「人とのコミュニケーションが苦手でおっくう」
「臨機応変な対応ができないから、よく仕事で怒られる。」
「仕事が長続きしない。」
これは自閉症の方が抱えるよくある悩みです。
悩みが深くなると
「私に仕事は務まるのか?」
「怒られ続けてて辛い…。仕事辞めようかな。」
と考えすぎてしまってはいませんか。
もしかしたら本当に自分に合った仕事に出会っていないのかもしれません。
選ぶ仕事によっては、自閉症は最高の「強み」になりえるのです。
今回は、障害者支援施設の生活支援員からの目線で、自閉症をお持ちの方が、最高のパフォーマンスを発揮できる仕事・職業の選び方をお伝えします。
「自閉症」は広い意味と狭い意味の「自閉症」があります。
広い意味での自閉症とはASD(自閉症スペクトラム障害)のことです。
さらにASD(自閉症スペクトラム障害)で自閉症とアスペルガー症候群に大別されます。
「自閉症」には下記の特徴があります。
これらの特徴は生後間もなくから明らかになります。
アスペルガー症候群には、下記の特徴があります。
です。
つまり両者の違いは
コミュニケーションの障害(言語発達の遅れ)がみられるのが、狭い意味での「自閉症」
そうでないのが「アスペルガー症候群」
ということになります。
しかし、実際は両者とも個人差があり、明確には区別ができません。
そのため一般的には、広い意味で「自閉症」と一括りで呼ばれています。
ASD(以下、自閉症)の主な特徴は大きく分けて2つあります。
対人交流、コミュニケーションをとる中での具体的な特徴は以下の通りです。
興味や行動に関しての具体的な特徴は以下の通りです。
ここまで読んで、
「仕事に不利な特徴ばかりじゃないか!
と思われた方。
特徴をよく読み返してください。
と書かれていますよね。そう、これが最大の「強み」なのです。
上記4つの特徴を言い換えると、
「興味を持った特定の領域の専門家になれる。」
「集中力が高く、こだわりが強い。」
ということになります。
これは、自閉症でない人を大きく上回っているポイントです。
障害者支援施設の利用者の中でも、自閉症の方が大勢います(自閉症の人々の半数以上は知的障害を伴い、症状が重い人では合併が多いため)。
その中で、比較的軽度の知的障害と自閉症を合併しているAさんは、法人内の職員(約400名)の家族情報や年齢、勤続年数をほぼ記憶しています。
同じ条件のBさんは、洗濯物を職員以上に早く、かつ丁寧にたためます。
重度の知的障害と自閉症のCさんは、紙を渡すと、職員が止めるまでずっと細かく千切っています。
このように、知的障害の方であっても、自閉症の特徴が大きな強みになっていることが多くあります。
一方、「対人交流、コミュニケーションの質が異常」というポイントは、たしかに弱みです。
ただ、これは自分に合った環境で行える仕事であれば、まったく問題ありません。
では、自閉症の強みを活かせる仕事とは、なにがあるでしょうか。
そこで、自閉症の強みを活かせる職業を、特性ごとに3つにまとめました。
・ライン作業(組立、梱包、検品など)
・加工作業(食品加工など)
・ルーティーン作業(受付業務、清掃業務、家事代行など)
・WEB系フリーランス(エンジニア、WEBデザイナー、アフィリエイターなど)
・ライター(WEBライター、小説家、漫画家など)
・予備校講師
・大学教授
・販売職
など
以下で一つ一つ見ていきましょう。
など
1つのことをコツコツ行う仕事です。自閉症の強みである集中力の高さが活かされる仕事です。
実際、自閉症の方の主な就業先はこの業種が多いです。
欠点は、収入が低めになりがちな点です。そして、最低限、人と接する機会があることです。
など
自分の興味があることをとことん追求する、フリーランスでの仕事です。
自閉症の強みである、「興味のあることに関しては膨大な知識を蓄えられる。集中力が高い。こだわりが強い。」すべての特徴を網羅できる仕事です。
欠点としては、やはり収入面が不安になります。
フリーランスだからといって完全に人と接しないことはありません。
など
自閉症の強みである、興味のあることに関しては膨大な知識を蓄えられることを活かした仕事です。
実際、予備校講師や大学教授の中に自閉症の方が多くいます。
欠点は、人とコミュニケーションをとる機会が多いことです。
すべての仕事に言えることですが、人と完全に接しない仕事はほぼありません。多少なりとも接する機会はでてきます。
そのため、周りに自分のことを理解してもらえる働きかけも必要となります。
転職するなら、単純作業→知識をつけて専門職へ転職することをおすすめします。
理由は、筆者の勤める法人内、就労支援施設内で成功した利用者がいたためです。
その利用者の特性は、「1人を好む。言葉での説明を理解できない。興味のある領域の知識は膨大。」というものでした。
彼は自閉症の方が多く働いている工場で、ライン作業を行っていました。
最初のころは、「何度もミスしてしまう。完全に1人の空間がいい。」という理由で何度も「辞めたい。」と職員に相談に来ていました。
しかし、職員は本人を説得し続け、辞めさせませんでした。
そして、仕事や環境に慣れてしばらく経ったところで「ゲームが好きなんだから、勉強してクリエイターを目指したらどうか。」と職員が提案したそうです。
すると、本人は工場勤務を続けながらゲーム制作の勉強をし続けました。
そして現在は施設から離れ、ゲーム制作会社で勤務しているそうです。
これは、施設へ入所するくらい重度の自閉症をもっている利用者の一例です。
たしかにこの利用者のようになるには、相当な努力は必要ですが、重度の自閉症の方でも自分の好きな仕事に就け、自閉症を強みとして働けるようになるという確固たる証拠になると思います。
では、自閉症の強みを活かせる仕事は、どこで探せばよいのでしょうか?
いくつか例を挙げてみます。
一般企業への就職を目指す障害のある方(65歳未満)を対象に、個別に就職に必要な知識やスキル向上のサポートをおこなっています。
メリットは、個別にサポートを受けられること、事業所数が3323ヶ所と多いことです。
デメリットは、利用料がかかる(世帯収入にもよりますが)こと、その場所に行かないとならないこと、「すぐに働きたい」という方には向かないことが挙げられます。
発達障害児(者)への支援を総合的に行う専門機関です。相談・発達・就労支援、発達障害の普及啓発を行っています。
就労支援は、就労に関する相談に応じるとともに、労働関係機関と連携して情報提供を行います。
メリットは、利用料が無料であること、就労に関する相談に応じてもらえることです。
デメリットは、相談窓口が全国に88ヵ所しかないこと、「すぐに働きたい」という方には向かないことが挙げられます。
障害者の職業的自立を促進・支援するため、職業リハビリテーションの実施・助言・援助を行っています。適性検査から個別評価、それに合った支援計画まで行うという、手厚い支援が特徴です。
メリットは、利用料が無料であること、手厚い支援が受けられることです。
デメリットは、事業所が全国に52ヵ所しかないこと、手厚い反面時間がかかること、「すぐに働きたい」という方には向かないことが挙げられます。
障害のある方専門の求人サイトは、「クローバーナビ」「バブナビ」「dodaチャレンジ」「マイナビパートナーズ紹介」「MyMylink」など、多数あります。
メリットは、利用料が無料であること、在宅で仕事を探せること、手間がかからないこと、サイトによってはキャリアアドバイザーに相談できることです。
デメリットは、情報が多すぎて自分1人では迷ってしまう可能性があることです。
もちろん、利用料は無料です。
自閉症は強みになるという説明をしました。その根拠の1つとして、自閉症を公表しているの著名人がいます。
上記で挙げた著名人は、全員自閉症の方です。そして、自閉症の強みを最大限に活かして成功されている方々です。
ということは、自閉症の強みを活かせば、この方々のように成功することも不可能ではありません。
そして成功するためには、適職を探して就くこと、環境作りをおこなうことも大切です。
まず自分で動かなくては、見つけることも得ることもできません。
まずは、この記事を参考にして自分の特性(強み)に合った仕事を探してみてください。そこから道は拓けていきます。