理想を抱いて入社したものの、「営業職に向いていない」と感じて辞めたくなる新卒社会人は少なくありません。
実際に新卒で営業に入っても、すぐに転職する人もいます。
身近な人に、「新卒で入るなら営業はやめとけ」と言われたことのある方もいるかもしれません。
今回は新卒向けに営業職がなぜやめておけと言われるのか、続けていくにはどんなコツがあるのかをまとめました。
人に個性があるように、営業職にも向き不向きがあります。
しかし、自分なりの営業スタイル・仕事観念を確立できれば、営業という仕事はやりがいを感じるはずです。
新卒で営業を続けるとどんな能力が磨けるのか、本当に辞めたくなった時の判断基準も併せて紹介します。
なぜ「営業職はやめとけ」と言われるのでしょうか。
そこには向き不向きだけの問題ではなく、大きな3つの理由があります。
営業職は昔から「足で稼ぐ」と言われるほど、顧客の自宅や会社の窓口を訪問し、営業を行ってきました。
しかし、近年は情報通信技術、いわゆるインターネットやIoT、SNSの発達により、地道に1件ずつ訪問する必要がなくなってきています。
今でも対面で営業を行う手法は有効ですが、同時にインターネットを利用した販売促進も行っていかなければなりません。
顧客側が自分の必要な物を自由に選べる時代になってきたからこそ、従来の営業のやり方が通用しにくくなっていることが背景にあります。
新卒で営業を担当するなら、先端技術も駆使して効率的な営業を行うことが求められるでしょう。
一般的に、企業によって独自の技術・ノウハウを持っているものですが、営業職は技術・ノウハウが育ちにくいとされています。
現場で実際に働く方とは違い、製品やサービスを売り込む特殊性があるからです。
そのため、専門性のあるスキルが育ちにくく、将来的なキャリアアップや転職の武器になりにくいことも理由になります。
一方、実際には営業のノウハウは個人が独自に高めていくものであり、今でも転職市場では営業スキルの高い人材は貴重な存在です。
また、営業するには自社の製品を誰よりも理解している必要もあるため、決して専門性が低いとは言えません。
営業の仕事をするうえで大変なポイントは、営業の結果が給料や評価にも影響することです。
特にノルマの厳しい会社では、営業成績が悪いと上司から叱責を受けることもあるでしょう。
また、営業職に厳しい会社はブラック企業も多く、寝る間も惜しんで働くことを強要されることがあります。
ブラック企業ならどれだけ成績が良くても評価されることの方が少なく、多くの営業職が転職を決断しています。
新卒で営業職になった結果、ブラック企業に引っかかり、心身ともにボロボロになる人も少なくありません。
そうした実例があるからこそ、「結果を求められる営業職はやめておけ」と言われることも多いです。
「新卒はやめておけ」と言われる営業職ですが、仕事の中で磨かれる能力や資質もあります。
転職をする際にも役立つものがありますから、代表的な4つを紹介します。
営業は顧客の下を訪問するほか、会社同士の橋渡し役も担っています。
ビジネスマンとして認められるには、最低限のビジネスマナーや基礎スキルを身に付けている必要があります。
人の印象は最初の7秒で決まると言われますから、営業でも最初の印象は非常に重要です。
顧客に好印象を与えるには、ビジネスマンとしての基本を身に付け、「この人は信頼できそうだ」と思ってもらうことが大切です。
ファーストキャリアに営業を選び、その後独立した方や別会社のマネジメントや経営者になる方もいます。
新卒で営業職になることは、自分の可能性を広げる選択肢になるでしょう。
営業で結果を出すには、製品の良さだけではなく、営業担当者との人間関係も大きな要素です。
どれほど良い製品だったとしても、担当者の態度が横柄で顧客の要望を蔑ろにしていれば、顧客が取引をすることはないでしょう。
そのため、営業の仕事は製品やサービスありきですが、コミュニケーション能力も求められます。
特に年齢が高い人ほど営業担当の人柄を重視する傾向があるため、コミュニケーション能力の高い人は結果に繋がりやすいです。
また、コミュニケーション能力の高さは会話するだけでなく、聴く力や課題発見にも関係します。
顧客との会話の中でどんなことを求めているのか、何を解決したいのかという疑問が浮かび、顧客のニーズに対応する能力も磨けるでしょう。
営業の仕事は製品やサービスを売り込み、買ってもらうことです。
顧客に製品・サービスを正しく理解してもらうには、論理的に伝えられる力が必要です。
顧客や取引先の時間を無駄にしないためにも、無駄な説明を省きつつ、製品・サービスの価値を伝えなければなりません。
プレゼン能力の高い人であれば、10分という時間が決まっていれば、秒単位で正確にプレゼンを終わらせることもできます。
声の抑揚や話のメリハリをつけ、製品・サービスを深く理解できるほど学ぶ努力をできる人なら、他の分野にチャレンジした時も成功できるでしょう。
デザイン思考は比較的新しい考え方で、技術そのものを発展させるのではなく、どうすればユーザーにとって、より利用しやすい製品・サービスになるかを考える手法です。
デザイン思考で成功した代表例が、AppleのiPodやP&Gの電動歯ブラシ、サブスクリプションサービスなどです。
こうした製品もゼロから作り出すのではなく、ユーザー志向のアイディアから生まれました。
営業職は多くの顧客と関わっていく中で、顧客の顕在化していないニーズを感じ取ることがあります。
顧客と目の前で接する機会のある営業職だからこそ、デザイン思考を磨く土壌があるということです。
営業だけでなく、開発部門や他の領域でも役立つ資質ですから、デザイン思考について深く学んでみるとよいでしょう。
新卒の社員が営業職を続けていくうえで、意識すべき5つのコツを紹介します。
営業は人によってスタイルが違いますから、コツを参考に自分なりの形を見つけてください。
自宅を訪問する営業の仕事では、お客様から厄介者扱いされることも少なくありません。
むしろ、快く受け入れてくれるお客様の方が少なく、ほとんどは門前払いされてしまいます。
そのため、責任感の強すぎる方や相手の言葉を真正面から受け止める人ほど、営業ではメンタルが追い込まれていきます。
その点を理解したうえで、営業を長く続けるコツは、断られても気にせず次に切り替えることです。
本人の性格にもよりますが、ある意味で他人事として割り切って働けるようになれば、長く仕事を続けられるでしょう。
また、時には嫌なことを他人に思い切って打ち明け、不満を解消する方法もおすすめです。
不満を口にするだけでも気持ちが楽になり、仕事に向かう意欲に繋がります。
営業のやり方は人それぞれで、たくさんの顧客を訪問して積極的に製品をアピールする人もいれば、1件ずつ丁寧に接していく人もいます。
どちらが正解ということはなく、その人に合った営業スタイルが確立されることで自然と出来上がるものです。
そのため、新卒の営業職は自分のスタイルを確立できるようになるまで、色々な方法を試してみましょう。
まずはどんな営業を目指したいか理想像を設定し、そこに到達するまでの小さな目標を逆算してみるのがおすすめです。
目標があれば自分の中に何が足りないのか明確になり、足りない部分が言語化できるようになります。
言語化までできれば、自分の中で形になるまでに、それほど時間は掛からないはずです。
仕事を続けていると、どこかで頭打ちになる瞬間や壁を超えられない時が出てきます。
そうした時、同僚や先輩の営業職とも話してみると、すんなりと壁を超えられることがあります。
最近では営業のポイントをまとめた本も出版されていますから、本を参考にするのもよいでしょう。
大事なことは、自分にはない視点を他の営業職から学ぶことです。
また、会社の中で営業ばかりをしていると閉塞感もあります。
時々外部の人材とも交流することで、会社の常識とは違う世界を知ることができるでしょう。
色々な世界の人や営業職から学び、広い視点を身に付けると、どんなお客様にも対応できる営業職になれます。
営業職の醍醐味とも言えるのが、社外で息を抜いてもバレにくい点です。
全く仕事をしないのはまずいですが、個人の管理能力に任されている会社であれば、多少の息抜きは良い仕事をするエッセンスになります。
逆に、真面目に営業をしすぎていると、精神的に追い詰められる可能性が高いので危険です。
営業職の中には、商談の時はスーツ・ネクタイ・革靴のビジネスマンスタイル、商談以外ではTシャツにサンダルというラフなスタイルで過ごす方もいます。
それでも成果を残している人の特徴は、決めるべきところでしっかりと決めている点です。
個人で仕事管理がしやすい営業職だからこそ、長く続けるには気を抜く時間を作り、メンタルコントロールしていくことが大事になります。
営業職は会社によってノルマが設定されていることも多く、毎月のノルマを達成できれば高い評価を得られます。
しかし、新卒で営業のノウハウを知らないままでは、ノルマの達成は簡単なことではありません。
そこでノルマ達成の目標とは別に、個人的な目標を設定しておくと、自分自身のモチベーションアップになるでしょう。
例えば、ノルマが月10件の契約獲得だとしても、個人目標は半分の「5件獲得」、または「1日に〇件プレゼンをする」などです。
成績だけを重視するのではなく、自分がどの位成長できたかを測るためには、個人目標の設定は一定の意味があります。
「営業を辞めたい」と思った時、本当に辞めるべきか、続けるべきかの判断に迷うことは多いかと思います。
仕事を辞めるか、続けるかという判断する際の基準になるポイントを紹介します。
辞めるか続けるかを判断するには、客観的にメリットとデメリットを比較してみましょう。
例えば、続けることで収入アップ、人脈が広くなる、マネジメント能力が上がるなどのメリットがあるでしょう。
逆にデメリットを考えると、スキルがないと転職しにくい、収入が一時的に減りやすい、昇進しにくいなどが考えられます。
それぞれにどんなメリット・デメリットがあるか検討し、どちらが自分のためになるか考えることが大事です。
ただし、本気で営業職を辞めたいと思っているなら、別の職種に転職する方が大きなメリットになる場合もあります。
仕事を辞めたいと考えた時、家族や友人に相談する方も多いかと思います。
本気で思いつめた様子なら、「辞めた方がいいのでは」と勧められるでしょう。
その時、仕事を辞めることに「でも」と考え、やりたいことがあるようなら続けた方が良いことがあります。
もちろん、体調を崩すようなら無理は禁物ですが、「でも」と思うなら無理のない範囲でやり残したことを終わらせましょう。
新卒で入社して、やり残したことがあれば生涯心に残ります。
仕事を「やりきった」と思えれば、次の職場にも新たな気持ちで進んでいけます。
営業の仕事を辞めたいと思った時に、心残りがなければ、退職しても問題はありません。
会社に出勤しようとした時や会社に入ろうとした時、吐き気やめまいが襲ってくるなら危険なサインです。
精神的なストレスが身体にも現れていると考えられ、それ以上仕事を続けると危険です。
ストレスの原因が環境や人間関係にあるのなら、上司に相談して部署異動や人事を考慮してもらいましょう。
会社にいることそのものにストレスを感じるなら、休職や退職も選択肢に入ります。
仕事を続けることは大事ですが、自分自身の健康には変えられません。
会社のことを考えると体調が悪化するなら、辞めるべきタイミングにあると思ってよいでしょう。
「営業の仕事はやめとけ」と言われる背景には、ブラック企業の存在もあります。
ブラック企業の特徴は、以下のようなものです。
こうしたポイントに1つでも当てはまるなら、ブラック企業の可能性が高いです。
ブラック企業での営業職は、心身ともに大きなストレスになり、自尊心も傷つけられることがあります。
新卒ではブラック企業かどうかの判断は難しいかもしれませんが、上記の条件に当てはまるようなら、早めに転職活動することをおすすめします。
営業の仕事は契約を獲得できないと評価に響き、認められるには相当な努力が必要です。
取引先や顧客とも緊密にコミュニケーションが必要で、長く続けるには自分の営業スタイルの確立が不可欠です。
そして、営業職は資格やスキルこそ不要ですが、働く中で色々なスキルを身に付けることを求められます。
営業のノウハウを持つ人材は、企業にとって非常に貴重な存在です。
将来的に独立や転職をするにしても、多くのスキルを持つ営業職は引っ張りだこになります。
「営業はやめとけ」と言われることもありますが、新卒で営業職をするからこそ仕事の管理方法も身に付きます。
将来のキャリアアップを目指す方も、まずは営業で社会人としての基礎を築いてください。