周りに障害者がいる家族や友人は、障害を抱えながら就職ができるのか不安に感じているのではないでしょうか。
障害者の仕事探しを助けたいけれど、支援の方法が分からないという人もいるでしょう。
そこで今回は、障害者の仕事支援の方法について解説します。
就労移行支援のサポート内容や利用方法についても紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
障害者が働きたいときには、下記のような2種類の障害福祉サービスを利用できます。
どちらも障害者の就労を通じた自立を目指すサービスですが、活用方法に明確な違いがあります。
就労移行支援と就労継続支援の併用はできません。
そのため、障害者福祉サービスを利用する際には、2つの施設を比較し、自分に合ったほうを選ぶ必要があります。
それぞれのサービスの概要をみていきましょう。
就労移行支援は、一般企業へ就職するためのスキルを身に付ける支援サービスです。
就労移行支援では、ビジネスマナーやパソコンスキルなど、就職するための訓練プログラムを受けられます。
また、応募書類の添削や面接対策なども行っており、障害者が企業に就職できるようにサポートを実施しています。
就労移行支援の利用がおすすめな人は、以下のとおりです。
就労継続支援は働ける場所であるのに対して、就労移行支援は働くために訓練する場所と認識しておきましょう。
就労継続支援は、障害や自身の体調不良によって、一般企業への就職が困難な人を対象とした支援サービスです。
就労継続支援では、障害や体調に合わせて、就労継続支援事業所で働くことができます。
働いた分は、賃金や工賃として障害者に支払われる仕組みです。
就労継続支援には、対象者や支援内容が異なる就労継続支援A型と就労継続支援B型の2種類があります。
就労継続支援A型は、事業所と雇用契約を結んで働くのが特徴です。
就労経験を積んで、一般企業へ就職するまでのスキルアップを目的としています。
就労継続支援B型は、雇用契約を結ばずに作業を行います。
年齢制限がなく、幅広い障害者に就労する機会を提供するサービスです。
就労継続支援の利用がおすすめな人は、以下のとおりです。
就労継続支援は、一般企業に就職したいと思ったときに就労移行支援への変更が可能です。
そのため、一般企業で働くことに不安を感じている人は、まずは就労継続支援を活用してみてください。
就労移行支援で受けられるサポートは、下記のとおりです。
就労移行支援では、就職のための訓練プログラムの実施から就職活動のサポート、就職後の定着支援まで行います。
障害者が一般企業に就職するためのサポートを一貫して実施してもらえるため、安心して仕事探しを進められるでしょう。
それぞれのサポート内容を詳しく解説します。
就労移行支援では、一般企業の就労に必要なスキルや基礎体力などを身に付ける訓練プログラムを実施しています。
就労移行支援で行われる訓練プログラムの一例は、下記のとおりです。
訓練プログラムは、障害者の職業準備性を高めることを目標としています。
職業準備性とは、働くうえで必要とされている基礎的な能力のことです。
職業準備性には「健康管理」「生活リズム」「対人技能」「基本的労働習慣」「就業適正」の5つの要素があります。
障害者の就職では健康管理・生活リズム・対人技能がとくに重視されています。
訓練プログラムを受けることで職業準備性が高まり、一般企業への就職に近づけるでしょう。
就労移行支援では、職場探しのサポートが受けられるのも特徴です。
求職者から希望の職種や勤務形態などを支援員が聞き出し、障害や希望に合った職種・業種を探すのを手伝います。
また、求職者に合った職種を考えるために実際の企業に出向き、職場見学や職場実習なども実施しています。
職場見学や職場実習ができる企業の数は、利用する事業所によって異なります。
実際に働いてみると就職後のイメージがしやすくなり、自分に合った就職先をみつけやすくなるでしょう。
就労移行支援は、利用者に求人を直接紹介することが制度上できません。
そのため、ハローワークや障害者就業・生活支援センターなどの就労支援機関と連携して、就職までのサポートを行うのが就労移行支援の主な役割です。
就職サポートでは、応募書類作成のアドバイスや模擬面接の実施などを実施します。
就労移行支援の就職サポートを受けることで、効率よく就職活動を進められます。
就職後の定着支援も、就労移行支援のサポート内容の1つです。
障害者は就職先が決まったあと、実際に働き出すとさまざまな問題や課題に直面することがあります。
障害者の不安や悩みに対して企業と利用者双方からヒアリングを行い、働く環境をよりよくするために企業への環境調整の依頼を行っています。
定着支援の最終目標は、サポートがなくても障害者が長期的に就労を継続できることです。
気軽に相談できる人がいることで、障害者も安心して働きやすくなるでしょう。
ここからは、障害者就労移行支援の申し込みについて解説します。
障害者就労移行支援は、障害者手帳がなくても自治体の判断によって利用できる場合があります。
就労移行支援を利用してみたい人は、ぜひ参考にしてみてください。
まずは、就労移行支援を利用するまでの流れを確認しておきましょう。
就労移行支援を利用するためには、「障害福祉サービス受給者証」を発行してもらう必要があります。
障害福祉サービス受給者証とは、障害福祉サービスを利用するために発行される証明書です。
自治体の障害福祉担当窓口に行き、申請書類を提出することで申請可能です。
申請から発行までの期間は自治体によって異なり、約1~2か月かかることがあります。
利用する事業所が決定していない場合は、受給者証を発行できないため注意しておきましょう。
障害福祉サービス受給者証の発行が行われたあと、事業所との利用契約を交わします。
利用契約完了後、就労移行支援の利用を始められます。
就労移行支援の対象となる人の条件は、下記のとおりです。
条件に当てはまる障害がある人は、障害者手帳の有無に関わらず就労移行支援を利用できます。
ただし、障害者手帳を持っていない人が就労移行支援を受ける際には、医師や自治体からの認定が必要です。
障害者手帳を持っていない場合は、まずは利用したい事業所や自治体に相談してみてください。
就労移行支援事業所は、令和2年10月時点で全国に3,301箇所存在します。
就労移行支援事業所によってサポートの方法や雰囲気が異なるため、自分に合った事業所を探すことが大切です。
住んでいる地域にどのような事業所があるのかは、インターネットで手軽に検索できます。
厚生労働省では、障害者福祉サービス事業所一覧のリンクを都道府県別に公開しているので、ぜひチェックしてみてください。
ほかにも、ハローワークなどの就労支援機関や市町村の障害福祉窓口でも教えてもらえる可能性があるため、積極的に活用しましょう。
ここからは、障害者の仕事支援に関するよくある質問を3つ紹介します。
それぞれの質問の回答をみていきましょう。
基本的に本人以外は申込できません。
ただし、就労移行支援や就労継続支援の申し込みに必要な「障害福祉サービス受給者証」の申請は、本人以外の保護者や代理人でも可能です。
本人だけで申し込みするのが難しそうな場合は、事業所に相談してみましょう。
就労移行支援は、原則2年間利用できます。
2年以内に就職できなかった場合は、最大1年間の期間の延長申請が可能です。
延長は自治体に申請する必要があるため、遅くても利用期間が終了する2か月前には支援員に相談しておきましょう。
就労継続支援の場合は無期限で利用できます。
本人または配偶者の前年度の所得に応じて、利用料金の1割を支払う必要があります。
具体的には前年の収入が100万円を超えていると、利用料が発生する可能性が高いでしょう。
市町村民税課税世帯で通所している人は月額9,300円。
市町村民税課税世帯の20歳以上の入所施設利用者や、グループホーム・ケアホームの利用者は月額3万7,200円必要です。
利用料が発生するかどうか気になる人は、自治体に問い合わせてみてください。
障害者の仕事支援には、就労移行支援と就労継続支援の2種類があります。
一般企業への就職を考えている人は就労移行支援、すぐに一般企業への就職が難しい人は就労継続支援を利用しましょう。
就労移行支援では、就職に必要なスキルを身に付ける訓練プログラムや、就職活動のサポートなどのサービスを受けられます。
就職後も、支援員の人に悩みや仕事での困りごとを相談できるため、長期的に就労や継続しやすい仕組みが整っています。
一般企業に就職するためのスキルを身に付けたい人は、就労移行支援を利用してみてください。