適応障害と診断されたら仕事はどうすればよいか?

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適応障害は、特定のストレスが原因で様々な症状が現れ、心身の調子を崩す精神疾患です。

ヨーロッパの報告では人口の1%が適応障害とも言われています。

誰でも発症する可能性のある適応障害。

いざ適応障害と診断されたら、どうすればよいでしょうか?

ここでは、適応障害とうつ病の違いや、適応障害になりやすい人の特徴、仕事はどうしたらよいかなど具体的にご紹介していきます。

適応障害とは?

適応障害とは、就職や転勤、進学、結婚、出産などの新しい生活環境で受けた何らかのストレスが原因(ストレス因)で、体と心の調子を崩す精神疾患です。

世界保健機構の診断ガイドライン(ICD-10)によると、適応障害とは、「ストレス因により引き起こされる情緒面や行動面の症状で、社会的機能が著しく障害されている状態」と定義されています。

(参考 厚生労働省こころの病気を知る:https://www.mhlw.go.jp/kokoro/know/disease_adjustment.html)

具体的には以下のようなことが、ストレス因として挙げられます。

  • 上司からのパワハラやセクハラ
  • 同僚との人間関係
  • 取引先との人間関係
  • 学校でのいじめ
  • 同級生との人間関係
  • 部活、クラブでの先輩後輩関係
  • 失恋
  • 妻(夫)の両親や親せきとの付き合い
  • 引っ越し先の近所付き合い
  • 出産後の育児での悩み
  • 身近な人との死別

また、人間関係だけではなく、自分以外の人たちにも大きな影響を与える出来事が、ストレス因となる場合もあります。

  • 大地震、大雨、火災などの自然災害
  • 社会的に大きな事件、事故

このように適応障害のストレス因には、個人的なレベルから社会的なレベルの問題まで、様々なレベルのものがあります。

以上のようなストレス因を受け止めることができず、うまく適応できない状態が続くと、3ヶ月以内に症状が現れるのが特徴です。

Point

強いストレスが原因で一般的な社会性が困難になる

それでは、適応障害にはどのような症状があるか、具体的に見てみましょう。

適応障害の主な症状

現れる症状としては、本人の性格や年齢にもよりますが、おおよそ以下の4つの症状に分類されます。
いずれかの症状が目立って現れる、またはいくつかが混ざった症状が現れる場合があります。

身体の不調を中心とする症状

  • 頭痛、腹痛、倦怠感などを感じ、なにもやる気が起きない
  • 不眠や起きなくてはいけない時間に起きられない

精神の不調を中心とする症状

  • 焦燥感、不安、恐怖感をおぼえ、それにより吐き気、めまい、動悸などを感じる

問題行動を中心とする症状

  • 遅刻、無断欠勤、危険運転、破壊行動、ケンカなど社会のルールを無視するような行動を取る

うつ状態を中心とする症状

  • 絶望感、喪失感、抑うつ気分を感じ些細なことで涙もろくなる

症状が混ざって現れる状態は、たとえば、「起きなくてはいけない時間に起きられず、無断欠勤や遅刻を繰り返す」などです。

また、子どもの場合は、幼稚な話し方、夜尿症や指しゃぶりなどのいわゆる「赤ちゃん返り」といった退行現象が現れる場合もあります。

うつ病と適応障害の違い

うつ病と適応障害は、症状は似ていますが、別の病気でそれぞれ対応も違います。

うつ病

  • 発症のきっかけがないことが多い
  • 長期に渡って慢性的にストレスを感じ続けた結果、発症することが多い
  • 以前、興味のあったものに全く興味が持てなくなる
  • ストレス因から離れても、症状がすぐに良くならない
  • 薬が効く

適応障害

  • 発症のきっかけがはっきりしている
  • ストレスを感じてから、3ヶ月以内に発症することが多い
  • ストレス因から一時的に離れると、症状がすぐに軽くなる
  • ストレス因から完全に離れると、症状は6ヶ月以内に治まる
  • 薬はあまり効かない

「心が折れた」状態は適応障害

よく若い世代を中心に使われる言い方に「心が折れた」というものがあります。

何かをやろうとしていたところ、あること(ストレス因)がきっかけでやる気がなくなってしまった。というニュアンスで使われますが、この「心が折れた」状態が、まさに適応障害の症状と言えます。

「心が折れる」状態になるには原因がはっきりしていますし、原因から離れれば回復します。

実際、ストレス因が上司や同僚との人間関係である場合、会社に行こうとすると症状が現れますが、会社を休むと症状が軽くなり、外出などもできるようになるのです。

このことから、適応障害は、周囲から「さぼっているだけ」や「甘えている」と言われてしまうことも少なくありませんが、決して「さぼっている」のでも「甘えている」のでもありません
適応障害の症状が現れている状態で無理をし続けると、うつ病に移行してしまうこともありますので、注意が必要なのです。

それでは、次にどのような人が適応障害になりやすいのか、見てみましょう。

適応障害になりやすい人とは?

適応障害になりやすい人もいますし、なりにくい人もいます。それには、本人の性格や置かれている環境が大きく左右します。

一般的に以下に挙げる性格の人は、適応障害になりやすい人と言えるでしょう。

几帳面な性格

  • 細かいことを気にする
  • 潔癖症
  • 完璧主義

生真面目な性格

  • 責任感が強い
  • 曲がったことが嫌い
  • 休みの日でも仕事のことを考えるなど仕事熱心
  • 模範的なリーダータイプ

内気な性格

  • 気が小さい
  • 頼まれると嫌と言えない
  • 周りの意見や評価を非常に気にする
  • 心配症
  • 小さなミスでも引きずる

環境面

  • 周りに支援を頼れる人や相談できる人がいない孤立した環境
  • 仕事や育児に追われるなど、息もつけないほど多忙な環境

なども、自分を追い込み、適応障害になりやすい環境と言えます。自分が上記の性格に当てはまると感じる人は、普段から注意しておくとよいでしょう。

適応障害と診断されたら仕事は続ける?

では、適応障害と診断されたら、どう対処すればよいでしょうか。

まずはしっかりと休むこと

適応障害の治療方法は、

しっかりと休養を取る

処方された薬を飲む

専門家のカウンセリングを受ける

この3つが大事です。

そして、この中で一番大事なのは、しっかりと休み、心身ともにリフレッシュすることです。

したがって、仕事の人間関係などがストレス因となっている場合は、思い切って休職したほうがよいでしょう。無理をして仕事に行っても、継続的にストレスを受け続ける状態になってしまうからです。

適応障害になりやすい人ほど、休むことに罪悪感を覚えてしまう人が多い傾向にあります。

「自分が休んだら他の人に迷惑をかけてしまう」
「休んでなんかいられない」

このように思ってしまいがちですが、適応障害と診断されたら、なによりも休む勇気を持つことが一番大切です。

ストレスを回避する努力をしよう

また休職したあと、同じ職場に復帰するとしても、ストレス因を回避する努力が必要です。

たとえば、

  • 通勤時の満員電車がストレス因であれば、少し早めの空いている電車に乗る
  • 合わない同僚がストレス因であれば、離れた席に移動する
  • 苦手な取引先がストレス因であれば、担当を変えてもらう

などです。

また上司によるパワハラ・セクハラなどがストレス因であれば、経営者に直接相談し、可能であれば部署を変えてもらう必要があります。

しかし、現実的にストレス因から離れることが難しい場合は、思い切って転職することを考えましょう。
転職するには障害者に特化した就労支援サービスを使うと、障害について専門の知識を持った担当者がいろいろと相談に乗ってくれます。

どのような就労支援サービスがあるか、いくつか見てみましょう。

転職時に使うと便利な就労支援サービスは?

適応障害のある人が、転職するときに使える就労支援サービスには、以下のようなものがあります。

ハローワーク


ハローワークは全国に窓口がありますので、地方に住んでいる人も利用しやすいでしょう。

窓口には障害について、専門の知識を持った職員や相談員がいますので、転職について疑問や不安に思うことを相談することができます。

地域障害者職業センター

地域障害者職業センターも全国に事業所があります。

ハローワークと密接な連携を取り、職場復帰を目指す障害者へ職業リハビリテーションやカウンセリングなどのサービスを行っています。

適応障害と診断されたとき大事なこと

適応障害は、日常生活で受ける特定のストレスが原因で心と体の調子を崩す病気で、誰でもなる可能性があります。

適応障害と診断されたら、原因となるストレスから離れ、ゆっくり心と体を休ませることが大事です。

そして、症状がつらいときは無理をせず休職し、その間に専門家のカウンセリングを受けながら、就労支援サービスを利用して転職の相談をするとよいでしょう。


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参考サイト
厚生労働省
内閣府
ハローワーク
職業情報提供サイト
日本経済連合会
転職コンサルタント
中谷 充宏
梅田 幸子
伊藤 真哉
上田 晶美
ケニー・奥谷