介護職の年収を上げるには?年齢・雇用形態別年収や動向を徹底解説!

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「介護職の年収はどのくらい?」
「介護業界で年収を上げる方法が知りたい」

日本の高齢化が進み、介護業界の負担が大きくなる中で、介護職の年収や給与が気になっている方も多いかと思います。介護職は利用者の世話をする尊い仕事ですが、仕事に比べて給与は安いとも言われてきました。

そこで本記事では、介護職の年収・給与を雇用形態、年齢、施設などの観点からご紹介します。

年収とキャリアをアップする方法も解説しますから、介護業界で働いている方も、これから働きたい方も本記事を参考に収入アップを目指しましょう。

介護職の雇用形態・年齢・施設・都道府県別の年収と給与

介護職の年収を知るために、雇用形態・年齢・施設・都道府県別の年収をご紹介します。

雇用形態別の平均給与額

雇用形態別の給与は厚生労働省の「令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果」からわかります。

月給・日給・時給の別 平均月給額(常勤) 平均月給額(非常勤)
月給の者 31万7,540円 20万9,540円
日給の者 23万2,030円 15万7,210円
時給の者 22万9,770円 12万1,000円

参照:厚生労働省『「令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果」P122』

雇用形態別では月給の方の平均月給額が最も高く、最も低いのは時給の方となりました。

平均給与額に年2カ月の賞与があると仮定すると、月給の方は平均年収444万円が平均年収です。

ただし、介護職には看護師、ケアマネジャー、機能訓練指導員なども含まれるほか、施設別の給与も異なるため、参考程度に考えるのがよいでしょう。

年齢別の平均年収

介護職の年齢別平均年収は令和3年度の賃金構造基本統計調査を参考にします。

~19歳 236万3,400円
20~24歳 304万4,700円
25~29歳 337万2,400円
30~34歳 361万5,500円
40~44歳 378万3,300円
45~49歳 378万5,700円
50~54歳 362万4,300円
55~59歳 356万400円
60~64歳 321万7,500円
65~69歳 286万2,400円
70歳~ 262万4,300円

参照:e-Stat『令和3年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種』

訪問介護従事者を除く介護・福祉施設の介護職員の平均年収は、40代が最も高くなります。

昇給の幅は緩やかですが、介護業界は経験年数を重ねることで昇給するケースが多いです。

しかし、働き方の基本が夜勤ありの体力仕事となっているため、50代からは体力的に夜勤が厳しい方も多く、給与が安くなる傾向です。

そのかわり、介護職は現役期間が通常の会社よりも長いため、70代になっても一定の年収が期待できます。

一般企業に比べて平均年収は低めですが、介護職は現役期間の長さで不足分を相殺しています。

施設別の平均給与額

施設別の平均給与額についてもみていきましょう。

施設別 平均給与額(常勤) 平均給与額(非常勤)
介護老人福祉施設 34万8,040円 21万1,260円
介護老人保健施設 33万9,040円 28万7,360円
介護療養型医療施設 27万6,400円
介護医療院 32万700円
訪問介護事業所 31万5,170円 21万9,390円
通所介護事業所 27万5,620円 16万8,170円
通所リハビリテーション事業所 30万4,790円 21万3,770円
特定施設入居者生活介護事業所 31万3,920円 21万6,860円
小規模多機能型居宅介護事業所 28万7,970円 21万1,700円
認知症対応型共同生活介護事業所 29万1,080円 20万410円

参照:厚生労働省『「令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果」P122』

給与が最も高いのは介護老人福祉施設、次いで介護老人保健施設、介護医療院と続きます。

介護老人福祉施設とは65歳以上で要介護3以上の方を対象にした施設で、代表例は特別養護老人ホームです。

寝たきりや重度の認知症の方が多く、介護職が24時間体制で利用者の介護を行います。

夜勤が月8回程度入ることから、夜勤手当が発生する分給与も高くなります。

また、介護老人保健施設は主に利用者のリハビリを目的としており、リハビリを含む介護サービスで加算が入るため、職員の給料にも反映されやすい施設です。

他にも、民間が運営する特定施設入居者生活介護事業所や小規模多機能型居宅介護事業所も、収益性の高さから高年収が期待できます。

都道府県別年収

都道府県別の年収について、上位の5府県をご紹介します。

令和4年賃金構造基本統計調査から引用した施設介護員の年収です。

地域 平均年収
神奈川 405万2,000円
大阪 402万円
岐阜 399万7,000円
千葉 398万7,000円
愛知 392万8,000円

神奈川県が全国で最も高い405万円、次に大阪府、岐阜県、千葉県、愛知県となりました。最も低かったのは沖縄の288万円となっており、神奈川県とは年収で100万円以上の差があります。

物価の違いも給与に影響しますが、収入を意識するならどの地域で介護職になるかも非常に重要になることがわかります。(*)

*参照:厚生労働省 jobtag『施設介護員より』

介護職は学歴によって年収が変わるのか?

一般企業の場合、大卒か高卒かという学歴によって、生涯年収に数千万円の違いが出ます。

一方、介護職の場合は学歴で年収の差はほとんど出ません。

学歴による差が出にくい理由は、次の3点があるためです。

介護職が学歴で年収の差が出にくい理由

  • 学歴や資格に関係なく働ける
  • 介護報酬の加算は国によって決まっており、施設ごとの出せる利益に限度がある
  • 学歴よりも介護経験年数が重視される

学歴や資格に関係なく働ける

施設で働く介護職は、早い人なら中卒で働く人もおり、実務経験年数に応じて資格取得の要件を満たせます。

学歴が高くても資格や働き方に差が出にくいため、年収にもほとんど影響しません。

ただし、専門学校などを卒業し、介護福祉士や介護系の資格を取得している場合、最初から一定の給与が支払われる可能性は高いです。

学歴は大きく影響しませんが、資格の有無は影響する点に注意しましょう。

施設ごとに利益の限界がある

介護施設の収入源は介護報酬ですが、こちらは施設形態、人員配置、提供するサービスなどで加算、または減算されます。

そのため、サービスを多く提供しても施設の利益になるとは限らず、自然と施設の収益には限界が生じます。

施設の収益に限界がある以上、学歴によって給与の格差が出ることも考えづらいです。

ただし、有料老人ホームの場合は将来の管理職候補として、大卒以上の人を採用することもあります。

学歴よりも経験が重視されやすい

介護職で最も重視されるのは実務経験や介護経験ですから、学歴の高さはあまり評価されません。

大学卒のほうが採用率は高くなる可能性はあるものの、実務経験のある人材のほうが即戦力として採用されやすい傾向があります。

また、介護施設には「サービス提供体制強化加算」があり、介護福祉士有資格者と勤続年数の長い人を多く雇用するほど、施設の介護報酬加算が大きくなります。

つまり、施設の収益を考えるなら実務経験豊富な人が優先され、学歴の優先度は落ちるため、年収の差が生まれにくいです。(*)

*参照:厚生労働省『「令和3年度介護報酬改定の主な事項について」P33』

介護業界の年収アップが期待できる2つの要素と動向

介護業界が今後年収アップすると期待できる2つの要素、国の動向についてご紹介します。

介護職全体の賃金は上昇傾向

介護業界の年収については、公益財団法人介護労働安定センターが毎年発表した「介護労働実態調査結果」を参考にします。

令和3年度の結果概要では、給与が増加していることがわかります。

介護職年収

参照:介護労働安定センター『「令和3年度「介護労働実態調査」結果の概要について」P4(図表5)一般労働者の所定内賃金と賞与』

平成29年が23万1,161円だったのに対し、令和3年には24万4,969円まで上昇しており、わずかに増加していることがわかる結果です。

賞与は減少しているため大幅な年収アップにはなっていませんが、介護職全体の給与は上昇傾向にあります。

日本は急速に物価が上昇しているため恩恵を感じにくいですが、介護職の年収は徐々に高まっています。

福祉・介護職員処遇改善臨時特例交付金

2022年に厚生労働省はコロナ克服と経済対策を目的として、福祉・介護職員処遇改善臨時特例交付金を対象となる施設に交付しました。

本交付金は2012年の介護職員処遇改善加算以外で、介護職の賃上げに国として具体的に取り組んだ一例と言えるでしょう。

この補助金は対象となるサービスを行う福祉・介護職員常勤一人当たり、月額平均9,000円の賃上げに相当する額を交付するものです。

交付率は施設区分によって異なり、施設の基本報酬と加算・減算などで交付額が決まります。

介護職年収

参照:厚生労働省『福祉・介護職員処遇改善臨時特例交付金 リーフレット』

参照:厚生労働省 『福祉・介護職員処遇改善臨時特例交付金 交付率』

対象期間は2022年2~9月までの8カ月間ですが、10月以降も報酬改定による賃上げを継続する方針です。そのため、今後も施設に有利な報酬改定が行われ、介護職の年収アップにつながる期待がもてます。

厚生労働省の分科会で処遇改善が検討されている

賃金上昇と交付金、報酬改定だけでなく、厚生労働省としても介護職の処遇改善に向けて、分科会での意見の取りまとめを進めています。

令和4年2月7日に行われた「社会保障審議会介護給付費分科会」で、介護報酬の改定と人員配置基準の見直しについても今後検討する方針が示されました。

また、2023年5月には介護関連団体から政府に対し、物価高騰の影響もあり、一般企業と同程度の賃上げを可能にする緊急措置や報酬改定の要望も提出されています。

介護業界からの人材流出を防止するためにも、政府が今後の報酬改定や介護職の賃上げに動く可能性は高いです。(*)

*参照:労働新聞社『介護報酬改定前に交付金措置を 11団体が要望書』

介護職の年収を上げるためにできること

国の方針以外で、介護職が自分からできる年収を上げる方法をご紹介します。

介護福祉士資格を取得する

介護職の年収アップには、介護福祉士資格の取得が重要です。介護施設で働くこと自体は資格不要ですが、介護福祉士の有資格者には手当を支給する施設が多いからです。

介護福祉士は専門学校卒業者だけでなく、実務経験3年以上の方なら実務者研修や介護職員基礎研修などを受講することで受検資格を得られます。施設によって手当の金額は異なりますが、介護福祉士は手当として1万円以上プラスされることもあります。

キャリアアップにも資格が求められるため、介護福祉士取得が年収アップにおいて最重要です。

1つの施設に長く勤務する

介護施設の給与は、1つの施設に長く勤めるほど昇給しやすくなります。サービス提供体制強化加算の関係もあり、長く勤務している介護職の流出を防ぎたい施設側の意図もあるからです。

介護業界は若い方の離職率が高く、定着しにくいとされています。勤務年数の長い職員がいれば報酬への加算が大きくなる観点から、早期離職は施設にとっても損です。

そのため、年収アップを狙うのであれば、給与が高い施設か昇給幅の大きい施設で長く勤務するのがおすすめです。

給料の高い施設に転職する

現在の職場の給与に不満があり、収入アップを目指すなら給与の高い施設に転職する方法もあります。令和3年10月1日の時点で、日本には介護保険施設が1万3,721件、訪問看護ステーションを除く居宅サービス事業所は6万40件あります。

全国には公営・民営の様々な施設があるため、その中から給料の高い施設を探すのがよいでしょう。どの施設も介護職員が不足している状態ですから、実務経験のある方は採用されやすいです。

給与や待遇などの条件を比較して、働きやすさと年収のバランスがとれた施設を選択しましょう。(*)

*参照:厚生労働省『厚生労働省 「令和3年介護サービス施設・事業所調査の概況」P3』

夜勤回数を増やす

介護職の年収を上げるには、月の夜勤回数を増やすのもおすすめです。

通常、月の夜勤回数は8~9回程度ですが、夜勤回数を増やすことで収入アップにつながります。

夜勤には労働基準法上の深夜割増賃金があり、22時から5時までの勤務には25%以上の割増金が支払われます。

そのため、例えば時給1,500円換算で8時間勤務なら、夜勤回数を1回増やすだけで給料は2,625円の上乗せです。

また、施設によって独自に深夜手当を設定しているところもあるため、夜勤1回で5,000円以上プラスされることもあります。

管理職を目指す

1つの施設で長く勤務し、施設の管理職になって年収アップを目指す方法もあります。

施設によって昇格の条件は様々ですが、管理職になれば管理責任が生じる分、収入も多くなります。

管理職の呼び方は施設長や管理者など様々ですが、いずれも実務経験が十分にあることが必須条件です。

管理者になるなら施設を熟知し、信頼のある人材が理想ですから、運営母体や一緒に働く職員からの信頼獲得を目指しましょう。

介護職からのキャリアアップモデル

介護職からのキャリアアップにはどのような方法があるのか、4つのモデルをご紹介します。

認定介護福祉士

認定介護福祉士とは、認定介護福祉士認証・認定機構が2015年12月に認定を開始した介護福祉士の上位資格です。

2022年10月27日時点で約100名が認定されており、今後も認定者の増加が見込まれます。

介護福祉士として5年の実務経験と課題レポートの提出、100時間以上の研修歴を有することで養成研修を受講できます。

介護職としての指導力とサービス管理、人材マネジメント、地域マネジメントまで幅広い分野で活躍できる資格です。

今後の介護業界を担う人材を育てるための資格で、認定者のキャリアアップにつながることが期待されています。

ケアマネジャー

ケアマネジャー(介護支援専門員)は、介護を必要とする方が介護保険サービスを受けられるようにケアプランを作成し、サービス事業者との調整も行う資格です。

特別養護老人ホームや居宅介護支援事業所、地域包括支援センターなどで活躍できる資格です。

介護福祉士の上位資格の1つとしても有名で、資格取得で手当を支給する施設もあります。

施設で働く以外にも、自ら開業することも可能ですから、多様な働き方を見据える方におすすめです。

社会福祉士

社会福祉士はソーシャルワーカーとも呼ばれる仕事です。

医療機関や介護施設、福祉施設に所属し、高齢者や障害者などの相談を受けて、多職種連携の調整や福祉サービスへの橋渡しを行う資格です。

介護分野だけでなく、医療、障害者、ひとり親家庭、低所得者の相談・支援も行っており、様々な職場で働けます。

実務経験に応じて大学に通うこともありますが、資格を取得すれば公的機関で働くキャリアプランも目指せます。

介護分野だけでなく、医療・福祉業界全般でキャリアアップを狙う方におすすめです。

生活相談員

生活相談員は資格職ではありませんが、一定の要件を満たすことで各自治体から生活相談員として認定されます。

生活相談員は施設と利用者の中間に立ち、窓口対応や相談業務、各種手続き、介護サービスの利用などを支援する仕事です。

ケアマネと業務内容は似ていますが、ケアプランを作成しない点が大きな違いです。

認定条件は都道府県によって異なるため、気になる方は各都道府県で確認しましょう。

相談役として様々な方と接することになり、高いコミュニケーション能力と状況に応じた対応力が求められます。

時にはクレーム対応をすることもあるため、忍耐力も必要です。

まとめ:規模の大きい法人・施設で年収アップを狙おう

介護職が年収をアップする方法は、それほど多くありません。

また、今後も国の方針によって昇給は期待できますが、大幅に年収アップするのは難しいでしょう。

そのため、介護職が年収をアップするなら資格を取得し、規模の大きい法人や施設に転職することがポイントです。

人事制度が確立されており、昇給幅が大きいことに加え、複数の施設を運営している団体なら管理職を任される可能性も高いからです。

介護職として年収アップを考えるなら、自分にとってチャンスが多い職場を選び、将来のキャリアアップも考えて行動しましょう。


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参考サイト
厚生労働省
内閣府
ハローワーク
職業情報提供サイト
日本経済連合会
転職コンサルタント
中谷 充宏
梅田 幸子
伊藤 真哉
上田 晶美
ケニー・奥谷