【作:いけだいけみさん】
「毎日一生懸命働いているのに有休が取れない…」
「有給休暇って労働者の権利なんじゃないの?」
と、有給休暇が取れずに悩んでいる方必見!
労働者の心身の疲労回復と労働力維持を目的とした有給休暇、消滅するだけというのはもったいない話です。
そこで今回は有給休暇が取れないときの対処法や取得するときのポイントについてご紹介します。
日本の有給休暇取得率は諸外国に比べて低く有給休暇取得率を向上させようと努力しているホワイト企業以外は取りにくいというのが現状です。
厚生労働省が公表した【令和3年就労条件総合調査の概況】によると、労働者1人あたりの有給休暇の平均取得率は56.6%でした。
取得率は前年の結果(56.3%)より上回っており、昭和59年以降過去最高となるものの、約半分近くの有休が取得されていないことがわかります。
取得率を企業規模別にみると、「1,000人以上」が60.8%。「300~999人」が56.3%、「100~299人」が55.2%、「30~99人」が51.2%となっています。つまり、大企業ほど有給は取得されやすく、企業規模が小さくなるにつれて取得率は下がっているのです。
引用:厚生労働省 令和3年就労条件総合調査の概況
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/jikan/syurou/21/index.html
有給休暇は労働者の権利ですが、トラブルなくスムーズに取得するためには申請側としての最低限のマナーが必要です。
いくら自由に休めるといっても、社員が一人休むことで業務が円滑に進まないケースもあり、企業としては変わりの人材を確保しなければいけません。いきなり有給休暇の申請をしても「人材確保が間に合わず時期をずらしてほしい」と伝えられるかもしれません。
そのため有給休暇を取得したい日にちが分かっているなら早めに上司に伝えることが大切です。また、理由については問わないとされていますがどうしても理由を伝えないといけない場合は法事や家庭の事情などの理由をつけると当たり障りないでしょう。
引継ぎをしっかり行っていないと有給休暇中に会社から業務についての連絡が来ることもあります。せっかくの休みに業務連絡があると気分もブルーになりますよね。
業務に支障がでないよう、不在中の引継ぎ事項として業務内容や連絡などはしっかり伝えましょう。
有給休暇の時期が決まったら、顧客や取引先にも伝えましょう。
「いつからいつまで休むのか」「代わりの担当者の名前や連絡先」を伝えることで有給休暇中の問い合わせにもスムーズに対応されるでしょう。
「有給休暇は労働者の権利なんだから休んで当然だ!」と横柄な態度をとらず、有給休暇を取り職場に戻ったら「ありがとうございました」とお礼を伝えることを忘れてはいけません。
「有給休暇はお互い様だしお礼なんて…」と思いがちですが、上司や代わりに対応してくれた担当者、職場の社員へ一言「ありがとう」と伝えることで「ゆっくり休んでもらってよかった」という気持ちになり、次の有給取得の取りやすさが変わってくるでしょう。
企業によって有給休暇の取得条件が暗黙のルールになっている場合があります。
これらのルールは当たり前ではありません。
全て法律違反している事例です。
有給休暇は「原則、理由なく自由にとれる」労働基準法に定められた労働者の権利なのです。
ただし条件として
この2つの条件を満たせば有給休暇は誰でも取得することができます。
有給休暇は取れて当たり前!大切なことなので何度も言います!
有給休暇は「原則、理由なく自由にとれる」労働基準法に定められた労働者の権利です。
有給休暇は「原則、理由なく自由にとれる」と先述しましたが間違ってはいけないポイントがひとつ。
会社にとって「事業の正常な運営を妨げる」ときは、労働者が申請した有給休暇を他の日に変更することができます。これを有給休暇の時季変更権といいます。
例えば…引っ越し業者で働いている場合
「3月25日に有給休暇で休みたいんですが…」
OKの回答
「3月は引っ越しが一番多い時期だし、運転できる人も足りないから別の日に変えてほしい」
事業の正常な運営を妨げる正当な理由と、有給休暇の日にちを別の日にしてもらえるよう労働者へ伝えていますので、有給休暇の時季変更権が認められるケースです。
NGの回答
「忙しいから認められません」
理由なく有給休暇を認めないのはもちろん違法です。
「きちんと申請したのに、上司に取得を断られてしまった・・・」そんなときの対処法をお伝えします。
会社の繁盛期などは有給休暇の取得が認められないケースがありますが、「今は厳しい」と有給休暇の取得を断られた場合は「いつなら休めますか?」と尋ね、有給休暇が取得できる時期を確認しましょう。
「有給休暇制度なんてないよ」
「じゃあ辞めてくれていいよ」
などのパワハラ発言があった場合は違法性が強いため、発言を受けた時間や内容を書面に残しておきましょう。ボイスレコーダーなどがあれば録音しておくのも有効です。
上司に断られ有給休暇の取得が認められなかった場合、社内の相談窓口や労働組合に相談してみましょう。
社内の相談窓口や労働組合に相談をしても解決されない場合は、弁護士に相談するのもひとつの方法です。有給休暇の交渉を会社側と行い、様々な解決策を提案してくれます。
自治体での弁護士相談会や法テラスなど、無料で弁護士に相談ができる窓口があるので利用してみましょう。
何をしても解決されない場合は、都道府県に設置されている労働基準監督署に相談を。
ただし、企業との対立になってしまいますので、このまま会社で働く予定なら居づらくなってしまう可能性があります。
転職を考えている方には有効ですが、なるべく穏やかに問題を解決したいときは向いていないので注意しましょう。
「無事転職先も決まって後は退職するだけ、何十日も余っている有給休暇をどうしよう…」という場合、退職時に残った分の有給休暇を消化しても法律上問題はなく、一般的に残った有給休暇を退職日までにまとめて消化するケースはよく見かけます。
しかし、企業によっては断られるケースもあります。
通常の有給休暇の取得では、企業の繁盛期や業務に支障をきたす場合は時季変更権として変更や調整を伝えられるかもしれません。
しかし、退職を前提とした有給休暇の消化では、有給休暇の時期の変更や調整を実施するのは難しいので時季変更権は行使できず「本当にまとめて有給休暇を消化してもいいの?」「有給休暇消化をさせてくれない」と悩む方が少なくありません。
退職時の有給休暇の消化はどうしたらスムーズにとることができるのでしょうか?
通常の有給休暇の取得と同様、退職することが決まったら退職日までに残った有給休暇を消化したい旨を伝え申請しましょう。
ブラック企業では、有給休暇の消化を認められない企業もありますが、その際は「有給休暇の申請」「退職の旨」についての内容証明郵便を送付すればスムーズに有給休暇の取得ができるでしょう。
『立つ鳥跡を濁さず』という言葉通り、退職後もスムーズな業務が行われるように引継ぎやスケジュール調整は必ず行い、退職日を迎えるようにすることが大切です。
最終出勤日までに引継ぎや残務処理を終わらせることで予定通りの有給休暇の消化が行われ、職場とのトラブルもなく退職できるでしょう。
有給休暇の取得という労働者の権利ばかりを主張せずに、退職する企業の円滑な業務についても配慮するようにしましょう。
有給休暇が認められない場合、買い取ることができるという話を聞いたことがある人はいると思います。ただし、有給休暇は原則買い取ってもらえません。
有給休暇の目的である「労働者の心身の疲労回復」に沿わないため、権利をお金に変えた買い取りは違法とみなされます。基本的に有休は労働者の心身のリフレッシュのために消化するものとされているのです。
しかし、絶対に買い取りできないというわけではありません。
有給休暇の事前の買い取りは禁止されていますが、事後の買い取りは適法となります。
例えば…
「退職日に合わせて有給休暇を取得しようとしていたが、引継ぎが長引いて休めなくなってしまった」などの場合は、有休が消化できないことになります。そのため、消化できない分の有給休暇を買い取りしても違法となりません。
しかし、企業の判断になるので労働者は買い取りを強く請求できないのが実情です。
また、時効を迎えた有給休暇の買い取りについても適法とされています。
有給休暇の法定日数からプラスされた有給休暇については、法定日数で心身の疲労回復ができると判断されるため、違法にはなりません。
「なかなか有給休暇を取りたいといえない…」と躊躇している方もいらっしゃいますが、労働者の権利として有給休暇を活用し、日々の業務のリフレッシュに役立ててください。
また、退職が決まっている方も残った有給休暇をしっかり消化して次のステップに進みましょう。
有給休暇を取得するために必要以上の遠慮や気遣いは必要ありませんが、休んでいる間は必ず誰かに負担がかかっています。引継ぎや残務処理など業務が円滑に行えるような配慮、周囲への心配りは社会人のマナーとして忘れないようにしましょう。