看護師にとって、新卒の就職先選びは看護師人生を決める大事な分岐点です。
しかし、新卒の看護師は病院がいいのか、クリニックがいいのか、就職先選びに迷っている方も多いかと思います。
看護師歴12年、総合病院や精神病院などで働いた経験のある筆者が、新卒看護師の病院選びのポイントを紹介します。
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新卒看護師が就職する際、おすすめできる5つの就職先を紹介します。
新卒看護師が最初に勤務する代表格が、総合病院や大学病院です。
病院系列の看護学校や、大学病院付属の看護学校を卒業し、そのまま就職する方も非常に多いです。
総合病院や大学病院に就職すると、それぞれの診療科に数名が配属され、新人教育も受けながら働くことができます。
勤務形態は2交代制または3交代制が一般的で、新卒時代は研修に配慮して勤務予定を組んでもらえます。
看護師のキャリアとしては最もスタンダードで、総合病院や大学病院で働きながら専門性を高める人も多いです。
専門性を重視して働きたいなら、専門病院への就職もおすすめです。
専門病院とは、特定の疾患や特定の診療科に特化した病院で、スペシャリストが多く集まっています。
例えば、がんやリウマチなどの疾患のほか、循環器や整形外科、脳外科など様々な専門病院があります。
新卒で入社した場合は、その専門性に特化したスペシャリストを養成する教育を受けられるため、興味のある領域のある方にはおすすめです。
勤務形態は総合病院・大学病院と同様、2交代制または3交代制が一般的です。
クリニック・診療所も新卒看護師の多くが働く場所です。
病院とは違い、看護師の夜勤がないところが多く、平日のみ働くことが多いです。
業務内容は患者受付や電話対応、バイタル測定、採血、点滴・注射、診療の補助など多岐にわたります。
クリニック・診療所では、看護師が少人数で働いているため、看護師一人ひとりのできる仕事を増やす必要があります。
病院のように急患対応をすることはほとんどないため、安定して働きやすいのがおすすめポイントです。
色々な種類がある介護施設の中でも、新卒看護師が働くなら介護老人保健施設がおすすめです。
介護老人保健施設では、退院後の一定期間だけショートステイし、自宅への生活に戻る利用者が大半です。
看護師はバイタル測定や投薬の確認、リハビリのサポート、入浴介助、褥瘡ケア、人工肛門のケアなどを行います。
難しい看護技術を必要とせず、利用者とのコミュニケーションが主な仕事になるでしょう。
病院よりも機会は少ないですが、医師の指示で点滴やカテーテル操作を行うこともあります。
利用者とのコミュニケーションや関わり方に重点を置くなら、介護老人保健施設がおすすめです。
保健所・保健センターは公的機関ですから、就職すると公務員という扱いになります。
基本的に、保健師資格を持つ人が採用されやすく、保健所・保健センターの置かれている地域の健康指導・相談、住民とのコミュニケーションが主な仕事になります。
また、近年では新型コロナウイルスの流行もあって、地域住民の健康意識を高める教室・支援活動も積極的に行っています。
公務員と同じく平日の日中のみ働くことになるため、ワークライフバランスを大事するならおすすめです。
新卒看護師が就職先の病院を選ぶ際、確認すべき大切なポイントを7つ紹介します。
新卒看護師が即戦力になるのは難しく、学ぶべきことはたくさんあります。
病院を選ぶ際は、どのような新人教育・研修制度があるか必ずチェックしましょう。
一般的には、先輩看護士がプリセプターとして指導に入り、定期的に病院独自の研修を行うことが多いです。
また、ある程度規模が大きい総合病院の場合、ジョブローテーション制を採用し、3カ月に一度部署を異動して勤務することもあります。
最初の1年間は非常に忙しくなりますが、自分の得意領域を発見し、スキルアップに繋がる大事な時期になるでしょう。
プリセプター制度・独自の教育研修制度・ジョブローテーション制のある病院を選べば、看護師としてレベルアップできる
看護師として働いていくには、仕事と給与、休日のバランスも大切なポイントです。
病院によっては夜勤回数や残業が多いにもかかわらず、思うような収入を得られない病院もあります。
日本看護協会によると、専門学校卒の新卒看護師の基本給与は20万3,276円、大学卒なら20万9,616円となっています。
この基本給与を基準にして、病院を選ぶのがよいでしょう。
もちろん、その他にも有給休暇の付与日数、産休・育休・介護休暇の有無、職員が利用できる施設なども調べておきましょう。
どんな福利厚生が揃っているかを調べておくと働きやすさの参考になる
新卒で働く病院は、ある程度規模の大きい病院のほうが、教育・研修制度も整っているので安心して働けます。
また、病院の専門性も確認して、自分の関心のある分野、得意科目とマッチしているか検討しましょう。
将来どんなキャリアを希望しているかにもよりますが、あまり小規模の病院を選んでしまうと、体系的な教育を受けられず、色々な症例を経験する機会もなくなります。
中規模以上の病院を選んでおけば、キャリアの選択肢も多くなる
通常、看護師の勤務は日勤・深夜勤の2交代制か、日勤・準夜勤・深夜勤の3交代制にわかれます。
3交代制はいずれも8時間勤務ですが、2交代制は深夜勤が16時間に及ぶ長丁場です。
若いうちなら2交代制も疲れ知らずのまま働けますが、年齢と共に2交代制の勤務はどんどん辛くなっていきます。
また、長時間の夜勤後は疲労もあるため、運転中に交通事故を起こす看護師が後を絶ちません。
体力に自信がない人は3交代制、毎月の夜勤回数を少なくしたい方は2交代制の病院を選ぶと働きやすい
人間関係の良さは、長く働いていくには必須の条件です。
どれほど給料や仕事の環境が良くても、人間関係が悪ければ仕事に対する意欲は失われます。
新卒の看護師に職場の人間関係を把握することは難しいでしょうが、まずは職場見学に行ってみることをおすすめします。
職場に行った際、気軽に挨拶し、声を掛けてくれる先輩看護師がいるか、働いている人の表情、会話、病棟が清潔かなどを確認してください。
また、入院中の患者さんを見かけたら、看護師との会話や表情も注意深く観察してみましょう。
人間関係の良い職場は働く人も患者さんも表情が明るい
新卒で働くのであれば、病院の専門性や診療科が自分の得意分野、性格とマッチしているかどうかも重要なポイントです。
働く看護師には診療科によって特徴があり、外科系なら要領が良く、きびきびと働く人が多いです。
内科系なら比較的穏やかな人が多く、コミュニケーション能力に長けている人が多いという傾向があります。
診療科毎に向いている性格もあるため、自分の得意分野も意識しながら、どこが合っているか判断する
働く前に調べておくべきポイントとして、病院の評判も非常に大切です。
患者さんからの評判も大事ですが、実際に働いた経験のある人からの評価を重視しましょう。
学校の先輩などの人脈も頼りに、実際に働いている人から体験談を聞くのがおすすめです。
求人票では好条件になっていても、実際に働くと求人票の内容とは全く違うことも時々あります。
働く人と患者さんの両方から評判の良い病院を選ぶ
新卒看護師の代表的な就職先として、病院とクリニックの2つがあります。
就職するならどちらを選ぶべきか、目的別に選ぶべき職場を紹介します。
新卒で就職し、その後のスキルアップを目指すなら病院への就職をおすすめします。
病院勤務なら定期的に部署異動があり、色々な専門性を学べるだけでなく、体系的な医療知識を学ぶ機会も多いからです。
入院病棟で働いていれば、超急性期から回復期、慢性期、終末期など色々なステージの患者さんと関わる機会があります。
それぞれのステージでの患者さんとの関わり方、最新の治療方法も学べるため、スキルアップを狙うなら病院に勤務しましょう。
病院に比べるとスキルアップには繋がりにくいものの、ワークライフバランスを重視するならクリニックの方がおすすめです。
クリニックでは、平日勤務が基本となり、夜勤もないことから生活リズムが安定しやすいメリットがあります。
少人数なので、看護師一人ひとりの担当する業務は多いですが、高度な医療や手術を行うのではない限り、専門的な技術も求められません。
また、急患や緊急入院も基本的にないことから、安定した仕事を求める方に向いています。
給料は病院より安い傾向こそあるものの、ワークライフバランスを大事にしつつ、長く働くならクリニックを選ぶべきです。
実は、若い女性看護師には、クリニックも人気が高いです。
クリニックは業務の時間が明確に決まっており、雇用条件で決まった曜日にのみ働きやすいというメリットもあるからです。
そのため、産休や育休を取得したい女性看護師には、クリニックも人気があります。
しかし、産休や育休に加えて看護師としてのキャリアアップも考えるのであれば、病院への就職が一番です。
色々な臨床例を経験でき、専門性を高めれば、認定看護師や専門看護師などを取得するチャンスもあります。
また、転職の際も病院での勤務経験はアピール材料にしやすく、将来のキャリアの観点でも強みになります。
看護師として長い目で見てキャリアを考えるなら、新卒看護師の就職先は病院勤務が最適です。
大学・専門学校を卒業予定で、就職先が決まっていない方は、これから紹介するポイントを参考にしてください。
就職先選びで、地元の病院やお住いの地域の周辺だけで就職先を探してはいないでしょうか。
もし近隣の地域で就職する病院が見つからない場合は、少しエリアを広げてみるとよいでしょう。
関東近郊の場合は病院も多いですが、地方になるとそれほど病院は多くありません。
そのため、都会の病院に行きたがる看護師が一定数いるのも事実です。
しかし、地方の病院は施設が新しくても、看護師不足になっているところも多く見られます。
地方の病院では長く働いてくれる新卒看護師の存在は貴重で、大事にされることも多いです。
色々な地域で病院を探し、自分に合った職場を見つけてください。
履歴書の書き方も採用ではポイントになります。
丁寧で読みやすい文字で書き、わかりやすい文章になっており、明確な志望動機が書けているでしょうか。
看護学生には、初めて履歴書を書く方も多く、志望動機や自己PRの書き方が分からない人も少なくありません。
履歴書を書く際は、自分のこれまでの人生、学生時代の体験なども文章に盛り込みつつ、志望動機に繋がる内容を詳しく書きましょう。
履歴書をしっかりと書くことが、就職活動の第一歩になります。
履歴書で一次審査を通過したら、面接に向けてしっかりと対策を行いましょう。
就職が決まらない理由には、面接で何らかのマイナス点があることも考えられます。
見た目では、髪型は綺麗にまとまっているか、服装は面接に合っているか、表情は明るいかなど、第一印象に気を使うことが大事です。
コミュニケーションも大切ですから、ハキハキとした口調で話し、態度や表情、目線も面接官の方をしっかりと見て話してください。
看護師の仕事は、患者さんとのコミュニケーションが欠かせませんから、コミュニケーション能力に難があるようなら採用される可能性は大幅に下がります。
新卒看護師を求める病院は数多くありますが、ブラック病院に引っかからないことが大切です。
就職が決まらないと焦ってしまい、内定をもらえた病院に飛びついてしまう人も少なくありません。
しかし、採用した病院があまりに厳しい環境で、ブラック病院だったとしたら、その後の看護師人生にも悪影響を及ぼすでしょう。
実際に筆者の知る新卒看護師にあった例として、日勤は朝6時には出勤し、夜は11時に仕事を終えていたこともあります。
家に帰らず更衣室で一晩を過ごし、また翌日の勤務に出るという生活を続けていました。
その結果、当然ながら心と身体のバランスを崩し、長期の休職を余儀なくされたケースがあります。
次々に看護師が辞めている病院はブラックである可能性が高いため、引っかからないように注意してください。
新卒看護師の多くは病院や医療機関で働きます。
それは教育や研修がしっかりと整備されており、臨床例も豊富で看護師としてのスキルアップに役立つ点が多いからです。
しかし、近年は働き方も多様化しており、スキルアップやキャリアアップ以外にも、ワークライフバランスを重視する看護師も増えています。
看護師として将来どんな働き方がしたいのか、これからのライフスタイルまで含めて、将来を見据えた就職先選びが大切になります。