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適材適所に基づいた就活しかないアメリカ社会

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差別の歴史が創り上げた強烈な競争社会

アメリカの社会を形成した最も大きな要素は差別との戦いだった、と言っても過言ではない。1600年初頭に、ヨーロッパ人による植民が始まった当初から、アフリカで売買された奴隷が連れて来られていた。それから200年以上を経た1861年、奴隷制に賛成する南部の11州と、反対を唱える北部の23州の間に南北戦争が勃発。リンカーン大統領による1863年の「奴隷開放宣言」後、1865年に、北部の勝利に終わるも、差別は依然として続いた。

1950年後半から1960年初頭にかけ、人種に偏ることのない平等な権利を求める“公民権運動”が激化し、法律による人種差別撤廃が強化された。1970年代に入ると、性差別撤廃を求めた“ウーマンリブ活動”が起き、現在に至っては、人権を無視した差別的行為を追放する戦いが行われている。

「社会や他人に迷惑をかけない限り、人には言論の自由もあれば、行動の自由もある。それを保証するのが人権」という人権の真意に疎く、筋の通らない論をだし、特定の人々を誹謗中傷する者がいる。そうした者たちが法の下に裁かれる時代となっている。

ここまで来るのに、400年以上もの年月がかかった。苦しい思いをした人々の戦いがあった。差別を受ける人々の中には、戦う手段として、社会的に高い地位を目指す人々がいた。差別をする人々よりも高い地位につくことが、差別を受けなくなる最も効果的な方法だったからだ。この「差別をする人々に負けられない!」という強い心が、アメリカの競争社会を作り上げる大きな原動力のひとつになってきた。

 

社会にでてからの勝率を上げる方法

激しい競争社会で勝ち抜くには、個人が持つ優れた才能を見つけることが最も効果的な方法である。アメリカで暮らす人々はそう考える。才能を発揮できる分野で勝負をしたほうが、勝率が高くなるからだ。それゆえ、親も教師も一緒になって、その子が生まれながらに持つ才能を見つけようと試みる

性格が明るく、物事を説明するのが上手な人は営業職に向いている。笑顔に魅力があり、面倒みのよい人は接客業に向いている。計算が得意で、数字の動きから物事を読み取る力に長けた人は金融トレーダーに向いている。奇想天外なアイデアで人々を魅了することが得意な人はマーケティング職に向いている。

才能は、叱られる環境では育ちにくい。叱られることを恐れれば、子供は萎縮し、才能は発揮されなくなる。だから、アメリカの教育は褒める方針で行われる。子供は、自分が得意とすることを行い、良い結果をだして褒められ、さらに褒めてもらおうと努力を重ねる。こうして、得意とすることを繰り返しながら、才能を伸ばすと同時に自信をつけていく。

こうした環境で育った人々は、自分の才能を伸ばす仕事を天職とし、生涯を通し、そこから離れることはない。職場を変えるときは、働く場所が変わるだけで、仕事内容は同じ。これが、“アメリカはスペシャリストを育てる社会”といわれる由縁となっている。

 

スペシャリストを採用する会社

また、これは企業にとっても、好都合なシステムになっている。企業は人を育てるための投資はしない。他社に引き抜かれて、急に会社を去って行くのが当たり前の環境で、人材を育てるための投資はありえない。

よって、企業は採用したときから戦力として働ける者しかとらない。だから、学生は、学生時代に、知識と技術を習得し、インターンも経験し、卒業と同時に、戦力として働ける人材に育てられる。学生時代に習得したものはスペシャリストになるためのもので、彼らは仕事をしながら、その専門性を高めて自分の価値を上げていく。ここに、企業が求める人材を教育機関が育てあげるという社会構造を見ることができる。

この需要と供給を満たすシステムこそがアメリカの高い生産性を作り出す源となっている。

 

アメリカと比較した日本の雇用形体

教育機関と企業が話しあわせたかのように、無駄なく歯車を組み合わせ、高い生産性を生み出す仕組みを造りだしたアメリカ。比較してみると、日本は、その正反対の方針を取っているように思われる。ほぼ単一民族国家であったがゆえに、差別される人々は少なく、その憎しみがバネとなる競争社会にはならなかった。

学校は社会にでて即戦力となる人材を育てる場になっていないため、右も左もわからない人材が採用されていく。そして、企業が投資を行い、人材育成を経て育てられた社員は強い愛社精神を持つようになる。その礎のもとに、長期に渡り平均的給与で働き続ける社員ができあがる。

だが、昨今、投資をして育てた人材が辞めて行くことが普通となった。経営悪化のため、社員をリストラしなくてはならなくなった。これらにより、投資が無駄になる事態が起こる。

人材育成への投資が無駄にならなかったのは、終身雇用制度と、それに従った人々がいたからであり、それが崩れた今、生産性はさらに低下していく。さらには、人事移動などを行うことで、スペシャリストを育てず、個人が持つ力に磨きをかけないままに働かせるというロスもある。

 

アメリカに学ぶ転職活動の心得

現在の日本の教育および企業形態では、生産性に関して、アメリカと張り合うことは不可能。多くの日本人は生産性を上げることが急務と認識しているものの、アメリカに追いつくには教育のあり方から変えていかなくてはならず、その変革は並大抵のことではない。

この状況下で最初にできることは、スペシャリストを育てる方針を企業がとること。すでに始めている企業もある。そして、生産性を上げなければならない以上、今後、この方針をとる企業は増えて行くことになる。そうした流れの中で、自分の未来を考えたとき、スペシャリストを目指すべきという答えは自ずとでてくる。

まずは、転職先を見つける前に、自分のこれまでの経験と得意とする分野を考え、自分の才能がどのスペシャリストに適しているかを見つける。それに基づき、自分をそのスペシャリストとして採用してくれ、且つ、職種を変えずに経験を積ませてくれる方針の企業を見つける。これが将来を見据える転職者が選ぶ最も賢明な道の一つとなるだろう。

次回は、不況がやってきたときのために、働きながら学歴と技能資格取得を狙う人々について述べてみたい。

 

プロフィール

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ケニー・奥谷(ケニー・おくたに)

インターナショナル・ホスピタリティー・スペシャリスト

経歴・実績

奥谷啓介、NY在住。慶応義塾大学卒業後、ウエスティンホテルズ・アジア地区セールスオフィスに入社。

1989年からシンガポールのウエスティン、1991年からサイパンのハイアット、そして1994年から2005年まで世界屈指の名門ホテル、NYのプラザホテルにてアジア地区営業部長を務めた。2001年EB1(Person of Extraordinary Ability)カテゴリーに認定され永住権を取得。

2005年プラザホテルの閉館を機にホテル勤務に終止符を打ち、NYを拠点に執筆&講演&コンサルタント活動を開始。日米企業にクライアントを持ち、サービス・売り上げ・利益向上の指導からPR&マーケティングまでのマルチワークをこなす。

著書に「世界最高のホテル・プラザでの10年間」、「海外旅行が変わるホテルの常識」、「サービス発展途上国日本」、「なぜお客様は神様では一流と呼ばれないのか」、「超一流の働き方」などがある。

運営サイト

アメリカ社会で起きている就労実態

第1回 アメリカ社会におけるレイオフと再就職
午前10時にオフィスに戻ると、泣いている同僚がいた。「どうした」と尋ねたら、「レイオフにあったの。今日で、みんなとお別れよ」という。こんなことが、私が働いていたニューヨークの職場ではよく起きた。

第2回 短時間労働で高給を可能にするシステム
アメリカのサラリーマンの一般的な生活は18時前にはオフィスを出て帰宅し夕食を摂る。そして早めに床につき6〜8時間の睡眠をとる。多くの日本人に、「なぜこのような生活が可能なんだ?」と言われるかもしれない。

第3回 アメリカ社会で成功する人の処世術
アメリカで育った人の多くはとても自分勝手な性格をしている。何よりも自分が優先。自分の意に反した決まりは守らない。という態度で生きている。それゆえ、人と人との衝突も多く、世の中は訴訟社会にならざるを得ない。

第4回 レイオフにあったときの対処法
レイオフは突然言い渡される。大概、朝の10時前に呼び出され、「あなたの仕事は今日で最後になります。5時に荷物をまとめて持って帰ってください」と告げられる。このような調子なので、誰もがショックを受ける。

第5回 社内ハラスメントを撲滅させる力
「そこをなんとか」という依頼が許される日本の社会。それとは正反対に、アメリカの社会では、「できることと、できないこと」、「していいことと、してはいけないこと」の白黒を明確にさせるから、「そこをなんとか」はない。

第6回 適材適所に基づいた就活しかないアメリカ社会
アメリカの社会を形成した最も大きな要素は差別との戦いだった、と言っても過言ではない。「差別をする人々に負けられない!」という強い心が、アメリカの競争社会を作り上げる大きな原動力のひとつになってきた。

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