退職金は、労働者が会社を退職する際に支給される手当です。
長年勤め上げた会社に対する感謝の意として、経済的な安定や将来の生活費の一部を補う役割を果たしています。
退職金が支払われるのは一般的だと思われがちですが、中には「退職金なし」の会社も少なくありません。
今回は、退職金がない会社の特徴や退職金なしのメリット・デメリット、対策などについて紹介します。
転職活動中の方や、希望する目当ての会社に退職金制度がなくて迷っている方は、ぜひ参考にしてください。
退職金がある会社とない会社、どちらかに転職するとしたら多くの方は、「退職金がある会社」を選ぶのではないでしょうか。
しかし、退職金がないことにメリットと考えられることがあるため、様々な要素を検討し、会社を評価する必要があります。
ここでは、退職金制度なしのメリットとデメリットをみていきましょう。
【メリット】
退職金がない会社の中には、その分を給与や賞与に上乗せして支給しているところもあります。
勤続年数を考えずに働くことができるため、自分のタイミングで退職できることもメリットです。
退職金がある会社であっても、業績悪化や社会情勢により減額されたり廃止される場合があります。
はじめから退職金がない会社であれば、退職金をあてにした資金計画を立てることがないため、計画的に生活設計ができるでしょう。
退職金がない会社は、長期的な雇用を考えている場合があります。
他の会社よりも雇用の安定性が高く、長期的なキャリアを築ける可能性が高いでしょう。
【デメリット】
定年の時に退職金としてまとまったお金が入らないため、会社の倒産や、自分自身の健康状態に不安があれば、将来に不安が残る可能性があります。
退職金制度のある会社では月々の給料から退職金の積み立てとして天引きされているため、月々の給料は少なくなります。
また、退職金は定年時や退職時にまとまったお金として支給されるものですが、会社が倒産してしまった、懲戒免職などの解雇、退職金の支払い条件を満たしていないなど退職金制度はあっても退職金を受け取れないケースも稀にあります。
この先、退職金の減額、退職金制度の廃止など時代の流れとともに進んでいくことも考えられるため「退職金制度があるから安心」と安易に思いすぎず、各々が計画的に準備しておくことも大切が大切です。
退職金は、会社の方針や経営戦略、経済状況、業界の慣習などによって異なる場合があります。退職金が支給されない理由には、以下のようなことが考えられます。
成長段階にある会社や新しい企業は、経営資源の限られた状況下で経営を安定させるため、資金の優先順位をつけなければなりません。
そのため、給与や福利厚生に対する予算を最小限に抑えることがあり、退職金の支給が難しい場合があります。
経済的な厳しさや業績の低下により、企業が資金繰りに苦しんでいる場合、退職金の支払いに影響を及ぼすことがあります。
また、企業が大規模な事業再編や経営改革、人員削減などを行う場合にも、退職金支給が滞ることがあります。
一部のサービス業や非正規雇用では、労働者の雇用期間が短く、雇用関係が不安定な場合、退職金制度が整備されていないことがあります。
経済状況や景気は、企業の財務状態に大きな影響を与えます。
経済の低迷や業績の悪化により、企業はコスト削減を余儀なくされる場合があり、その結果、退職金制度が縮小されたり、廃止されることもあるでしょう。
雇用形態や働き方が多様化する近年では、フリーランスや契約社員といった非正規雇用が増えています。
従業員のニーズに合わせた雇用形態や福利厚生の充実によって、退職金制度を廃止している企業も少なくありません。
退職金がない代わりに、教育支援やキャリア支援制度などが充実している場合もあります。
退職金が支給される会社と支給されない会社の割合や、現在の退職金の実情について説明していきます。
厚生労働省が実施した「平成30年就労条件総合調査」の結果によると、退職給付(一時金・年金)制度がある企業割合は 80.5%となっています。
つまり、約20%の企業には、退職金がないということになりますね。
企業規模別にみると、「1,000 人以上」が 92.3%、「300~999 人」が 91.8%、「100~299 人」が 84.9%、「30~99 人」で、企業規模が大きくなるほど退職金制度が整っています。
また、業種によっても退職金制度の有無が異なることが分かり、宿泊業や飲食サービス業では退職金制度の導入率が低い傾向ということが分かります。
退職金制度を導入している企業においても、その支給額は年々減少している傾向です。
厚生労働省の『就労条件総合調査』では、約5年ごとに退職金の支給実態について調べています。
平成20年・平成25年・平成30年の退職者に対する退職金の平均支給額は以下のとおりです。
(対象者は、大卒の勤続20年以上かつ45歳以上の定年退職者と勤続35年以上の定年退職者です)
勤続20年以上かつ45歳以上の定年退職者:2,280万円
勤続35年以上の定年退職者:2,238万円
勤続20年以上かつ45歳以上の定年退職者:1,941万円
勤続35年以上の定年退職者:2,156万円
勤続20年以上かつ45歳以上の定年退職者:1,678万円
勤続35年以上の定年退職者:1,897万円
退職金は、老後の資産形成や生活資金に大きく影響します。
今後も縮小されていく可能性が高いため、退職金だけに頼るのは見直した方がいいのかもしれません。
退職金制度はあるのに退職金がもらえないことも…
退職金制度がある会社でも、退職金がもらえない場合があります。
退職金制度がある会社でも、退職金を受け取るためには「勤続年数3年以上」など、一定の勤続年数が定められている場合があります。
勤続年数が短かったり、他の条件を満たしていなかった場合、退職金の支給が行われないことがあります。
各企業によって勤続年数の条件は異なりますが、勤続年数をどのくらいで設定している企業が多いのでしょうか。
参照:東京都産業労働局『中小企業の賃金・退職金事情(2022年)』
自己都合退職では勤続年数3年以上が51.5%と最も多く、会社都合退職でも勤続年数3年以上が32.4%と多くなっています。
次に多いのは自己都合・会社都合ともに1年以上であることから「勤続年数3年以上」または「勤続年数1年以上」が退職金を受給できる一つの区切りとなるのかもしれません。
1年以上、3年以上で退職金がもらえると言っても勤続年数に応じた金額であるため、勤続年数3年で給料1ヶ月分程度の退職金となります。
企業によって異なるので、転職を考えている方は就業規則を確認して、退職金で損をしないタミングを選びましょう。
退職金がない会社へ転職する場合、最も不安に感じるのは将来への備え、老後の資金計画ではないでしょうか。
今の仕事・給料には満足しているという人は、退職金の代わりになるようなものや老後の資金として今から始められる対策を考えておくことが大切です。
ここでは、「退職金なし」の会社で働く場合の対策を2つ紹介します。
会社に退職金がない場合は、自分で退職後の貯蓄に取り組みましょう。
老後に必要な資金を計算し、長期的に貯蓄することが大切です。
確定拠出年金や国民年金基金などの私的年金制度に加入することで、将来の安心につながります。
会社には退職金がなくても、年金制度によって老後の資金を保障することができるでしょう。
私的年金制度について、以下で詳しく解説しています。
確定拠出年金(DC)は、拠出された掛金を加入者が運用し、その運用益との合計額をもとに、将来の給付額が決定する年金制度です。
「掛金建て年金」とも言われています。
掛金を事業主が拠出する企業型DC(企業型確定拠出年金)と、加入者自身が拠出するiDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)があります。
それでは、老後の備えに役立つiDeCo(確定拠出年金の特徴)の特徴についてみてみましょう。
iDeCo(確定拠出年金の特徴)の特徴
確定拠出年金は、個人が老後のライフプランに向けて自主的に準備する手段として重要です。
制度の詳細や加入方法、運用に関する相談は、金融機関や専門家に相談することをおすすめします。
退職金のない会社に入ってしまったと後悔している場合、思い切って退職金がある会社に転職するのもひとつの方法です。
退職金は、一般的に勤続年数に応じて支給されたり支給額が変わるため、悩んでいる方は、早めに行動した方が良いでしょう。
貯蓄も厳しい、私的年金まで払う余裕がない、資産運用の知識がない‥と難しさを感じるのなら、退職金制度のある会社に転職することが一番です。
思い切って退職金が出る会社に転職する方法もあります。一般的に退職金は勤続年数に応じて受け取れる金額が変わるので、悩んでいるのであれば早めの転職がおすすめです。
転職先を選ぶ際は、退職金制度の有無や給料面だけでなく、なぜその会社(仕事)なのか?今後のキャリアプランは?
‥といった転職理由・転職後の目標や実現したいことを明確にしておくことが大切であり、徹底した「自己分析」と「情報収集」が転職を成功させるポイントとなります。
本格的に転職を進めていくのであれば、転職活動をトータルでサポートしてくれる転職エージェントを活用してみてはいかがでしょうか。
個人でも転職活動は出来ますが、転職エージェントのサポートがあれば在職中からでも計画的に効率良く転職活動を進めていけるのでおすすめです!
転職活動で大切な「自己分析」と「情報収集」はもちろんのこと、「退職金あり」など希望条件にマッチした求人の紹介や応募企業ごとに合わせた面接対策など、ポイントをしっかり押さえた転職活動ができるので個人よりも有利に進めていけることも転職エージェントの特徴となっています。
転職エージェントのサポート
転職エージェントのこれらのサービス・サポートは全て無料で利用出来るので、今すぐ転職したい人だけでなく転職しようか悩んでいる人でも気軽に相談から始めることが可能です。
また、転職エージェントと言っても数多くのサービスがあり、求人量・内容、カウンセラーの質、担当者との相性などを見極める必要があるため、最低でも2~3社の転職エージェントに登録し比較検討をした上で最終的に1社に絞ることをおすすめします。
いかがでしたでしょうか。
退職金がない会社の特徴や退職金のない働き方のメリット・デメリット、それに対する対策について紹介しました。
退職金の有無は、転職を考える上で重要なポイントですが、転職する際には、自分のキャリアや将来性、働きやすさ、福利厚生なども考慮することが大切です。
退職金のない会社に転職を検討する際には、その特徴やメリット・デメリットを理解し、自分に合った職場を選びましょう。
また、転職活動が1人では不安な場合は、転職エージェントの利用も検討してみてはいかがでしょうか。