さて、今回から応募書類の本丸である職務経歴書の書き方について、解説していきます。
中高年にとっては、職務経歴書の出来・不出来が採否に直結する、といっても過言ではありません。ぜひ本記事をお読みになって完成度の高い職務経歴書の書き方をマスターしてください。
職務経歴書については、履歴書のように決まったフォームがないので、作成方法について諸説が飛び交っていますが、これは全ての年代を十把一絡げに扱うから、いろいろな方法論が出てきてしまうのです。
この年代(30代、40代、50代)だけに焦点を当てて考えると、おのずと職務経歴書の効果的な書き方が決まってきます。
まず作成枚数ですが、原則的には2枚でまとめることを推奨します。1枚をデフォルトとしている書籍やキャリアカウンセラーもいますが、この年代が1枚にまとめてしまうと、非常に窮屈になる場合があり、かえって必要な情報が伝わらない危険性があるからです。
この年代で最も肝に銘じてほしいのは、応募書類は出せばきちんと読んでもらえる、というのは幻想であるということ。採用人事にとって、一人で何百もの応募書類を同じペースで精読している稼働などありません。
学術誌の論文のように、抑揚がなく字がぎっしり詰まった書類は、読み手に大きな負担をかけます。厳しい採用人事なら、書類作成能力不足と秒殺することでしょう。
バブル期のように超売り手市場ならばともかく、中高年にとってはいまだ厳しい雇用状況の下、「読ませるな、見せろ!」の精神で、表や太字、下線などを活用する、文書表現では体言止めを駆使するなどの「見やすさ、読みやすさ」も重要なポイントです。
特にこの年代が応募できる求人には、ライバル達がアリのように群がりますので、同じような経験・スキルの持ち主でも、書類作成能力で当落の差がつく可能性は充分あることを認識しておいてください。
細かいですが、用紙にもこだわりを持ってください。何気なく使っている古紙配合の高い再生紙ですと、どうしても貧相な印象を与えてしまいます。上質紙を使うのは常識ととらえてください。
また淡い色ならOKという説もありますが、色つきの用紙はそもそもNGです。用紙の色で差をつけようとする小細工などいりません。
たとえば重要なビジネスシーンで、重要な報告書をわら半紙や色つきの用紙で提出しないでしょう。わざわざマイナスに陥る危険性がある手段をとる必要はありません。
そして肝心の記載内容について。自由なフォームだからといって、当然に何を書いてもいい訳ではありませんし、独創的なものを作成する必要は全くありません。採用人事が知りたい項目をきちんと盛り込んでおく必要があることを忘れてはなりません。
たとえば、この年代であれば、ハンディやマイナス事象を先回りしてフォローするのが、その典型例。この章では、これらの詳細を丁寧にわかりやすく説明していきます。
<よくある誤解 解説>
職務経歴書は、市販の履歴書を購入すると同封されているフォームを手書きで作成するのがよい?
この年代はパソコンでの作成が必須。絶対に手書きの職務経歴書フォームを使用しないこと。
職務経歴書は1枚でまとめなければならない?
キャリアが豊富な年代ゆえに、1枚では無理が生じてしまうケースが多い。この年代なら2枚が適正。
全てを詳細に書かないと、伝わらない?
ぎっしりと情報を盛り込めばいいという問題ではない。読み手の心理も考えること。
用紙は色がついていた方が、目立っていい?
この年代でなくても、色つき用紙はNG。ビジネス経験豊富なこの世代がこれをやると、かなりのマイナス評価につながりかねない。
書いて出せば、ちゃんと読んでもらえる?
中高年向け求人は、競争率が高い。じっくりと読んでもらえる前に、内容不備やわかりにくさなどで秒殺されることも。
決まったかたちがないので、構成など意識せずに、思いつくまま作成すればよい?
採用人事が何を知りたいと思っているか、きちんと項目立てして作成しないと、単なる事実の羅列になってしまう。
WEBレジュメで既に入力した情報は重複するので、敢えてまた書かなくてよい?
応募書類はそれぞれに完結しておくことが原則なので、自己判断で省いたり、他の書類を参照させたりするのは基本的にNG。
それでは早速、中高年に最適な3つのスタイル、「編年式」職務経歴書、「キャリア式」職務経歴書、「フリースタイル式」職務経歴書について、説明していきます。
まずは「編年式」職務経歴書。これは読んで字のごとく、時系列に表記していくタイプのものです。最もオーソドックスなスタイルで、ごく一般的で癖のない経歴の持ち主は表現しやすい記載方法と言えます。
採用人事自体、このスタイルを最も見慣れていることもあり、受け入れやすいですから、まずこのスタイルで作成することを最優先で検討してください。
この形式は、更に2つのパターンに分類され、新卒入社から古い順に職歴を記載する「年代順形式」と、直近の職歴から過去に遡って記載する「逆年代順形式」があります。
PRポイントを際立たせるために、この年代ならばまず「逆年代順形式」を採用することをお勧めします。
誰もが書類は上から下へと順に読んでいきますので、先に直近の職歴を読ませることで、応募求人内容とマッチしていることを印象づけるのです。
ただし、これには例外があり、直近の経歴ではなく古い経歴の方が応募求人内容にマッチしている場合は、「年代順形式」の方を採用します。
転職回数が多い、同じ社内でも人事異動が多いなどの経歴を持つ人は、その勤務先ごとに詳細を同じピッチで書くと、ボリュームが非常に大きくなる場合があります。
記載が冗長に流れてしまうのはレギュレーション違反で読んでもらえない危険性が出ますので、是が非でも避けたいところです。この場合、応募職種に直接関係のない経歴や古過ぎる実績などを省くなどして、2枚以内に収める表現の工夫をするか、他のスタイルの採用を検討することになります。
この「編年式」職務経歴書を作成する際に、最も気をつけていただきたいのが、単に時系列で整理された事実の羅列にならないようにすることです。
履歴書の職歴欄の記述と何ら変わらず、そのままパソコン上でなぞって書いた、というのがその典型例。この年代でも散見される失敗例です。
この要因を分析すると、履歴書と職務経歴書のそもそもの作成意義や違いを理解していないで、作成しているのが大きな理由になります。ポピュラーでオーソドックスだからこそ、基本をわかっていないと、このようなミスを犯します。
職務経歴書を作成する際には、まず「編年形式」職務経歴書の作成を検討
応募職種に対して、直近から遡った経歴が売りになる場合・・・
直近の職歴から過去に遡って記載する「逆年代順形式」を採用
新卒入社から遡った経歴が売りになる場合・・・
新卒入社から古い順に職歴を記載する「年代順形式」を採用
※キャリアチェンジのように両者のどちらでもない場合、この年代は「逆年代順形式」を採用する方がよい(今さら10年も20年も前の経歴を最初から読まされるのは、回避したいのが採用人事の本音のため)。
平成4年4月 | 株式会社日本電気通信 入社(正社員) |
事業内容:電気通信業 資本金:10億円 従業員:1万人 | |
配属:関東支社 浦和営業所 通信サービス課 | |
業務内容:主に通信ケーブルの接続工事に従事 | |
平成8年3月 | 工事主任に昇格 |
平成14年4月 | 関東支社 川崎営業所 通信サービス課に異動 |
平成16年9月 | 関東支社 浦安営業所 通信サービス課に異動 |
平成20年9月 | 工事課長代理に昇格 |
~ |
これでは単に時系列に事実を書き綴っているだけで、履歴書を見れば済むレベルと見限られる可能性大。
※画像をクリックすると、フォーマットのダウンロードが出来ます。
次に「キャリア式」職務経歴書について述べてきます。これは、まさしくその人の培ってきたキャリアに焦点を当て、そのキャリアごとにまとめていくスタイルです。
今までの職歴において営業をやったり、商品企画をやったり、カスタマーサポートをやったりと経験職種にばらつきがある、もしくは商品開発職やSE職のように開発プロジェクト単位で仕事をしてきた、といった場合は、オーソドックスな「編年式」で書くと、その勤務先やプロジェクトごとに詳細を書くことになりますから、もの凄いボリュームになります。
筆者自身、リアルな採用現場で、様々な職業経験のある中高年が作成した5枚や6枚にも渡る「編年式」職務経歴書を見たことがありますが、これでは非常に読み手に負担がかかります。このような場合こそまさしく「キャリア式」の方が適していると言えます。
「編年式」が時系列や勤務先を軸にして書くのとは異なり、これらを意識せずに「キャリア式」はキャリアで束ねてまとめることを一義とするので、経験業務における能力やスキルは非常に測りやすいのですが、その一方でその人の職歴上の生い立ちがわかりにくいという欠点もあります。
そして、このスタイルに慣れていないと、「見たことのない書き方で、特に今までどのような時間軸を経てこのようなキャリアを積み上げてきたのか、どのような会社にどれくらい在籍していたのか、という経歴がこの職務経歴書では全く見えない」と、履歴書との照らし合わせを嫌う採用人事が存在するのも事実です。
現実的には真剣勝負の転職活動シーンにおいて、時系列という概念を外すのは、ある意味、かなり勇気がいるやり方であると言えます(この場合、履歴書的な時系列の表記を最初に盛り込むといった、書き方の工夫が必要になります。
次の見本を参照ください。「●職務年表」という項目を掲載していますが、これによって時系列での詳細表記がないことをフォローします)。
ただ、これらのデメリットもありますが、「編年式」に適していない人が、冗長にダラダラと時系列で書き綴るよりは、強みや経験がコンパクトにまとまっている方がいいのは間違いありません。特に中高年の場合、訴求ポイントが明確でなく、ダラダラと長く書いた職務経歴書が最もリスキー。
繰り返しになりますが、今や1通の書類選考に1分しか割けない、とも言われている中、採用人事に精読してくれることを期待してはいけません。
作成の流れですが、まず「編年式」職務経歴書での作成を検討してみて、どんなに圧縮してもボリュームが3枚以上になるようでしたら、「キャリア式」職務経歴書での作成を検討してみてください。
メリット
デメリット
※画像をクリックすると、フォーマットのダウンロードが出来ます。
最後に紹介するのが、「フリースタイル式」職務経歴書です。これは、職務経歴や自己PRなど職務経歴書に盛り込むべき必須項目自体は削らずに、記述内容の方をダイエットして、思い切ってA4サイズ1枚にコンパクトにまとめるスタイルです。今、伝えたいことを書類1枚にまとめる発想がビジネスシーンでトレンドですが、これと着眼点は同じです。
何度も申し上げるとおり、たった1名の求人に100名を超える応募者が殺到する今、事実をダラダラと書き流しただけでは、「伝えたいことも伝わらず、その他大勢で片付けられて終わり」だから採用人事にきちんと読んでもらう創意工夫も求められているのです。
特に40代ともなると職歴が長いために、5枚にも6枚にも及ぶ職務経歴書を作成されるケースが散見されますが、自分史のようなボリュームたっぷりの職務経歴書は誰も読みたくありませんし、これでは書類作成能力自体を疑われてしまいます。
このスタイル作成のコツは、「捨てる勇気を持つこと」です。
経験豊かな世代ですから、あれもこれも全て書かないと自分の魅力が伝わらないと思い、どうしても削ることを怖がる心理状態にあります。しかし、これでは発想が逆、雇用有事下の今、「まず読んでもらってナンボ」です。
たった1枚にシンプルでわかりやすくまとめることで、採用人事に見やすさ、読みやすさを強烈にアピールし、短時間で応募者のキャリア全体を俯瞰的につかんでもらうのです。
そもそもこの世代の職歴の詳細を述べていたら、1冊の本ができることでしょう。書類選考のステージでは、そこまでのボリュームや詳細は求めていないのです。会ってみたい、と思わせたら勝ち、削ってしまった詳細は面接で語ればいいのです。
このスタイルに適している人は、職歴が長い、もしくは転職回数が多い、といった40代です。次ページに1社での職歴が長い人の見本と転職回数が多い人の見本を掲載しましたが、この二人がオーソドックスに「編年式」で普通に書いていったら、2枚以内には収まりません。このような適合者でなくても、どうも自分が作成したものが見づらい、ネガティブな要素が全面に出てしまう、訴求ポイントをスッキリとまとめたい、という人はぜひこのスタイルの採用を検討してください。
見やすさ、読みやすさを最優先するために、余分なものはもちろん、場合によっては必要なものも捨て去る覚悟で臨むこと
メリット
デメリット
フリースタイル式 サンプル1
フリースタイル式 サンプル2
※画像をクリックすると、フォーマットのダウンロードが出来ます。
第2回「職務経歴書の書き方2~必須の4つの項目とは~」 へ続く
転職コンサルタント(中谷充宏)講師プロフィール
関連記事(中谷充宏が教える~中高年の転職必勝法!~全5回)