食品、アパレル、化粧品や本――ネット社会と呼ばれる近年ではインターネット販売も増えましたが、まだまだ店舗で販売する人もたくさんいらっしゃいます。
そんな身近な販売職、ご自身でもご経験があるという方も多いのではないでしょうか。
販売や接客と呼ばれるサービス業は、お客様へ接客して様々な商品を販売したり、サービスを提供したりすることです。
その多くは資格不要、経験不問としている場合が多く、パートやアルバイトで気軽に始められるという印象もあるでしょう。しかしそんな販売業・接客業でも、役立つ資格がさまざまあることはご存知でしょうか?
資格は持っていて損はありません。ご自身のスキルアップや就職・転職の際にアピールすることができ、有資格者は給与がプラスされるなど、有利になることも多いです。
今回は今販売職に就いている方やこれから目指そうと思っている方へ、おすすめの資格をご紹介します。ご自身が目指す販売・接客のジャンルに合わせて、是非ご参考ください。
「資格がなくてもOKなのに、わざわざ資格を取る必要があるの?」と思われる方もいるかもしれません。
しかし前述のとおり、資格を取得するメリットはとても大きいです。
資格を取得するメリット
いかがでしょうか?「ワンランク上の販売員になりたい」「販売職で上を目指したい」と思っている方には是非、資格取得がおすすめです。
接客に関する資格からディスプレイや経営に関する資格まで様々なものがありますが、今回ご紹介するものはどれもすぐ実践に役立つ知識ばかりです。資格取得で販売力・接客力をアップさせましょう。
販売士は、商工会議所主催の検定資格です。30年以上前から実施されている歴史ある検定資格で、小売店における「販売のプロ」を育成するためのノウハウが学べます。
具体的にはスーパー、百貨店、衣料品、家電量販店など、様々なお店で役立つ販売知識と経営計画について幅広く網羅されています。
接客だけでなく、経営についても学びたいという方に特におすすめです。
各級のレベル
販売士には3級、2級、1級があり、求められるレベルは以下の通りです。
接客や売場づくりなど、販売担当として必要な知識・技術を身につけた人材を目指す。
流通・小売業に限らず、BtoCの観点から社員教育に取り入れている卸売業や製造業もある。
販売促進の企画・実行をリードし、店舗・売場を包括的にマネジメントする人材を目指す。
幹部・管理職への昇進条件として活用しているところもある。
経営に関する極めて高度な知識を身につけ、商品計画からマーケティング、経営計画の立案や財務予測等の経営管理について適切な判断ができる。
マーケティングの責任者やコンサルタントとして戦略的に企業経営に関わる人材を目指す。
1級から3級の全級がネット試験方式となり、試験会場(テストセンター)のパソコンを使用し、インターネットを介して試験を実施します。
試験概要
これまでの年2回の統一試験日での実施と異なり、随時受験が可能となります。試験開始日はその年により異なるので確認が必要です。※受験停止期間を設けてる日がありますのでご注意ください。
受験料
各級の合格率と難易度
図1)各級の合格率と難易度
級 | 期間 | 実受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|---|
3級 | 2022.4.1~2023.3.31 | 8,981名 | 5,130名 | 57.1% |
2021.7.28~2022.3.31 | 8,894名 | 5,607名 | 63.0% | 2級 | 2022.4.1~2023.3.31 | 6,374名 | 3,531名 | 55.4% |
2021.7.28~2022.3.31 | 5,655名 | 3,136名 | 55.5% | 1級 | 2022.4.1~2023.3.31 | 1,033名 | 218名 | 21.1% |
2021.7.28~2022.3.31 | 795名 | 137名 | 17.2% |
級 | 回 | 実受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|---|
3級 | 第83回(2019.2.20) | 9,244名 | 6,370名 | 68.9% |
第84回(2019.7.13) | 7,534名 | 5,082名 | 67.5% | |
第85回(2020.2.19) | 8,125名 | 4,441名 | 54.7% | |
第87回(2021.2.17) | 9,613名 | 6,863名 | 71.4% | |
2級 | 第83回(2019.2.20) | 5,175名 | 3,553名 | 68.7% |
第84回(2019.7.13) | 4,702名 | 2,836名 | 60.3% | |
第85回(2020.2.19) | 4,916名 | 2,979名 | 60.6% | |
第87回(2021.2.17) | 5,149名 | 3,778名 | 73.4% | 1級 | 第81回(2018.2.21) | 979名 | 199名 | 20.3% |
第83回(2019.2.20) | 995名 | 242名 | 24.3% | |
第85回(2020.2.19) | 909名 | 194名 | 21.3% | |
第87回(2021.2.17) | 695名 | 174名 | 25.0% |
3級の合格率は、過去3年間を平均すると63.8%。それ以前の合格率も52~67%の間に収まっています。2021年の受験者データによると10代が39%、次いで20代が約40%と学生や新卒の方がスキルアップのために挑戦しているようです。
次に2級ですが、3級より受験者数は少ないですが合格率は一定以上あります。20代の受験者が40%近くを占めており、中堅クラスの方が対象と言えます。
1級は、受験者数、合格率ともにぐっと下がり、その難易度が伺えます。40代の受験者が多く、管理職レベルの方が実務のために挑戦されているようです。
2021年度よりネット試験方式での受験となり、随時受験が可能となっています。
合格後
5年ごとに更新の必要があります。
接客サービスマナー検定はホテル、ブライダル、化粧品販売など様々なサービス業で活かせる資格です。お客様に上質なサービスを提供するため、好印象を持ってもらうための作法やビジネスマナーを習得することが目的です。
実際に接客サービスをおこなっている方ほもちろんこれから就職を考えている方にも役立つ内容のため、近年学生の受験者数が増えています。
各級のレベル
3級、2級、準1級、1級があり、求められるレベルは以下の通りです。
高校で学ぶ程度の基礎的なサービスマナー能力を問う試験です。接客サービスの仕事に就くのに最低身につけておきたいマナーの基本など、社会人や高校生が自分のマナー知識・能力を試すのに適したレベルです。
エアライン業界やホテル業界、ブランドビジネスを初めとした質の高い接客サービスが求められる分野での接客サービスマナー能力の基本が求められるレベルです。様々なお客様に対しても基本的に納得していただける能力が身に付いているかどうかが問われるレベルです。
ワンランク上のサービスを求めるお客様への対応が十分にでき接客サービスマナーの能力を知識だけでなく行動できるレベルです。一次試験合格者に対しては二次の実技試験の際に、実際にどのような行動を取ることができるのかを面接形式で問われます。
接客サービスのプロとして経営の立場からも考えることができ、知識・行動ともにお客様に満足していただけるレベルです。
筆記試験は準1級と同じですが合格ラインが異なります。一次試験合格者に対しては二次の実技試験の際に、実際にどのような行動を取ることができるのかをロールプレイング形式で問われます。
試験概要
受験資格は不問。
試験は2月、5月、8月、11月の年4回おこなわれます。筆記試験会場は札幌、仙台、東京、横浜、新潟、金沢、名古屋、京都、大阪、広島、高松、福岡、鹿児島、那覇の14都市で、上級の実技試験・面接は東京、大阪、名古屋、福岡でおこなわれます。
また、自宅等で受検可能なオンライン受検も実施しています。
出題範囲
筆記試験の構成はすべての級で同じですが出題レベルが変わります。
受験料
※いずれも併願可能です。
接客販売技能検定は、2017年度より厚生労働大臣から指定試験機関として認定された小売業界初の国家資格です。合格すると「接客販売技能士」に認定されます。まだ歴史は浅いですが、国家資格なので取得のメリットはとても大きいです。
内容も実践的なものばかりなので、スキルアップのため知識を再確認するためにも最適な資格といえるでしょう。
各級のレベル
受験科目はレディスファッション販売、メンズファッション販売、ギフト販売の全3種。それぞれ1級~3級の等級があり、それぞれ受験資格が定められています。
※ショップチーフ又はリーダークラス、課長・係長職等
※店長又は副店長クラス、エリアマネージャー等
試験内容
試験は筆記試験と実技試験で構成されており、出題範囲は以下の通りです。
各級により出題レベルが異なります。いずれも販売・接客をおこなう上で実践に役立つ内容ばかりです。
合格率と難易度
第8回(2023年6月)実績
図2)各級の合格率と難易度
級 | 実受験者数 | 合格者数 | 合格率 | |
---|---|---|---|---|
3級(学科) | レディス | 42名 | 15名 | 35.7% |
メンズ | 35名 | 14名 | 40.0% | |
ギフト | 170名 | 149名 | 87.6% | |
3級(実技) | レディス | 41名 | 29名 | 70.7% |
メンズ | 35名 | 22名 | 62.9% | |
ギフト | 170名 | 149名 | 87.3% | |
2級 | レディス | 25名 | 22名 | 88.0% |
メンズ | 15名 | 13名 | 86.7% | |
ギフト | 82名 | 69名 | 84.1% | 1級 | レディス | 9名 | 3名 | 33.3% |
メンズ | 3名 | 1名 | 33.3% | |
ギフト | 21名 | 14名 | 66.7% |
科目によって合格率の
ばらつきはありますが、3級はギフト科目の合格率が80%以上と高いです。2級は受験資格が必要ということもあり受験者数は少ないものの、3級に比べ合格率は比較的高いです。
受験資格があれば、ぜひ挑戦してみとよいでしょう。1級は受験者数、合格率ともに少なく、難易度が高いです。
受験料
級 | 筆記 | 実技 | 合計 |
---|---|---|---|
3級 | 8,000円 | 8,000円 | 16,000円 |
2級 | 8,000円 | 17,000円 | 25,000円 |
1級 | 8,900円 | 29,900円 | 38,800円 |
※いずれも税別。
※クレジットカード及びコンビニ手数料・銀行振込手数料等は別途
飲食店で働く接客業におすすめの資格には、レストランサービス技能検定があります。
一般社団法人 日本ホテル・レストランサービス技能協会が主催するホテル・レストランなど食事や飲料に関するサービス技能を有する人のための国家資格で、「公衆衛生」「料飲一般の知識」「安全管理」やテーブルマナーなど、料理に関する幅広い知識を身につけることができます。
各級のレベル
3~1級の3つのレベルに分かれており、それぞれ受験資格が異なる点に注意しましょう。3級は1年以上、2級は3年以上(または3級合格後2年以上)、1級は11年以上(または2級合格後4年以上)の実務経験が必要となります。
ただし3級は、日本ホテル・レストランサービス技能協会が承認する学校で料飲接遇サービスに関する学科を卒業していれば、実務経験がなくても受験することができます。その他にも各級とも細かい受験資格が設定されていますので、詳細はHPを確認すると良いでしょう。
http://www.hrs.or.jp/kentei2023/tebiki.pdf
試験内容
試験は各級とも筆記試験と実技試験で構成されており、出題範囲は以下の通りです。
項目は各級共通ですが、それぞれ出題レベルが異なります。いずれも飲食店の接客で実践に役立つ内容ばかりです。
合格率と難易度
レストランサービス技能検定の合格率は、公式には発表されていません。
平成20年頃のデータでは各級とも学科がおよそ50%前後の合格率という記録があり、国家資格だけに難易度は高めです。
日本ホテル・レストランサービス技能協会のHPには過去3年間の各級の過去問が公開されていますので、しっかり取り組んで対策しましょう。
受験料
級 | 筆記 | 実技 |
---|---|---|
3級 | ¥6,500 | ¥8,000 |
2級 | ¥10,500 | |
1級 | ¥23,500 |
※いずれも税込。
一般社団法人日本プロフェッショナル販売員協会(JASPA)主催の民間資格で、販売員の能力向上や長期的キャリアモデルの形成を目的とした資格です。
これまで販売員の実力=売上と評価されていたものを、そこまでに至るプロセスや販売員のコミュニケーション能力など売上以外の部分にスポットを当て、販売員を評価できるようにと2019年に新しく創設されました。
取得すれば販売員のロールモデルとして活躍できる、今後注目すべき資格のひとつです。
試験概要
対面販売の実務経験5年以上で、販売している商品がファッション(婦人服、紳士服、シューズ、バッグ、小物、アクセサリー)、宝飾、時計のカテゴリーに属する販売員
(※学生の受験は不可)
①一次試験(筆記試験)…商品/販売知識科目、教養科目の2科目
②二次試験(ミステリーショッピング方式で、1~2カ月の内で2回、それぞれ別の調査員が評価を実施)
上記の試験結果、適性検査、応募時の書類(ミニ論文、推薦状の内容、KPI等)を総合評価し、合否を決定する。
下記の資格を取得している方は、いずれも一次試験が免除となります。
・ファッション能力検定2級以上 資格取得者(ファッション教育振興協会)
・ジュエリーコーディネーター3級以上 資格取得者(日本ジュエリー協会)
・ウォッチコーディネーター(CWC)所持者 (日本時計輸入協会)
取得後も販売力を維持するために、5年間の有効期限が定められています。5年後に簡易チェックを受けクリアすれば資格が更新されます。
なお一次試験合格者で二次試験の不合格者は、3年間の有効期限があり一次試験が免除されます。
一次試験 14,000円(一般価格)/10,000円(JASPA会員価格)
二次試験 32,000円(一般価格)/28,000円(JASPA会員価格)
※いずれも税込。
※二次試験料には登録料を含む。
現在は東京・大阪・名古屋・福岡にて開催。
日本ファッション教育振興協会が主催するファッション販売能力検定。接客販売スキルやショップ運営などに必要な知識を習得し、能力向上を目的とした民間の資格です。
百貨店などアパレル業界では知名度の高い資格で、販売スキルを磨きたい、マネジメントについて学びたいという方におすすめです。
各級のレベル
1級~3級まであり求められるレベルは以下の通りです。
ファッション商品知識、販売知識、接客技術、マーケティング、VMDなどに関する専門教育を1年程度学んだレベル。ファッション商品販売の仕事に携わる場合に必要とされる、基本的なファッション商品知識、販売知識、接客技術などを問います。
ファッション商品知識、販売知識、接客技術、マーケティング、VMDなどに関する専門教育を2年程度学んだレベル。専門的な販売知識や接客技術を習得し、販売実務である程度、実績と経験を積み、臨機応変な接客対応と販売、事務処理などができるかを問います。
教育機関などでファッション知識やファッション販売技術、ショップ・マネジメントに関する専門教育を2年以上履修し、卒業後ショップでの実務を3年程度経験したレベル。若い管理・責任者の育成という目的から、対面接客販売であること、経営者や本部の支援システムがある店舗であることを前提に構成しています。
試験内容
2・3級の試験はA科目(130問)とB科目(170問)で構成されており、出題範囲は以下の通りです。
A科目 |
|
---|---|
B科目 |
|
1級の試出題範囲はマネジメント向けとされており、以下の通りです。
ショップ・マネジメント知識 |
|
---|---|
販売知識 |
|
販売技術 |
|
難易度
合格率は公表されていませんが、2・3級に関しては難易度は比較的易しいと言われています。1級は前述の求められるレベルにもあるように実務を3年以上経験したレベルと想定されているので、しっかりとした対策が必須と言えます。
受験料
試験会場
2級・3級は年2回、主催協会が指定した会場、または教育機関(専門学校・大学等)にて実施されます。1級試験は年一回、東京でおこなわれます。
カラーコーディネーターは、仕事やプライベートで活かせる色彩の知識を学ぶ検定資格です。例えば商品ディスプレイの際に色彩を活用して目立つ陳列をおこなったり、色彩知識を活用した商品コーディネートを提案するなど、色は販売・接客(サービス業)の仕事ではかなり身近な存在といえます。
もともと色覚感覚センスのある方もいらっしゃいますが、資格があれば根拠のある色使いを提案することができ、会社や顧客からの信頼度も高まるでしょう。
各級のレベル
2020年度より級制度がなくなりスタンダードクラスとアドバンスクラスに変わりました。
まだ過去の実績がないため難易度がハッキリしていませんが、スタンダードクラス=旧3級レベル、アドバンスクラス=旧2級レベルだと予想されています。
求められるレベルと出題範囲は以下の通りです。
スタンダードクラス
日常から見た色彩に関する基礎的な知識について理解している。
アドバンスクラス
スタンダードクラスの知識に加え、ビジネスにおける色彩の活用事例など幅広い知識を有している。
以前の制度より出題範囲が狭くなっているため難易度は優しくなっているのではないでしょうか。
過去問が存在しない分、テキスト演習を繰り返すことが重要となります。
試験概要
受験資格は不問。
年2回の試験で、期間が定められています。
2023年度の第54回は6月23日(金)~ 7月10日(月)の間で受験。
第55回は 10月27日(金)~ 11月13日(月)の間で受験。
それぞれ、ご自身のパソコン・インターネット環境を利用し、受験いただく試験方式です。
詳細はこちらの公式案内を確認
受験料
最近では都心に限らず、郊外のお店にも外国客は増えています。そこでおすすめなのが世界共通の評価システム、TOEICです。TOEICは「国際コミュニケーション英語能力テスト」として世界中で活用されており、問題もすべて英語、検定結果の公平性がしっかり保たれていて信頼度がとても高いです。
また今後、販売・接客(サービス業)から転職することがあったとしても、面接等で必ずプラスとなるでしょう。
レベル
TOEICは合格・不合格で判定しません。試験の990満点中、何点取得できたかで結果を評価します。
履歴書には何点から記載できるかというルールはありませんが、600点程度で新卒レベル、700点以上で高評価を得ることが多いです。
またスコアに有効期限はありませんが、一般的には履歴書には2年以内のスコアを記載します。
試験内容
リスニングとリーディングの2項目で、日常会話からビジネス英語まで幅広いシチュエーション問題が出題されます。リスニングが100問(45分間)、リーディングが100問(75分間)の合計約2時間で200問に答えるマークシート方式です。
受験料
7,810円(税込)
試験概要
全国の会場で試験が開催されますが、試験会場は申込締切後に「選択された受験地」と「申込時の郵便番号」をもとに決定しています。
申し込みはインターネットにておこないます。
今回は販売・接客(サービス業)に役立つ資格を8つご紹介しました。
ご自身の仕事に役立ちそうな資格はありましたか?どの資格もテキストや講座がたくさんあり、仕事をしながらでも取得を目指すことができます。
ワンランク上のキャリアを目指して、ぜひ挑戦してみてはいかがでしょうか。