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働きながら技能資格を追う人々

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年齢による壁をもたないアメリカ人

アメリカ人に年齢を聞いてはいけない。それなりの仲ならよいが、そうでない場合は、二度と口をきいてもらえなくなるかもしれない。学生時代に、アメリカに暮らす友人とデイスコに遊びに行っときのこと。彼が、ダンスフロアーで踊っている70代に見えるアメリカ人カップルを指さし、「アメリカ人は恥をしらない」と言った。正しい表現は、「アメリカ人は歳など気にしない」になるだろう。いつまでも若い心を持ちつづけ、チャレンジに挑む。それが典型的アメリカ人の姿。だから、仕事を辞める時期も自分で決める。「定年退職年齢」を会社が決めることは許されない。

ただ、37%もの人々が本来働きたいと思っている年齢まで働けず、リタイアをしているという事実がある。その一番大きな理由は健康上の問題により、仕事が続けられなくなること。2番目はレイオフにあい、否応なしに職を失ってしまうこと。それまでに、余生を過ごすに十分な貯金があればいいが、全員がそういうわけにはいかない。その時に備え、彼らは、組織に頼らずに生きていく術を取得することを望む。因みに、最近のアメリカ人がリタイアしたいと願う年齢は66歳。だが、実際にリタイアしている年齢は62歳となっている。

 

現在の職場は士資格を取るための資金稼ぎの場

ニューヨークのホテルで働きだして、最初に驚いたことは、いつも笑顔で、とても愛想のよいフロントスタッフが急にいなくなったことの理由だった。「彼女は辞めてしまったの?」と尋ねると、「彼女はお金がたまったので、ロースクール(弁護士養成学校)に入ったんだ」と言われた。それから3年後、やはりフロントオフィスで働く男性が「先週、彼女と結婚した」というので、「奥さんは弁護士になったの?」と聞くと、「ばりばりの弁護士になった」という答だった。彼女がホテルで働いた4年間は、ロースクールに行くための資金造りをするためのものだった。

ニューヨークのロースクールに行くには結構なお金がかかる。平均で年間700万円くらいはかかるので、2年で1400万円もの資金が必要になる。すべて揃えなくても、ある程度の額ができれば、銀行が用意する“スチューデントローン”を借りて学校に行き、弁護士として働きだしてから、ローン返済をすることが可能になる。弁護士であれば、初任給から年収900万円くらいは得られるので、返済はそれほど無理なく終えることができる。

彼女は30代初めで、ロースクールに入ったが、40代でも50代でも、アメリカ人は入る。彼らは年齢などというものを障害とせず、チャンスがある限り、可能性を追い求める。多くの人が、それを生き方としている。

 

不況をのり超えるために

2008年にリーマンショックが起こり、アメリカは大不況へと入り込んだ。採用が滞り、失業者があふれた。もはや経験をセールスポイントに自分を企業に売り込める時代ではなかった。こうした時代に、力を発揮するものは資格。それも、人が生きていくうえで必要とされる職につくための資格が物を言う。このときは、普段にも増して、多くの人々が看護師になるための学校へ通い始めた時だった。何が起ころうとも、人は病院を必要とし、そこで働く人々が必要なことは変わらない。多くの人々は、2年以内に資格取得という目標を持って勉強をした。

景気が良い時代は、資格の獲得需要が鈍る。だが、先を見る人々は資格を獲得しておき、不況がこようとも、仕事を失わないための準備を行う。また、将来、会社勤務を辞めたあとで、自営で仕事を行っていくために必要な資格をとる人も多い。昨今は、多くの資格がオンラインの授業で取得できるようになった。仕事をしながら、資格を取得し、将来に備えることが容易に行える。この動きはさらに加速している。

 

副業のための資格を持つこともオプション

いつレイオフにあうかわからない社会で働く人々に必要とされることは、自分を磨くことしかない。明日、レイオフになっても、食べていけるように常日頃から準備をすることが要求される。経歴を磨くこと。スペシャリストとしての技能を磨くこと。そして、その上を行く人は、資格を取得しておく。それがあれば、不況になっても生きて行ける。さらに先を考える人は、会社勤務を引退した後も、仕事をするのに役立つ資格を選ぶ。会社という組織に依存せずに生き抜く強い意思を、彼らの生き方に見ることができる。

アメリカの会社は、仕事に支障をきたさない限り、アルバイトを禁止していないところが多い。例えば、不動産セールスライセンスをとり、週末を利用して、分譲マンションの紹介を行って、稼ぐ人がいる。オンラインコースで75時間の講習を受け、試験に合格すれば、不動産セールスのライセンスを取得できる。かかる費用も500ドルから700ドル程度。ライセンスを取得したら、リアルエステートブローカーと呼ばれる人の下に入り、仕事を行う。オフィスに行く必要はなく、仕事が発生したときだけ、報告をすればいいというブローカーオフィスもある。3億円のマンションを売り、手数料として900万円が入る場合、ブローカーと折半し、自分の手元に450万円が残るシステムになっている。レイオフで職を失っても、自分で定年退職をしても、こうしたビジネスは、自分の意思があればいつまでも続けて行くことができる。職を失ってから行うのではなく、普段から空いている時間を利用して活動を行い、いざというときに役立つようにしておく。

 

アメリカに学ぶ転職活動の心得

アメリカ人は長期スケジュールに従って動く国民性を持っている。来年度の有給休暇スケジュールは、夏に提出する。最低でも半年後、長いときは1年後の休暇スケジュールを決めることになる。それに向けて、仕事を調整するので、休暇前に慌ただしくなることはない。10日あるいは2週間、オフィスを留守にしても、仕事に支障をきたさないよう、周到に時間をかけて準備を行う。この国民性があるから、自分の未来を見つめ、2年でも3年でもかけて学校に通い、こつこつと勉強をしながら、資格を取得する姿勢がもてる。

日本では、「そんな先のことは考えられない」、「忙しくて、そんな時間はない」と言いたくなる人も多くいるのではないだろうか。それでは、企業に頼って生きていく姿勢を崩すことはできない。会社が傾けば、自分も傾き、困窮することになる。オンラインプログラムの発達により、資格習得にかかる時間を節約できる時代となった。この恩恵を利用しない手はない。なにが起きても揺るがない人生を確立するために、自分にあった資格の取得を考えてはいかがだろうか。

次回は、アメリカ人が面接で行う自己アピール方法を紹介したい。

 

プロフィール

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ケニー・奥谷(ケニー・おくたに)

インターナショナル・ホスピタリティー・スペシャリスト

経歴・実績

奥谷啓介、NY在住。慶応義塾大学卒業後、ウエスティンホテルズ・アジア地区セールスオフィスに入社。

1989年からシンガポールのウエスティン、1991年からサイパンのハイアット、そして1994年から2005年まで世界屈指の名門ホテル、NYのプラザホテルにてアジア地区営業部長を務めた。2001年EB1(Person of Extraordinary Ability)カテゴリーに認定され永住権を取得。

2005年プラザホテルの閉館を機にホテル勤務に終止符を打ち、NYを拠点に執筆&講演&コンサルタント活動を開始。日米企業にクライアントを持ち、サービス・売り上げ・利益向上の指導からPR&マーケティングまでのマルチワークをこなす。

著書に「世界最高のホテル・プラザでの10年間」、「海外旅行が変わるホテルの常識」、「サービス発展途上国日本」、「なぜお客様は神様では一流と呼ばれないのか」、「超一流の働き方」などがある。

運営サイト

アメリカ社会で起きている就労実態

第1回 アメリカ社会におけるレイオフと再就職
午前10時にオフィスに戻ると、泣いている同僚がいた。「どうした」と尋ねたら、「レイオフにあったの。今日で、みんなとお別れよ」という。こんなことが、私が働いていたニューヨークの職場ではよく起きた。

第2回 短時間労働で高給を可能にするシステム
アメリカのサラリーマンの一般的な生活は18時前にはオフィスを出て帰宅し夕食を摂る。そして早めに床につき6〜8時間の睡眠をとる。多くの日本人に、「なぜこのような生活が可能なんだ?」と言われるかもしれない。

第3回 アメリカ社会で成功する人の処世術
アメリカで育った人の多くはとても自分勝手な性格をしている。何よりも自分が優先。自分の意に反した決まりは守らない。という態度で生きている。それゆえ、人と人との衝突も多く、世の中は訴訟社会にならざるを得ない。

第4回 レイオフにあったときの対処法
レイオフは突然言い渡される。大概、朝の10時前に呼び出され、「あなたの仕事は今日で最後になります。5時に荷物をまとめて持って帰ってください」と告げられる。このような調子なので、誰もがショックを受ける。

第5回 社内ハラスメントを撲滅させる力
「そこをなんとか」という依頼が許される日本の社会。それとは正反対に、アメリカの社会では、「できることと、できないこと」、「していいことと、してはいけないこと」の白黒を明確にさせるから、「そこをなんとか」はない。

第6回 適材適所に基づいた就活しかないアメリカ社会
アメリカの社会を形成した最も大きな要素は差別との戦いだった、と言っても過言ではない。「差別をする人々に負けられない!」という強い心が、アメリカの競争社会を作り上げる大きな原動力のひとつになってきた。

第7回 働きながら技能資格を追う人々
アメリカ人に年齢を聞いてはいけない。それなりの仲ならよいが、そうでない場合は、二度と口をきいてもらえなくなるかもしれない。学生時代に、アメリカに暮らす友人とデイスコに遊びに行っときのこと・・・

第8回 エグゼクティブの面接方法
アメリカの社会でも、ヘッドハンターから声がかかったからと言って、面接なしに、仕事を得られるわけではない。ヘッドハンターは紹介者に過ぎず、企業はヘッドハンターの情報に間違いがないかを面接で確認する。

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