転職や資格取得を考えるとき、できれば将来性のある業界で安定して働ける職場や資格を見つけたいと思う人も多いはずです。数ある業界の中でも、医療は少子高齢化の日本で将来性のある業界として注目されているのは、皆さんもご存じでしょう。
そんな将来性の高い医療関連の仕事には医療事務や医療秘書、看護助手認定実務者、医師事務作業補助者など数多くの資格が存在しています。医療現場の経験がない方にとってはそれぞれの資格の違いや取得難易度、どんな仕事内容を行える資格なのかも、わからないでしょう。
そこでこの記事では、最近注目を集めている医師事務作業補助者の仕事内容や資格の難易度についてまとめてご紹介します。
医師事務作業補助者は、医師の事務仕事を補助するのが仕事です。医師の長時間労働は随分前から問題視されていますが、なかなか改善されない状況にありました。そのため、厚生労働省が病院勤務医の負担軽減のため、医師の補助者として医師事務作業補助者が事務代行業務を行うことを可能にしました。
出典:厚生労働省ホームページ「参考資料 (病院勤務医の負担軽減の実態調査)」
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/04/dl/s0415-10c.pdf
病院からもらえる書類のほとんどは、医師事務作業補助者が扱える書類です。例えば(医師の指示のもと)紙のカルテや電子カルテへの記入、診断書、紹介状、保険証明書、処方箋などの文書作成。受診予約、医師のスケジュール調整などが業務となります。
クリニック等の場合は常勤の医師が多い傾向にありますが、大学病院等の場合は曜日によって医師が異なる場合も多いです。そのためどの曜日にどの医師が来るのかを把握し、スケジュール管理を行うことも医師事務作業補助者の重要な仕事です。
高齢者が増えれば医療機関にかかる人も増えるため、病院によっては非常に忙しい可能性もあります。
仕事の特徴としては、医師や看護師をはじめ、事務スタッフなどさまざまな方とコミュニケーションをとって働く必要がありますし、ミスをしてしまうと大きな問題に発展しやすい業種のため、精神的にきつい場合もあるかもしれません。
また、ずっと指示された事務作業を着実にこなしていくので、淡々とした作業が苦手な方にとっては辛いと感じることも。医療事務とは異なり、あまり受付で患者さんに対応する頻度は低いですが、医院の大きさや配置換えなどで変わる場合も考えられるので、働く環境を事前に確認しておくと安心です。
医師からの指示でカルテや診断書への書き込みなど重要度の高い仕事もたくさん担当するため、仕事で大変な部分はあるでしょう。患者さんを救う医師の助けとなる仕事のため、やりがいを感じる仕事であるといえます。そんな医師事務作業補助者の資格は、どんなものなのかをご紹介します。
医師事務作業補助者資格で検索すると、試験・通信講座共に色んな種類が出てきますが、すべて医師事務作業補助者の資格です。
一般財団法人日本医療教育財団 公益社団法人全日本病院協会が実施している認定試験であるドクターズクラーク(R)。JSMA技能認定振興協会が実施している検定試験である、ドクターズオフィスワークアシスト(R)。日本医療事務協会が実施している、ドクターアシストクラーク養成講座などがあります。
認定試験や検定試験を実施している団体はその試験に合格すれば、ドクターズクラーク(R)やドクターズオフィスワークアシスト(R)などの称号を与えられ、合格者であることを証明できます。
同じ資格なのに、なぜこのようにたくさんの試験や講座があるのか不思議に思う方も多いでしょう。それは、医師事務作業補助者資格が国家資格ではなく民間資格であるからです。
実は、医師事務作業補助者の資格なしでも医師事務作業補助者として働くことは可能です。また、残念ながら医師事務作業補助者の資格を取ったからといって、就職が確実になるというわけではありません。
今医療機関に従事している方が、自分の知識を増やしてミスなく仕事ができるように試験を受験したり、講座を受講したりする場合も多いです。医療機関としては経験者に来てもらう方が助かるため経験者が有利であることは変わりませんが、何もしないで応募するより医師事務作業補助者の資格を持っている方がやる気のアピールにはつながるでしょう。
医師事務作業補助者を目指して転職活動をしているのであれば、資格取得と並行して行い、意欲をアピールしてまずは内定をもらいましょう。そして、仕事に従事しながら知識を身につけて医師事務作業補助者の資格を取得するのがおすすめです。
このようなスケジュールで取り組んでいけば、仕事の知識を事前に身につけてから勤務となるため、仕事の習熟度を高めやすいというメリットもあります。
では次に、医師事務作業補助者資格の受験概要と難易度をご紹介します。
それぞれの受験資格や試験日・試験内容・受験料をご紹介します。
・受験資格:1.教育機関等が行う教育訓練のうち、認定委員会が認定規程により定める「医師事務作業補助技能認定試験受験資格に関する教育訓練ガイドライン」に適合すると認めるものを履修した者
2.医療機関等において医師事務作業補助職として6ヵ月以上(32時間以上の基礎知識習得研修を含む)の実務経験を有する者
3.認定委員会が前各号と同等と認める者
※1~3のいずれか一つに該当する者
・試験日:年6回(5月、7月、9月、11月、1月、3月)
・試験内容:学科と実技の2種類。学科は択一式の筆記で医師事務作業補助基礎知識を問われます。実技は医療文書作成を記述で行います。
・受験料:9,200円(税込)
引用:一般財団法人 日本医療教育財団ホームページ 「技能審査認定 医師事務作業補助技能認定試験の概要」
http://www.jme.or.jp/exam/dc/outline.html
・受験資格:特になし
・試験日:年6回、奇数月第4土曜日に実施
・試験内容:学科と実技の2種類。学科は選択問題で、実技はカルテ・診断書などから文書作成を記述で行う試験です。
・受験料:7,500円(税込)
出典:JSMA技能認定振興協会ホームページ 「医師事務作業補助者ドクターズオフィスワークアシスト(R)検定試験」
https://www.ginou.co.jp/qualifications/doctors-office.html
試験名が違いますが、医療秘書技能検定試験は準1級取得で医師事務作業補助技能認定となります。
・受験資格:特になし
・試験日:2020年は6月の試験が中止となり、11月8日は実施予定となっています。
・試験内容:領域Ⅰ 医療秘書実務、医療機関の組織・運営、医療関連法規
領域Ⅱ 医学的基礎知識、医療関連知識
領域Ⅲ 医療事務(レセプト作成、診療報酬点数表の理解)
・受験料:準1級 6,800円(税込)
引用:一般社団法人 医療秘書教育全国協議会ホームページ 「医療秘書技能検定試験」
http://www.medical-secretary.jp/iryo/index.html
詳細がわかったところで、医師事務作業補助者資格の難易度が気になってきた人も多いのではないでしょうか。
合格ラインが70%以上の正答率とのことだけが判明していて、合格率については公開されていません。
合格率は60%程度であるため、一般的な難易度の資格取得と変わらないといえるでしょう。そこまで難易度は高くありません。そのため、独学で取得を目指すことも無理ではないでしょう。
ドクターズオフィスワークアシスト(R)の取得に向けた講座は株式会社ソラストという企業が養成講座を行っており、JSMA技能認定振興協会のホームページでリンクが紹介されています。独学で資格取得できるか不安な場合は養成講座で勉強するといいでしょう。
出典:株式会社ソラストホームページ 「医師事務作業補助者養成講座(ドクターズ・オフィス・ワーク)」
https://solasto-learning.com/item/C_2303.html
同様に問題集も株式会社ソラストが販売しています。独学で資格取得をしたいならこちらを購入して挑戦してみましょう。
出典:株式会社ソラストホームページ 「医師事務作業補助者ドクターズオフィスワークアシスト(R)検定試験問題集」
https://solasto-learning.com/category/B_OTHER/
医師事務作業補助者技能の認定となる準1級で30~40%の合格率であるため、上記の試験と比べて難易度が高いといえるでしょう。独学の場合は勉強する期間をしっかり設けて取り組まないと合格が厳しくなる可能性があります。
勉強方法に不安がある場合は、講座を受講するなどの対策を講じることをおすすめします。下記リンクで全国の会員校を検索でき、この会員校で通学教育を受けることができます。
出典:一般社団法人 医療秘書教育全国協議会ホームページ 「会員校ご紹介」
http://www.medical-secretary.jp/link/index.html
医療秘書技能認定試験以外の2つの試験はコロナ対策で在宅試験となっているため、落ち着いた環境で受験できます。自分の力を発揮できるように、入念に準備を行っておきましょう。
医師事務作業補助者は資格取得で就職ができるわけではありません。しかし、未経験で資格がなくても内定がもらえれば医療関連の仕事に従事できます。そこで経験者となった後に資格を取得しておけば、医療施設が変わっても安定的に働くことができるでしょう。
手に職をと考えている方はまず就職することを目指しながら、並行して医師事務作業補助者の資格取得を行い、今後のキャリアを盤石なものにしていきましょう。