この記事では、下記のような理由から障害者手帳を取得していない、かつ「就労したい」と考えてるかたの悩みにお答えします。
さまざまな理由から、「障害者手帳なし」の状態のかたがいます。
「手帳なし」でも障害者雇用で就労することは可能なのでしょうか?
結論、障害者雇用枠で就労することは不可能です。
ただ、障害を考慮してもらいつつ働く、他の方法があります。
その方法をおこなうことで、障害者雇用と同じように、考慮してもらいつつ、無理なく働くことができます。
そこで今回は、「障害者手帳なしでも、障害を考慮してもらいながら働ける仕事探し」について障害者支援施設で生活支援員をしている筆者の視点からご紹介します。
まず最初にお伝えしたいことがあります。
障害者手帳を取得できるのに取得していない場合は、取得することをおすすめします。理由は、下記の【デメリット】に記載しています。
しかし、「障害者手帳を取得したいができない」というかたもいらっしゃいます。実際、「障害があるのに障害者手帳がないこと」は、デメリットだけではありません。
そこでここでは、障害者手帳がないことによるメリットとデメリットをご紹介します。
まずは、デメリットからご紹介します。
冒頭でご説明した通り、障害者雇用枠の求人には応募できません。
つまり、一般雇用枠のみで採用を勝ち取る必要があります。
では、一般雇用枠と障害者雇用枠の求人は、なにが違うのでしょうか?
一般雇用枠は、誰もが応募できる求人です。
給料面や職種の多さなどは、障害者雇用枠の求人より優遇されています。ただ、事前に障害を伝えずに就職した場合は、とうぜん配慮は受けづらいでしょう。
しかし、事前に障害を伝えると、今度は「なかなか就職先が見つからない」という可能性が高くなります。
障害者雇用枠は、障害者手帳を持ったかたのみが応募できる求人です。
一般雇用枠より、給料面や職種では制限される傾向にあります。
ただ、障害をお持ちであることを前提に就職しています。そのため、障害に対して配慮してくれます。結果、無理なく仕事を続けることができるでしょう。
自治体によっては、障害者手帳を持っていることで、助成金や公共交通機関のチケットを配布してくれるところがあります。
そして、企業によりますが、割引サービスを提供しているところもあります。国や地域からの税制優遇もあります。
障害者手帳をもっていないと、残念ながらこれらのサービスを受けることができません。(障害者手帳なしでも受けられるサービスは、次の章でご説明します。)
障害があることを内緒にして、一般雇用で働くことができる。
少し聞こえが悪いかもしれませんが、障害がバレずに一般雇用で働くことができます。
障害を隠しながら働くことになるので、障害に対する配慮を受けることはできません。
しかし、障害が軽い場合なら「障害がバレることなく、一般雇用の条件(給料など)で働くこと」ができます。
障害者雇用の平均賃金は一般雇用よりも安くなっていることが多いです。
それは障害者雇用枠の正社員の割合が少ないことも要因の一つです。一般雇用なら仕事や職種、雇用形態もより多くの選択肢から選ぶことができます。
次に、「障害者手帳なし」でも受けられるサービスを6つご紹介します。
ここでご紹介するのは、「就労」に関するサービスです。
障害者手帳なしでも利用できます。
その代わり、「障害福祉サービス受給者証」が必要になります。「障害福祉サービス受給者証」は、医師の診断書(意見書)などの書類を近くの行政窓口に提出することでもらえます。
就労移行支援事業所では、一般企業への就職を目指す、障害をお持ちの方(65歳未満)を対象に、就職に必要な知識やスキル向上のサポートをおこなっています。個人別に支援を行ってくれるため、手厚いサポートを受けることができます。
具体的な使用例は、「6ヵ月後の就職を目標に、スキルアップや相談から始める」などです。
そして、就職先はハローワークなどと連携して探します。事業所数は3300ヶ所(平成27年度時点)です。
利用料は、各自治体や世帯収入によって変わります※1。
就労移行支援事業所など(就労継続支援、生活介護、自主訓練)のサービスを得て、「一般就労」をした人向けに行っているサービスです。つまり、「就労定着支援」単体での利用はできないので注意してください。
就労定着支援では、一般就労後にでてきた「悩み」や「問題」を解決するサポートをしてくれます。支援内容の例としては、まず利用者と担当者が面談を行い、課題を明確にします。
その課題をもとに、アドバイスを行ったり、医療機関・福祉機関との連携、職場訪問により課題解決へ導きます。
事業所の場所は、「就労移行支援事業所、就労継続支援事業所、生活介護事業所、自主訓練事業所」内で行っているところもあります。使用を検討している場合は、事業所や自治体に問い合わせて確認してください。
利用料は、各自治体や世帯収入によって変わります※1。
これは、医師より発達障害の診断をうけたが、障害者手帳を取得していないかたが間接的に利用できる制度です。
具体的には、下記のとおりです。
厚生労働省『発達障害をお持ちの方へ~発達障害者雇用開発助成金について~』
ここでの注意点としては、
の2点です。
医師の診断書があれば、無料で利用できます。
支援内容は、障害をお持ちの方に対し、職業的自立にを目指すという支援を実施しています。
具体的には、障害職業カウンセラーや相談支援専門員、ジョブコーチなどを配置し、職業リハビリテーションの実施・助言・援助をおこなっています。障害者職業センターでは、職業紹介はしていません。ただ、ハローワークと連携して就職に必要なさまざまな支援をおこなっています。
デメリットとして、事業所が全国52センター(平成31年度時点)と少ないです。そのため、単体での利用は不便に思うかもしれません。
医師の診断書がなくても利用できる場合があります。利用できるかは、事前に利用予定のセンターに問い合わせてください。利用料は無料です。
支援内容として、ハローワークや行政機関、就労移行支援事業所等の福祉施設、特別支援学校などと連携し、障害をお持ちの方の就労支援・企業への雇用支援を行っています。
具体的には、雇用前の準備(就労相談、職業訓練、求職活動、企業とのマッチングなど)~雇用後の定着支援(本人と企業への定着支援、雇用契約の調整、就職後のフォローアップなど)まで行ってくれます。
このように、手厚い支援をしてくれることが特徴です。
そして、事業所数が全国に334センター(平成30年度時点)もあることで、利用しやすいというメリットがあります。
障害者手帳なしでも利用できます。
就労継続支援にはA型とB型があります。両者の大きな違いは、「雇用契約の有無」です。つまり、賃金(工賃)が違います。
そして、就労継続支援の大きな目的は、将来的に「一般雇用」へシフトすることです。
詳しくは、別記事☟をご覧ください。
【障害者雇用】一般就労への第1歩!就労継続支援B型で活躍しよう!
世帯の収入状況 | 負担上限月額 | |
---|---|---|
生活保護 | 生活保護受給者世帯 | 0円 |
低所得 | 市町村民税非課税世帯(※1) | 0円 |
一般1 | 市町村民税課税世帯 (所得割16万円(※2)未満) ※入所施設利用者(20歳以上)、 グループホーム、ケアホーム利用者除く(※3)。 |
9,300円 |
一般2 | 上記以外 | 37,200円 |
※ 3人世帯で障害者基礎年金1級受給の場合、収入ア概ね300万円以下の世帯が対象。
※ 収入が概ね600万以下の世帯が対象。
※ 入所施設利用者(20歳以上)、グループホーム、ケアホーム利用者は、市町村民税課税世帯の場合「一般2」。
ここでは、「手帳なし」でも「障害者雇用と同等程度」に考慮してもらえる職場探しの方法をご紹介します。
前章でご紹介した、各種サービスを利用して職場探しをしましょう。
“障害者支援施設で生活支援員をしている筆者”が、人にすすめるとしたら、下記3点の内、どれかの方法をすすめます。
その理由は、1と2は「就職支援~アフターフォローまで」支援してくれることで、その職場に定着しやすいためです。
3に関しては、一時的に「就労継続支援」を利用して働くことで、「問題なく働けるのか否か」を判断できるためです。
一般雇用枠に、障害があることを伝えた上で選考を受けることです。
これも1つの手です。
ただ、みなさんが感じるとおり、選考は通りにくいでしょう。
ただ、職業選択の幅がグッと広がります。
そして、もし採用されたら、他のかたと同じ条件面で働くことができます。
事前に障害を伝えて理解してもらっているので、「働きにくい」と感じることも少ないでしょう。
万が一に備え、同僚や上司らに対し、自分から障害特性を説明して理解を得る行動も必要ですね。
一般雇用枠で条件の良い優良企業で働くには、転職支援サービスを利用しコンサルタントに細かい条件を伝えることで、より希望に合った求人に応募することができます。
「障害者手帳なし」では、障害者雇用枠で就労することは不可能です。
しかし、
という方法で、障害者雇用枠と同等程度の配慮を受けつつ、働くことが可能になります。手帳がなくても、就労に関しては心配いりません。
最後に、1つだけアドバイスがあります。
「働くこと」を目標にするのではなく、「無理なく働き続けること」を目標にしてください。自分の身体や心を守り続けることが、将来への投資になります。