理学療法士(PT)や作業療法士(OT)は、疾患や事故などによって障がいを抱えた患者さんや高齢者に対して、リハビリテーションを行い、生活を支援するやりがいのある仕事です。
しかし、離職率が比較的高いとされ、退職を考える理学療法士や作業療理学療法士や作業療法士の中には、転職を考えている方も少なくありません。
そこで今回は、理学療法士や作業療法士の離職率の実態や退職理由、長く働くためのポイントについて詳しく解説していきます。
あわせておすすめの転職サービスも紹介しますので、理学療法士や作業療法士を目指している人や、これから就職する方はぜひ参考にしてください。
リハビリテーションの分野の専門職である理学療法士や作業療法士を目指す方にとって、離職率は気になりますよね。
ここでは、理学療法士と作業療法士の離職率の実態について説明します。
公益社団法人日本理学療法士協会による『理学療法士を取り巻く状況について』をみてみましょう。
医療機関・介護福祉領域において、平成25年から27年の3年間の1年あたりの平均離職率は医療で10.2%。介護で18.8%とされています。(*)
*参照:公益社団法人日本理学療法士協会『理学療法士を取り巻く状況について』
また、厚生労働省が行った『令和3年雇用動向調査結果の概要』によると、令和3年(2021年)の離職率は、常用労働者全体で13.9%でした。
常用労働者全体の離職率と比べてみると、医療機関では10.2%と低く、介護福祉領域では18.8%と高めであることがわかります。
中でも、介護福祉領域における訪問リハビリテーションの離職率は、37.4%と他に比べて高く、理学療法士の定着が難しい状況であるといえるでしょう。(*)
一方、作業療法士の離職率については公的機関が行った統計データはありません。
そこで、厚生労働省による『令和4年賃金構造基本統計調査』から勤続年数をみてみましょう。
理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、視能訓練士などリハビリ職全体の勤続年数は、平均7.3年とされています。
他の職種では、平均勤続年数が10年を超えているものも多いため、作業療法士を含めたリハビリ職の平均勤続年数は短い傾向といえるでしょう。(*)
*参照:厚生労働省『令和4年賃金構造基本統計調査 職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)』
新卒で入職して実務経験を積み重ねた後、新しい分野への挑戦やスキルアップのため転職を選択される方も多いと考えられます。
離職した理学療法士や作業療法士の中には、結婚や出産などをきっかけに退職された方もいらっしゃいます。
しかし、職場環境や待遇面、よりよい環境やスキルアップを目指して転職される方も多い傾向です。
厚生労働省による職業情報サイトjobtagをみると、令和4年度の理学療法士と作業療法士のハローワーク求人統計データが掲載されています。
理学療法士と作業療法士の有効求人倍率は以下のとおりです。
それぞれの有効求人倍率をみると、求職者1人に対して4件以上の求人がある、ということになります。
令和4年平均の有効求人倍率が1.28倍ですので、リハビリ職の有効求人倍率は、求職者にとって働く場所には困らないことがわかりますね。
理学療法士、作業療法士はどちらも国家資格であり、医療機関や介護施設では、リハビリ職の人手不足から積極的に求人を出しています。
求人数が多く、就職や転職がしやすい業界であり、ブランクから復職しやすいことが、離職率に影響しているといってもよいでしょう。(*)
*参照:厚生労働省職業情報サイトjobtag『理学療法士(PT)』
*参照:厚生労働省 職業情報サイトjobtag『作業療法士(OT)』
*参照:厚生労働省『一般職業紹介状況(令和4年12月分及び令和4年分)について』
理学療法士と作業療法士の退職理由は、主に5つの要因が考えられます。
ここでは、理学療法士や作業療法士が退職する際の主な理由について、それぞれみていきましょう。
理学療法士や作業療法士の退職理由のひとつに、給与や待遇面への不満があげられます。
厚生労働省の『令和4年賃金構造基本統計調査』をみると、理学療法士や作業療法士を含めたリハビリ職の給与は月収約30.0万円・賞与約69.8万円・平均年収約430万円です。
一方、全産業における一般労働者(大卒)の平均年収は約480万円となり、若干ですが下回っています。
理学療法士や作業療法士は、高い専門性が求められながらも、職場によって、業務に見合った給料が得られない場合があります。
実務に見合った給与や待遇を求めて、転職される方が多い傾向です。
理学療法士や作業療法士は、適切なリハビリテーションのプランを立てるために、患者さんと密接な関係を築く必要があります。
患者さん一人ひとりと向き合ってリハビリを実施する必要がありますが、時には患者さんの数が多く、日々の業務量が多くなってしまう場合があります。
このような状況が続くと、精神的・身体的なストレスを抱えることになります。
体力的な負担も大きい仕事であるため、過労が重なることで、体調を崩し、働く意欲が低下してしまうこともあります。
残業や休日出勤が多く、プライベートの時間を十分に確保できないと、ストレスや疲れがたまり、退職を考えるようになるでしょう。
理学療法士や作業療法士の中には、「今の職場では仕事へのやりがいが見いだせない」と、退職される方もいらっしゃいます。
この場合、患者さんに対して自分の治療概念やスキルを活かせない、またはリハビリの質を下げざる得ない状況に置かれているなどのジレンマが原因となっていることが多いです。
例えば、職場の方針によって、患者さんのリハビリの効果よりもスピードが重視される場合などがあげられます。
このように、仕事に対してやりがいを感じにくい状況でも、退職理由となることがあります。
職場の雰囲気や自分自身の能力を評価してくれる上司、自己成長できる環境などプラスの方向に向かっている職場環境であれば、やりがいを感じることができ、長く働くことができることが多いでしょう。
理学療法士や作業療法士の退職理由には、職場のストレスや人間関係の問題もあります。
これらの職種は、患者さんたちに対してリハビリテーションを実施するために、高い技術や専門知識を必要とする専門職です。
そして、より良い効果を生むためには多職種との連携や良好な職場環境が重要になりますが、職場のストレスによる退職者が多いとされています。
職場でのコミュニケーションが円滑ではなかったり、上司や同僚との人間関係などが原因で、理学療法士や作業療法士が職場に居づらくなってしまうことも少なくありません。
特に、理学療法士や作業療法士は、患者さんとのコミュニケーションが重要な仕事の一つなので、自分自身がストレスを感じたり不安になったりすると、患者さんとの関係にも悪影響を与えることがあります。
理学療法士や作業療法士にとって、職場のストレスや人間関係は、仕事に対するモチベーションに影響するため、退職の理由になることもあるでしょう。
リハビリ職の活躍の場は、医療機関だけでなく特別養護老人ホームやデイサービス、訪問看護ステーションなど多岐に渡り、働き方や職種の選択肢も豊富です。
中には、PTやOTとして経験と専門性を高めるため、様々な現場で実務経験を重ねたいと思う方もいらっしゃるでしょう。
例えば、療養型でのリハビリがしたい、整形疾患の症例を経験したい、スポーツ分野を学びたいなど、スキルアップを目的として転職する方が多くいます。
また、役職・管理職としてキャリアアップ転職や、独立・起業をする方など様々です。
これまで培った経験を生かして、より多様な分野に精通し、患者さんのニーズに合わせたアプローチを行いたいといった、ポジティブな理由で退職する方も多いのです。
理学療法士や作業療法士は、患者さんがよりよい生活を送るためのサポートを行う、重要な仕事を行っています。
しかし、給与や労働環境など様々な理由から長く働くことが難しいと感じる人も多いかもしれません。
長期にわたって理学療法士や作業療法士として働くためには、以下のようなポイントが大切です。
制度や医療技術は日々進化しています。
患者さんへよりよいリハビリテーションを実施できるように情報をアップデートし、専門知識やスキルを継続的にスキルアップすることが大切です。
自分自身のスキルアップに努めることで、やりがいやモチベーションを高めることができます。
さらに、専門知識やスキルを磨くことで、同じ職場の人たちとコミュニケーションを図り、チームワークを高めることもできます。
PT・OTとしての専門知識・スキルを磨くことで、自信をもって働き、職場の人間関係も良好にできるので、長期的なキャリアを築くことにつながるでしょう。
理学療法士・作業療法士として、長く働き続けるためには、キャリアプランを明確にして、目標を設定することが重要です。
キャリアプランを持つことで、自分の将来像に向かって仕事に取り組むことができるからです。
まずは、自分自身の知識・経験からどんなことに関心をもち、どのようなキャリアを描いていけばよいのか、自己分析しましょう。
次に、キャリアの目標ができたら、具体的な計画をたて方向性を決めていきます。
自分自身のキャリアプランを持ち、目標を明確化し、学び、挑戦することが理学療法士・作業療法士として長く働くための重要なポイントです。
理学療法士・作業療法士として長く働きたい方は、ワークライフバランスを考えることが大切です。
長時間労働や残業、ストレスなどが続くと、精神的・身体的な疲れが蓄積され、心身の不調や、やる気の低下につながります。
仕事以外の自分の時間を大切にし、趣味やストレス解消を行うことで、業務において気持ちの切り替えができるようになるでしょう。
また、現在の職場でプライベートな時間を充実させられない場合は、ワークライフバランスのとれた働き方ができる職場への転職もひとつの方法です。
理学療法士・作業療法士として長く働くためには、自分にとって「譲れない条件」を明確にすることも大切です。
例えば、以下のような条件があげられます。
待遇面
給与、休暇、福利厚生などの待遇面です。
待遇面を優先したい方は、自分が納得のいく待遇や、働きやすい環境の職場を選びましょう。
労働環境
勤務時間、通勤時間、勤務地などです。
通勤時間が長すぎたり、人員不足で働き方がハードだったりすると、長期的に働けるか心配になることがあるでしょう。
スキルアップ
将来、スキルアップやキャリアアップを目指している方は、自分自身が成長できる環境かどうかも考えましょう。
例えば、資格取得支援や研修制度が充実している環境であれば、自分自身のキャリアアップにつながります。
ワークライフバランス
子育てや介護などをされている方の中には、家庭と仕事の両立を優先させたい方もいます。
残業が多く、プライベートの時間が十分に取れないような職場では、長く働くことが難しくなることがあります。
自分が働きやすい環境であるかを確認しましょう。
人間関係
職場の人間関係についても、譲れない条件のひとつです。
合わない上司や同僚と働くことがストレスになることもありますので、「風通しの良い職場」や「良好な人間関係」を譲れない条件として優先される方も少なくありません。
このように、自分にとって譲れない条件をあげることで、「今いる職場が自分に合っているのか」「どんな職場に転職すればいいのか」を明確にすることができます。
職場によって、待遇や労働環境、強い分野は大きく異なります。
自分のキャリアプランとライフスタイルと合わせながら、理学療法士・作業療法士として長く働きたいと感じる職場を見つけることが大切です。
理学療法士・作業療法士として長く働くためには、自分に合った職場環境が必要です。
「今の職場が自分に合っていない」「違う職場でスキルを磨きたい」と考えている方は、転職を考える方も多いでしょう。
しかし、自分で求人情報を探すだけでは十分な情報を得られず、せっかくの転職を失敗してしまう可能性もあります。
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転職エージェントには、それぞれ得意な業界や職種などがあります。
理学療法士・作業療法士の方は、リハビリ職の転職に強い転職サービスの利用がおすすめです。
理学療法士や作業療法士の離職率の実態や退職理由、長く働くためのポイント、おすすめの転職サービスを紹介しました。
理学療法士や作業療法士の離職率は、医療機関よりも、訪問リハビリなど介護福祉分野で高いことがお分かりいただけたかと思います。
仕事のしんどさや職場環境から退職される方もいますが、職場の選択肢が豊富なリハビリ職においては、自分の専門性や学びたい分野などスキルアップやキャリアアップ転職も多いことが特徴です。
現在の仕事や将来に不安を感じている方や、自分に合った職場を探している方は、ぜひ今回紹介した転職サービスに相談してみてはいかがでしょうか。