聴覚障害をお持ちの方。このような悩みを抱えていませんか?
「周りの人との会話についていけない。」
「耳で情報を得ることができない(難しい)。」
そして、そのような悩みから
「私は就職できないのでは?」
「就職しても活躍できないのでは?」
と悩んでいませんか?
結論から申し上げます。
まったく問題ありません。
むしろ、聴覚障害特有の強みを活かすことで、健常者よりも活躍できることがあります。
そこで今回は、
をご説明させていただきます。
まず前提として、自分の聴覚障害の特性を把握していなければなりません。
そのために、まず「聴覚障害」について知りまょう。
聴覚障害・・・音や声が聞こえない、もしくは聞こえにくいという障害。
そして、聴覚障害になった時期によって「先天的」「後天的」に分類されます。
①先天的・・・聴覚組織の奇形、妊娠中のウイルス感染などで聴覚系統がおかされた場合。
②後天的・・・突発性疾患、薬の副作用、頭部外傷、騒音、高齢化などによって聴覚組織に損傷を受けた場合。
つまり、生まれたときから聴覚障害を持っている→先天的
生まれた後、なんらかの原因で聴覚障害になってしまう→後天的
ということになります。
聴覚障害者といっても、種類があります。
・中途失聴者・・・音声言語を取得したあとに聴力を失った(聴こえにくくなった)人。ほとんどの人は話すことができます。
・難聴者・・・聴こえにくい人。その幅はとても広いです。
・ろう(あ)者・・・音声言語を取得する前に聴力を失った(聴こえにくくなった)人。ほとんどの人は話すことができません。
次は、聴覚障害の種類についてです。
障害となった耳の部位により、種類が異なります。
①伝音性難聴・・・外耳、中耳の障害による難聴。
つまり、「音が伝わりにくくなった」状態です。そのため、補聴器などで音量を調整することで聴こえるようになります。医学的治療によって改善することもあります。
②感音性難聴・・・内耳、聴神経、脳の障害による難聴。
音を感じる器官の障害であるため、補聴器で音量を調整するだけでは聴こえるようにはなりません。補聴器の音質や音の出し方を調整することで、比較的聴こえるようになります。老人性難聴と呼ばれる難聴も、感音性難聴の一種です。
感音性難聴の一部として、神経性難聴というものがあります。これは、内耳から脳へ音の信号を送る聴神経の経路途中に損傷や障害があることが原因で起こる難聴です。この難聴の場合、補聴器や人口内耳などは効果がありません。
③混合性難聴・・・伝音性難聴と感音性難聴、両方の原因をもつ難聴。
医学的治療+補聴器や、特殊な補聴器を使用することで、比較的聴こえるようになります。
最後に、「難聴」についてです。
「難聴」と一言でといっても、聴こえづらさは人それぞれです。厚生労働省によって定められた「身体障害者手帳交付基準」を基に、「どのくらい聴こえれば障害者何級になるのか」といった基準で確認していきましょう。
参照:厚生労働省『身体障害者障害程度等級表(身体障害者福祉法施行規則別表第5号)』
ここまでで、自分の聴覚障害の特性を確認できたと思います。
そこで、次に聴覚障害の、仕事上での強みとはなにか確認していきましょう。
健常者であれば、作業中、常に雑音や騒音、周囲の話し声などが耳に入ってきます。
これは、どんなに集中力が高い人であっても、集中力が途切れるきっかけとなってしまいます。
対して聴覚障害をお持ちの方は、そのようなことがない、もしくは起きにくいでしょう。
筆者の勤める障害者支援施設を例にしてみます。
施設利用者のなかに、高度難聴(大きな声でも聴こえにくい程度)のAさんという方がいます。
加工活動の時間中、重度知的障害の方が多数いる空間で、Aさんだけは黙々と作業を行っています。そして、毎回、他利用者の何倍もの成果物をあげています。
このように、聴こえない(聴こえにくい)ことは、「集中力が切れるきっかけを少なくする。」という仕事上での強みになります。
これを見て、「え?」と思われる方は多いでしょう。
聴覚障害をお持ちの方は、「伝えること」と「聞くこと」のスキルが高い方がとても多いという事実があります。
その理由は、自分が聴こえない(聴こえにくい)からです。
自分が情報を得にくい状況にあるからこそ、相手の目線に立って情報を伝えることができます。
情報を得ることに関しても、耳以外で正しい情報を得ようとする意識が自然と高まっているため、正しく情報を受け取ることができます。
つまり「正しい情報をわかりやすく伝えることができ、正しい情報を得ることもできる。」という強みです。
次に、聴覚障害をお持ちの方の強みを活かせる仕事を3つご紹介させていただきます。
主に、データ入力やファイルの整理などを行います。
この仕事は、聴覚障害の強みである、作業に対する集中力の高さが活かせます。
そして、事務職ということは内勤になります。つまり、社内でコミュニケーション能力の高さを活かし、同僚や上司との良質なコミュニケーションをはかることもできます。
しかし、良い面だけではありません。事務職で行う仕事内容の1つとして、電話応対があります。これに関しては、対応することが難しいでしょう。
ただ、これに関しては簡単な解決策があります。それは、事前に同僚や上司に対し、聴覚障害であるということ、自分の障害特性を説明し理解してもらうことです。
これを行っておくことで、問題なく解決できます。
フリーランスエンジニアなどがこれに当てはまります。
この仕事も、聴覚障害の強みである、作業に対する集中力の高さが活かせます。
クライアントがいる場合であっても、コミュニケーションツールは主にメールとなります。そのため、仕事をする上での障害は少なくなるでしょう。そして、メールでのやり取りは、相手の声や表情が見えないため、難しい一面もあります。ここでも強みである「伝える能力の高さ」を活かすことができます。
ただし、やはりここでも、事前にクライアント側に聴覚障害であることの説明をしておくことで、スムーズにやり取りができるでしょう。
特に先天的な聴覚障害をお持ちの方は、手話を扱える方が多いでしょう。
手話を扱える場合は、それ自体が強みとなって仕事になります。
教わる側の目線に立って教えることができるという点も強みの1つです。
強みと、強みを活かせる仕事がわかったところで、次は仕事の探し方についてご紹介させていただきます。
結論から言うと、以下の支援機関を使うことがメインになります。
①ハローワーク
②障害者就業・生活支援センター
③障害者職業センター
その補助的な位置づけとして、
④障害のある方専門の求人サイト
では、1つずつ解説していきます。
職業安定所です。ほとんどの方は、ここで仕事を探すことでしょう。すぐに仕事を探すことができ、すぐに求人が見つかります。当然、障害者雇用枠での求人もあります。
ただし、すぐに求人が見つかるといっても、即飛びついてはいけません。1つ注意が必要です。それは、「障害者雇用をすることで受け取れる助成金だけが目当ての企業」に注意することです。
そのような企業は、障害特性を理解していない、あるいはする気がないという場合もあります。そのような企業に勤めてしまった場合、居づらいなどの理由ですぐに退職となってしまうでしょう。
ハローワークや行政機関、就労移行支援事業所等の福祉施設、特別支援学校などと連携し、障害をお持ちの方の就労支援・企業への雇用支援を行っています。
雇用前準備支援(就労相談、訓練、求職活動、企業とのマッチングなど)から、雇用後定着支援(本人・企業への定着支援、雇用契約の調整、就職後のフォローアップなど)まで行ってくれます。このように、支援が手厚いことが特徴です。
そして、事業所数が全国に338センター(令和4年度時点)もあることで、利用しやすいというメリットがあります。利用料も無料です。
デメリットは、支援が手厚い反面、就職までに少し時間がかかることです。そのため、「すぐに就職して働きたい」という方には向かないかもしれません。
障害をお持ちの方に対し、職業的自立を促進・支援します。そして、そのための職業リハビリテーションの実施・助言・援助を行っています。障害職業カウンセラーや相談支援専門員、ジョブコーチなどが配置されているため、専門性の高い支援を受けることができます。利用料も無料です。
デメリットは、事業所が全国52ヵ所と少ないため、利用しにくいということが挙げられます。そのほかにも、支援が手厚い反面、就職までに少し時間がかかることが挙げられます。
ベースは、①~③を利用して仕事探しをします。これは、①~③+αとして活用されることをオススメします。上手く活用することで、就職先の選択肢が広がります。
ここまで、聴覚障害の強みを活かせる仕事と、仕事の探し方をご説明させていただきました。
最後に、新たな仕事が決まった後のことをご説明させていただきます。
聴覚障害をお持ちの方が仕事に就く(する)上で、とても重要なことが3つあります。
あなたが新入社員として職場に配属されるさいは、会社から障害のことは伝わっているはずです。ただ、細かな特性までは会社から周知できません。自分で説明する必要があります。しっかり説明しておかないと、最悪、トラブルに発展する可能性があります。
そのため、自分の障害特性はしっかりと把握し、説明できるようにしておいてください。
できるなら、コミュニケーションも兼ねて、自ら障害特性を理解してもらえるように周囲に働きかけましょう。
情報を伝える手段、得る手段を確率しておくことも重要です。
自分のなかで確立し、周知しておくことで、仕事をスムーズに行うことができます。
今回は、
・自分の障害特性を把握することの大切さ
・聴覚障害の強み
・強みを活かした仕事
・仕事探しの方法
・職場決定後に重要なこと
をご説明させていただきました。
意外と、「しっかり自分の障害特性を把握していなかった。」という方は多いのではないでしょうか。
自分に合った仕事探しをする上でとても重要なことなので、しっかり把握し、説明できるようにしておいてください。
そして繰り返しになりますが、聴覚障害をお持ちの方でコミュニケーション能力に長けている方はとても多いです。
コミュニケーション能力は、仕事を行うなかで最も重要な能力であるとも言えます。自分にとって良いことが多いのはもちろんですが、周囲にも良い影響を与えます。
自分が仕事をこなす能力も大切ですが、周囲に良い影響を与える能力のほうが、職場全体にとって大きな利益になります。
その大きな強みを、自信をもって仕事で発揮してください。