派遣先の雰囲気が悪い、パワハラを受けた、思っていた業務と違う、正社員との格差…等派遣社員には様々なストレスが存在します。
「こんなはずじゃなかった!入ったばかりだけど今すぐ退職したい…」
「体調不良により仕事が続けられなくなった…」
と思い詰めているあなた、派遣を辞めるためにはどうしたらよいのか知っていますか。
今回は派遣社員が知っておくべき派遣の退職手順について解説します。
派遣社員は派遣会社と契約した上で、派遣先となる仕事場に出向いて業務を行う存在です。そんな派遣社員が派遣先で「仕事を辞めたい」と思ったとき、目の前にいる上司に「仕事を辞めたいと考えているのですが」と切り出しても良いものなのでしょうか?答えは「派遣先の上司に対し直に退職意思を示しては絶対にいけない」です。
派遣先を辞めたいと思ったときは、まず派遣元の営業担当者に連絡するのがルールです。これは派遣会社の仕組みを考えてみればわかることです。派遣先はあなたや派遣会社にとっては、お金を払ってくれる「お客さん」の立場です。お客さんにいきなり退職の相談をするなんてことはあり得ません。
例えば、あなたが契約している保険の担当者がいきなり「実は仕事を辞めたいんです」と相談してきたらどう思いますか。保険会社に問い合わせて「本当に辞めてしまうんですか?私の保険を担当してくれる後任は決まっているんですか?」と聞きたくなりませんか。その上保険会社が「辞めるなんて聞いてない」と言い出したら…。なんていい加減な会社だろう、もうこんな会社とは契約しないという気持ちになりますよね。
派遣先の気持ちも同じ。いきなり派遣社員に「辞めます」と言われそれを派遣元の会社が把握していないことが分かったら、あなたのイメージも派遣会社へのイメージも悪くなってしまうのです。
派遣社員を辞めたくなったら、まずは派遣元の営業担当者に退職意思を伝えるべきです。派遣元が退職を了承し、派遣先に契約終了の話を伝えるなど退職上の手続きを終えるまで、派遣先の上司はもちろん同僚にも退職意思が漏れないようにしましょう。
正社員から毎日のように嫌がらせをされる、パワハラめいた怒号が飛び交っているなど一刻も早く職場を離れたいという派遣先にあたってしまったら、悠長に退職連絡などせずすぐに逃げ出そうと思ってしまうかもしれませんね。
しかし派遣社員においては無断欠勤、音信不通などの「バックレ」行為は絶対にNGであるということを覚えておいてほしいです。
通常の直接雇用ならば困るのは職場だけですが、派遣社員の場合は派遣会社と派遣先という2つの会社に迷惑をかけることになるからです。
派遣社員がいなくなると「契約違反」ということで派遣先から派遣会社にクレームが入ることになります。場合によっては派遣先から派遣元に損害賠償を請求する事態までこじれることもあります。当然、クレームを受けることになる派遣会社は消えてしまった契約社員を徹底的に探します。何度もかかってくる電話を無視しても、自宅まで話を聞きに来るでしょう。これが嫌なら、引っ越しするしかありません。
さらに、「バックレ」を行った派遣社員は派遣会社のブラックリストに名前があがってしまい、これから仕事を紹介してもらえる確率は0になってしまいます。
無断でいなくなってしまっては、復帰するつもりなのか、意図しない事故や病気なのか、誰も判断ができず次の一手が打てません。しかし「辞める」という意思が確認できれば派遣会社、派遣先共に動きやすくなります。どんな形でも無断でいなくなることだけは慎むようにしましょう。
では、具体的に退職までの手続きをご紹介していきます。
まず、派遣会社の営業担当者に退職の意思を伝えます。退職の意思表示は、できるだけ次回更新日の1か月前までに伝えるようにしましょう。1か月という余裕を持たせることで、仕事の引継ぎやあなたが抜けた後のシフト調整に時間をかけることができます。
派遣会社が退職を承諾すると、派遣先の上司にもあなたが辞めることが伝わります。状況に応じて、派遣先の上司に一言退職のあいさつをしておきましょう。
本格的に退職が決まったら、後任の担当者に仕事の引き継ぎをします。業務の引継ぎマニュアルがある場合はそれに従います。また、不要になった書類は処分しておきます。ただし書類の中には安易に破棄したり、持ち出したりすると問題になるものがあります。処分の都度、派遣先の上司に確認を取りましょう。
退職日の数日前には仕事で関わりのあった関係部署、取引先にメール等で最終出社日を知らせておきます。最終出社日が共有されると職場内の引継ぎをスムーズに行うことができます。
最終出社日には、お世話になった人に挨拶を行い、会社から支給されている備品等を忘れずに返却します。退職後も職場から連絡がこないよう、忘れ物をしないように気を付けてください。
また、退職後すぐに行っておきたいのが社会保険の切り替えです。退職後の転職先がすでに決定している場合を除いて、厚生年金を国民年金に変え、国民健康保険に加入する必要が出てきます。社会保険の切り替えを忘れると、膨大な医療費の請求や年金の目減りなど後々金銭的な損失が大きくなるので必ず手続きを行うようにしましょう。
派遣社員が辞めると、仕事を引き次ぐ新しい人材が必要になります。しかし、新しい人材がすぐに見つかるとは限りませんね。派遣社員が長期で働いてくれれば派遣会社の利益にもつながります。そのためただ「辞めたい」と伝えたとしても、派遣会社から引きとめに合うことがよくあります。
とくに「業務内容に不満がある」「人間関係が嫌だ」といった派遣先を原因とした退職理由をあげれば「環境が改善されるよう、派遣先に掛け合うから」と引きとめられてしまう可能性が大きいです。
そこで、できるだけ派遣先の話はせず、自分のプライベートにかかわることを退職理由にあげるのが無難です。
「自分の体力や精神力が限界で、このままでは病気になってしまうかもしれません」
「家族の具合が悪く、しばらく看病する必要があるのです」
「今の仕事以上にやりがいを感じる職種を見つけたので挑戦してみたいのです」
「正社員として現在就職活動中で、いくつかの企業から手ごたえのある返答をいただいている状態です」
このようなあなた自身を理由にした退職理由では、派遣会社が踏み込むことが難しくなるでしょう。
派遣会社に辞めることを受け入れてもらい、円満退職できたとして、そのあとのことは考えていますか。今後の行動を考えるときは、今回どうして退職に至ったかという理由を手掛かりにするとよいでしょう。
派遣会社から聞いていた内容と派遣先での仕事が全然違った、有給の取り方など待遇面に不満がある。
派遣会社自体に信頼がおけなくなっているパターンです。もっと評判の良い派遣会社を探して、新しく登録してみましょう。
正社員から嫌がらせを受けるなど、残念ながら正社員の中には派遣社員を下に見る人間もいます。また、給料の安い派遣社員に正社員並みの働きを求める上司もいます。派遣社員としての働き方に限界を感じたら、いっそ正社員として就職先を探してみてはどうでしょうか。
派遣社員は会社の外からやってくる人間ですので、同期入社組のようなグループが作りにくいです。また短期間の契約を繰り返すので、いつまで会社にいるかもわからない存在でいつまでたっても「よそ者」という感覚にとらわれることも。近くに同じ立場の人間がいないと、悩みを相談する相手も作れず、孤独を感じることもあるでしょう。あまり干渉されるのが好きではないという人には派遣社員の生き方が向いていますが、孤独感を感じるならあなたは仕事場の仲間と仲良く働くことを重視するタイプなのかもしれません。直接雇用で働き、長期のお付き合いができる仕事仲間をもつことを考えてみてはいかがでしょうか。
職場環境が良い職場を探すには、離職率の低い会社を探す必要があります。派遣会社の中には「離職率が低いこと」を条件に派遣先を探してくれるところもあります。また、転職エージェントを利用すると、転職先の情報を転職前に知ることができます。派遣会社や転職エージェントを上手に使って、自分に合った良い職場を探す努力をしてみましょう。
それでは派遣社員を辞める時の手順を復習してみましょう。
まず、契約更新の1か月以上前に派遣会社の営業担当に「辞める」という意思を伝えます。引きとめに合う可能性もあるので、派遣先には関係のない自分自身の事情を退職理由に挙げるとよいでしょう。派遣会社が退職を承諾してから派遣先の上司に退職の挨拶をし、関係各所に退社日を知らせます。後任への引継ぎ業務を行い、退社日には会社から支給されている備品等を返却します。退職後の転職先が決まっていない場合は、国民年金と国民健康保険へ加入手続きを行います。
派遣社員は派遣会社と派遣先という2つの会社に関わる立場ですので、正しい退社手順を踏まないと双方の会社に迷惑をかけることになります。ルールを守って円満に退職し、すっきりした気分で次のステージへ踏み出しましょう。