女性の手元を美しく輝かせてくれるネイリスト。
「自分のネイルケアをするのが趣味」「友人のネイルアートをよくやらせてもらう」「細かい作業が好き」といった理由で、ネイリストとして働くことに憧れを持っている方もたくさんいらっしゃると思います。
では、ネイリストを目指そう!と思ったら、具体的に何をどうすればよいでしょうか?
今回は、ネイリストになるために必要な費用や資格、勉強法などをご紹介します。
ネイリストになるためには、どうすればよいのでしょうか。ひとくくりにネイリストといっても、ネイルに関する資格は様々あり、どの資格から取るべきか、そもそも資格の必要性はあるのか、疑問を抱えている方も少なくないでしょう。
ネイリストは、資格が必須の職業ではありません。資格を有していなくても、ネイリストと名乗ったり、ネイリストとして働いたりすることは可能です。
ただ、自分が施術を受ける側の立場になって考えてみてほしいのですが、自分を初めて担当するネイリストが全く資格を持っていないと聞くと、どうでしょう。はたまた、複数のネイリストから施術担当を選べる場合、資格のない方よりも資格を持っている方を指名したくならないでしょうか。
必ずしも「資格保持者=技術が高い」とは言い切れませんが、資格というのは一定レベルの技術を保証するものであると考えられます。ネイリストとして働きたいのであれば、何らかの資格は有していたほうが得策でしょう。
資格取得をおすすめするもう一つの理由は、求人数の違いです。
大手求人情報サイトのインディードでは、2020年7月10日現在でネイリストの募集は1万5千件近くありますが、うち資格不問とする募集は3千件ほど。資格を保有していないと、なかなか応募すら叶わないというのが現状です。
仮に無資格で働けたとしても、「資格が取れるまでは雑用しかやらせてもらえない」、「なかなか顧客がつかない」、「閉店後にひたすら練習しなければならない」など、実質的なデビューまでにかなりの時間を要してしまう可能性もあります。
加えて、保有資格によって給与が異なるサロンもあるため、やはり長期的に見てもまず資格を取得することが、ネイリストデビューの最短ルートであるといえるでしょう。
ネイリストの実態や資格の必要性を知ったところで、次にどんな道のりでネイリストを目指すかを考えていきましょう。
ネイルに関する資格は様々ありますが、まずは主要な資格をご紹介します。ご自身がどういう資格を取りたいのか、またどこまで目指したいのか、ぜひ参考にしてみてください。
1997年からスタートし、ネイル技術に関する資格としては日本で最も歴史と実績を誇っているといえるでしょう。これまでに約84万人の受験者実績があり、ネイル業界の中でも最も保有者の多い資格です。正しい技術と知識の向上を目的とした実践に役立つ資格として、プロのネイリストを目指す人たちの指標にもなっています。
階級は1~3級まで。プロとしてはやはり1級が最も箔がつくと考えられ、『当店のネイリストは全員1級取得者です』と謳うサロンも少なくありません。
試験内容は、実技と筆記があります。詳細は下記のとおりです。
図1)ネイリスト技能検定試験
受験資格 | 受験費用 (税込) |
開催 スケジュール |
2022年春期 合格率 |
|
---|---|---|---|---|
1級 | ネイリスト技能検定試験2級取得者のみ | 12,500円 | 年3回 ※年によって月は異なる |
54.4% |
2級 | ネイリスト技能検定試験3級取得者のみ | 9,800円 | 年4回 ※年によって月は異なる |
62.4% |
3級 | 義務教育を終了した方 | 6,800円 | 年4回 ※年によって月は異なる |
91.4% |
また同系統の検定に、ネイル業界の国際的な水準を図るべく制定された「JNA国際ネイリスト技能検定」や、業界で初めてweb上で受験ができる「ネイル知識検定」、INA(NPO法人 インターナショナルネイルアソシエーション)が主催する「ネイルスペシャリスト技能検定試験」という検定もあります。
JNA国際ネイリスト技能検定は階級が2~3級しかないため、より上位を目指したいのであれば、JNECネイリスト技能検定試験の受験をおすすめします。ネイル知識検定はwebのみで受験できるので、腕試しや腕慣らしでの受験もよいかもしれません。
ネイルスペシャリスト技能検定試験は、主催団体は異なりますが、内容としてはJNECネイリスト技能検定試験と同等です。階級は、学生や初心者を対象としたA級、SA級と、プロフェッショナルを対象としたPA/AA/AAA級の3つ。いずれも試験内容は、実技と学科があります。
JNECネイリスト技能検定試験とネイルスペシャリスト技能検定試験、どちらを取得するかは迷うところですが、その知名度からJNECネイリスト技能検定試験資格取得者を求人募集要件の必須条件とするネイルサロンもあるため、前者を取得する方が確実といえそうです。
図2)ネイルスペシャリスト技能検定試験
受験資格 | 受験費用 (税込) |
開催 スケジュール |
|
---|---|---|---|
A級 | 義務教育修了者 (実修了者は保護者の承諾書を提出) ※飛び級可能 |
11,000円 | 年4回 |
SA級 | 13,200円 | ||
PA/AA/AAA級 | 16,500円 |
ひと昔前まで主流だった「スカルプチュア」という付け爪の技術に代わり、現在は「ジェルネイル」が主流。今やサロンメニューの60%は、ジェルネイルといわれるほどです。そのジェルネイルに特化した施術のために必要な知識と技術を習得する目的で実施されているのが、JNAジェルネイル検定試験です。
階級は初級・中級・上級の三段階にわかれ、どの階級も試験内容は筆記と実技があります。
詳細は下記の通りです。
図3)JNAジェルネイル技能検定
受験資格 | 受験費用 (税込) |
開催 スケジュール |
実技第1課題免除者 | |
---|---|---|---|---|
初級 | 義務教育を終了した方 | 9,900円 | 年2回 (6月・12月) |
ネイリスト技能検定試験3級以上または 国際ネイリスト技能検定試験3級取得者 |
中級 | JNAジェルネイル技能検定試験(初級)合格者 | 13,200円 | 年2回 (6月・12月) |
ネイリスト技能検定試験2級以上取得者 |
上級 | JNAジェルネイル技能検定試験(中級)合格者 | 16,500円 | 年2回 (6月・12月) |
なし |
「職業柄、手のネイルアートはできないけれど、足のネイルなら気にせずできる」という方から根強い人気があり、全国のネイルサロンで広く取り入れられているのがフットケア施術です。JNAフットケア理論検定試験は、足の爪やその周囲の肌のケアに関する専門的な技術と知識を習得するための資格として、数年前に新しく作られました。
階級はなく、実技試験もないため、JNA認定校で随時受験することが可能です。
前述した資格が全てネイルケアに関する技術を問うものであるのに対し、JNA認定ネイルサロン衛生管理士は、サロンにおける安全で安心なネイルサービスの普及と公衆衛生の向上を目的として付与される資格です。
飲食店における調理師免許がネイリスト技能検定試験、食品衛生責任者がネイルサロン衛生管理士といった解釈をすると、わかりやすいかもしれません。ただし、ネイルサロン衛生管理士はサロン経営において必須の資格ではありません。
資格はJNA認定校で実施される講習会を受講し、筆記テストに合格すれば資格取得できます。
また、JNA認定ネイルサロン技術管理者は、ネイルサロンにおけるスタッフの技術管理に関する知識や技術管理の実務を有している者に付与される資格です。こちらも、JNA認定校で実施される講習会を受講し、筆記テストに合格すれば資格取得できます。
図4)その他の検定
試験名 | 受験資格 | 受験費用 (税込) |
開催 スケジュール |
|
---|---|---|---|---|
JNAフットケア理論検定試験 | ネイリスト技能検定試験3級以上または JNAジェルネイル技能検定試験初級以上または JNA国際ネイリスト技能検定試験3級以上取得者 |
8,800円 (JNA会員は6,600円) ※テキスト代3,300円別途 |
全国のJNA認定校で 随時開催 |
|
ネイルサロン衛生管理士 | 18歳以上の方。 ※ネイルサロンの実務経験は問わず |
10,560円 (JNA会員は6,160円) ※テキスト代込 |
全国のJNA認定校で 随時開催 |
|
ネイルサロン技術管理者 | ・年齢20歳以上 ・ネイル技術に関する実務経験を3年以上有する方 ・ネイリスト技能検定試験・2級を取得済みの方 ・JNAジェルネイル技能検定試験・初級を取得済みの方 ・JNAネイルサロン衛生管理士を取得済みの方 ※いずれも講習会受講申し込み時において |
15,400円 (JNA会員は10,340円) (JNA認定講師は5,170円)(JNA認定ネイルサロン スタッフは5,170円) |
全国のJNA認定校で 随時開催 |
福祉ネイリストとは、高齢者や障がい者、災害による被災者など心にダメージを負った方などに対し、ネイルによって癒しや喜びなどを与える専門的なネイリストのことです。
必ず資格を取得しなければならないという訳ではありませんが、ネイルの知識に加え、福祉的な知識や技術も必要となるため、専門的な勉強は必要になるでしょう。
福祉ネイリストの資格は、JHWN(一般社団法人 日本保健福祉ネイリスト協会)が主催する福祉ネイリスト認定制度を受ける必要があります。
認定制度のステップは以下の通りです。
合格者は、講師と共に実地研修を行い、ディプロマという認定書を発行してもらったところで晴れて福祉ネイリストに認定されます。
費用は講習費88,000円、登録料3000円の他、材料費が別途必要となるようです。
なおJNECネイリスト技能検定2級以上の取得者であれば、講習費が44,000円となり、実技の一部も免除されます。やはりどのような道に進むにしても、JNECネイリスト技能検定試験は必要不可欠といえそうです
必要な資格がわかったら、次は勉強法です。まずはプロのネイリストにとって必須ともいえるJNECネイリスト技能検定合格を前提に、どのような勉強法があるかご紹介します。ご自身に最適な方法を見つけてください。
JNECネイリスト技能検定資格は、ネイルスクールや専門学校に通って取得するのが一般的です。前述の通り試験には実技があるため、独学では材料や道具をそろえるための費用や手間がかかりますし、技術を磨くための練習台になってくれるモデルを探すのも自力で行わなければなりません。
スクールや専門学校に通えば、材料や道具の用意はもちろん、練習台となってくれるモデルや資格取得後の就職先のサポートまでしてくれるところもあります。また、試験対策講座が用意されていることも多く、必要な知識や技術を磨く上で十分な環境が揃います。
またスクールや専門学校には、通い方に応じて様々なコースが用意されていることが多いです。大きく分けて3つのスタイルがあるので、ご自身の予算や時間の都合に応じて選択すると良いでしょう。
図5)スクール・専門学校の通い方のスタイル
スタイル | メリット | デメリット | 費用 | 期間 |
---|---|---|---|---|
平日昼間(週5) |
・じっくり、たっぷり学べる ・様々なサポートがある |
・費用がかかる ・2年制が多く、期間が長い |
年間で約100万円 (2年制の場合200万円) |
1~2年 |
平日夜間、または土日のみなど週1~2日 |
・働きながらでも通える ・費用が抑えられる |
・授業時間が短い | 年間30~50万円ほど | 4~10か月ほど |
単発のコース |
・働きながらでも通える ・費用が抑えられる |
・特定の試験対策しかできない | 1コース数万円~ | 数時間×十数回 |
JNECネイリスト技能検定の資格取得をサポートしてくれるのは、スクールや専門学校だけではありません。自分の都合で好きな時間に勉強でき、交通費もかからないため、通信講座も働きながら勉強したい方にはおすすめの勉強法です。特に道具や材料も含まれているなど、スクールと遜色ない充実したサポートや教材内容の通信教育は合格率も高く、人気もあります。
通信講座も様々な種類がありますが、多くの場合、JNECネイリスト技能検定2級レベルの資格取得を目指すものがほとんどです。1級を目指したい方は、上記でご紹介した単発のコースなどと上手く組み合わせた利用が良いでしょう。
また通信教育によって、かかる費用や期間はまちまち。やはりご自身の予算や時間の都合に応じた選択が必要になります。下記の主な通信教育を参考にしてください。
図6)主な通信教育
運営企業 | 特徴 | 費用(税込) | 期間 |
---|---|---|---|
ヒューマンアカデミー |
・2級合格保証がある ・就職、開業のサポートが充実している |
247,800円 (1級までのコースは432,600円) |
12か月 |
ユーキャン | ・用具が充実している | 119,800円 | 6か月 |
キャリアカレッジジャパン | ・短期間で、費用が抑えられる | 76,000円 | 4か月 |
ハローワークで行われている、求職中の方に向けた職業訓練。実はネイリストになるための講座も含まれていることがあります。「離職中のため勉強するための費用がかけられない」という方は、授業料がかからないハローワークの職業訓練でネイリストの勉強をすることが可能です。
職業訓練は授業料がかからないことはもちろん、職業訓練受講手当として月額10万円の給付のほか、訓練に通うための交通費も支給されます。そのため非常に人気も高く、受講者の数も限られているため必ず受講できるとは限りません。
また職業訓練を受けるためには、下記に該当していることが必須条件となります。
もしこれらの条件に該当しないにも関わらず、偽って職業訓練を受けた場合はペナルティを課せられる可能性もあるため、注意してください。
前述したとおり、資格不問の求人は少ないながらも一定数の募集はあります。特に未経験・資格なしOKと謳っているサロンでは、勤務しながら資格取得をサポートしてくれるという福利厚生がある場合が多く、給与を得ながら学ぶことができます。
またサロンによっては、試験を受けるために必要な道具やテキストを貸与してくれたり、試験の際のモデルを先輩社員がやってくれたりということもあるでしょう。資格取得までにかかる期間は、サロンのサポート体制や、そのサロンがどこまでの資格を社員に求めているかによっても異なります。その点は、面接の際に確認しておきましょう。
技術を要するネイリストの資格は、独学での取得はなかなかに難しいものがありますが、JNECネイリスト技能検定3級であれば2~3か月程度で取得できるでしょう。かかる費用は検定試験対策のテキストや過去問といった書籍代とネイルの道具代で、数万~10万円ほどで一通り揃えられます。
またJNECネイリスト技能検定の筆記試験問題は、2016年より公式問題集から出題されます。公式問題集はJNECのHPで購入できますので、こちらは必ず手に入れたいところです。また、オフィシャルテキストやDVD教材は、JNAのHPから購入が可能です。
ネイリストを目指そうとしている方の中には、「ネイリストになったとしても、その先ちゃんと続けられる仕事かどうか」不安に感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。ここでは、ネイリストの将来性について、一緒に考えたいと思います。
JNA(NPO法人 日本ネイリスト協会)が発行する「ネイル白書2020」によると、ネイルサービスの市場規模は2010年までの期間で爆発的な急成長を遂げたのち、2015年以降も緩やかながら右肩上がりを続けています。急激に需要が増えることはないかもしれませんが、今後も一定数の需要は維持されていくと考えられます。
また若者の代名詞のような存在であったネイルアートやネイルケアも、今は年代や性別を問わず楽しむ方が増えてきています。男性でもネイルケアをする人は増えていますし、高齢者の需要も増加傾向にあり、福祉ネイリストやケアビューティストなど介護業界に特化したネイリストも出現しているほどです。
2014年にオックスフォード大学の准教授が発表した「10年後に消える職業」の中に、ネイリストが含まれていたこともあり、ネイリストの将来性に不安を感じる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、結論から述べると、“消える”ことはないと考えられます。
ネイリストが不要と考えられた背景の1つには、ネイルアートの機械化があげられます。確かにデジタル化することで、ネイリストの技術に頼ることなく簡単に精密にデザインを施すことが可能になりますし、普及すれば費用も安く抑えられる可能性が高まるでしょう。
しかし、こうした機械は個人で購入することは難しく、やはり機械の施術もサロンが行うことを考えると、接客や細かいケアに関してはネイリストが行わなければなりません。
そうした意味では、機械化によりネイリストの作業は減ったとしても、完全になくなることはないと考えられます。
いかがでしたでしょうか。ネイリストになるために必ず必要となる資格はありませんが、やはり資格を有していた方が、就職が有利に進んだり、顧客に信用してもらえたりとメリットは遥かに多いと感じます。
またネイルに関する資格も様々ありますが、基本的にはまずJNECネイリスト技能検定の取得を目指し、その後はご自身が極めたい技術や進みたい方向性に応じて資格を取得することが望ましいでしょう。
今回ご紹介した内容を参考に、ご自身の予算や費やせる時間に応じた勉強法で知識と技術を磨き、ネイリストとしてご活躍されることを願っています。