化学系の仕事は化学メーカーが就活の中心と考えられており、一般的なイメージでは就活が難しいと思われている分野です。
化学系は研究・開発が主な仕事になることから、専門性を求められることも影響しています。
しかし、実際には化学系出身の学生は就活で非常に有利で、就職できる業界も幅広い専攻分野です。
今回は化学系を専攻しながら就活を行う学生向けに、人気の業界や企業選びのポイントを解説していきます。
化学系学生は就職が難しいとも言われますが、実際には専攻内容との相乗効果で就活でも非常に有利です。
どのような分野に就職しやすいのかについても、合わせて解説していきます。
化学系学生は、化学メーカーに就職するものと思われがちですが、化学系出身の学生を求める業種・業界は世の中に数多くあります。
現代の生活において化学を応用した技術は溢れており、一部のメーカーを除けば化学は不可欠だからです。
科学の知識を活かしている分野を例に挙げると、石油業界、食品メーカー、工業メーカー、製薬会社など幅広い分野があります。
また、既に開発されて世に出回っている物でも、より効率化するためには化学による研究・開発が必要です。
そのため、化学系出身の学生は就職が難しいどころか、就職の際に専門性を活かしやすく、有利な立場にあると言えます。
化学の知識はモノづくりにおいても必須で、工場で使用される薬品や特殊な溶剤なども科学分野の知識で成り立っています。
専攻する内容によっても違いはあるものの、日本の大手企業なら化学部門を持っていないところはありません。
化学系が就職しにくいと言われてきたのは、学部卒では選べる就職先に制限があることと、同じ理系の機械系や工学系と比べられてきたからです。
機械・工学系は元々就職に強い分野で、製造業からIT分野まで様々な企業から引く手あまたです。
そうした分野と比較されてしまうことで「就職が難しい」とされていますが、化学系も就職で有利なことは間違いありません。
化学の知識を活かして、モノづくりの分野で就活を進めれば、様々な業界に就職できるでしょう。
化学系の学生が就職先を考える時は、学部卒・修士卒・博士卒でそれぞれ選択肢が大きく変わります。
学部卒は化学の基礎知識を持っていますが、高度な知識を求められる研究開発の仕事はハードルが高くなります。
そのため、学部卒の場合は製造工程の担当や品質管理、営業の仕事が多いです。
一方、修士卒なら知識を活かして研究開発や製品のグレードアップ、製造工程の効率化などの仕事内容が増えます。
さらに、博士卒なら技術開発の基礎研究や実用化研究など、高度な研究開発職としての活躍を求められるでしょう。
学歴によって選べる就職先が変わってくるため、自分のやりたいことを考えて進学、就職を考えることが重要です。
就職先に迷っている方のために、化学系学生の就職先として人気のある業界を5つ紹介します。
化学系学生の就職先で人気が高いのは、やはり化学メーカーです。
化学メーカーと一口に言っても、原油や天然ガスを精製する川上、精製したものからプラスチックや繊維などの中間製品を生産する川中、中間製品から消費者向けの製品を作成・流通させる川下に分かれます。
日本の化学メーカーは世界でもトップレベルの技術を持っており、多くの人材を求めています。
学歴によって川上・川中・川下のどこに就職できるかは変わりますが、やりたい仕事がある場合は、それに合わせて専攻しましょう。
近年は石油依存からの脱却を目指す企業も増えており、新しい技術開発が積極的に行われている業界です。
化学系学生に人気のある業界2つ目は、自動車業界です。
自動車業界は自動車部品の製造から完成車が出来上がるまで、広い分野で化学系学生に人気があります。
自動車業界は機械工学のイメージが強いかもしれませんが、自動車の内装に使用される樹脂、部品を構成する高性能のプラスチックなど、色々な部分に化学が活用されています。
また、近年はハイブリッド車と電気自動車の開発が進んでおり、テクノロジーの進歩と共に科学の知識を必要とするシーンも多いです。
最新の科学技術を学びつつ、研究開発も行いたいなら自動車業界がおすすめです。
食品と化学には関係性が薄いように思う方も多いでしょうが、食品メーカーと化学には深いつながりがあります。
私たちが普段から料理に使用している化学調味料は、名前の通り化学の知識が使われています。
また、様々な味わいを出してくれる人工甘味料も、化学の研究開発で生まれたものです。
その他、人工着色量や防腐剤、食品添加物など、現代の食品にとって化学は欠かせない存在です。
化学に基づいて研究開発することで、人体に影響の少ない添加物や防腐剤も作成されています。
私たちが安心して食べ物を口にできるのも化学のおかげであり、同時に化学系出身の学生から人気のある就職先です。
化粧品業界も化学系出身の学生からは人気の業界の1つです。
化粧品はファンデーションや化粧水、乳液、香水など、原料を元に化学的に作られたものがたくさんあります。
最近の化粧品は水や洗顔料では簡単に落とせず、専用の薬品を使って落とせるように作られています。
そうした技術の進歩も化学研究によって生まれたものです。
また、メイク落としに使用される界面活性剤も、科学の知識に基づいて作られています。
化粧品は肌に直接触れるものだからこそ、人体への影響を最小限にしつつ、より質の高い製品を生み出すために日々研究が行われています。
化学の知識を存分に活用できる業界であり、化学系出身の学生からの人気も高いです。
化学系の知識を活かして研究・開発を行えることから、製薬業界の就職希望者も多いです。
製薬会社では年間数十億円、多ければ数百億円という研究開発費をつぎ込み、医薬品の開発を行っています。
私たちが病院やドラッグストアで目にする薬も、そうした製薬会社の長年の努力によって生まれたものです。
製薬業界では化合物の薬理作用と化合物の効果を研究する「研究職」と、過去の実験データや試験を通して新薬を開発する「開発職」があります。
どちらも高度な化学知識が求められますが、やりがいと専攻分野の知識を活かせることから人気の就職先です。
化学系出身の学生が就活を進める際、有利になる資格を6つ紹介します。
有機溶剤作業主任者は、有機溶剤を使用する作業、換気装置の保守・点検・使用状況、作業環境の監視など、安全に有機溶剤を使用できるだけの知識と技術を持つことを証明する資格です。
化学工場や医薬品の製造工場など、有機溶剤を使用して作業する現場で必要とされ、有資格者は現場の管理者になることができます。
工場などの現場で管理者になることを考えているなら、取得しておくと有利になります。
合格率は比較的高めで、化学系出身の学生なら取得しておいて損はありません。
高圧ガス製造保安責任者甲種は、化学工場で使用する高圧ガスの取り扱い能力を見る試験です。
高圧ガス製造保安責任者の資格には甲種・乙種・丙種の3段階あり、甲種が最も幅広い機器を扱える資格になっています。
甲種を取得すれば、高圧ガス機器を取り扱う企業からの評価が高くなり、将来的に責任者としてのキャリアアップにも繋げられます。
また、乙種でも十分有利になるため、化学メーカーへの就職を希望している方は、高圧ガス製造保安責任者の資格を取得しましょう。
乙種および甲種危険物取扱者は、ガソリンスタンドや石油会社で働く場合に必要な資格です。
ガソリンや灯油、軽油などの引火の危険性がある液体の取り扱いが可能になる資格で、現場で働くなら必須になります。
特に、甲種は受験資格として、化学系の大学または学部で15単位以上の履修が条件になっており、化学系出身の学生のためにあるような資格です。
公害防止管理者1種(大気・水質)は、工場のある地域とその周辺地域の大気・水質・騒音等を調査し、具体的な改善策を考える能力を測定する資格です。
工場を持つ化学メーカーや食品メーカー、製造業のほか、公務員としての就職する道も選べます。
日本でも昔から工場排水や化学物質の流出による公害は起こっており、そうした公害を起こさないためにも必要とされる資格です。
難易度は高い試験ですが、取得していれば化学メーカーへの就職で非常に有利です。
エネルギー管理士は、工場で使用する電気・ガスなどのエネルギーの使用量の監視・管理・改善を行う資格です。
工場では日常的に大量の電気とガスを使用します。
そのため、工場にはエネルギー管理士の有資格者を配置する義務があり、企業にとって必要な資格です。
工場を持つ化学メーカーや食品メーカー、自動車メーカーで働きたい方は、エネルギー管理士を持っていると就職成功の確率が大幅に高まります。
比較的難易度が高い試験ですが、持っていれば就活で有利になりますから、ぜひ取得を目指しましょう。
化学系の学生に人気のある業界は、海外にも販路を持つメーカーが多い傾向です。
競合企業が外資系ということも多く、英語力が高いほど採用されやすくなります。
また、英語は営業だけでなく、研究・開発職でも必要です。
海外で論文が発表された場合、そのほとんどは英語で書かれています。
英語力が高いとそれだけ活躍のフィールドも広がるため、英語を学んでいくに越したことはありません。
就活で英語力をアピールするためにも、TOEICを取得しておきましょう。
化学系の学生が就職を選ぶ際、どのようなポイントを意識すべきか紹介します。
企業選びに迷っている方は、ポイントを参考に志望動機も考えてみてください。
就職先選びで大切なことは、自分にとって関心のある業界・業種であるかということです。
関心がないのに「大手だから」「収入が多いから」という理由で選ぶと、ミスマッチに繋がるため注意しましょう。
まずは自己分析と企業分析を行い、関心のある業界・業種を明確にしてください。
そのうえで、自分のやりたいこととマッチする企業を探し、企業分析を進めることが大事です。
化学系の出身者は選択できる業界が広く、選択肢は絞りにくいですが、まずは自分が関心を持つ業界・業種を前提に調べてみましょう。
化学系出身の学生には、学生時代に専攻・研究がそれぞれあるはずです。
社会人になってからもそこに繋がる分野を仕事にする人は多く、自分の学びを活かせる職場を選ぶことが重要です。
企業選びでは自分の研究したい内容とマッチする企業を選ぶとともに、企業のカルチャーもしっかり分析しましょう。
いくら研究内容と企業がマッチしていても、企業が研究に消極的で、新しいことに取り組む意欲がなければ意味がありません。
企業は利益を目的に製品の開発・研究を行っています。
現時点では研究段階のものでも、将来的な実用化を目指して進めているため、一定の研究開発費用、投資が行われています。
企業が新しい技術やビジネスに積極的なら、研究開発に充てられる予算も自然と多いものです。
そのため、自分のやりたい研究がある人は、就職希望の企業がどの程度開発費用や投資を行っているか、企業の決算を確認してください。
決算の項目にある「売上高研究開発費率」がわかれば、その企業が研究・開発に力を入れているか否かが判断できます。
この点は大手企業よりも中小・ベンチャー企業の方が積極的に行っているため、どのような研究をしたいかも含め、企業選びは慎重に進めてください。
企業を選ぶ際のポイントは、就職後のキャリアプランをイメージできるかどうかも重要です。
就職にどのようなキャリアプランを描けるかによって、自分にできる仕事や研究内容も変わってきます。
研究開発を通してキャリアアップできれば、研究開発の社内における地位も向上し、より自由な研究が行えるようになります。
また、企業の規模によって、キャリアや研究・開発の立ち位置が違う点も理解すべきです。
例えば、ベンチャー企業や中小企業は資金力が小さいため、限られたリソースの中で効率的な研究・開発を求められるでしょう。
一方、大手企業ならリソースは十分でも、個人で自由な研究をすることは難しくなります。
就職後のキャリアプランや働き方、やりたいことができるかどうかなど、色々な条件をチェックすることが大切です。
掲載されている求人情報だけでなく、インターンシップを利用して現場を体験することも企業選びでは重要です。
いくら求人の条件が良くても、実際に働いてみるとイメージと違うことも少なくありません。
インターンシップで職業体験することで、仕事に求める条件が変わることもあります。
一度就職してしまえば、辞めることは簡単ではありません。
気になっている企業があればインターンシップに参加し、企業と自分の相性、仕事への適性を判断しましょう。
また、1社だけでなく、複数社のインターンシップに参加し、その中から自分に合う企業を探してください。
化学系出身の学生は専門知識を活かしやすく、幅広い業界で必要とされる人材になります。
選択肢が増えるということは、自分のやりたいことをはっきりさせなければ、就職後にミスマッチを起こすリスクも高いということです。
まずは自己分析を行って適性ややりたいことを理解し、何のためにその企業を志望するのか明確にしてください。
採用担当者としても、企業を選んだ明確な理由がなければ、「この会社を選ぶ理由がない」と判断されてしまいます。
就活では第三者に志望動機を伝えることを意識して、やりたいことを言語化できれば就活を有利に進められるはずです。