経歴
・制作会社で映像・WEBクリエイター
・TSUTAYAの教育プログラム開発、研修講師、採用、販促支援
・女性誌出版社で人事リーダー
就職氷河期を生き、IT化、グローバル化という社会の大きな変革の真っただ中を駆け抜け続ける40代ロスジェネ世代。
60歳定年制度は崩壊しつつありますが、40代を社会人としての折り返し地点と考える方も少なくないでしょう。
まだ半分残された社会人人生。今のまま同じ仕事を続けるか、はたまた転職して新たなキャリアをスタートさせるか。老後や家族の将来など、様々な点から自身の今後を考える方も多くいらっしゃると思います。
今回は、そんな40代ロスジェネ世代の現状を年収の面から掘り下げ、あなたが今後どのようにキャリアを築いていくべきかを解説いたします。
経歴
・制作会社で映像・WEBクリエイター
・TSUTAYAの教育プログラム開発、研修講師、採用、販促支援
・女性誌出版社で人事リーダー
プロフィール
企業人事歴トータル12年以上
5万人以上の応募書類を見てきた「採用とキャリア支援のプロ」
前職在職中に群馬県に移住
東京ー群馬往復6時間通勤&リモート勤務を2年間続けた後、2021年に独立
法人向け人事コンサルタントおよび
働く女性向けキャリア支援 iodus(アイオダス)主宰
ロスジェネ(ロストジェネレーション)世代とは、日本経済が戦後最も低迷していたバブル崩壊後のおよそ10年間に、就職活動せざるを得なかった人々の呼称です。高卒、大卒など、就職活動を行なった歳による差はありますが、2020年現在ではおよそ40代の方々がロスジェネ世代に該当すると言えるでしょう。
ロスジェネ世代は、いわゆる就職氷河期に就職活動を行ない、不景気による企業の新卒採用が激減する中奮闘した世代です。売り手市場で大量採用されたバブル世代とは異なり、限られた枠の採用だったため、激しい競争を勝ち抜いた優秀な人が多いと言われています。
また、冷え切った日本経済を支えていく世代という空気を就職活動そのものから肌で感じており、努力を怠らずスキル向上に励んだ人が多いことも特徴。就職後も、価値観がはっきりしているバブル世代の50代と、ゆとり世代の30代との調整役のような役回りを担うことも多く、冷静な判断力や決断力を自然と身につけた人も多いようです。
更にロスジェネ世代の社会人歴はITの歴史と共にあるとも言えます。1990年代はパソコンの普及、2000年以降はインターネットの爆発的な発展。こうしたweb化する社会の劇的な変化にも、ロスジェネ世代は順応に対応してきました。アナログにもハイテクにも柔軟に対応できるこの世代は、他の世代とは一線を画す稀有な存在と言えるでしょう。
40代ロスジェネ世代は、バブル崩壊の影響で2000年には有効求人倍率が1を切るなど就職難の時代に就職活動をせざるを得なかった世代です。希望する企業よりランクを落として就活を行う人も少なくありませんでしたが、その分自分のスキルアップに磨きをかけて転職のチャンスを狙うなど自分のキャリアを自分で切り拓いてきた精神的なタフさがある方が多いのが特徴です。
また、就職氷河期をくぐり抜けて入社した後も、会社業績の低迷により中高年の先輩社員がリストラされる厳しい現実を目の当たりにしたり、人員削減の中課される厳しい業績目標やノルマに、必死で食らいついてきたこの世代は、あらゆる場面で冷静に対応できる判断力と臨機応変さも強い武器になりますよ。
自分の年収は、同世代と比較するとどれ程のものなのか。多い方なのか、少ない方なのか、どの世代であれ気になる方は多くいらっしゃるでしょう。しかし、同世代の平均年収と比較して、単純に一喜一憂するのは正しい判断とは言えません。年収の見方には、平均年収と年収中央値の2つの見方があります。
平均年収とは、該当する全ての方の年収データを合計し、総数で割った数です。こちらは極端に年収の多い人や少ない人がいると、平均値に及ぼす影響が大きいという特性があります。例えば、10人中9人が年収300万円でも1人が年収5000万円だとすると平均年収は770万円となってしまうのです。
一方で年収中央値は、極端に年収の多い人や少ない人がいたとしても、丁度真ん中の値をとるため実質的な一般の年収に近い数字を指し示します。これは、年収の低い人から高い人を順に並べ、その真ん中にいる人の年収を中央値とするからです。先ほどの平均年収の例で年収中央値を出すと、300万円になります。
以上のことから、同世代と年収を比較するのであれば、平均値ではなく、中央値で比較する方が現実的です。
では40代ロスジェネ世代の平均年収と中央値は、実際にはどれくらいなのでしょうか。
国税庁の調査によると、40代前半の平均年収は476万円、40代後半の平均年収は502万円です。この調査では世代別の年収中央値は明記されていませんが、大手転職サイトdodaが2020年9月~2021年8月に行なった調査の年収分布を見ると、40代の年収中央値は400~500万円であることがわかります。
*参照:doda『40代年収分布』
ただし、dodaの調査対象者の平均年収は528万円と国税庁の調査よりも上回ることから推察すると、実質的な40代の年収中央値は400万円前後という可能性もあるでしょう。実際、54%と半数以上の人が年収500万円未満であることが年収分布図からもわかります。
ここまで見れば、自分の年収が「比較的貰っている方だ」「一般的だった」と思う方もいるでしょう。転職は必要ないと、安心する方もいるかもしれません。しかしこれも、短絡的な判断は禁物です。あなたの置かれている状況によって、考察する視点は大きく異なります。
先ほどの国税庁の調査が示した平均年収ですが、男性だけで見た場合、40代前半は571万円、40代後半では621万円となり、平均年収と大きく乖離することがわかります。
また男性は、50代後半をピークに、年齢が上がるにつれて平均年収も大きく増加します。これは勤続年数が長期化することによる昇給や、役職が与えられることによる昇進の影響があると考えられます。
以上のことから、男性の場合は40代の平均年収と比較するだけでなく、自分が今の企業で50代になったときに50代の平均年収と同等、もしくはそれ以上の年収になる可能性があるかどうかも視野に入れる必要があります。40代の転職以上に、50代の転職は非常に困難です。
40代の現在は平均年収以上でも、今の企業では50代での昇給や昇格が望めないということが見えているのなら、転職しやすい40代のうちに行動に移した方が得策と言えます。
*参照:国税庁『令和2年分 民間給与実態統計調査 第14図』
一方で女性の平均年収は、40代前半で317万円、40代後半で321万円と、男性に比べて200万円以上も差があることが国税庁の調査からわかります。また女性の平均年収は、年齢による較差が殆どないことも特徴です。
これは、男性に比べて女性は非正規雇用者が多いこと、役職に就いている人が少ないことが理由として挙げられます。また出産や育児などで離職・転職する人も多く、1社の勤続年数が短いことも理由として考えられます。
また国税庁の調査では世代ごとの年収中央値は明記されていませんが、女性の場合は全世代の平均年収に差が殆ど見られないことから、全世代の年収中央値も参考にできると考えます。平成30年の女性の年収中央値は200~300万円で、年収100~200万円以下の方が23.8%と最も多く、実に全体の59.8%が年収300万円以下です。
そのため、女性でもこれまで同じ企業に長期勤続しキャリアを積み上げた方は、男性と同じ視点で考えた方が良いかもしれません。転職を何度か経験した方や現在非正規で働かれている方のうち、女性の年収中央値と同等もしくはそれ以上の収入があるのであれば、下手に転職するより現状維持が賢明と言えそうです。
*参照:国税庁『令和2年分 民間給与実態統計調査 第14図』
勤める事業所の規模によっても平均年収にかなりの差が出ることが、国税庁の調査から見て取れます。従業員10人未満の企業では40代の平均年収が396万円という一方で、5000人以上の大企業では40代の平均年収は578万円と、200万円近い開きがあり、事業所規模が大きいほど平均年収も比例して増加しています。
そのため、転職を考えるのであれば自身の勤務先の事業所規模を鑑みてた判断が必要でしょう。小規模の事業所でキャリアを積んだ方は、マルチプレーヤーとしての才能や機動力を武器に大規模企業に転職できるなら、年収を上げることは可能でしょう。
大規模企業でなかなか役職に恵まれず平均年収を割っているという方は、事業所規模を小さくすると年収が更に減少してしまう可能性もあります。同等くらいの事業所規模で転職するか、転職せずに昇給や昇格を目指した方が得策かもしれません。
*参照:国税庁『平成30年分 国税庁民間給与実態統計調査 第10表』
ご自身のこれまでのキャリアや勤務する企業によって方法は各々ですが、結論から述べると40代ロスジェネ世代が年収をアップさせることは不可能ではありません。ここでは具体的に年収をアップさせる3つの方法をご紹介します。
やはり40代の転職は、20代30代に比べてリスクも高く、そう容易なものではありません。転職することで年収アップどころか、年収がダウンしてしまう可能性もあるのです。
今の職場で昇給や昇格する手段や相談する余地があるのであれば、まずは上司や社長に直接交渉するなどしてみましょう。特に40代ロスジェネ世代は、就職氷河期を勝ち抜いた優秀な人材が多く、採用数も少ないため企業としても手放すには惜しい人材です。転職しようとしたら引き留めにあい、結果昇給を打診されたという話も珍しくはありません。
昨今ではリモートワークの認知が少しずつ広まり、拘束時間に応じて給与が支払われるというこれまでの働き方は見直されつつあります。いわゆる成果主義、実力主義への変革ともいえるでしょう。効率の良い働き方や時間の使い方が工夫できれば、空いた時間で副業も可能。確実に年収アップが実現できます。
また、とことん効率よく働ける方や実力を充分に備えた方であれば、独立を検討してみても良いでしょう。今や、営業代行に採用代行、財務代行など、様々な企業が一部の仕事を外部企業やフリーランサーに委託することは一般的になっています。安定した給与や各種社会保険などの保証は失いますが、やればやっただけ報酬を得られるので、年収アップの可能性は充分にあります。
40代は重宝される一方で、一般的にサラリーマンの出世の決着は40歳前後でつくと言われていることも事実。現在の職場で年収アップが望めない場合は、転職を検討しましょう。
企業規模に関わらず、仕事の実力を兼ね備えているロスジェネ世代はやはり貴重ですし、就職超氷河期の採用の影響から40代の社員が少ないために補強を望んでいる企業も少なくありません。マネジメント経験や専門的な技術を持っている方は、そうした才能や経験を武器に転職することで年収アップを実現することは可能です。
またロスジェネ世代は就職超氷河期に就職活動を行なったため、やむを得ず非正規雇用で就職した方や、肩書は正社員でも賞与や手当がなく年収400万円に達しないという方も少なからずいらっしゃるでしょう。そうした方も、マネジメント経験や積み上げたキャリアがしっかりとあれば、正社員として雇用してもらえる可能性は充分にあります。
企業が40代に求めるものは、専門性とマネジメント力の2つです。
専門性については、自分のスキルや経験でどのように会社に貢献できるか、前職での成功事例をどうやって新しい環境でも再現できるかなどをわかりやすく伝えることが大切です。またマネジメント力については、実際に管理職の経験があれば有利ですが、必ずしも役職についていなくてもかまいません。
これまでのキャリアの中でプロジェクトを率いたりリーダーシップを発揮した経験がないか、自分の職務経歴・スキルを細かく棚卸ししてみましょう。プレイヤーとしての専門性だけでなく、チームをまとめたり後進を育成するなど、どれだけ自ら会社に貢献できるかをアピールすることが40代の転職活動に重要なポイントです。
40代の中央値を知るだけではなく、40代の平均年収を始め地域別・企業規模ごとに平均年収を知ることは大切です。
平均年収を知ることで転職の際に、年収交渉が上手く行える材料となり「転職して年収が下がった」というマイナス面を防ぐことができます。
40代平均年収
※参照 国税庁 令和元年分民間給与実態統計調査
全国主要地域及び一都三県をピックアップしてみると、都道府県別の平均年収ランキング1位である東京都と最下位の沖縄県では約130万円と差があります。
賃金は、男女計307.7千円(年齢43.1歳、勤続12.4年)、男性338.0千円(年齢43.8歳、勤続13.8年)、女性251.0千円(年齢41.8歳、勤続9.8年)となっております。賃金を前年と比べると、男女計では0.5%増加、男性では0.1%増加、女性では1.4%増加となっており、男女計及び女性の賃金は過去最高となっております。
技術やキャリアを備えた方が多い、ロスジェネ世代。20代や30代とは異なり、転職後の展望が明確であったり、自分の強みを把握しているところが武器になりますので、年収アップのためにはこれまでの経験を生かした転職が必須です。
また、40代での転職は簡単ではありませんので、失敗したからといって何度もチャレンジできるものでもありません。ここでは、40代ロスジェネ世代が失敗や後悔なく転職を成功させるポイントをご紹介します。
40代の転職は、これまでの経験をフルに活かした転職が最も有効です。同職種や同業種であればそれだけで重宝されますし、転職もしやすいでしょう。しかし全くの同職種・同業界だと、年収もそれほど変わらない場合もあります。そんな時は、前述の通り事業所規模の大きい企業への転職が年収アップには効果的です。
一方で大手企業で課長職などの管理職経験がある方は、逆に企業規模を下げて部長職など上の役職に挑戦することで、年収アップを実現する方法もあります。特に大企業での管理職経験は、大企業を目指す中小企業にとっては貴重な経験です。また業績を上げている中小企業の役員の待遇は、大企業の課長職や部長職よりも高収入である場合もあります。
もう一つ年収をアップさせる転職方法として考えられるのは、年収の高い業種への転職です。国税庁の調査では、業種によって平均年収に大きな差があることがわかります。40代の平均年収が高い上位3業種は、情報通信業が689万円、金融業・保険業が694万円、電気・ガス・熱供給・水道業が813万円と、最も平均年収が少ない宿泊業・飲食サービス業の302万円と倍以上の開きがあります。
もしあなたが、営業職や人事・経理といった管理部門職など別業界でも通用するスキルを持っているのであれば、年収が高い業界へ職種を変えずに転職することで年収アップを実現することが可能です。
*参照:国税庁『平成30年分 民間給与実態統計調査 第12表』
人手不足の業界や職種が必ずしも年収が高いとは限りませんが、転職のしやすさを考えると成功への近道と言えます。また、人手不足ということは年収や待遇を交渉する余地もあると考えられます。
業種別:求人の増加率が前月比で最も大きかったのは「小売・外食」、次いで「商社・流通」。
※「求人数」「転職希望者数」は、ボリュームをアイコンの数で表しています。
※指数が10を超えるものは+を表示しています。
2020年5月に発表された大手転職サイトdodaの転職求人倍率レポートによると、最も人出が不足している業界はIT・通信です。
IT業界の市場規模は100兆円に近く、全産業の中でも最も高い水準を維持している上に、今後のITの拡大を考えると増々人手は不足する業界だと考えられます。
次いで人手不足なのはサービス業界です。ただしサービス業界は生産性が低く低賃金であることも否めません。転職を検討するのであれば、年収や待遇はもちろん、仕事内容や働き方などを慎重に下調べし、転職が本当に適切であるかどうか見極める必要があります。
他にも、メディカル業界や介護業界、建築や不動産業なども有効求人倍率は高く、比較的転職しやすい業界だと言えるでしょう。しかし必ずしも、どの業界も市場が拡大しているために人手が不足しているというだけではなく、仕事内容や待遇が厳しいために退職する人も多いという事実は認識して然るべきです。
年収は、会社の規模や役職、経験年数によっても変わりますが、他にもどんな業種、職種で働いているかも大きな影響要素です。たとえば同じ営業職でも医療系業界や金融業界など、業界全体が安定していて専門知識が必要となる業種に転職できれば、平均年収を大幅に上げることも可能です。
40代から職種を変えて転職するのはハードルが上がりますが、職種はそのままで業種を変えるのであれば、経験者枠で転職できます。万が一業界未経験のために入社時に一時的に収入が下がったとしても、勤続年数を重ねて社内で実績を上げることで、前職の収入を超えることも可能かもしれません。
気になる業界や会社があれば、転職エージェントに平均年収や評価・昇給制度について聞いてみてはいかがでしょうか。
いずれにせよ40代の転職は、転職の目的や転職後の目標を明確に定め、自身のキャリアの棚卸しを充分に行ないアピールポイントを明確化する必要があります。加えて、転職活動が長期化しないよう計画を立てたり、多少不採用となってもモチベーションを保ちながら取り組み続ける姿勢も必要です。
また、何よりも注意しなければならないのは謙虚さを忘れないことです。キャリアをアピールする余り高圧的になってしまったり、これまでの実績をひけらかしたりしてしまっては、面接に限らず入社後にも反感を買うでしょう。
特に採用する側は、求職者のスキルや才能と同じくらい、人柄も重要視します。それは新しい環境になじめるか、特に管理職であれば部下から慕われる人かどうかは、組織全体の生産性を左右する重要なポイントだからです。これまでの経験を活かしながらも、新しいことにはどんどんチャレンジしていきたいという素直さや前向きな姿勢も忘れないでください。
新卒時代に思ったような就職活動ができず、これまで不本意な社会人人生を送ってきたという方、思ったような年収が得られていないという方も決して未来まで諦める必要はありません。激動の時代を生き抜いた事実と培ったスキルは、必ずあなたの身になっているはずです。これまでのあなたの経験を客観的に冷静に振り返り、ぜひ今後に役立ててくだされば幸いです。