日本語教育能力検定試験、独学合格を目指すための勉強方法とは?

日本語教育能力検定試験は、日本語教師を目指す人を対象にした検定試験です。養成講座に通う時間がない人、日本語教育を本格的に学んだことがない人が日本語教師を目指すためには検定試験に合格することが近道です。

検定試験の合格率は20%台と高いとは言えません。一方この試験に独学で挑み、合格した人もいます。彼らはどのような勉強方法で合格を手にしたのでしょうか。

この記事では、独学で合格する人の勉強法・よく使われている教材などについて調査した結果をまとめています。これから独学で日本語教育能力検定試験に挑む人は、ぜひ参考にしてみてください。

日本語教育能力検定試験とは

日本語教育能力検定試験とは、日本語教師にとって必要な知識や能力を証明するための試験です。

日本語教師になろうと勉強している人や、日本語教師として既に現場に立っている人を対象としています。検定試験では日本語教育に対する体系的な知識や、その知識を使って様々な場面に対応できるかが問われます。

日本語教育能力検定試験は、検定試験という名前から分かる通り、資格試験とは異なります。つまり日本語教師になるために、日本語日本語教育能力検定試験に合格することは必須ではありません。

実を言えば、現段階で日本語教師になるための必須資格というのは存在しません。ただし、現在外国人留学生を受け入れられる「告示日本語教育機関」では、日本語教師の採用において次のいずれかの条件を定めています。

また、他の団体で日本語教師になる場合でも、同等の条件が課されることが多いです。

  1. 学士の学位保持+日本語教師養成講座420時間の受講
  2. 大学(大学院)にて、日本語教育を学ぶ
  3. 日本語教育能力検定試験に合格する

以下に当てはまる人が今から日本語教師を目指すうえで、日本語教育能力検定試験合格は手の届きやすい条件と言えるでしょう。

  • 日本語教育を学んだことがない人
  • 学歴に不安がある人
  • 養成講座を受講したり、大学に通う時間がない社会人

※文化審議会では今後の公認日本語教師について新しい要件(検定合格+学士以上+教育実習)を課すことが検討されています。最新情報について、チェックを怠らないようにしましょう。
参考元:「日本語教師の資格の在り方について(報告)【案】」https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/kokugo/kokugo/kokugo_73/pdf/92083701_02.pdf

日本語教育能力検定試験の試験内容

受験資格

特になし

試験形式

3部構成

試験 試験方法 試験時間 点数 問題
試験Ⅰ マークシート方式 90分 100点満点 出題範囲区分ごとの基礎知識を問う問題
試験Ⅱ マークシート方式 30分 40点満点 試験I+試験Ⅲの出題範囲を持つ聴解試験(音声を聞いて答える問題)
試験Ⅲ マークシート方式+記述式 120分 100点満点 横断設問で、現場対応に繋がる問題解決能力を問う問題

試験内容

  • 区分1
  • 社会・文化・地域(日本の社会と文化、言語政策、日本語教育史など)

  • 区分2
  • 言語と社会(社会文化能力、言語政策、社会言語学、多文化・多言語主義など)

  • 区分3
  • 言語と心理(習得過程、中間言語、学習方略など)

  • 区分4
  • 言語と教育(教育課程編成、評価法、教授法、教材分析・開発など)

  • 区分5
  • 言語一般(世界の諸言語、日本語の構造など)

試験日

年1回(10月)

合格ライン

非公開(70%前後の正解率が必要と考えられている)

参考元:「令和 2 年度日本語教育能力検定試験実施要項」http://www.jees.or.jp/jltct/pdf/R2%20jisshiyoko.pdf

独学での合格難易度は?

日本語教育能力検定試験の合格率

独学の難易度を考える前に、まずは日本語教育能力検定試験全体の合格率について見てみましょう。

日本語教育能力検定試験の合格率は、第1回(1987年)にて19.69%となっています。

その後しばらくは10%台の合格率で推移していましたが、第20回(2006年)に21.27%と初めて20%を上回ります。第20回以降合格率は20%台から落ちることはなく、第33回(2020年)では28.93%と過去最高の合格率を記録しました。

参考元:「日本語教育能力検定試験 応募者・全科目受験者・合格者数 推移」http://www.jees.or.jp/jltct/pdf/R2-1obosya.pdf

現行試験では、独学の難易度が低くなった?

以上のように、日本語教育能力検定試験の合格率は近年高まりつつあります。
その理由の一つと考えられるのが、試験内容の変化です。

日本語教育能力検定試験は、2011年に基礎項目を設定、これらの項目を中心に問題が出されるようになりました。出題範囲を見ると、優先的に出題される基礎項目がすぐに分かるようになっています。

また試験Ⅲに登場する記述式試験の内容も、言語に関わること・教育実践の方法などに対し自分の考えや意見を述べる形式になりました。正解不正解がはっきり分かれる問題というよりは、小論文的な試験内容と考えられます。

このような背景と合格率の推移を見るに、日本語教育能力検定試験は、易化傾向にあるといえるでしょう。
テキストや過去問集を使った独学の難易度も、近年では低くなっていると考えられます。

日本語教育能力検定試験、独学のメリットは?

日本語教育能力検定試験の対策としては、検定試験に対応しているスクールを受講するという方法があります。

スクールの中には、420時間の日本語教師養成講座と試験対策がパックになっているところも見られます。

一方、検定試験対策は独学で行うこともできます。独学のメリットはどんなところにあるのでしょうか。

学習費用が安い

学習費用が安いということは、独学のメリットの1つです。

日本語教育能力検定試験の講座受講には、それなりの学費がかかります。

検定試験対策のみの通信教育でも費用は約5~10万円、420時間の日本語教師養成講座とセットの場合は10万円以上の出費が予想されます。
通学制で日本語教師養成講座と検定対策セットのスクールを希望する場合は、50万を超える学費が必要なこともあります。

一方で、独学の場合にかかる主な学習費用は参考書・問題集代のみです。

日本語教育能力検定試験の参考書・問題集の価格は大体1,000~3,000円代です。数冊利用することを考えても合計1,2万円程度の予算を見積もっておけば、学習を進めることができるでしょう。

最近では無料の対策講義動画なども公開されているので、上手に活用すれば安く受験対策できるはずです。

このように比較してみれば、独学と講座受講では数万~数十万単位で学習費用に差が生まれることが分かります。

マイペースで学習できる

スクールの講座を受講する場合、学習スケジュールについてはスクールに任せることになります。420時間の養成講座とセットならば、420時間以上の学習時間が必要です。

講座修了まで1年ほどの時間がかかることもあり、「勉強時間が思うように取れない」「忙しいので学習時間を節約したい」という人にとっては受講しづらいかもしれません。

独学のメリットは、自分のペースで学習を進めることができることです。短期間で集中して勉強し、数ヵ月で合格を手にした人もいます。

また仕事や家庭の都合で「学習時間にムラがある」「数年かけて勉強したい」という場合もマイペースで学習できる独学の方が向いているでしょう。

独学のデメリットは資格をとってから補うことも可能

もちろん独学にはデメリットもあります。

例えば、日本語教師養成講座のカリキュラムに含まれている実習を経験できないことです。現行の日本語教育能力検定試験はペーパーテストのみで、実技試験が存在しません。

そのため日本語教師としてのキャリアが全くない人は、検定試験に合格しても現場経験不足になる可能性があるのです。

しかし、検定試験合格後に教師としての現場経験を積むこともできます。

合格後は、教育実習のみの日本語教師講座を受講したり、ボランティアスタッフとして外国人に日本語を教えたりして、教師としての経験を増やす努力をしてみましょう。

日本語教育能力検定試験の独学勉強方法

日本語教育能力検定試験に独学で合格する人は、自分に合った教材を効率よく使って試験対策をしています。独学で合格する人の勉強法について、調査した結果をまとめてみました。

独学で合格するための勉強時間

独学で合格するための勉強時間は、受験生によって変わってきます。中には3ヶ月という短い期間で合格できる人もいますが、大体6ヶ月~1年ぐらい勉強時間をとっている場合が多いです。

試験日は例年10月となっており、年1回しか実施されません。この試験日をもとにできるだけ余裕を持った勉強時間を確保し、自分なりの勉強計画を組み立てていくことが大事です。

独学に使える教材

日本語教育能力検定試験で独学に使える教材には、以下のようなものがあります。なお、同じ教材でも人によって読みやすさや必要度が変わってきます。現物を見て、自分にあった物を選んでください。

テキスト

  1. 『日本語教育能力検定試験 合格するための本』 アルク日本語編集部
  2. こちらは検定試験についての概要をざっと学ぶことができる一冊です。試験の傾向、試験日の流れから区分別の問題演習までが178ページにコンパクトにまとまっています。試験に挑む前の最初の一冊として、または持ち運び用のテキストとして使うことができます。

  3. 『改訂版 日本語教育能力検定試験に合格するための基礎知識』 岡田 英夫
  4. 検定試験の基本を学べるコンパクトな本です。重要項目を50の視点に分けて解説しています。いきなり3のような総合テキストに向き合うのは気が重いという人は、この本から勉強を始めてみると良いでしょう。

  5. 『日本語教育教科書 日本語教育能力検定試験 完全攻略ガイド』 ヒューマンアカデミー
  6. 総合的なテキストとして人気の高い参考書です。受験生の間では「赤本」と呼ばれており、独学での合格を狙うなら購入を検討しましょう。重要度や頻出度がすぐに分かる構成で、日本語教育能力検定の幅広い試験内容を効率的に学べる工夫がされています。

問題集

  1. 『日本語教育能力検定試験 試験問題』 公益財団法人日本国際教育支援協会
  2. どのような試験においても、受かるコツは過去問に慣れることです。日本語教育能力検定試験の過去問が収録されているこの本は、実際の試験形式を知るために重要です。
    ただし資格試験の過去問本というと大抵数回分がまとまっていることが多いのですが、この本の場合は1年分(1回分)しか収録されていない点に注意してください。また解答はあっても、解説はついていません。

  3. 『日本語教育の検定問題を解く』 新田 豊
  4. Amazonの電子書籍として出版されている検定問題過去問の解説本です。1の教材を補うために使うことができます。試験1年分ごとの分冊形式ですが、2021年1月現在kindle unlimitedというサブスクリプションサービスを使えば、月額980円(税込)で全シリーズを読むことができます。

  5. 『新版 日本語教育能力検定試験 合格するための問題集』 アルク日本語編集部
  6. 豊富な問題を収録している問題集です。この本は解説が詳しく載っているので、1の補完的な問題集として使うことができるでしょう。

独学で合格するための勉強方法

独学で合格するための勉強方法は、基本的にテキストで知識を得る→問題を解いてアウトプットするという流れになります。

試験勉強の準備運動

独学で合格している人の多くが支持しているヒューマンアカデミーの『完全攻略ガイド』(テキストの3)は、544ページと結構ボリュームがあります。

最初にこのテキストから始めるのはモチベーションが持たないと感じる人は『合格するための本』(テキストの1)や『合格するための基礎知識』(テキストの2)で、本格的な勉強前の準備運動をすると良いでしょう。

また、まず最初に過去問を1年分解き、どんな問題が出るのかを見てみるという勉強方法もあります。

もちろんこの時点では検定試験について何の知識もないので、結果はさんさんたる物だと思います。しかし、ここでの目的はどんな問題がどんな構成で出るかを知ることなので、点数に落ち込む必要はありません。

総合テキストでのインプット

準備運動で試験の概要をつかんだら、いよいよ総合テキストを使って知識をインプットしていきます。一度読んだだけで内容が身に着くことはまずないと考え、何度も繰り返して読むことが大事です。

テキストを読むばかりでは知識が定着しづらいので、内容をノートに書き込んで覚えていきましょう。ノートと言っても手書きである必要はありません。

むしろパソコンを使った方が、後から内容を追加しやすくなるというメリットがあります。中には自分のノートをブログなどで公開している人もいるので、参考にしてみてはどうでしょうか。

ノートに勉強内容をまとめることは、分厚いテキストを「携帯用」に縮小できるということでもあります。通勤・通学の合間や外で勉強するときにテキスト代わりに使えるよう意識して、ノートを書いていきましょう。

ノートを作るときに意識したい事柄

  • ポイントを絞って書く
  • 時間がたった後で読み返しても、内容が分かるように書く

問題集に挑む

インプットが終わったら、次はアウトプットです。アプトプットは市販の問題集を解く方法と、過去問を解く方法があります。

解説が詳しいのは問題集ですが、やはり本物の試験問題とは少し解き味が違うようです。実戦形式に慣れるためには過去問が必要になります。時間がない時や試験日直前は問題集よりも過去問を優先しましょう。

過去問を解くときは、実際の試験時間と同じ時間を測って取り組んでください。

1回で4時間が必要になるので、時間が取れる休日に挑むのが良いでしょう。過去問は1年分だけでなく、3~5年分は用意しておくようにします。また解きっぱなしにするのではなく、繰り返し解くことが受かるコツと言えます。

日本語教育能力検定試験では、教材の項目(問題集1)で紹介した『日本語教育能力検定試験 試験問題』で過去問の演習ができます。ただしこちらの本は「解答はあっても解説がない」というデメリットがあります。どうしてこのような解答になるのか、という点は自分で調べなければなりません。

調べる方法としては、テキストなどを使って該当箇所を自分で見つける方法と、インターネットで解説を行っているサイトを探すという方法があります。また『日本語教育の検定問題を解く』(問題集2)を購入しても良いでしょう。

苦手分野を克服する

インプットとアプトプット(問題演習)を繰り返すことで、自分の苦手分野が見えてくるようになります。いつも正解率が低いところは、基礎力が足りていない証拠です。

日本語教育能力検定の試験範囲は広いため、人によって苦手な分野と得意な分野が変わってくるようです。

例えば聴解試験についても、音感がある人にとっては楽に感じるかもしれません。一方で何度聞いても正解が分からない人もいます。

自分にとっての苦手分野を発見したら、その部分を強化するように勉強をしていきます。

難易度が高い分野の対策法

日本語教育能力検定試験は試験形式が試験Ⅰ~Ⅲの3つに分かれています。その中でも苦手にしている受験生が多いのが、試験Ⅱの聴解試験と試験Ⅲの記述式です。
令和元年の試験で最も平均正解率が低かったのが記述式(51.6%)、次いで聴解試験のある試験Ⅱ(59.2%)でした。このことからも、聴解試験と記述式の難易度が高いということが分かります。

参考元:「令和元年度 日本語教育能力検定試験 結果の概要」http://www.jees.or.jp/jltct/pdf/2019_jltct_kekka.pdf

聴解試験対策は?

音感がない人には大変難しく思える聴解試験ですが、問題構成は毎年似通っています。しっかり対策すれば点数がとりやすい分野ともといわれています。

聴解試験に受かるコツは「音声への慣れ」と「問題への慣れ」です。問題集についているCDを何度も聞いて、自分なりの聴解試験攻略方法を探していくことが大切です。聞き取るだけでなく、自分でも口を動かして、正しい発音を確かめてみましょう。

また、耳だけでなく、知識で解く面があるのも聴解試験の特徴です。音声記号表、口腔断面図、文法知識などを抑えてから聴解問題に挑んでみてください。

記述式対策=小論文対策

マークシート方式と違い、明確な答えが分かりにくいのが記述式問題です。記述式試験では「言語にかかわる事象」や「教育実践の方法・内容」について自分の考えを書いていきます。文字数は400字程度です。

自分の考えを書くというのですから、つまりは小論文対策をしっかりすることが受かるコツです。
小論文の基本的な構成は、以下のようになります。

  1. 主張
  2. 主張の理由や根拠、具体例
  3. 結論(もう一度冒頭の主張を繰り返す)

最初は問題集などについている模範解答を読んで、どう書けばよいか感覚をつかんでいきます。インプットが終わったら、実際に手を動かして解答を作成します。

記述式問題は試験Ⅲの中で、マークシート方式と合わせて出題されます。そのため、解答にかけられる時間は大体30分前後と考えられます。

問題を解くときは時間を測り、解答にどれだけの時間がかかるのかを把握するようにしましょう。繰り返し問題を解いて、時間内に約400字の執筆ができるように練習していきます。

なお明確な答えのない記述式対策については、試験勉強の後半に行うほうが良いかもしれません。まずマーク式・聴解問題の知識を身に着けること。記述式対策はそのあとに取り組む方が無難です。

独学に必須のテキストと過去問を使いこなそう

独学で日本語教育能力検定試験の合格を目指すなら、インプット用のテキストと過去問は必須の教材と言えます。

独学用テキストとして人気があるヒューマンアカデミーの『完全攻略ガイド』は、すこし分厚く持ち運びしづらいのが難点です。内容をまとめたノートを作って、携帯用テキストとして使用してみましょう。

また実際の問題形式が分かる過去問は、数年分を購入して何度も繰り返し挑みます。過去問に挑戦するときは、本当の試験時間に合わせて時間を測ることが大切です。

勉強時間に余裕がある場合は、過去問以外の問題集にも取り組みます。たくさんの問題を解くことで、苦手な分野を発見できます。自分が苦手分野が分かったら、集中的に対策して合格水準に持っていけるように頑張ってください。


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参考サイト
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内閣府
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梅田 幸子
伊藤 真哉
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