昨今の日本では「高卒よりも大卒の方が優遇される」「大卒の方が就職に有利」など、学歴によって就職に差が出るとされています。
ですが、実際に高卒と大卒にはそれほど大きな差があるのでしょうか?
今回は、転職市場における高卒と大卒の差の実態を紹介します。
この記事の監修者:岡山香織さん
- 日本キャリア開発協会認定CDA(キャリアデベロップメントアドバイザー)
- 国家資格キャリアコンサルタント
プロフィール
ハローワークやジョブカフェで、主に18歳から45歳までの就職支援に携わる。新卒・既卒の学生向けに自己分析、企業分析、面接指導などのセミナー講師を経験。また職業訓練校において、受講生の個別相談をはじめ、未経験から希望の就職に結びつけるための支援経験。労働局勤務、民間の人材派遣業も含め就職支援を約10年経験。
また、福祉などの専門分野ごとの合同企業説明会・面接会の責任者を務め、企業の採用担当者との関係構築も深い。職業訓練校ではキャリア相談をはじめ、自己分析、履歴書職務経歴書の書き方指導、面接についての指導など就職に関する授業の講師経験。労働局勤務では雇用環境均等室勤務において企業で働く従業員の働き方に対する支援業務経験。
現在は、新卒・転職支援やキャリアカウンセリングをメインとした「キャリアコンサルティングオフィス岡山」にて代表を務める。これまでのキャリアを活かし、高校・専門学校・大学でキャリア支援を行う一方で、企業での代理採用担当業務を行っている。これまでのキャリア相談はのべ6000人以上にのぼり実績も豊富。
[高卒と大卒の違い] 転職事情を比較
転職活動の際にも、応募条件に学歴を設定してある企業もまだ多数あります。
そのため「やっぱり高卒だと‥」と自分でも思いがちですが、転職時は学歴よりも経験・スキルが大事です!
就職年齢を比較すると、早い人で高卒は18歳、大卒は22歳から社会人として働き始めます。
その差は4年。大卒よりも社会人経験が長い高卒の経験・スキルを武器に転職を成功させている人も多く居ます。
とは言え、高卒は大卒と比べると転職先の選択肢が少ないことは確かですから、幅広い転職先から企業を選べるという面では大卒の方が有利であると認識しておく必要があります。
Point転職時に必要なのは、学歴より経験・スキル+やる気◎
高卒の人がいずれ転職をしたいと思っているのであれば転職時有利に働く“即戦力”としての『経験』『スキル』『実績』を身につけておくことを一番に考えましょう!
また、人間性やコミュニケーション能力を伸ばしておくことも転職に於いて重要なポイントとなってきます。
高卒就職する人の高校入学時に心得ておくべき重要なポイント
高卒就職する人は、高校入学時から気を付けておく重要なポイントがあります。具体的には高校入学から生活態度に気を付け、積極的に部活動、生徒会活動やボランティア活動などに取り組むことや資格取得に力を入れ、学校を欠席することのないよう日頃の健康管理に気を付けることです。
これは当たり前のことですが、この当たり前のことができない人は、高校3年になっていざ就職活動を始める時に、希望する企業に応募することも出来ない悲しい事態になるなど後悔することにもなりかねません。
学校で行われる選考会議では、学校の成績のほか高校1年生からこれまでの生活態度や、欠席日数、人柄などを総合的に考慮して選出されることになります。希望する企業に推薦してもらえるよう、高校1年生から気を付けて高校生活を送るようにしましょう。
岡山香織さん
- 日本キャリア開発協会認定CDA
- 国家資格キャリアコンサルタント
[高卒と大卒の違い] 就職後の給料や待遇を比較
それでは高卒と大卒、実際に社会人となった後には、どのような差が出てくるのでしょうか。
給料
生涯賃金
職種
出世
これらの項目においての高卒・大卒の違いを見ていきましょう。
給料(初任給&中途採用)|高卒・大卒の違い
最も顕著にあらわれるのは給与額です。
厚生労働省によると、高卒と大卒の初任給の時点で4万円~5万円の差が出ているのがわかります。
|
大卒 |
高卒 |
男性 |
21.2万円 |
16.8万円 |
女性 |
20.7万円 |
16.4万円 |
男女計 |
21万円 |
16.7万円 |
参照:厚生労働省『令和元年賃金構造基本統計調査結果(初任給)の概況』
*参照:厚生労働省『平成30年賃金構造基本統計調査』
中途採用おける大卒と高卒の給料の違いは、企業によって異なります。
「学歴問わず、これまでの経験を重視」する企業なら、高卒で4年間実務経験を積んだほうが給料が高くなることもあるでしょう。
生涯年収(生涯賃金)|高卒と大卒の違い
初任給の差を見て想像はつくかもしれませんが、生涯年収においても高卒と大卒では大きな開きがあります。
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大卒 |
高卒 |
生涯年収 |
2億5000万円 |
3億3000万円 |
参照:ユースフル労働統計2019『生涯賃金など生涯に関する指標』
職種|高卒・大卒の違い
では、どうして賃金に大きな差が生まれてしまうのでしょうか?
その理由の一つには、就職する職種が挙げられます。
|
大卒 |
高卒 |
職種 |
一般職 |
総合職、専門職
(※専門的な知識と学力が必要) |
総合職や専門職は他の職種と比べると給与が高い場合が多いため、年収も高くなりがちです。自分のスキルや能力を武器にしやすく、キャリアアップの転職も成功させやすいため年収アップも比較的可能なのです。
そのため、総合職や専門職で新卒入社がしやすい大卒者のほうが、給与や生涯年収も上がりやすくなるということなのです。
出世|高卒・大卒の違い
では、高卒者と大卒者で、出世を目指すのであればどういう対応を取るのがいいでしょうか?比較してみましょう。
- 高卒出世を目指すなら転職を考える必要も?
- 大卒一企業で働き続ける場合、上役や経営幹部に就きやすい傾向
転職時の待遇面においては、学歴の差が生じることはほとんどないといっていいでしょう。
企業にもよりますが、転職時の給与を定めるポイントは、本人のスキルや経験と前職での給与です。大卒だから、高卒だからという理由だけで給与が設定されることはほぼありません。
新卒で入社した後のキャリア形成では、特に企業規模が大きいほど大卒と高卒で差がつけられることもあるので、現在の職場で大卒よりも出世したいがその環境がないという高卒者は、転職することで逆に実現できる可能性があるかもしれません。
企業から見た高卒と大卒の違い
では実際に企業側からは、高卒と大卒の求職者にどんな違いがあると見られているのでしょうか。また、高卒と大卒ではどちらの方が採用したいなど、求職者側にとって有利不利はあるのでしょうか。
確かに新卒で採用する場合には、両社に社会経験の差を感じる採用担当者もいるでしょう。特に敬語やビジネスマナー、パソコンなどのITスキルには大きな差があると捉えられ、中途でも社会人歴が浅いうちはそれが顕著にあらわれることもあるかもしれません。
しかし1度社会人になった後は、同年齢であれば社会人経験が長いのは高卒者。特に20代や30代前半くらいまでは社会人歴の長さがスキルや知識に直結することも多く、大卒よりも長い社会経験の中で培われた技術や経験を買っている企業も多く存在します。
Point一度社会人になったあとは、学歴より経験や能力が重要視される場合も
また、大卒者は学生時代にある程度の社会観や職業観を既に形成させていることもあり、高卒ならではの“素直さ”に魅力を感じている採用担当者も少なくありません。
上司や先輩から可愛がられやすいといった人間性は社会人歴を積んでも残るもの。そこを評価する採用担当者もいるでしょう。
「違いはない」と考えている企業も多い
前述の通り、高卒と大卒には違いがあり、故に募集要件で学歴を定める企業は確かに一定数存在しますが、学歴不問としている企業においては、学歴による差はほとんどないと考えられていると言えるでしょう。
実際人手不足といわれるITや福祉業界においては、未経験であれば大卒・高卒の差は特になく、どのようにスキルを磨き経験を積んでいくかは本人のポテンシャルによるという声もよく聞かれます。
また、高卒者と大卒者の間には「この人には負けられない!」という競争意識が生まれることも少なくありません。そうした両者の競争意識が生む良い影響を狙って、どちらも均等に採用しようという企業も実際にあります。
高卒の転職!成功させる3つのポイント
中途採用では学歴よりも職歴が重視されるとはいえ、やはり転職活動を有利に進めるためには高卒ならではの大切なポイントがいくつかあります。下記の3つのポイントを抑えて、ぜひ理想の転職を実現させましょう。
大卒との違いをアピールする
繰り返しになりますが、同じ年齢であれば大卒よりも高卒の方が社会人歴は長くなります。特に中途採用においては、学歴よりもスキルが重視される傾向にあるので、ぜひご自身の社会経験の中で培ったスキルを存分にアピールしてほしいと思います。
また、高卒で就職すると決めた意識の高さや、仕事をすることに対する熱意などもアピールしたいポイントです。高卒であることを卑下するのではなく、逆に大卒にはない魅力として自身でも捉えることが大切です。
大卒との差を埋める努力をする
大卒に比べて不利になる要素が自分にあると感じたら、何らかの形でそれを埋める努力も必要です。
大卒者は学生時代に資格取得や語学勉強をしている人も多く、書類審査では有利に働く場合もあります。資格があれば全て解決するわけではありませんが、履歴書に書けることを増やして損はありません。
ITパスポートやマイクロソフトオフィススペシャリストなどパソコン関連の資格やITスキルを身に付けたり、秘書検定やビジネス文書検定などを受験することも高卒者にとって更なる道が開けるでしょう。
Point
就きたい職業のために資格を取るほどの熱意があることのアピールにも繋がるため、資格を取りたい場合はどんどん取って◎
また宅地建物取引士や医療事務、介護福祉士といった専門分野の資格も、手に職をつけられるのでおすすめですし、TOEICなどの語学スキルを磨くことも増々グローバル化が加速する現代には有利に働きます。
応募する企業の体質を見極める
応募する企業自体にも、高卒者が決まりやすいかどうか見極めるポイントがあります。募集要件が『高卒以上』か『学歴不問』であることを前提に、以下のポイントを企業HPでチェックしましょう。
このポイントを押さえると、その企業が学歴を重視する会社かどうかかを簡単に見極めることができます。
社員の年齢層の構成を見る
学歴を気にする傾向は、年齢があがるにつれて高まるように感じます。そのため構成される社員の年齢層が若ければ、学歴をそれ程重視しない傾向が強いです。
企業HPに掲載されている社員の年齢構成表や、社員の平均年齢などを参考にするといいかもしれません。
ただし、年齢構成の他に出身校の構成表が掲載されている場合は、ある程度学歴を重視する企業である可能性が高いと考えられます。
社長や役員の学歴を見る
企業の根幹となる社長や役員が高卒または中卒であると、学歴を重視しない傾向が強いです。企業HPの社長紹介ページに記載されていることも多いのでチェックしてみましょう。
ただし、面接で直接聞くことは避けましょう。失礼に当たります。
高卒におけるキャリアアップ
高卒は若い年齢で就職することで、若い感性で仕事の理解度も高いため、実務につきながらスピード感をもって仕事を覚えていくことができます。大学を卒業しなければ受験資格がないと思われがちな資格取得も、実は実務経験の年数をクリアできれば受験資格を得ることができるものもあります。
よって、社会に出て、自分次第では大卒の方より会社で活躍できる人材になることができる場合もあるということです。
転職に向けてやるべきことは、経験を棚卸し自己理解を深めておくことです。高卒で就職した会社で、具体的にどんな業務を任され、どんな工夫をして仕事に従事してきたか、しっかり書きだすことで、自分が経験してきたエピソードも再認識することが出来ます。そして今後のキャリアアップについて明確に自分自身で人に説明できるようになると、転職活動も上手くいくのではないでしょうか。
岡山香織さん
- 日本キャリア開発協会認定CDA
- 国家資格キャリアコンサルタント
高卒の転職成功には【転職エージェント利用】がカギ
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IT業界は比較的給料が高い傾向にあるので、学歴問わず高収入を狙いたい方におすすめです。
学歴で人生は左右されない
いかがでしたでしょうか。高卒と大卒には、具体的なデータや企業からの見られ方など、確かに違いはあります。
しかしそれが中途採用で直接的に有利不利につながるような差かというと、そうとは言い切れません。あくまで学歴というのは可能性の範囲を決める“資格”と同等のものであり、大卒でないと応募すらできない企業がある一方で、学歴にとらわれず人間性やスキルで判断する企業もたくさん存在します。
皆さんも学歴ばかりに注視せず、これまでの社会人歴で培ったスキルや経験に目を向け、どうキャリア形成するか、どういうキャリアプランにするかなど未来へ向けて注力してほしいと思います。
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