サービス接遇検定は、お客様にサービスを提供するうえで必要な常識や心構えを問われる検定試験です。
試験階級1級、準1級、2級、3級の4つに分かれています。上位級である準1級と1級では面接試験が行われ、サービス接遇の実技技術が問われます。サービスに関わる仕事をしている人、接客指導を行う立場にある人にとっては、興味深い試験といえます。
この記事では、サービス接遇検定合格率の推移から各級における難易度について考察しています。
各級間の合格率を比較すると、この検定ならではの特徴が現れてきます。「サービスについては初心者だから、最初は3級から受けるべき?」と悩んでいる人は、ぜひ参考にしてみてください。各級別の勉強法についてもまとめてあります。
サービス接遇検定とは、サービス提供者としての心構えや話し方、対人心理、常識等を備えているかどうか測るための検定試験です。この検定試験を受験することで、おもてなしの心を持って顧客に満足を提供する「サービス接遇」について学ぶことができます。
このような特徴から、サービス接遇検定はホテルや金融などの会社および美容・観光・医療等を学ぶ専門学校にて受験者数が増えています。これからサービス業を目指す学生、サービス業に従事している社会人、あるいは社員教育に携わっている人には関係の深い試験といえるでしょう。
サービス接遇検定は1級、準1級、2級、3級の4階級に分かれています。準1級以上はロールプレイングによる面接試験があり、より実践的なサービス接遇のスキルを問われることになります。
3級 | 2級 | 準1級 | 準1級 | |
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受験資格 | 特になし | |||
試験日程(2023年度) | 6月、11月 | |||
試験形式 | 筆記試験: 選択問題(マークシート方式) +記述問題 |
筆記試験: 選択問題(マークシート方式) +記述問題 |
面接試験 |
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試験内容 |
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筆記試験時間 | 90分 | 100分 | - | 120分 |
面接試験時間 | - | - | 約10分※1 | 約11分※2 |
※1三人一組のロールプレイングで一組当たりの時間 ※2二人一組のロールプレイングで一組当たりの時間 |
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筆記試験の合格ライン | 筆記試験にて理論(サービススタッフの資質、専門知識、一般知識)と実技(対人技能、実務技能)それぞれの分野で60%以上正答した場合に合格 | |||
各級の取得条件 | 筆記試験合格 | 筆記試験合格 |
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ではここで、サービス接遇検定受験者数・合格者数・合格率の推移を各級ごとに見てみましょう。
3級
試験回 | 実施時期 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
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第55回 | 令和4年6月 | 9,558名 | 7,518名 | 78.7% |
第56回 | 令和4年11月 | 9,259名 | 7,206名 | 77.5% |
2級
試験回 | 実施時期 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
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第55回 | 令和4年6月 | 6,875名 | 5,586名 | 81.3% |
第43回 | 令和4年11月 | 8,233名 | 5,527名 | 67.1% |
準1級
試験回 | 実施時期 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
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第55回 | 令和4年6月 | 2,411名 | 2,022名 | 83.9% |
第56回 | 令和4年11月 | 2,307名 | 1,904名 | 82.5% |
1級
試験回 | 実施時期 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
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第55回 | 令和4年6月 | 516名 | 172名 | 33.3% |
第56回 | 令和4年11月 | 525名 | 218名 | 41.5% |
合格率・受験者数・合格者数引用元:第55.56回https://jitsumu-kentei.jp/SV/totalize/contents/SV/totalize/contents
サービス接遇検定3級は、検定試験の中で最も基本的な知識を問われる内容になっています。
3級の近年の合格率は、大体70%台を推移しています。数字上は受験者の大部分が合格する試験となっており、難易度は比較的低いといえるでしょう。
サービス接遇検定の中では最も低い階級であるとはいえ、3級ではマークシート問題に加え、記述式問題も出題されます。
基本的には一般常識で考えれば分かる問題やマークシート問題が多い傾向にはありますが、サービスを提供する相手は人間です。その人間への心遣いに関する問題では、知識問題とは違い正解不正解の理由が分かりづらい面があります。
直近の合格率が高いからと言って極端に油断しない方が良いでしょう。
2級試験も受験者が非常に多い階級となっています。昨年度の試験においては、3級試験と2級試験を合わせた受験者数が全体受験者の約85%を占めています。
サービス接遇検定2級の近年の合格率は、平均約74%を推移しています。2級の難易度もそこまで高いわけではありません。
つまり2級の方が3級に比べて難易度が高いとは言いきれないわけです。
ここに、サービス接遇検定の特徴が表れています。サービス接遇検定には4つの階級があります。
しかし準1級から3級の間では階級が一つ上がるごとに合格率が一気に下がる、という傾向はあまり見られません。この点が、一般的な検定試験とは少し異なっています。
試験内容としては、2級では3級よりも記述式問題が若干多い傾向にありますが、試験範囲としては重複している部分が多いと考えられています。3級・2級はどちらも筆記試験のみで面接試験はないので、比較的対策しやすいのではないでしょうか。
準1級は少し特殊な階級です。準1級の試験は面接のみとなっています。ただし準1級合格者になるには面接試験通過とともに、2級筆記試験に合格している必要があります。
とはいえ、2級試験に合格してからでなければ準1級試験を受験することができないわけではありません。先に準1級の面接試験を突破してから、2級試験を受験することもできます。2級試験合格後申請することで、準1級の認定を受けられます。
面接試験には難しさを感じる受験生もいるかもしれませんが、内容は簡単なロールプレイングです。近年の合格率は大体80%台を推移しており、準1級の難易度は比較的低いと考えられます。
試験形式に臆さず、挑戦してみてはどうでしょうか。
3級から準1級までの難易度は比較的低く、どの級の合格率も高いものでした。
しかし、1級だけは合格率が大体30%~40%となっています。この合格率はほかの級に比べてかなり低く、1級検定試験だけが突出して難易度が高くなっています。
1級の難易度が他の級に比べて高い理由は、試験内容にあると考えられます。1級の試験内容は、筆記試験と面接試験になります。面接試験は2次試験という位置づけになり、筆記試験に合格しなければ受験することさえできません。
その筆記試験はすべてが記述式問題になりますので、選択式問題とは違い「まぐれ当たり」が許されなくなります。問題の多くはおもてなしの心を問われる問題です。明確な正解がない分、暗記に頼らない解答が求められます。
各級の過去問題は、以下の公式ページで見ることができます。これを見れば、「お客様の気持ちを考えたうえで自分で考えた答えを出さなくてはならない」タイプの問題が多いことが分かるのではないでしょうか。
これに加えて、2次の面接試験があります。1級ではテレセールス(模擬電話応答)とセールストークという課題で面接が行われ、準1級に比べて難易度は高いといわれています。
ただし、合格率30%~40%台という数字の難易度が高く見えるのは、あくまで他の級と比較したうえでのことです。例えば2019年の試験において、漢字検定検定試験1級の合格率は約8%しかありませんでした(2019年第1回)。漢字検定で合格率30%台と言えば、2級~準2級のレベルです。
もちろん漢字検定とサービス接遇検定では試験内容が異なってきますので、一概に比較はできません。とはいえ検定試験全体から考えると、サービス接遇検定1級の難易度は超難関とまでは言えないでしょう。
筆記試験は暗記部分が少なく、ポイントを抑えれば正解できる問題が出題されると捉えることもできます。
受験資格が必要ないこの検定試験では、1級からの受験も可能です。サービス接遇について深く学びたいなら、挑戦を検討してみてください。
ここでは、サービス接遇検定の勉強法について調査した結果をまとめています。各級ごとにどのような勉強をしたらよいのか見てみましょう。
3~2級は筆記試験のみが行われます。
具体的な勉強法は、検定試験対策用テキストを一通り読んで内容を理解し、過去問(問題集)を繰り返し解くことです。過去問を解くことで、出題のパターンをつかむことができます。
サービス接遇検定では、大きく分けて一般常識・時事問題・敬語表現のような暗記に頼る問題と「おもてなしの心」を持って考える問題(明確な正解がない問題とも言えます)とが出題されます。
前者(暗記が必要な問題)については、知識をしっかり身に着けることが大事です。接客の場になれている人であっても、日常的に誤用表現を使ってしまっていることもあります。本当に正しい敬語表現について、今一度振り返ってみましょう。時事問題については、テレビや新聞などで話題になっているニュースに普段から触れておくことが試験勉強に繋がります。
後者(明確な正解がない問題)については、お客様の立場に立つ視点が問われています。相手の立場に立って、「自分ならこうされたい」「このような態度をとられると嫌だ」と考えていくと解答が分かりやすいかもしれません。問題をたくさん解いて、正解パターンを身に着けていきましょう。
3級で問われる内容は初歩的なものが多く、社会人やアルバイト経験がある人ならある程度常識で解ける問題も出題されます。選択式問題が多いので、1か月程度の短期間でも合格を目指すことが可能です。
このように受験対策が比較的簡単な3級ですが、初学者であっても必ずしも3級から受験する必要はありません。合格率を見てわかるように、3級と2級は合格率が高く、難易度は各級でさほど変わりません。
また、どの級でも受験資格は特に設定されていないので、併願受験や飛び級受験も問題なく行えます。このような理由からか、サービス接遇検定の教材においては、3級も2級も一緒に対策できるものがよく見られます。
2級と3級どちらも学べるテキストを購入して、各級の問題レベルを確認してみるのも良いでしょう。「合格できそう」と感じたら、いきなり2級を受験することも検討してみてください。3級と2級の併願受験をするという手もあります。
準1級は面接試験のみが行われます。試験では基本言動・接客応答・接客対応の3つのロールプレイングを行います。
試験の流れは毎回同じ傾向にあるといわれています。
基本的な勉強法としては
です。
試験本番ではだれしも緊張するものですが、この緊張を和らげてくれるのは練習における自信と言えるでしょう。
なお、本番では他の受験生の面接試験を見る機会もあります。あまり人と自分の出来を比較してしまうと、緊張してしまうかもしれません。自分のペースを乱されないように、注意していください。
1級試験はすべて記述式となるため、解答を自分の文章で埋める必要があります。記述式はマークシートに比べて解答に時間がかかる可能性が高いので、試験時間内に問題を解けるようにしておくことが大事です。
ただし記述式と言っても、サービス接遇検定1級に出る問題の多くはサービス接遇における心構えを問うものです。勉強においてはただ1つの正解を覚えるのではなく、どうしたら模範解答に近くなるかを考えていきます。
「こういう時はこういう気持ちで答える」というパターンを身に着けることが重要です。
そのためには、公式テキストと公式過去問集で検定試験における解答パターンを知っておくようにしましょう。
※調査したところ(2021年2月)現在、1級筆記試験に関してはこの2冊以外に市販の教材は出版されていないようです。1級の勉強をするには、公式テキストと公式過去問集が必須の教材と言えます。
一方試験では、言葉遣いや一般常識など一部暗記が必要な部分も出題されます。一般常識に特化した参考書なども発売されていますので、サブテキストとして目を通しておくと良いでしょう。
面接試験の勉強法は、準1級と同じです。DVD教材等で試験の流れを確認した後は、ロールプレイングで実際に声を出して練習を繰り返します。DVDでの模範解答例を参考に、テンションを高くして、笑顔を絶やさないように練習しましょう。家族や友人など協力してもらえる第三者に練習の様子を見てもらうのもよいでしょう。
著:実務技能検定協会
サービス接遇検定主催の実務技能検定協会が出版している公式テキストです。各級ごとにテキストが分かれています。
なお、2級、3級は2019年発売の新版(公式テキスト)が発売されていますが、準1級、1級についてはまだ新版が出ていません。準1級、1級の場合は『公式テキスト』ではなく『サービス接遇検定 受験ガイド』のタイトルで検索してください。
著:実務技能検定協会
実務技能検定協会が出版している公式過去問集です。過去問集は各級ごとに出版されているわけではなく、「3級」と「1-2級」という大雑把な区切りになっています。
どちらの本も過去試験が5回分収録されています。
また、「1-2級」問題集では準1級・1級の面接試験課題も収録されています。
著:坂尾 眞理子
3級・2級の筆記試験対策から準1級の面接試験対策までを1冊にまとめてあります。コンパクトなテキストと問題集です。セクションごとに登場する確認問題と模擬試験で、総合的な学習ができるスタイルになっています。
著:実務技能検定協会
実務技能検定協会が出している公式の合格対策DVDです。試験合格のポイントなどが分かるようになっています。
文字での面接試験対策に不安を感じている場合は、購入を検討してみてはどうでしょうか。試験の流れが映像で理解できます。
サービス接遇検定の合格率推移を見てみると、3級、2級、準1級の合格率は毎回かなり高いです。
さらに特徴的なのが、各級間の合格率がさほど違わないことです。本来は上位級に位置するはずの準1級や2級の合格率が、3級のそれを追い越していることも多いです。
つまり、この3つの階級は試験内容としてはレベル別に分かれているものの、試験難易度という面から見るとさほど変わりないということができます。
検定試験を受ける以上は、できるだけ上の級を狙いたいのが受験者の気持ちでしょう。サービス接遇検定では受験資格は特に定められていません(ただし準1級は2級に合格してからでなければ取得できません)。
3階級の難易度がさほど違わないのであれば、初受験であっても2級から挑戦できないか検討してみてはどうでしょうか。