の経験はありませんが、前職ではそもそも50歳で本社定年となり、子会社や関連会社に転籍になるルールでしたし、遅かれ早かれそういった状況に置かれるのは、当たり前と思っています。
出向といっても、出向先会社から必要とされ請われて行くわけですし、自分がやるべき仕事がある以上は、どのような企業、職場であっても器が替わるだけの話で、私の業務遂行上には何ら問題がないと考えております。
実際、今まで3社の勤務経験があり、多くの部署も経験してきましたが、環境が変わってもちゃんと業務を遂行してきたという自負があります。
器が替わったことを理由に、士気が下がる人もいると聞きますが、それはプロではなく、私はどこであろうとも自分の仕事をすること、これに尽きます。」
寸評:大丈夫の回答した後に、なぜ大丈夫と明言できるのか、その理由の詳細を語るのは定石中の定石です。
面接官の一番の懸念材料を職業観やプロ意識を語ることで、払しょくするのも効果的です。
社会問題・時事問題に関する質問は、その知識を知っているのは当然として、そのテーマが応募先にどのような影響があるか、という点と、そのテーマについての自身の見解や考え方をしっかりと述べることができるか、という点の2つを面接官は見たいと思っています。
だから、ここはテーマの定義や事実だけを淡々と伝えるだけでは足りません。
自分の意見をしっかりと主張できるか、が大きな評価ポイントになります。
たとえば、このワーク・ライフ・バランス。
この考え方については賛否両論ありますが、ここは他の質問と同様に応募先に沿った考え方を述べるのが定番です。
しかし、通常は応募先企業がどちらのタイプがわからない、というケースが大半。
であれば、ここは仕事をするための面接の場ですので、仕事を優先する立場に立って語る方が間違いありません。
たとえば
「今、どの企業も生き残りに必死な中、ともすれば仕事に重きをおかないように勘違いされるこの言葉には、私は違和感を持っています」
といった感じです。
またこれに付随して、他の考え方を披露するのも効果的です。
「これよりも今はワーク・ライフ・インテグレーションの方が主流になりつつあります。
仕事と生活は、相反するものではなく、どこかで統合されていて、両者が相乗効果的に高め合うのが理想です。私はこの考えに共感しております。」
といった感じです。
事例の前提となる人についての情報
42歳男性、大卒。
現在まで3社に勤務経験あり。2社目ではリストラを経験。 今回は4社目の転職で同業種・同職種への応募。 |
NGな受け答え例
「理想は理解できますが、そんな甘いことを言っている余裕はどこにもありません。
国際競争力が低下した今、昔のようにワーカホリックになる必要があると思っています。」
「確かに働き過ぎはよくありません。バランスを取ることは非常に大事で、仕事のせいでプライベートの多くを犠牲にしてしまう、今の働き方には疑問を感じます。」
寸評:いずれも回答としては間違っていませんが、応募企業に合っているかどうかを見極めた上で、極論に走らず丁寧に回答するようにしてください。
OKな受け答え例
「私は、仕事と生活の調和を図ることは大変重要なことだと考えております。
やはり、生活、家族、家庭があってこそ、安心して仕事ができるわけですから。
日常業務の忙しさのあまり満足な家族サービスができていない私は、これを痛感しています。
しかしその一方で、言葉が誤解され、仕事に対する甘さにつながるようでは、本末転倒だと思います。
この大不況下で、生活にもっと時間をかけていくべき、という理想を今すぐに実現するのは不可能ですし、先ほどの逆で生活費を稼ぐための仕事をおざなりにしては、生活自体が成り立たなくなってしまいます。
私自身、失業を経験していますから、仕事がある日常がどれだけありがたいことか、身に染みております。
それなので今は、理想論はさておき、自分の仕事に没頭したい、という考えでおります。」
寸評:これを取り入れていることを明言している企業は限定的ですので、不明な場合は両方のメリット・デメリットに触れながらも、最終的には仕事にいそしむ、という方向に持って行った方が外さないでしょう。
転職コンサルタント(中谷充宏)講師プロフィール
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