【生活支援員監修】自閉症は強みです!仕事の選び方

「人とのコミュニケーションが苦手でおっくう」
「臨機応変な対応ができないから、よく仕事で怒られる。」
「仕事が長続きしない。」

これは自閉症の方が抱えるよくある悩みです。

悩みが深くなると
「私に仕事は務まるのか?」
「怒られ続けてて辛い…。仕事辞めようかな。」
と考えすぎてしまってはいませんか。

もしかしたら本当に自分に合った仕事に出会っていないのかもしれません。
選ぶ仕事によっては、自閉症は最高の「強み」になりえるのです。

今回は、障害者支援施設の生活支援員からの目線で、自閉症をお持ちの方が、最高のパフォーマンスを発揮できる仕事・職業の選び方をお伝えします。

自閉症とアスペルガー症候群の違いとは

「自閉症」は広い意味と狭い意味の「自閉症」があります。

広い意味での自閉症とはASD(自閉症スペクトラム障害)のことです。
さらにASD(自閉症スペクトラム障害)で自閉症とアスペルガー症候群に大別されます。

「自閉症」には下記の特徴があります。

  • 対人関係の障害
  • コミュニケーションの障害
  • パターン化した興味や活動

これらの特徴は生後間もなくから明らかになります。

アスペルガー症候群には、下記の特徴があります。

  • 対人関係の障害
  • パターン化した興味や活動

です。

つまり両者の違いは

コミュニケーションの障害(言語発達の遅れ)がみられるのが、狭い意味での「自閉症」
そうでないのが「アスペルガー症候群」

ということになります。

しかし、実際は両者とも個人差があり、明確には区別ができません。
そのため一般的には、広い意味で「自閉症」と一括りで呼ばれています。

自閉症の特徴とは

ASD(以下、自閉症)の主な特徴は大きく分けて2つあります。

他者との意思疎通が難しい

対人交流、コミュニケーションをとる中での具体的な特徴は以下の通りです。

  • 受け身、あるいは一方的過ぎる対人交流。
  • 冗談、皮肉が通じない。
  • 空気を読めない。
  • 会話がかみ合わない。
  • オウム返しが多い。
  • ひとりでいることを好む。
  • 静かな場所を好む。
  • 言葉による指示が理解できない。

興味の著しい偏り、パターン的な行動

興味や行動に関しての具体的な特徴は以下の通りです。

  • 特定の物事に関しては、強い興味を持つ。
  • 興味を持ったものに関しては、膨大な知識量をもつ。
  • 特定の動作(手順)に強くこだわる。
  • 一度に2つ以上のことができない。
  • イレギュラーな対応ができない、あるいは苦手。

自閉症の特徴が大きな強みになる

ここまで読んで、

「仕事に不利な特徴ばかりじゃないか!
と思われた方。

特徴をよく読み返してください。

  • 特定の物事に関しては、強い興味を持つ。
  • 興味を持ったものに関しては、膨大な知識量をもつ。
  • 特定の動作(手順)に強くこだわる。
  • 一度に2つ以上のことができない。

と書かれていますよね。そう、これが最大の「強み」なのです。

上記4つの特徴を言い換えると、

「興味を持った特定の領域の専門家になれる。」
「集中力が高く、こだわりが強い。」

ということになります。
これは、自閉症でない人を大きく上回っているポイントです。

障害者支援施設の利用者の中でも、自閉症の方が大勢います(自閉症の人々の半数以上は知的障害を伴い、症状が重い人では合併が多いため)。

その中で、比較的軽度の知的障害と自閉症を合併しているAさんは、法人内の職員(約400名)の家族情報や年齢、勤続年数をほぼ記憶しています。

同じ条件のBさんは、洗濯物を職員以上に早く、かつ丁寧にたためます。

重度の知的障害と自閉症のCさんは、紙を渡すと、職員が止めるまでずっと細かく千切っています。

このように、知的障害の方であっても、自閉症の特徴が大きな強みになっていることが多くあります。

一方、「対人交流、コミュニケーションの質が異常」というポイントは、たしかに弱みです。
ただ、これは自分に合った環境で行える仕事であれば、まったく問題ありません。

自分の特性に合った仕事を見つけよう!

では、自閉症の強みを活かせる仕事とは、なにがあるでしょうか。
そこで、自閉症の強みを活かせる職業を、特性ごとに3つにまとめました。

自閉症に向いているおすすめの職業

など

以下で一つ一つ見ていきましょう。

1つのことをコツコツ行うのが得意な人

  • ライン作業(組立、梱包、検品など)
  • 加工作業(食品加工など)
  • ルーティーン作業(受付業務、清掃業務、家事代行など)

など

1つのことをコツコツ行う仕事です。自閉症の強みである集中力の高さが活かされる仕事です。
実際、自閉症の方の主な就業先はこの業種が多いです。
欠点は、収入が低めになりがちな点です。そして、最低限、人と接する機会があることです。

コミュニケーションが苦手で1人で仕事がしたい人

  • WEB系フリーランス(エンジニア、WEBデザイナー、アフィリエイターなど) 
  • ライター(WEBライター、小説家、漫画家など)

など

自分の興味があることをとことん追求する、フリーランスでの仕事です。

自閉症の強みである、「興味のあることに関しては膨大な知識を蓄えられる。集中力が高い。こだわりが強い。」すべての特徴を網羅できる仕事です。

欠点としては、やはり収入面が不安になります。
フリーランスだからといって完全に人と接しないことはありません。

コミュニケーションをとることが嫌でないが苦手な人

  • 予備校講師
  • 大学教授
  • 販売職

など

自閉症の強みである、興味のあることに関しては膨大な知識を蓄えられることを活かした仕事です。
実際、予備校講師や大学教授の中に自閉症の方が多くいます。
欠点は、人とコミュニケーションをとる機会が多いことです。

すべての仕事に言えることですが、人と完全に接しない仕事はほぼありません。多少なりとも接する機会はでてきます。
そのため、周りに自分のことを理解してもらえる働きかけも必要となります。

転職するなら、単純作業→知識をつけて専門職へ転職することをおすすめします。
理由は、筆者の勤める法人内、就労支援施設内で成功した利用者がいたためです。

【就職成功事例】単純作業から知識をつけて専門職

その利用者の特性は、「1人を好む。言葉での説明を理解できない。興味のある領域の知識は膨大。」というものでした。

彼は自閉症の方が多く働いている工場で、ライン作業を行っていました。
最初のころは、「何度もミスしてしまう。完全に1人の空間がいい。」という理由で何度も「辞めたい。」と職員に相談に来ていました。
しかし、職員は本人を説得し続け、辞めさせませんでした。

そして、仕事や環境に慣れてしばらく経ったところで「ゲームが好きなんだから、勉強してクリエイターを目指したらどうか。」と職員が提案したそうです。
すると、本人は工場勤務を続けながらゲーム制作の勉強をし続けました。
そして現在は施設から離れ、ゲーム制作会社で勤務しているそうです。

これは、施設へ入所するくらい重度の自閉症をもっている利用者の一例です。
たしかにこの利用者のようになるには、相当な努力は必要ですが、重度の自閉症の方でも自分の好きな仕事に就け、自閉症を強みとして働けるようになるという確固たる証拠になると思います。

どこで仕事を探せばいいの?メリット・デメリットも解説

では、自閉症の強みを活かせる仕事は、どこで探せばよいのでしょうか?
いくつか例を挙げてみます。

就労移行支援事業所

一般企業への就職を目指す障害のある方(65歳未満)を対象に、個別に就職に必要な知識やスキル向上のサポートをおこなっています。

メリットは、個別にサポートを受けられること、事業所数が3323ヶ所と多いことです。
デメリットは、利用料がかかる(世帯収入にもよりますが)こと、その場所に行かないとならないこと、「すぐに働きたい」という方には向かないことが挙げられます。

発達障害者支援センター

発達障害児(者)への支援を総合的に行う専門機関です。相談・発達・就労支援、発達障害の普及啓発を行っています。
就労支援は、就労に関する相談に応じるとともに、労働関係機関と連携して情報提供を行います。

メリットは、利用料が無料であること、就労に関する相談に応じてもらえることです。
デメリットは、相談窓口が全国に88ヵ所しかないこと、「すぐに働きたい」という方には向かないことが挙げられます。

障害者職業センター

障害者の職業的自立を促進・支援するため、職業リハビリテーションの実施・助言・援助を行っています。適性検査から個別評価、それに合った支援計画まで行うという、手厚い支援が特徴です。

メリットは、利用料が無料であること、手厚い支援が受けられることです。
デメリットは、事業所が全国に52ヵ所しかないこと、手厚い反面時間がかかること、「すぐに働きたい」という方には向かないことが挙げられます。

障害のある方専門の求人サイト

障害のある方専門の求人サイトは、「クローバーナビ」「バブナビ」「dodaチャレンジ」「マイナビパートナーズ紹介」「MyMylink」など、多数あります。

メリットは、利用料が無料であること、在宅で仕事を探せること、手間がかからないこと、サイトによってはキャリアアドバイザーに相談できることです。
デメリットは、情報が多すぎて自分1人では迷ってしまう可能性があることです。

特におすすめなのが「dodaチャレンジ」です。

もちろん、利用料は無料です。その他に、dodaチャレンジを強くオススメする理由を3つ挙げていきます。

自閉症の方でも仕事を探しやすい。

まずは、自閉症の特性である「対人・コミュニケーションの障害」に優しい環境で仕事探しができます。
ネット上で求人を探せることはもちろんです。さらに、臨床心理療法士などの医療資格を持ったキャリアアドバイザーがいます

そのキャリアアドバイザーの中でも、障害の特性に合わせて専門のスタッフが自分を担当してくれます。
そして、「実際に対面でキャリアカウンセリングを行いたい。」と思った場合でも、そのキャリアアドバイザーが、専用のカウンセリングルームで丁寧にカウンセリングを行ってくれます。直接行けないという場合は、電話やチャット、テレビ電話でも対応してくれます。

求人数が多い

「転職ならデューダ」というCMを観たことがありませんか?
dodaチャレンジは、その運営元のパーソルグループが運営しています。超大手人材企業です。
そのため、当然他の求人サイトより求人数が多くなります。さらに、下記のような大手企業やニッチトップ企業の求人もあります。

ヤフー株式会社、本田技研工業株式会社、キリン株式会社、全日空空輸株式会社(ANA)、ソニー生命保険株式会社、株式会社カプコン、フィリップモリスジャパンなど

そして、非公開求人の数も、他のサイトより圧倒的に多い。

非公開求人とは、

応募が殺到してしまう人気企業の求人

期間限定の求人

のどちらかに当てはまる求人のこと。

他のサイトより圧倒的に多い理由は、パーソルグループが業界最大規模であるためです。そのため、希少性の高い非公開求人が集まってきています。
そのため、筆者がオススメする「単純作業→知識をつけて専門職へ転職」という流れにも対応しやすいです。

新卒・第二新卒就職に強い

通常の就活を行った場合、自閉症の方は一般の就活生と見分けがつきません。
しかし、dodaチャレンジから求人を探すことで、その問題は解決できます。
そして、大手企業では障害者手帳を持つ若手を積極的に採用している現状があります。
多くの大企業をクライアントとしているdodaチャレンジなら、新卒・第二新卒採用でも有利になるでしょう。

Point

首都圏・関西にお住まいの方は、マイナビパートナーズ紹介の利用もおすすめです。マイナビグループの障害者に特化した人材紹介サービスで、自社が特例子会社で採用ノウハウを持っています。首都圏・関西の求人を豊富に保有しているサービスです。

【まとめ】自閉症の強みを活かした仕事を探そう!

自閉症は強みになるという説明をしました。その根拠の1つとして、自閉症を公表しているの著名人がいます。

  • 市川拓司(作家)
  • 米津玄師(アーティスト)
  • 栗原類(タレント)
  • スティーブジョブズ(実業家)

上記で挙げた著名人は、全員自閉症の方です。そして、自閉症の強みを最大限に活かして成功されている方々です。
ということは、自閉症の強みを活かせば、この方々のように成功することも不可能ではありません。
そして成功するためには、適職を探して就くこと、環境作りをおこなうことも大切です。
まず自分で動かなくては、見つけることも得ることもできません。

まずは、この記事を参考にして自分の特性(強み)に合った仕事を探してみてください。そこから道は拓けていきます。


障がい者におすすめの転職サービス一覧

サイト名 サービス詳細
マイナビパートナーズ紹介
マイナビパートナーズ紹介
優良企業を厳選して紹介!マイナビパートナーズ紹介
マイナビパートナーズ紹介は、業界大手のマイナビが運営する障がい者専門の人材紹介サービス。一定の水準をクリアした企業のみを取り扱っているため、優良な求人が多いのが特徴です。またマイナビパートナーズ自体が、障がい者雇用を促進する特例子会社。障がいのある人の雇用や働き方の知識が豊富なのも安心できるポイントです。
dodaチャレンジ
dodaチャレンジ
95%が満足!障害別に転職を徹底サポート
dodaチャレンジは、dodaブランドの中の障がい者向けに特化した転職支援サービス。大手・優良、外資系、ニッチトップ企業まで幅広い求人から、自分の適性に合った仕事を探すことができます。障がいの種類ごとに専任のアドバイザーが在籍しているので安心。大手エージェントでありながらも、求職者に寄り添った親身な対応が評判です。
ココルポート
ココルポート
イチから就職を目指す!就労移行支援サービス
ココルポートは障がい者が就労に向けたトレーニングを行い、働くために必要な知識やスキルを習得し、就職後も職場に定着できるようサポートを行うサービスです。就職の経験がない人、ブランクがある人も就職した実績多数あり。首都圏と福岡に事業所を展開しています。


おすすめ関連記事

知らないと損する!?退職日の決め方ガイド
転職する際に設定する退職日。いつが損でいつが得するのか知っていますか?
女性が一生食べていける、ゼロから取れる資格は?
女性におすすめの様々な資格を紹介!現代では、自分の価値を高め、女性磨きの為資格を取得する人が増加中。転職の時や周りの人の為に活かせる資格取ってみませんか?
履歴書でも使える特技ストック10選
履歴書を書くときに悩む項目といえば「趣味・特技」の項目ではないでしょうか。「当たり障りないものを書いておけばいいや」と適当に書いている方はいませんか?
あなたのそばにもいる?無能な上司
無駄に部下の足を引っ張る能力が高い上司=無能な上司。ダメ上司チェックリストを使った特徴と対策方法をご紹介します。
40代の転職失敗は地獄。なぜ?
残酷なことに転職にチャレンジした40代が転職に失敗し後悔する人が後を絶ちません。転職で年収136万円ダウンした例も!ここでは40代の転職で勝つヒントをご紹介します。

参考サイト
厚生労働省
内閣府
ハローワーク
職業情報提供サイト
日本経済連合会
転職コンサルタント
中谷 充宏
梅田 幸子
伊藤 真哉
上田 晶美
ケニー・奥谷