QC検定は2005年に誕生して以来、どんどん受験者数を伸ばしている注目の検定試験です。品質管理のスペシャリストを目指す人から、社会に出る準備として資格をとりたい高校生まで様々な受験生が存在します。
この記事ではQC検定各級の合格率や難易度、勉強方法などについて解説しています。これからQC検定を受験しようとする人は、ぜひ参考にしてみてください。
QCとはquality controlの略称で、日本語で言えば品質管理のことです。
つまり、QC検定(別名:品質管理検定)とは品質管理についての知識を評価するための検定試験なのです。団体受験申込企業の一覧には、シチズン、ヤマハ、リコー、三菱重工業等名だたる会社の名前が並んでいます。QC検定合格を新入社員に課しているところや、有資格者に奨励金を出している企業もあります。
品質管理といえば、工場のラインなど製造業を思い浮かべる人もいるかもしれません。確かに団体受験を申込んでいるのは製造業が中心ですが、中には医療法人や福祉法人等他業種の団体受験者も見られます。QC検定は職種や部門の垣根を越えて、受験者を獲得している検定といえるでしょう。
QC検定は1級、2級、3級、4級の4階級に分かれています。受験資格は各級において特に定められておらず、誰でも、どの級からでも受験ができます。「1級と2級」のように隣接級での併願も可能です(ただし自分のレベルにあった級を受験できるよう「1級と4級」のような離れた級の併願は認められていません)。併願受験をすれば、各級別々に試験を申し込むより受験料が割安になります。
なおQC検定には、1級受験者のうち一次試験のみ合格ラインに達した人を「準1級」として認定する制度があります。ただし準1級認定者が再度1級に挑む場合でも、一次試験が免除になる等の優遇措置はありません。
試験日程
年2回(3月と9月)
受験料(税込)
単願受験の場合
級 | 受験料 |
---|---|
1級 | 9,900円 |
2級 | 5,500円 |
3級 | 4,400円 |
4級 | 3,300円 |
併願受験の場合
級 | 受験料 | |
---|---|---|
1級と2級 | 13,860円 | 単願受験より1540円安 |
2級と3級 | 8,910円 | 単願受験より990円安 |
3級と4級 | 6,930円 | 単願受験より770円安 |
想定受験者
品質管理の専門的知識を身に着けたい人(品質管理部門・技術系部門の指導者、部署を横断する品質問題解決のリーダーなど)
品質・問題に対する解決力を身に着けたい人(品質にかかわる部署のスタッフ、管理職、品質管理問題を解決するリーダーなど)
社会人としての基礎知識を学びたい人、初めて品質管理を学ぶ人(新入社員、大学生、高校生、高専生など)
試験形式
一次試験:マークシート 二次試験:論述試験
マークシート
試験時間
(マークシート+論述試験合わせて)120分
90分
QC検定の合格ライン(合格基準)は、級によって変わってきます。
1級の合格基準
※1級不合格の場合でも、1と2の条件を満たした場合(一次試験合格者)は「準1級」に認定
2級、3級の合格基準
総合得点が約70%以上+手法分野・実践分野に分類された問題それぞれで得点が約50%以上
4級の合格基準
総合得点が約70%以上
参考元:「QC検定」公式ページ受験案内・試験要項https://webdesk.jsa.or.jp/common/W10K0500/index/qc/,
「パンフレット」https://webdesk.jsa.or.jp/pdf/qc/md_4602.pdf
QC検定各級の合格率はどのようになっているのでしょうか。その推移を見てみましょう。
開催時期 | 合格率 | |
---|---|---|
2005年12月 | 94.55% | 第1回試験 |
2006年09月 | 84.70% | |
2007年03月 | 87.80% | |
… | ||
2014年03月 | 85.50% | |
2014年09月 | 89.46% | |
2015年03月 | 85.15% | |
2015年09月 | 91.58% | |
2016年03月 | 84.97% | |
2016年09月 | 85.46% | |
2017年03月 | 84.74% | |
2017年09月 | 85.19% | |
2018年03月 | 84.52% | |
2018年09月 | 84.21% | |
2019年03月 | 85.15% | |
2019年09月 | 84.02% | |
2020年03月 | 新型コロナウィルスの影響により中止 | |
2020年09月 | 85.09% |
4級の合格率は試験開始当初から継続して高くなっています。毎年合格率は約80%台を推移しており、直近3年は約85%の合格率を記録しています。
開催時期 | 合格率 | |
---|---|---|
2005年12月 | 88.28% | 第1回試験 |
2006年09月 | 71.46% | |
2007年03月 | 71.93% | |
… | ||
2014年03月 | 50.69% | |
2014年09月 | 50.95% | |
2015年03月 | 50.24% | |
2015年09月 | 62.66% | |
2016年03月 | 55.98% | |
2016年09月 | 49.67% | |
2017年03月 | 42.02% | |
2017年09月 | 41.14% | |
2018年03月 | 49.68% | |
2018年09月 | 50.34% | |
2019年03月 | 51.17% | |
2019年09月 | 49.71% | |
2020年03月 | 新型コロナウィルスの影響により中止 | |
2020年09月 | 53.69% |
3級はここ3年の合格率が約50%になっており、理論上は2人に1人が合格できる試験です。
開催時期 | 合格率 | |
---|---|---|
2005年12月 | 82.25% | 第1回試験 |
2006年09月 | 62.26% | |
2007年03月 | 62.55% | |
… | ||
2014年03月 | 29.86% | |
2014年09月 | 24.99% | |
2015年03月 | 25.09% | |
2015年09月 | 26.79% | |
2016年03月 | 21.23% | |
2016年09月 | 19.64% | |
2017年03月 | 21.05% | |
2017年09月 | 36.38% | |
2018年03月 | 17.26% | |
2018年09月 | 24.89% | |
2019年03月 | 26.59% | |
2019年09月 | 22.96% | |
2020年03月 | 新型コロナウィルスの影響により中止 | |
2020年09月 | 27.63% |
第1回では合格率約80%の簡単な試験だった2級ですが、近年の合格率は約20%台で推移しています。ただ20%台の中でも振れ幅が大きく、時折合格率が10%台まで落ち込む難易度の高い試験回もみられます。
開催時期 | 合格率 | |
---|---|---|
2005年12月 | 38.92% | 第1回試験 |
2006年09月 | 25.12% | |
2007年03月 | 17.43% | |
… | ||
2014年03月 | 11.89% | |
2014年09月 | 12.04% | |
2015年03月 | 13.28% | |
2015年09月 | 14.62% | |
2016年03月 | 7.65% | |
2016年09月 | 6.04% | |
2017年03月 | 12.19% | |
2017年09月 | 2.64% | |
2018年03月 | 4.52% | |
2018年09月 | 4.57% | |
2019年03月 | 7.20% | |
2019年09月 | 2.58% | |
2020年03月 | 新型コロナウィルスの影響により中止 | |
2020年09月 | 8.10% |
1級試験の合格率は、近年非常に低い値で推移しています。試験開始当初約40%程度あった合格率は、回を重ねるごとに低下していきました。2016年以降は、ほとんどの試験で合格率は1桁にとどまっています。特に2017年09月試験や2019年09月試験の合格率は低く、2%台となりました。
データ引用元:https://webdesk.jsa.or.jp/pdf/qc/md_4688.pdf
4級は初めて品質管理を学ぶ人を受験対象としているQC検定の入り口です。社会に出るための準備として受験する学生や新入社員を主たる対象としているため、合格率は80%台の高い水準にあり、難易度が低い簡単な試験です。
学生時代に学んだ統計の知識や社会人としての常識があれば、試験対策もしやすい試験といえるでしょう。
3級の合格率は50%程度で、資格試験としての難易度は普通レベルといえます。統計手法や新QC7つ道具など、試験内容は4級に比べ深まってきます。とはいえしっかり集中して対策すれば、合格するのはさほど難しくありません。
2級試験の合格率は20%台となっており、難易度は高いといえるでしょう。数字上は5人に1人しか合格できないレベルの難しさです。
この合格率は大体ファイナンシャルプランナー2級と同程度と考えられます。2級試験の想定受験者には、管理職やリーダーなどの指導的立場にある人材が含まれます。そのため、高いレベルの統計知識(相関分析や単回帰分析)など専門的な知識が求められるようになります。
QC検定1級の難易度はとても高くなっています。合格率を見ると、1級の難易度は難関資格として有名な司法書士と同程度の水準であることが分かります。
試験範囲は広く、論述試験が加わる点が1級の難易度を引き上げていると考えられます。
1級試験の一次試験合格者は準1級認定を受けることができます。ただし準1級認定者になったとしても、試験上の優遇措置は特にありません。
準1級合格者は一次試験が免除になるという特典があれば一次試験と二次試験対策を分けることもできますが、それは不可能なのです。
また1級は他の級に比べて、試験地が半分になってしまいます。受験機会という面でも難易度が高いのです。
このようにQC検定1級に合格するのは、さまざまな面において容易ではありません。
QC検定を受験する前に、検定試験の知名度はどのぐらいなのか気になる人もいるのではないでしょうか。
QC検定の受験者数と合格者数(全体)の推移を見てみると、次のようになっています。
開催時期 | 受験者数 | 合格者数 | |
---|---|---|---|
2005年12月 | 3,601人 | 3,118人 | 第1回試験 |
2006年09月 | 9,985人 | 6,863人 | |
2007年03月 | 9,360人 | 6,480人 | |
… | |||
2008年09月 | 24,099人 | 17,288人 | |
2009年03月 | 24,390人 | 15,666人 | |
2009年09月 | 28,129人 | 18,134人 | |
… | |||
2011年09月 | 44,195人 | 24,801人 | |
2012年03月 | 38,445人 | 24,063人 | |
2012年09月 | 42,329人 | 25,809人 | |
… | |||
2017年09月 | 56,432人 | 26,456人 | |
2018年03月 | 57,580人 | 28,099人 | |
2018年09月 | 55,890人 | 28,113人 | |
2019年03月 | 59,458人 | 30,701人 | |
2019年09月 | 62,262人 | 31,005人 | |
2020年03月 | 新型コロナウィルスの影響により中止 | ||
2020年09月 | 42,869人 | 22,680人 |
データ引用元:https://webdesk.jsa.or.jp/pdf/qc/md_4688.pdf
これらのデータから分かるように、QC検定の受験者数は受験開始時から順調に増えています(2020年09月試験は受験者数が大きく減っていますが、これは新型コロナウィルスの影響から受験を控えた人が多かったと推察されます)。
第一回と比べて受験者数は実に20倍ほどになりました。このデータからは、QC検定に対する認知度が高まっていることが分かります。
一方、合格者数は受験者数の伸びに比べればそれほど増えていません。これには1級・2級のような合格率が低く、難易度の高い試験の影響が伺えます。
では、QC検定各級の具体的な勉強法を見ていきましょう。
4級合格に必要な勉強時間は大体10~50時間といわれています。4級は合格率がとても高い試験ですが、ある程度の勉強は必要です。
QC7つ道具や三現主義など学校の勉強では教えてくれない概念も登場しますので、しっかり対策しておきましょう。
なおQR検定の公式ページでは、4級受験者が一人で勉強できるよう4級用テキスト(PDF版)を配布しています。
こちらの公開テキストを使えば、教材費をかけなくても4級の勉強ができます。
ただこのテキストは試験に出る項目を淡々と説明している内容になっているので、人によっては退屈に感じるかもしれません。
また、公開テキストには確認問題はついていません。各級の問題例は公式サイトで公開されていますが、ほんの数問かつ答えがないのがネックです。
公開テキスト中心の勉強を続けるのが基本ですが、問題を解きながら学びたいという人は以下のような教材の併用を検討してみてください。
図解を用いたテキストと例題で、160ページの薄さにまとまっている教材です。
過去問の出題傾向を踏まえたうえで作られた模擬問題集です。4級では過去問を手に入れることが難しいため、模擬問題集を使うことも考えてください。
3級合格に必要な勉強時間は大体30~100時間ほどです。
3級以上に関しては公開テキストは配布されていません。勉強のためには教材を自分で購入する必要があります。
3級の教材には、以下のようなものがあります。
章ごとに練習問題が付いているため、テキストの内容を抑えながら知識が身に着く教材です。
図表を用いた解説テキストにチェックテストや模擬試験1回分が付いた教材です。
6回分の過去問題と解説がついている過去問集です。
具体的な勉強方法としては、まずテキストを読んで内容を頭にインプットしていきます。なお初めてQC検定に挑む人は、3級のテキストに取り組む前に4級の公開テキストを読んでおくのも1つの手です。
4級の公開テキストには3級の基本が短くまとまっているので、基礎知識を身に着けるのに適しているのです。
3級では、統計に関する計算問題を苦手とする受験者もいます。とはいえ3級以上の試験は電卓持ち込みが可能(関数電卓以外)なので、計算能力自体を鍛える必要はありません。
試験に出る数式の使い方をテキストでしっかり押さえることを重視しましょう。
テキストの内容がある程度頭に入ったら、過去問に挑戦して知識を定着させていきます。3級の場合は過去問集も出回っているので、試験傾向をつかみやすいはずです。
2級に合格するために必要な勉強時間は、約200時間といわれています。ただし2級受験者なら、既に品質管理の基礎知識があるという人もいるでしょう。
そのような人の場合は半分以下の勉強時間でも合格を目指すことができます。
2級受験の場合も、基本的な勉強の流れは3級と同じです。テキストを読んで知識をつけ、過去問演習で知識の定着を図ります。
ただし、2級の計算問題(手法分野)では統計学が占める割合が非常に大きくなります。
2級には手法分野と実践分野がありますが、難易度が高く解きづらいといわれているのも手法分野です。
そのため、テキスト学習の前に統計関係の基本書を読んでおくとよいでしょう。統計に対する全体的なイメージを先に作っておくと後の勉強の効率が良くなります。
また、計算問題を解くためには公式をきちんと押さえておく必要があります。テキストを一通り読んだら、暗記しなければならない公式のまとめを行いましょう。
計算問題は解くことで実力が身についていく分野です。テキストでの「読む」勉強にこだわりすぎず、過去問を「解く」勉強に力を入れてください。
過去問を解くときは、試験時間内に問題を解ききれるよう時間を測りながら挑戦します。
2級の教材には以下のようなものがあります。
「統計学のイメージ作り」に適している本です。中学数学の範囲で標準偏差から区間推定までを易しく解説している良書で、各章ごとに練習問題もついています。
2級の内容をまとめたテキストと章末問題が載っている一冊です。
QC検定2級の受験勉強に必須の過去問6回分を収録している過去問集です。
1級の難易度はとても高くなります。必要な勉強時間は、実務経験や品質管理の基礎知識がある場合でも3~6ヶ月は見ておきたいところです。
1級では問われる知識は非常に広い上、マークシート(一次試験:手法分野と実践分野)と論述試験(二次試験)の2つの試験が課されます。
一次試験、二次試験という名称上の区分はあるものの、2つの試験は同時に実施されます。つまり与えられた試験時間120分内で、2つの試験をこなさなければならないのです。
特に論述式の問題を合格ラインを超えるレベルで執筆するのには、ある程度時間がかかります。時間配分を間違えてしまうと、問題全部に目を通す前に試験が終わってしまうなんてことにもなりかねません。
次に難関なのが計算問題が出てくる一次試験の手法分野です。
そこで、1級の勉強法として集中的に取り組みたいのが以下の3点になります。
基本的な勉強の流れは他の級と同じで「テキストを読んで内容を把握する→過去問を解く」です。
ただし、1級では2~4級の知識も包括して問われます。1級のテキストに加え、2級の内容を復習することも大事になってきます。
また手法分野に苦手意識を感じている人は、手法分野に絞った参考書で弱点を克服することも有効です。
論述問題は過去問を解くことである程度慣れることができますが、数をこなしたい場合は模擬問題集を使うことも考えてください。
論述問題の解答例を見る時は、合格レベルに達する書き方のポイントを抑えるようにしましょう。
過去問に挑むときは、時間測定が必須です。特に論述問題にどれぐらいの時間が必要なのかは把握しておく必要があります。
手法分野、実践分野、論述問題についてはどの順番で、どれだけの時間をそれぞれに配分すべきなのかを過去問を解きながら探っていきましょう。
1級の教材には、次のようなものがあります。
1級の基本を固めるための教材です。図表による解説と問題付き。
「品質管理の手法」分野について70ポイントに分割して学べる教材です。
1級挑戦に必須の過去問集で、実際の試験形式を学べます。他の級と比べ収録されているのが4回分と少ないのに注意です。もっと問題を解きたいときは過去の版や④の模擬問題集などを使うことも考えましょう。
過去問では論述問題を解き足りない、論述の解答例がほしいという人は模擬問題集の購入を検討してください。
QC検定は幅広い業種と幅広い受験生をカバーしている検定試験です。受験資格はとくに必要ないため、学生からでも気軽に受験ができます。ところが合格率は各級かなりの差があります。いくら誰でも受験できるからといって、基礎知識のない状態で2級や1級に挑むのはかなり難しいでしょう。
QC検定では、自分が必要としている品質管理の知識に合わせて受験級を選べ得るようになっています。公式ページやパンフレットの受験対象となる人材像を参考に、自分はどの級からスタートするのが良いのかをじっくり検討してみてください。