大学新卒の就職先で医療事務を選ぼうとしている方は、少し待ってください。
4年間大学に通った後、医療事務に就職すると、給与やキャリアの面で不利になることがあります。
医療事務はとても重要な仕事ですが、大学卒業後に就職するにはもったいないとされています。
今回は、大卒で医療事務がもったいないと言われる理由や、キャリアアップのポイント、医療事務になるメリットを詳しく解説します。
大学新卒で医療事務として働くのは、なぜもったいないと言われるのでしょうか。
もったいないと言われる3つの理由について解説します。
医療事務の仕事は資格なしでも働きやすい仕事ですが、資格なしの場合はパートとして雇用されることが多いです。
特に中~大規模な病院になると、連日1,000人以上の患者さんが来院するため、多くの医療事務職が働いています。
会計業務や請求業務でも効率的な働きを求められるため、無資格者では正社員になるのは難しいでしょう。
一方、小規模な病院や個人のクリニックであれば、正社員として働けることもあります。
ただし、小規模病院や個人のクリニックは、一人ひとりの医療事務にかかる責任も大きく、給料も低いというデメリットがあります。
どちらを選ぶかによりますが、例え大学卒でも資格なしでは正社員になりにくい点は理解しておきましょう。
大卒で医療事務はもったいないと言われる理由には、一般的な会社で事務職をするよりも、給料が安いという点もあります。
大学卒の初任給はおよそ21万円ですが、医療事務は10万円台ということもしばしばです。
加えて、病院に勤務する医療事務は昇給の幅が決まっており、業績による大幅な昇給はほとんどありません。
そのため、他の大卒者が順調に高収入を得ていく中で、自分だけが未だに給料が20万円に届かないということも十分あり得ます。
仕事は安定していますが、給料が安いために大卒で医療事務はもったいないと言われています。
医療事務の仕事にも昇進やキャリアアップはありますが、非常に狭き門です。
多くの病院では、会計や受付、医療秘書などの事務系をまとめて医療事務という枠に入れています。
そのため、どれだけ事務系の職員がいても、課長と主任が1人ずつという病院は珍しくありません。
100人単位の事務職がいる中で、キャリアアップするのは並大抵の難しさではないでしょう。
医療事務の仕事内容について、「受付・会計業務」「レセプト作成業務」「クラーク(医療秘書)業務」の3点から見ていきましょう。
受付・会計業務は、病院の窓口受付や診療後の会計などを担当する仕事です。
近年は機械による自動受付も一般的ですが、機械に弱い高齢者は窓口で受付することもあります。
言わば、病院の顔であり、病院の評判にも関わる大切な仕事です。
受付業務は診察券・保険証のチェック、電子カルテ上の属性変更などを行います。
会計業務では、外来診療で発生した診療費や検査、使用薬剤、入院中のベッド使用料など、治療に関わる費用の算出と会計を行う仕事です。
患者さんへの次回予約の案内、入院案内などを行うこともあります。
レセプト業務は医療費に関わる重要な仕事です。
多くの患者さんは健康保険や後期高齢者医療保険に加入しており、医療機関の窓口負担は1~3割です。
医療機関は患者様が負担していない7~9割を保険者に請求しなければなりません。
ここで必要となるのがレセプト(診療報酬明細書)であり、医療事務はこの作成・提出が仕事です。
レセプトが間違っていると再提出を求められるため、間違いがあってはならず、正確性が求められる業務です。
クラーク(医療秘書)業務は、医師の診療においてカルテ作成をサポートするのが主な業務です。
クラークには、外来クラークと病棟クラークの2種類があります。
外来クラークは医師の診察を補助するとともに、診療における保険点数の算定、診断書などの文書作成補助、カルテなどの診療記録代行入力、行政への報告書等作成業務などを行います。
病棟クラークは病棟で働くクラークで、ナースステーションでの受付や面会希望の家族への対応が主な業務です。
また、医師が病棟で病状説明を行う際には、カルテの代行入力を行うこともあります。
どちらも円滑な診療業務を支える仕事で、医師・看護師・事務との連携が必要な仕事です。
大学新卒で医療機関に就職する場合、キャリアアップするにはどうすればよいのかポイントを解説します。
大学卒で就職するなら、医療事務ではなく総合職での就職を目指しましょう。
医療事務の仕事はキャリアアップしにくいだけでなく、昇進しても経営に携わることはまずありません。
多くの病院で経営に関わるのは、院長・看護部長・事務長などの役員クラスです。
そして、事務長になるには医療事務から昇進することはほとんどなく、総務課などの総合職からの昇進しかありません。
つまり、キャリアアップを狙うなら医療事務ではなく、総合職として就職するのが近道となります。
医療事務としてキャリアアップを考えるなら、医療機関で活躍できる資格を取得しましょう。
代表的な資格は次のものです。
医療機関で長く働くことを考慮するなら、診療報酬請求事務能力認定試験や医療秘書技能検定試験がおすすめです。
医療事務から別のキャリアまで狙うなら、電卓技能検定試験や日商簿記2級、MOSを取得しましょう。
ジャンルを問わず事務系で働くなら、日商簿記2級とMOSも有効な資格です。
新卒で医療事務に配属されても、総務や経理に異動を希望すれば、その後のキャリアアップに繋げやすいです。
総務や経理も同じ事務系の仕事であり、欠員や異動で配属される可能性は十分にあります。
ただし、医療事務よりも幅広い業務を担当し、病院の決算や各種報告書も作成しますから、色々な資格を取得してから希望するのをおすすめします。
総務を管理するのが事務長という役員の病院もあり、総務課で昇進できれば、病院経営に携わるチャンスが巡ってくるかもしれません。
病院の組織図を理解したうえで、どうすればキャリアアップできるか考えていくことが大切です。
大学新卒で医療事務になるなら、どのような人が向いているのか特徴を紹介します。
大学卒業後にやりたい仕事が見つからない人、目標が特にない人は医療事務に就職するのがおすすめです。
医療事務は基本的にはルーチンワークの裏方作業ですから、人とのコミュニケーションが苦手な方でも働きやすい仕事です。
また、受付窓口に立つのは女性の方が多い傾向で、男性が医療事務になる場合はほぼ裏で事務作業ができます。
受付や会計窓口に立つ場合、患者様とコミュニケーションを取る機会も多く、アルバイトで接客業を経験したことがあれば働きやすいでしょう。
大学卒業後に目標が見つかっていない人でも、医療事務なら安定して働ける点でおすすめです。
大学でスキルや資格を取得していない人にも、医療事務の仕事はおすすめです。
医療事務というと専門性が高そうに思えますが、実際には資格なしでも働ける仕事です。
また、診療報酬は全国どこでも同じですから、医療事務という経験も全国どこの病院でも生かせます。
医療事務は育休や休職などのブランクがあっても復職しやすく、ブランクがあまり関係ない仕事です。
女性の場合は、産休・育休で仕事からしばらく離れることも多いですが、医療事務なら求人も多く、復帰後も働きやすい安定感があります。
医療分野の中でも、診療報酬は2年毎に改定があります。
常に勉強が必要になるため、医療事務に関する勉強が好きな方や、医療秘書や診療報酬請求事務能力認定試験などの資格を取得したい方は医療事務に向いています。
また、診療報酬改定にあたっては、病院内で勉強会が行われることがあるため、人に教える立場になることもあるでしょう。
自ら新しい知識を吸収し、人に教えるのが好きな人にもおすすめです。
何よりも、「医療分野の勉強が楽しい」「色々な資格を取得したい」と思って学べる方なら、医療事務に向いています。
学校生活を通して、医療分野で働きたいと思う出来事や体験があり、医療事務になろうとする方もいます。
そういう方は仕事に熱意を持って取り組めるため、医療事務の仕事に向いています。
医療事務は医療分野だけに活かせる仕事ではなく、人脈を構築したり、医療の専門知識を得たり、患者様とのコミュニケーションを学んだりできる仕事です。
将来転職をすることがあっても、必ず医療事務としての経験は活かせます。
実際に、医療事務から一般企業の経理になった方や、銀行に勤務した方など色々なキャリアを積む方がいます。
大学卒業後に医療分野で働きたいという熱意があるなら、医療事務という選択は決してもったいなくはありません。
大学新卒の未経験者が医療事務になると、どのようなメリットがあるのか紹介します。
医療事務の仕事は、医療機関がある場所ならどこでも働ける点がメリットです。
多くの医療機関では経験の有無を問わず採用しており、新卒未経験でも就職先を見つけられるでしょう。
医療事務なら、全国どこでも同じ診療報酬ですから、どこで働いても経験が活かせる点もメリットです。
また、レセプト作成や会計業務の経験があり、医療秘書等の資格も取得できれば、どこでも即戦力になるので鬼に金棒の状態です。
引越しや家族の転勤で現在の職場を辞めることになっても、医療事務ならどこの病院でも必要としています。
特に地方の病院は慢性的な人材不足ですから、すぐに就職先が見つかるでしょう。
医療事務の仕事経験があれば、転職や休職後の復帰、育休・産休明けであっても、ブランクを気にせず働けます。
他の専門職の場合は、数年現場を離れていると大きく環境が変わっており、働きにくさから辞めてしまう方も少なくありません。
一方、医療事務は全国どこでも同じ仕事内容であり、スキルや資格を持っていれば優遇されやすい仕事です。
特に、診療報酬請求事務能力認定試験や医療秘書などの資格は、誰もが取得できるわけではありません。
こうした資格を持つ人材は非常に貴重ですから、転職や復職でもほぼ間違いなく役に立ちます。
医療事務は福利厚生が充実しており、女性人気の高い仕事です。
その理由として、産休・育休の取得しやすさ、子育て中の勤務時間調整のしやすさ、正社員・パート・アルバイトまで幅広い雇用形態があるなどがあるからです。
また、ある程度の規模の病院であれば、院内保育を用意し、女性の子育て支援を理解している職場もあります。
もちろん、社会保険なども一通り整備されていることから、長く働きやすいというメリットもあります。
ライフスタイルの変化に合わせた福利厚生が充実しており、新卒未経験からでも入りやすい点が医療事務のメリットです。
大学卒業後、医療事務になるのはあまりおすすめできませんが、どうしても医療事務になるなら、働きながら資格取得を目指すべきです。
医療に関係する資格はもちろんですが、日商簿記やMOSなどの資格も取得しておくことをおすすめします。
どのようなキャリアプランを設計するかにもよりますが、将来の選択肢を広げる意味でも、事務で活かせそうな資格は複数取得しましょう。
さらにキャリアアップを目指すなら、医療事務だけでなく、総務などの総合職も経験しておくと病院経営にも関わるチャンスに繋がります。
医療事務は、安定した働きをするならおすすめの仕事ですから、自分の適性と合っているか自己分析も行って、就職先を決定してください。