日本人は一般的に有給休暇をあまり取らないといわれています。労働者にとって、有休とは名ばかりの制度となってしまっているのでしょうか?今回は有休についての基礎知識と、有休がとりづらい現状について考えてみたいと思います!
そもそも社会人は、どのくらい有給休暇を使っているものなのでしょうか。「聞きたいけど周りには聞けない」という方も多いのでは?
現在の有給休暇取得事情についてみていきましょう。
厚生労働省による「令和4年就労条件総合調査」では、令和3年の1年間に企業が与えた有給休暇は、労働者1人平均17.6日という結果でした。そのうち実際に取得した日数は10.3日です。
取得率は58.3%となっていて、8年連続で上昇していました。
令和3年の有給休暇
このデータを企業規模別に見ると、労働者が1000人以上いる会社は取得率が63.1%に対し、30~99人の会社は51.1%となっており、規模が小さい会社ほど休みにくい現状があることが分かります。
業種別に見ると、取得率が最も悪かったのが、
「宿泊業・飲食サービス業」の41.2%
取得率が高かったのは、
「電気・ガス・熱供給・水道業」の76.8%
で、1人あたり15.0日有給休暇を取っています。
「電気・ガス・熱供給・水道業」は、平均収入も高い業界なので、ワーク・ライフ・バランスが取れている業界と言えそうです。
BIGLOBEが行った有給休暇についての調査で、「有給休暇を取得できない・取得しづらい理由」として最も多かった回答は「職場に休める空気がないから」でした。
続いて「自分が休むと同僚が多く働くことになるから」「上司・同僚が有給休暇を取らないから」という答えが続きました。
この調査結果を見ると、有給休暇の制度はあっても、労働者は十分に使えていない状況にあることが分かります。
そしてたとえ有休を申請できる状態であっても、自分が休むことによって周囲に負担がかかるとの思いから、取得しづらい・取得できない現状があることもかい間見えます。
前述の有給休暇によるアンケートでは、「有給休暇に関して最も希望することは何?」という質問もありました。回答は以下の通りです。
第1位が「有給休暇の買い取り」で、半数近くの45.3%。
有給休暇を取得しづらい雰囲気や、有給を申請して仕事を休んでも結局業務がたまってしまう現状があるからなのか、有給を使えないまま期限がきてしまうからなのか、有給休暇の買い取りを希望する声は全体の約半分に上がっています。
続いて「有給休暇取得率100%」が約3分の1(33.3%)にのぼり、有給が買い取ってもらえないのであれば、有給を使い切りたい、というのがどうやらサラリーマンの本音のよう。
「有給休暇の日数増加」は20.8%にとどまっています。今ある有給も消化できず、これ以上有給をもらっても使うことができないので、日数増加はあまり希望しないというサラリーマンが多いのでしょう。
有休は、正しくは年次有給休暇と言って、一定の期間勤続した労働者に与えられる休暇のことで、労働基準法で定められています。
「有給」なので、取得しても賃金が減額されることのない休暇です。
年次有給休暇をもらえる条件
この2つの条件を満たせば、10日の年次有給休暇がもらえます。そして1年後には上記の条件をクリアすると11日間の年次有給休暇がもらえます。
以後、1年ごとに年次有給休暇が1日ずつ増えていき(12日間)、雇い入れの日から、6年6カ月以上で20日の有給休暇がもらえることになります。
また、年次有給休暇は、労働日数や継続勤務期間にもよって異なりますが、パートタイム労働者でももらうことができます。
このように年次有給休の取得は法律で決まっていることなので、繁忙期で会社の業務に支障がない限り、会社側は有給申請を拒否することはできません。
もしも繁忙期で業務に支障が出るなどの場合、会社側は「時季変更権」を使って、別の日に変更するよう求めることができます。
A.答えは「NO」です。
有給休暇は「心身の疲れをいやし、ゆとりのある生活を保障されるための休暇」であるので、休む理由については問われません。
旅行のためにとったり、子供の入学式や卒業式など学校行事で有給を取ったりするケースでも大丈夫です。
ただし、有給を使う間の業務については同僚や上司に申し送りをするなど、社会人としての常識は忘れないようにしたいものです。
労働者の当然の権利である有給休暇ですが、人手が足りない職場や、会社の雰囲気によって「有給がとれない」といったことも多く、会社に不満がたまっている人がいるのも事実。
いわゆるブラック企業では、有給休暇を取らせないところもあります。
A.はい。1年間に与えられる有給休暇をまったく使っていない場合や、使いきれなかった場合は、有給休暇は次年度にのみ繰り越すことができると労働基準法で定められています。
残った有給休暇とは別に、条件を満たせば新たな有給休暇がもらえます。
A. はい。実は、消化できなかった有休を買い取ってくれる制度のある会社も存在します。
ただしこの「有給休暇の買い取り」は、あくまで条件を満たした場合のみの例外的措置です。
以下の条件を満たす場合に限って認められており、買い取る金額も会社次第なので注意してください。
最もよくあるケース。退職する際に有給を消化しようとしたが、引き継ぎなどでそれが難しく出社しなければならない場合に、会社に有給を買い取ってもらうことができます。
有給休暇は付与された年と、その翌年までが時効になり、取得できなかった有給休暇については買い取ってもらうことができます。
会社によっては、少人数や人手不足、忙しい職場など、有給が取れない雰囲気の職場で、有給が取りずらい場合。
やはり会社や職種・業界によっても有給の取得率は大きく異なります。上手く根回しをしてから申請をするのが一番ですが、取りづらい雰囲気の職場は休みをとったら陰で悪口言われたなんてこともあります。
働き方改革が進んでいる現在は、取得日数・取得率共に年々上昇していますので、有給が取れない職場で働いているなら、もっと働きやすい会社を探してみるのも手です。
業界でいうと自動車関連企業などの製造業は業務計画を立てやすい点から有給が取得しやすくなっています。
転職エージェントを利用して企業探しをすると企業の内情や有給取得率の提示、有給の取りやすい企業を紹介してくれたりします。
転職活動中、応募先との面接などは平日が多く、そのために有給休暇を使いたい時もしばしばあることでしょう。
そのためにも自分の有給が何日残っているのか、申請方法と共に早めに調べておきましょう。有給の申請には、有給をとる日の何日か前に書類提出の必要がある場合や、上司の了承が必要な場合があります。
養う家族がいる場合など、会社の退職日と新しい会社の入社日はなるべく開けずにいきたいもの。労働者に与えられた権利である有給休暇をしっかり使って、転職活動をスムーズに成功させましょう!