復帰予定の母親がお子さんの預け先待機中で、出社日の目途が立たない、というお話をお伺いすることがあります。
「とりあえず実家に預けて、保育園が空くのを待てば?」
そんな同僚の意見に対し、
「実家に預けられると役所の人に思われると、更に入園のチャンスを逃してしまう。実家にいつも預けられるわけではないのに、それは困るから」
と待機し続ける方もいらっしゃいました。
母親は、復帰したいのに、預け先がない・・・。
役所に相談に行くと、ストレスが溜まるだけ・・・。
こんな憤りの声をよく耳にします。
そんな中、
「仕事の穴をこれ以上空ける訳にはいかないから、お金が掛かっても他の手段を使う!」
と決める女性も。
24時間、子供が病気の時でも預かってくれるところを探したそうです。
そう話してくれた女性のお子さんは中学生になり、当時を振り返りながら、働いたお金がほとんど育児のために消えていった虚しさ、でもお金を掛けても今やりたい仕事が続けられていることの嬉しさの両面をお話されていました。
「あの期間、お金の面では大変だったけれど、結果的にはよかった」
ちなみにその保育園は外資系企業で働くご家庭が多く、キャリアを捨てたくないという志向の人と、高収入の家族が中心だったようです。
このような選択肢を考えると、いつのタイミングでいくらお金をかけるかを計算しておくことも大事です。
以前、キャリア相談でマネープランも併せて相談してきた方がいました。その方は、お子さんが小さいうちにいくらかかるのか、そして、そのお金を将来どうやって取り戻すのか、といったことを相談されました。
子育てにかかったお金を取り戻すためには将来のポジションアップ、お給料アップが必要です。子育てのプランと併せて、ご自身のキャリアプランも相談されたのです。
また、時短をどのように使っていくのか、頭を悩ませているのは、本人だけではありません。企業からはこんな声もあります。
~ 企業のホンネ ~
「正直会社としては、活躍してもらうために時短を利用してほしいと思っていますが、お子さんのいない女性たちから不平不満の声が上がっているんです。
また、会社としてもますます結婚出産後に復帰される女性が増えると、そういった状況でもご活躍し続ける女性が増えてほしいものの、時短を使うことで、カバーしなくてはならない人件費などの費用を計算してみたら、将来的に切迫していくことがわかったのです。
何とか経費を減らす方法も検討しなくてはなりません。」
そういった理由から、ワーキングマザー向け時短制度の使い方研修を実施させていただいたこともあります。よく、マミートラックと言われますが、
マミートラックとは子どもを持つ女性の働き方のひとつで、仕事と子育ての両立はできるものの昇進・昇格とは縁遠いキャリアコースのことです。職場の男女均等支援や仕事と育児の両立支援が十分でない場合、ワーキングマザーは往々にして補助的な職種や分野で、時短勤務を利用して働くようなキャリアを選ばざるをえなくなり、不本意ながら出世コースから外れたマミートラックに乗ってしまうことが少なくありません。
(人事労務用語辞典より引用)
というもの。
特に長期にわたり短時間勤務制度を使っている女性に対して、会社や上司は「あの人には時間内で終わる仕事を」と割り振るケースがあります。そのため、気が付けばキャリアアップに繋がらない仕事ばかりが振られていくのです。
ようやく育児の手が離れた時にやってみたい仕事があったとしても、周囲より経験値が低かったり、やらせてもらえなかったり・・・。そんな辛い思いをしている女性の悩み相談も受けています。
このように考えると、子供の預け先、時短の取り方、周囲の協力の得方は計画的に考えていく必要がありそうです。
そこで私がおススメしたいのは、お子さんが生まれる前に以下の点を整理して計画することです。
保育園は勿論のこと、それ以外のサポート体制は区や市によって異なります。また、役所がやっていること以外のサポートも存在しますので、使えるものは使うという意識で広く情報収集をしておきましょう。
なるべくお金がかからないもので探したいところですが、万が一のことを考えて料金が高いサービスも併せて調べておきましょう。いざという時、両方使える準備ができると安心して復帰できます。また、その際かかる金額と将来のマネープランも併せて計画しておきましょう。
キャリアを積み上げながら、どのように時短を使っていくのかも計画のうちです。先ほども述べたように短い時間しか働けないと思われると、今の日本社会では残念ながら時間内に終わるルーティンワークが振られ、長期的な戦力とみなされなくなってしまうことも。
そうならないよう、自分とキャリアを守るには上司を巻き込むことです。産休育休前に自分の描くキャリアプランを上司と共有しておきます。両立しながらどのように続けていくのか?時短を使うタイミングも併せて共有します。
たとえば「3歳までは○時まで」、その後は時短は使わず「小学校1年に入った時、また時短を再開して○時まで」というように。
もちろん子供が生まれてみないと計画通りにいくかどうかわかりませんが、一旦時短の取得計画を立ててみて、それを上司と共有して変更があれば都度すり合わせていきます。
「人に頼りたくない」
「自分で何でもやらないと、安心できない」
このような方は一度自身の気持ちは抜きにして、協力が得られそうな周囲の人を書き出してみます。そして、これもお子さんが生まれる前に、実際にどこまでサポートしてもらえるのか話し合っておきます。
「きっと○○さんが~~してくれると思うから・・・」そう思って当てが外れたなんてこともありますし、逆に「早く言ってくれたらいいのに」と言う相手も。確認してみないとわかりませんし、持ちつ持たれつ、何事も協力が大事。周囲の人が自分のために何かしてくれたら、違った形でお返しをすればよいのではないでしょうか。
お子さんが生まれて手いっぱい、気持ちもいっぱいになる前に、キャリアプランと併せてこれらを確認しておくことが両立の成功に繋がります。