「一般企業に就職して働けるのか不安」
「サポートのある中で就労の経験を積みたい」
このような気持ちを抱えている人には、就労継続支援の利用をおすすめします。
就労継続支援とは、障害や体調不良などを理由に一般企業での就労が難しい人を対象とした障害者向けの作業所です。
今回は障害者作業所の種類について解説します。
作業所での仕事内容や対象となる人なども紹介しますので、これから作業所を利用したい人はぜひ参考にしてみてください。
障害者作業所には、就労継続支援A型と就労継続支援B型の2種類があります。
どちらの作業所も、今すぐ一般企業に就職することが難しい障害者が利用できる福祉サービスです。
障害者に就労の機会を提供し、一般就労に向けた知識や能力の向上を目的としています。
就労継続支援A型とB型では対象者や収入面、労働時間などに違いがあります。
就労継続支援A型とB型の違いを一覧でみていきましょう。
就労継続支援A型 | 就労継続支援B型 | |
---|---|---|
雇用契約 | あり | なし |
報酬 | 最低賃金以上の給与が発生 | 事業所で定めた工賃が発生 |
対象年齢 | 18歳以上65歳未満 | 条件なし |
労働時間 | 週15時間前後 | 週1時間から可能 |
就労継続支援A型とB型の大きな違いは、雇用契約を結ぶかどうか。
就労継続支援A型では雇用契約を結ぶため、労働時間が比較的長い傾向にあります。
労働した分の報酬は、最低賃金以上の給与として利用者に支払われるのが特徴です。
一方、就労継続支援B型は雇用契約を結ばずに就労を行います。
労働時間はA型よりも短く、障害や体調に合わせて働きやすい環境でしょう。
報酬は事業所で定められた工賃として支払われ、A型よりも収入が少なくなる傾向にあります。
就労継続支援A型は、支援を受ければ雇用契約を結んでも就労が可能な人を対象とした福祉サービスです。
就労継続支援A型の特徴
以下では、就労継続支援A型の特徴をより詳しく解説します。
就労継続支援A型の利用を考えている人は、ぜひ参考にしてみてください。
就労継続支援A型の主な仕事内容は、下記のとおりです。
就労継続支援A型の仕事内容は、多岐にわたります。
事業所を選ぶ際には、自分に合った仕事内容か確認しておくことが大切です。
また、就労継続支援A型での仕事は、スタッフにサポートしてもらいながら行います。
1日の勤務時間も約4~6時間と一般企業よりも少なく、障害者が働きやすい環境といえるでしょう。
厚生労働省のデータによると、令和4年度の就労継続支援A型の平均時給は947円でした。
月給は8万3,551円となっており、近年上昇傾向にあります。
就労継続支援A型は労働時間が4~6時間と短いため、一般企業の月給よりもやや少ない傾向にあると考えられます。
最低賃金は保障されるため、就労継続支援A型の給料は一定水準確保されているといえるでしょう。
就労継続支援A型がおすすめの人の特徴は、下記のとおりです。
就労継続支援A型では雇用契約を結ぶため、年齢制限を設けています。
ただし、これまで就労継続支援A型を利用してきた人は、65歳以上でも引き続き利用することができます。
また、いずれは一般企業に就職したいと考えている人には、就労継続支援A型の利用がおすすめです。
就労継続支援A型は支援を受けながら実際の仕事ができるため、給料をもらいながら一般就労に向けた訓練を受けられます。
就労継続支援A型の業務は一般就労の予行練習にもなるでしょう。
就労継続支援B型は、職場との雇用契約を結ばずに軽作業などの就労訓練を行う福祉サービスです。
就労継続支援B型の特徴
以下では、就労継続支援B型の特徴をより詳しく解説します。
就労継続支援B型を検討している人は、ぜひチェックしてみてください。
就労継続支援B型の主な仕事内容は、下記のとおりです。
就労継続支援B型の仕事内容は軽作業と呼ばれる仕事が多く、仕事量もそこまで多くないことが予想されます。
また、雇用契約を結ばずに就労を行うため、就労日数や労働時間に決まりがない事業所が多いのが特徴です。
障害や自身の体調に合わせて働きやすい場所といえるでしょう。
就労継続支援B型の報酬は、給料ではなく工賃という形で支給されます。
1時間あたりに支給される工賃は243円です。
厚生労働省のデータによると、令和4年度の就労継続支援B型の月額では1万7,031円が平均支給額なので、就労継続支援A型よりも低いといえるでしょう。
工賃が安い理由には、利用者の支援の必要性が高いことと下請けの作業が多いことなどが挙げられます。
工賃は仕事内容や事業所によって大きく変動します。
できるだけ高い工賃の仕事を探したい場合は、事業所の仕事内容を確認してみてください。
就労継続支援B型がおすすめの人の特徴は、下記のとおりです。
就労継続支援B型は年齢制限を設けていないため、65歳以上の人でも利用することができます。
また、就労継続支援B型は就労日数や労働時間に決まりがないことも大きな特徴です。
週1回からでも利用できるため、障害や体調に合わせて短時間からでも働きやすい環境といえるでしょう。
ここからは就労継続支援事業所の利用方法について解説します。
利用方法について知り、スムーズに手続きを進めていきましょう。
就労継続支援事業所を利用するための流れは、下記のとおりです。
就労継続支援A型は雇用契約を結ぶ事業所のため、選考があります。
一般企業と同じように履歴書などの応募書類と面接で選考を実施します。
選考方法や流れは事業所によって異なるため、事前に確認しておくことが大切です。
また、就労継続支援事業所に通う際には、自治体に「障害者福祉サービス受給者証」を発行してもらう必要があります。
自治体の障害福祉窓口で申請書類を作成、提出することで申請可能です。
発行までの所要時間は自治体によって異なり、1~2か月かかる場合もあります。
障害者福祉サービス受給者証の発行後、就労継続支援A型であれば雇用契約を結んで利用開始となります。
就労継続支援の対象となる人の条件は、下記のとおりです。
就労継続支援の利用には、障害者手帳は必須ではありません。
障害者手帳を持っていない人でも、医師の診断や自治体の判断次第で就労継続支援を利用できる可能性があります。
また、就労継続支援A型を利用する場合は、原則18歳~65歳未満という年齢制限があるため注意しましょう。
就労継続支援事業所は、令和5年12月の時点でA型4,575か所、B型1万7,059か所存在します。
就労継続支援事業所を探す際には、いくつかの事業所を比較し、自分に合ったものを選択することが大切です。
就労継続支援事業所は、インターネットで検索して探すことができます。
厚生労働省には、全国の障害者福祉サービス事業所の関連サイトが掲載されていますので、ぜひ参考にしてみてください。
また、ハローワークや各自治体の障害福祉課でも就労継続支援事業所の紹介を行っています。
気になる事業所があったら、見学や体験などを申し込んでおきましょう。
ここからは、障害者の作業所に関するよくある質問を5つ紹介します。
初めて作業所を利用する場合は、不安に感じることも少なくありません。
作業所の利用を開始する前に、不安や疑問は解決しておきましょう。
就労継続支援B型であれば、1日1時間からでも利用できます。
就労継続支援B型は雇用契約を結ばないため、勤務時間や日数に定めがありません。
そのため、1日の利用時間は利用者が決められます。
ただし、事業所によっては勤務時間や日数について独自のルールが設定されている場合があるため注意しましょう。
また、就労継続支援A型の利用時間は、1日4~6時間です。
事業所によって雇用契約で決められた勤務時間が異なるため、事前に確認してみてください。
就労継続支援A型では、週3日以上通う事業所が多いでしょう。
事業所によっては週5日通うことを条件にしている事業所もあります。
一方、就労継続支援B型は通う日数を定めていません。
障害や自身の体調に合わせて、柔軟に利用日を決められるのが就労継続支援B型の大きな特徴です。
就労継続支援は無期限で利用できます。
ほかの福祉サービスを利用したり、一般企業へ就職したりなどの理由で利用を一度中止した後でも、いつでも利用を再開できます。
本人または世帯主の前年度の収入によっては利用料がかかります。
就労継続支援は、利用料の1割を利用者が負担しなければなりません。
ただし、生活保護を受けている家庭や低所得の家庭では利用料の支払いが免除されます。
サービス利用料の月額の上限金額は以下のとおりです。
区分 | 世帯の収入状況 | 負担上限月額 |
---|---|---|
生活保護 | 生活保護受給世帯 | 0円 |
低所得 | 市町村民税非課税世帯 | 0円 |
一般1 |
市町村民税課税世帯(所得割16万円未満) 入所施設利用者(20歳以上)、グループホーム利用者は除く |
9,300円 |
一般2 | 上記以外 | 37,200円 |
利用料がかかるかどうか知りたい人は、自治体に問い合わせてみてください。
就労継続支援A型では22%前後、就労継続支援B型では12%前後となっています。
厚生労働省が公表したデータによると、就労継続支援から一般就労への移行者は年々増加しています。
直近5年間の一般就労への移行者の詳しい割合は下記のとおりです。
就労継続支援A型 | 就労継続支援B型 | |
---|---|---|
平成27年 | 22.1% | 12.9% |
平成28年 | 22.7% | 12.5% |
平成29年 | 23.3% | 11.4% |
平成30年 | 22.7% | 11.7% |
令和元年 | 25.1% | 13.2% |
一方、就労移行支援の利用者が一般就労に移行する割合は、令和元年の時点で54.7%となっています。
就労継続支援よりも、就労移行支援から一般就労に移行する人が多いことがわかります。
障害者作業所は、就労継続支援A型と就労継続支援B型の2種類が存在します。
就労継続支援A型は雇用契約を結んで作業を行い、最低賃金以上の給与が支給されます。
一方、就労継続支援B型は雇用契約を結ばないのが特徴です。
軽作業のような仕事が多く、報酬は工賃という形で支給されます。
2つの作業所を併用することはできません。
本記事を参考にそれぞれの特徴を比較し、自分に合った作業所をみつけましょう。